アメリカ大統領選挙とラッパーたち

米時間11月3日に開票が予定されているアメリカ大統領選挙。世界中が注目する同選挙の開票に合わせて、Donald Trump 氏と Joe Biden 氏の2人の候補者に対するアメリカのラッパーたちの動向をチェックしておきましょう。

Joe Biden 支持

Snoop Dogg

I ain’t never voted a day in my life,

俺は人生で1度も投票に行ったことがないんだ (犯罪歴が理由で選挙権がなかったとのこと)

but this year I think I’m going to get out and vote

でも今年は行くつもりだ

because I can’t stand to see this punk in office one more year

これ以上ホワイトハウスのクソ野郎に耐えられないからね

Eminem

Eminem は Biden 氏の選挙コマーシャルに自身のヒット曲『Lose Yourself』を提供。

2 Chainz

I think this next administration that I support, which is Biden/Harris,

俺は Biden と副大統領候補 Kamala Harris を支持するよ

they offer something different.

彼らは Trump とは違う政策を行うはずだ

Cardi B

I have a whole list of things that I want our next president to do for us.

私は次期大統領にしてほしいことのリストを持っている

But first, I just want Trump out,

でもまずは Trump を追い出さなきゃいけない

Kid Cudi

Vote for Biden if you a real one

もしお前がリアルなら、Biden に投票しろ

Offset

Go vote @joebiden …..@common & I performed his rally in Atlanta.

Biden に投票してくれ

Common と共に、アトランタで開催された彼の選挙集会でパフォーマンスをした

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Go vote @joebiden ….. @common & I performed his rally in Atlanta

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Common

To be honest, Joe Biden made mistakes like any other human being,

正直に言うと、Biden は過ちを犯してしまったんだ

But I still believe he cares and we’ve all made bad decisions.

でも俺たちだって間違った決断をすることはあるし、今でも彼を信じている

He has the leadership qualities to get in a better direction.

彼はこの国を良い方向に導けるリーダーシップを持っている

PEOPLE

Donald Trump 支持

Lil Wayne

Just had a great meeting with @realdonaldtrump @potus besides what he’s done so far with criminal reform,

トランプ大統領と面会し、彼が成し遂げてきたことについて話し合った

the platinum plan is going to give the community real ownership.

「プラチナ・プラン」はコミュニティに本物の権利を与えてくれるものだ

He listened to what we had to say today and assured he will and can get it done.

彼は俺たちが主張すべきことを聞き入れてくれたし、それを実行することも、成し遂げることも保証してくれた

※ プラチナ・プランは、アフリカンアメリカンのコミュニティーに約53兆円を投じ、雇用創出や教育、医療においての格差解消を図り、KKK (Ku Klux Klan) やアンティファをテロ組織に指定することや、奴隷解放日である6月19日を祝日とすることなどを公約したもの。

Lil Pump

Mr. President, I appreciate everything you’ve done for our country,

ミスター・プレジデント、我が国のために尽くしてきてくれた全ての功績に感謝します

You brought the troops home and you’re doing the right thing.

あなたは軍隊を国に連れ返し、正しいことをしてきた

MAGA ’20, ’20, ’20. Don’t forget that!

MAGA (Make America Great Again) 2020 だ よく覚えておけ

And do not vote for Sleepy Joe, at all!

そして Biden には絶対に投票するな

6ix9ine

I don’t think Trump trolls

俺は Trump が悪い奴だとは思わないし

I think Trump is genuinely Trump.

彼のことを本物だと思うぜ

I get compared to Trump every day.

毎日彼と比べられるけど

But I love Mexican people.

俺はメキシコ人を愛しているし

I don’t think we’re the same.

俺たちが同じだとは思わないよ

I would vote for Trump.

俺は Trump に投票する

the New York Times

Asian Doll

I rather trump be the president then that other dude fasho

他の候補者が選ばれるぐらいなら、Trump に再選してほしい

DaBaby が発する騒音に対し近隣住民が苦情を連発

『BLAME IT ON BABY』のリリースも果たし、大きな波に乗り続けているラッパー DaBaby。

ノースカロライナ近郊に2億円越えの豪邸を購入し約一年が経った彼だが、早くも近隣住民からの苦情が相次いでいるようだ。

DaBaby が新居である豪邸に引っ越してから、約1年間の間に地元の警察に寄せられた DaBaby に関する苦情は31件にも登り、鳴り止まない防犯アラームや家庭内の口論の騒音など、苦情の種類は多岐にわたっている。

苦情を受けた DaBaby は、自宅を一周するようにコンクリートの壁を設置したと報道されているが、騒音防止のために設置した壁の建設の際に発生した騒音に対しても苦情が寄せられたようだ。

UKラップシーンを牽引する若手アーティストたち

ロードラップやグライム、UKドリル、アフロスウィング (アフロバッシュメント)、UKトラップ (トラップウェイブ) など、多様なスタイルで進化を遂げてきたイギリスのラップシーン。近年、本場USシーンとのクロスオーバーが増えてきたこともあり、世界中からますます注目を浴びるUKラップシーンの注目若手アーティストを数名ご紹介します。

1. Octavian

Octavian こと Octavian Oliver Godji はアンゴラ共和国にルーツを持つ、フランスはリール出身の24歳 (’96年生まれ)。父親が亡くなった後、彼はロンドンに移住します。後にラッパーを目指すため退学することとなるのですが、名門ブリットスクールに在籍した経歴を持ちます。Virgil Abloh 手掛ける Louis Vuitton のランウェイを歩いたことでも有名です。

Louis Vuitton 2019 Spring/Summer Collection
Louis Vuitton 2019-20 Autumn/Winter Collection

トラップから R&B、ダンスホールなどを行き来するジャンルレスなスタイルや、卓越したリリシズム、ハスキーな歌声など様々な魅力を持つ彼は、Drake に才能を見出されたことをきっかけに、現在では UKシーンのみならず USシーンでも活躍しています。

Octavian の代表曲

Lightning

2018年リリースのミックステープ『SPACEMAN』収録。人気サッカーゲーム『FIFA 19』のサウンドトラックにも収録され話題となりました。

Bet (feat. Skepta & Michael Phantom)

2019年リリースのミックステープ『Endorphins』収録。洗練されたミニマムなトラップビートと癖になるフロウが印象的な1曲です。

2. Dave

Dave こと David Orobosa Omoregie はサウスロンドンはストリータム出身の21歳 (’98年生まれ)。Stormzy や Lana Del Rey、Pink Floyd など様々なジャンルの音楽を聴いて育ったという彼は、母親からのプレセントをきっかけにピアノを弾くこともできます。彼は2019年リリースのデビューアルバム『PSYCHODRAMA』でマーキュリー賞を受賞するなど、今最も注目されているアーティストの1人です。

Tuesday, 23rd of January, 2018
2018年1月23日火曜日
I’m here with David
私は Dave とここにいる
This is our first session
これが我々の最初のセッションだ
We’re just gonna talk about your background
君のバックグラウンドの話から始めるとしよう
Where you’re from, any issues you’ve been dealing with
君がどこから来たのか、どんな問題に対処してきたのか
So, where should we start?
さあ、どこから始めようか

演劇の枠組みと技法を用いた心理療法を指す『PSYCHODRAMA』というアルバムタイトルの通り、1曲目『Psycho』はセラピストのセリフで始まります。心に不安を抱える彼はまさに同アルバムを通して PSYCHODRAMA を試みているのです。この彼のデビュー作は、コンセプトはもちろんのこと、ストーリー性、トラック、ワードプレイなど全てにおいて申し分のない仕上がりとなっています。

Dave の代表曲

Location (feat. Burna Boy)

ナイジェリアのレゲエ/ダンスホール・シンガー Burna Boy を客演に迎え、ラッパーとして成功してからの生活について歌った1曲。ラッパーお得意のフレックス (自慢) を中心としたありがちな内容ですが、彼は巧妙なワードプレイで魅了します。

Look, money like the alphabet
見ろ、金はアルファベットのようだ
If you wanna see P’s, gotta pass on the ends
金が欲しいなら最後までやり抜かなければならない


※P (Paper, Poundsを指す) は金を表すイギリスのスラング。

「P (金) が欲しいなら最後までやり抜かなければならない」「アルファベットの「P」は「N」(ends を「エヌ」と発音している) を通り越さないと現れない」という2つの意味を掛けたワードプレイ。意味をしっかり通してストーリーを進めつつ、随所にハイレベルなワードプレイを織りまぜるという、彼の類い稀なリリシズムが存分に発揮された作品です。

3. Lancey Fouxx

Lancey Foux (本名不詳) は、イーストロンドンはニューアム出身の24歳 (’95年生まれ)。彼は、Future や Young Thug ら USラッパーからの影響を強く感じさせる、オートチューンを効かせて歌うラップスタイルを得意とします。Playboi Carti のベイビーボイスに近いようなフロウも取り入れており、US と UKのシーンの架け橋的存在に成りうるラッパーです。Travis Scott のニューシングル『FRANCHISE』のリミックスへの参加も噂されており、今後彼の名前を耳にする機会は間違いなく増えるでしょう。

また彼は、A-Cold-Wall* や Astrid Andersen などイギリス発祥のファッションブランドのランウェイモデルを務めるなど、ビジュアル面でも注目されています。

A-Cold-Wall*’s National Gallery (AW18) Collection
Astrid Andersen 2019 Fall Collection

Lancey Foux の代表曲

No Intro

Skepta『I’m There』の一節を引用した「No introduction needed, I’m a genius」というラインから始まる『No Intro』。程良く不思議なトラックと、中盤のダミ声フロウが癖になる1曲です。

India

Playboi Carti『Foreign』のメロディを逆再生したビートを用いた『India』。キャッチーなフロウはもちろんのこと、シンプル且つ真理をついたフックにも注目です。

4. slowthai

slowthai こと Tyron Kaymone Frampton はノーサンプトン出身の24歳 (’94年生まれ)。彼は、3歳の頃に父親が失踪してから、母親と四人の姉妹とともに生活していました。彼には弟もいたのですが、筋ジストロフィーを患いわずか1歳で息を引き取っています。この出来事は彼の人生に大きな影響を及ぼしたといいます。いわゆる労働者階級に属していた slowthai は、大学卒業後一時は働いていましたが、勤め先の売上金を友人らに横流ししたことで解雇されました。高校時代から音楽技術を学び、音楽制作に夢中になっていた彼は、この解雇をきっかけに本格的に音楽活動に取り組むようになります。

UKグライム、UKガラージを軸にしたデビューアルバム『Nothing Great About Britain』では、労働者階級出身の彼の目線から見たイギリス像が描写されており、各方面から高い評価を得ました。

slowthai の代表曲

Inglorious (feat. Skepta)

デビューアルバム『Nothing Great About Britain』収録の『Inglorious』。Stanley Kubrick の名作『時計じかけのオレンジ』をオマージュしたミュージックビデオでも話題となりました。

同ミュージックビデオでは、映画『時計じかけのオレンジ』の「ルドヴィコ療法」(洗脳に近い治療法) の実行シーンを再現しています。この治療を受ける slowthai は「GRATE BRITAIN (素晴らしいイギリス)」というワードを見続けることによって洗脳されるのですが、彼にとっての「GRATE BRITAIN」とは「ルドヴィコ療法のような洗脳を行う者がいない国」であったため、治療を施した人物を殺してしまうという皮肉の効いたストーリーです。

5. Little Simz

Little Simz こと Simbiatu Abisola Abiola Ajikawo はナイジェリアにルーツを持つノースロンドンはイズリントン出身の25歳 (’95年生まれ)。アフロビート、レゲエ、ヒップホップ、UKガラージなど様々なジャンルを聴いて育った彼女は、15歳の頃に初めて自身のミックステープをリリースします。Kendrick Lamar も絶賛するほどの非凡な音楽的才能を兼ね備えた彼女は、ヒップホップからジャズ、ファンク、アフロビート、レゲエ、グライムなど様々なトラックの上でスキルフルなラップを披露します。彼女自身も「自分をフィメールラッパーだと思っていない」と語るように、これまで存在してきた「フィメールラッパー」という括りには収まらない実力の持ち主です。

Little Simz の代表曲

Selfish (feat. Cleo Sol)

最新アルバム『Grey Area』収録の『Selfish』。「Selfish」とは「自分勝手、わがまま」という意味ですが、彼女曰く同曲では「自分を大切に」という意味で用いているそうです。ジャジーなトラックと彼女の表現力が魅力的な1曲です。

Written by Riku Hirai

21 Savage & Metro Boomin – アトランタが誇るトラップ最高峰タッグ

今週金曜日にジョイント・アルバム『Savage Mode Ⅱ』のリリースを控える 21 Savage と Metro Boomin。世界中のヒップホップファンが待望する同アルバムのリリースに先立って、彼らのキャリアや魅力について振り返っておきましょう。

21 Savage

1992年10月22日にイギリスのロンドンで生を受けた 21 Savage (21サヴェージ) こと Shéyaa Bin Abraham-Joseph は、7歳の頃に母親と共にアメリカのジョージア州アトランタに移り住みます。2005年には故郷ロンドンに1ヶ月程滞在、その後アメリカに再入国し、以降はアメリカで生活していた彼ですが、当時取得していたビザはアメリカ入国後約1ヶ月で期限が切れており、2019年に不法滞在の疑いで逮捕されるという事件もありました。

逮捕時のマグショット (2019)

7th grade (日本の中学1年生にあたる) の頃には、21 Savage は銃の所持で地域中の全ての学校から永久追放を言い渡され、ギャングの世界に足を踏み入れることとなります。ドラッグディールや強盗など非行を繰り返していた彼は、2013年に敵対するギャングメンバーから銃撃を受け、親友を失いました (彼自身も6発の銃弾を浴び、当時は死も覚悟したそうです)。この日が彼の21歳の誕生日であったことが、彼の名前 21 Savage の由来です。

親友の死を受けてラップを始めた 21 Savage は、2015年にデビューミックステープ『The Slaughter Tape』をリリース。タイトルからも察しがつくように、アトランタのトラップとシカゴのドリルをミックスしたかのような暴力的なサウンドとリリックが話題を呼び、Sonny Digital や Metro Boomin といった大物プロデューサーと繋がります。

同年には、Sonny Digital とのジョイントEP『Free Guwop』とセカンド・ミックステープ『Slaughter King』をリリースしました。

キャリア開始以降コンスタントに楽曲をリリースしてきた 21 Savage は、2016年、XXL Freshman Class に選出されます。

XXL 史上最も高い人気を博す同サイファーで一躍注目を浴びた 21 Savage は、同年 Metro Boomin とのジョイントEP『Savage Mode』をリリースします。

このEPで成功を収めた彼は、2017年に Epic Records とサインし、デビューアルバム『Issa Album』をリリース。同アルバムは US Billboard チャートにて2位デビューを飾り、更にその後リリースされた Post Malone との楽曲『Rockstar』は Billboard Hot 100 にて最高1位を記録しました。

同年末には Offset、Metro Boomin とのコラボ・アルバム『Without Warning』をリリース。

翌2018年末には Travis Scott や Childish Gambino、Post Malone らをはじめとする豪華ゲストを客演に招いたセカンド・アルバム『I Am > I Was』をリリース。初週13万1千ユニットを売り上げ、見事 US Billboard チャート1位デビューを飾った同アルバムは、2020 Grammy Awards のベスト・ラップアルバムにもノミネートされました。

Metro Boomin

1993年9月16日にミズーリ州セントルイスで生を受けた Metro Boomin (メトロブーミン) こと Leland Tyler Wayne は、母親にパソコンを買ってもらったことをきっかけに、13歳の頃にトラックメイクを始めます。高校生の頃には、FL Studio の前身である FruityLoops を用いて、毎日5つものビートを制作していたそうです。Twitter をはじめとする SNS を用いてラッパーとのコネクションを築き始めた彼は、実際に彼らと仕事をするために、母親に地元セントルイスからジョージア州アトランタ (車で片道約8時間) まで頻繁に送ってもらっていたといいます。

Metro Boomin 曰く、最初に彼のビートを使ってラップをした有名なアーティストは OJ Da Juiceman だそうです。彼はこのコネクションをきっかけに、高校3年生の頃には Gucci Mane と繋がり、高校卒業後にはアトランタに移りました。アトランタに移住後、彼はカレッジに進学するものの音楽活動に専念するために1セメスターで退学。その後、Jeezy や French Montana、Ludacris、Future など名だたる著名アーティストとのコラボを果たした彼は、2013年に Gucci Mane や Future、Young Thug らを客演に招いたデビュー・ミックステープ『19 & Boomin』をリリース。

その後 Future の楽曲を多数手掛けるようになった Metro Boomin は、2015年には Drake と Future のジョイント・ミックステープ『What a Time to Be Alive』のエグゼクティブ・プロデュースを務めるなど、一躍大物プロデューサーの仲間入りを果たしました。

2016年には、Future の『Low Life (feat. The Weeknd)』や Migos の『Bad and Boujee (feat. Lil Uzi Vert)』、Kanye West の『Father Stretch My Hands, Pt. 1』など、数々のヒット曲を生んだ Metro Boomin は、21 Savage とのジョイントEP『Savage Mode』もリリースし、BET Hip Hop Awards にて最優秀プロデューサー賞を受賞しました。

2017年には、NAV との『Perfect Timing』、21 Savage & Offset との『Without Warning』、Big Sean との『Double Or Nothing』の3つのコラボ・プロジェクトをリリース。

飛ぶ鳥を落とす勢いでシーンのトップに駆け上がってきた Metro Boomin ですが、2018年、彼はSNSにて音楽活動の引退を表明します。

しかしその数ヶ月後、Nicki Minaj や Lil Wayne のニューアルバムに参加し、更には自身のソロデビュー・アルバム『NOT ALL HEROES WEAR CAPES』をリリース。同作は見事 US Billboard チャート1位デビューを飾りました。

  • Metro Boomin のプロデューサー・タグ一覧
  • Ayy, Lil Metro on that beat (by Kodak Black)
  • If Young Metro don’t trust you, I’m gon’ shoot you (by Future)
  • Metro (by Young Thug)
  • Metro be boomin’ (by Rich the Kid)
  • Metro Boomin want some more, n***a (by Young Thug)
  • This beat is so, so Metro (by Young Thug)
  • Young Metro, Young Metro, Young Metro (by Future)

21 Savage と Metro Boomin の共演楽曲

ここからは、21 Savage と Metro Boomin の共演楽曲を数曲ご紹介します。今週末の『Savage Mode Ⅱ』のリリースに備えて、今一度彼らの過去作を振り返ってみましょう。

21 Savage – Drip (prod by TM88 & Metro Boomin)

I’m in the kitchen cooking crack like its bacon, 

キッチンでベーコンみたいにクラック (コカイン) を調理している

these p***y ass rappers they be faking

あいつらクソ共はフェイクだ

I’m 21 Savage ain’t no faking,

俺は 21 Savage、本物だぜ

AK-47 get the shaking

AK-47 が身震いしている

2人の初期コラボ曲。21 Savage は現在のスタイルより高めのトーンでラップし、TM88 と Metro Boomin が手掛けるシンプルかつ不穏なビートが 21 Savage のラップの緊張感を助長しています。

21 Savage – Supply (prod by Metro Boomin, Southside & Sonny Digital)

I am 21, young savage

俺は21歳 若い「savage (野蛮、冷酷)」だ

Try me, and you’re going to hell

かかってこいよ 地獄行きだぜ

気怠そうな声で淡々とラップするイメージのある彼ですが、この楽曲では高めの声や変則的なフロウを用いており、Metro Boomin を含む人気プロデューサー3人が手掛ける邪悪なビートと 21 Savage の遊びのあるラップが上手くマッチした1曲です。

21 Savage – Deserve (prod by Metro Boomin)

Me and Johny tried to rob everything

Johny と一緒に全てを盗もうとしていた (*1)

Mookie tried to tell us, do the right thing

Mookie は俺たちに「正しいことをしろ」って言ってたんだ

Larry died man I cried twice

Larry が死んだ時、2回泣いた

(中略)

RIP Tayman that’s why I got that knife

Tayman、安らかに眠ってくれ 俺もナイフのタトゥーを入れたよ (*2)

I don’t get excited about the fame

名声なんてどうだっていい

B***h I’m still with the same gang,

俺は今でも同じギャング (ブラッズ) に所属している

b***h I still claim the same thing

今でも俺の主張はあの頃のままだ

(*1) 21 Savage の親友 Johny は、この強盗の最中に銃撃を受け亡くなった。

(*2) Tayman は 21 Savage の実の弟。21 Savage の額のダガー (ナイフ) のタトゥーは、ドラッグディール中に銃殺された Tayman の額に入っていたもの。

弟や友人を失った悲しい過去を歌った1曲。Metro Boomin の感傷的なビートに乗る 21 Savage の泣き声に近いラップから、彼が生きてきたストリートライフの過酷さが鮮明に伝わってきます。

21 Savage & Metro Boomin – No Heart

You was with your friends playin’ Nintendo

お前が友達と任天堂 (のゲーム) で遊んでいる間

I was playin’ ’round with that fire

俺は銃を持って遊びまわってた

Seventh grade, I got caught with a pistol

1の頃にはピストル所持で捕まって

Sent me to Panthersville

青少年施設に送られた

Eighth grade, started playin’ football

2の頃にはフットボールを始めたけど

Then I was like fuck the field

すぐ辞めたよ

Ninth grade, I was knocking n***as out

3の頃には野郎をぶっ倒した

N***a like Holyfield

Holyfield みたいにな (*1)

(*1) Evander Holyfield : アラバマ州出身のプロボクサー

Metro Boomin、Southside、CuBeatz の3人が手掛けるシンプル且つダークなサウンドの上で、21 Savage が持ち前の低い声で緊張感のあるラップを披露します。ストリートのリアルを歌う、まさに「No Heart」なリリックも特徴的な1曲です。

21 Savage – Bank Account (prod by Metro Boomin & 21 Savage)

I got 1-2-3-4-5-6-7-8 M’s in my bank account

俺の銀行口座には 1-2-3-4-5-6-7-800万ドル入ってる

数え歌的フックが耳に残る1曲。Coleridge-Taylor Perkinson の『Flashbulbs』という楽曲のギターリフをサンプリングした Metro Boomin のダークなビートと、21 Savage の淡々としつつもキャッチーなラップが特徴的な同曲は、Billboard Hot 100 にて最高12位を記録。彼らの抜群の相性を更に世間に知らしめるきっかけとなった1曲です。

21 Savage, Offset & Travis Scott – Ghostface Killers (feat. Travis Scott)

I got AK, SK, HK, broad day

白昼堂々と銃を持ち歩いている (*1)

You a fuckboy, we ain’t with the horseplay

お前はクソだ 俺たちはふざけた真似はしないぜ

Shrimp-ass n***a, did you do your chores today?

ダサいお前ら、今日の雑用は済ませたか?

Do you wanna take a ride with the coroner today?

お前らは今日死にたいのか? (*2)

(*1) それぞれ銃の名称。AK = AK-47、SK = SKS、HK = MP5 や G36 などの Heckler & Koch 社製の銃。

(*2) Coroner は「検死官」の意。つまり「検死官と共に車に乗る」ことは「死」を意味する。

Metro Boomin らしい重厚でダークなビートの上で、Offset、21 Savage、Travis Scott という豪華メンバーが順番にヴァースを披露する1曲。圧倒的な迫力を誇る同曲を収録した 21 Savage、Offset、Metro Boomin によるコラボ・アルバム『Without Warning』は、US Billboard チャートにて初週4位デビューを飾りました。

Metro Boomin – Don’t Come Out the House (feat. 21 Savage)

Bang outside, I hang outside

外では銃撃 俺は行くぜ

Don’t come out the house ’cause the gang outside

家から出るんじゃねえぞ ギャングがいるからな

21 Savage が敵対するギャングに対して威圧的なラップをする1曲。イントロが終わり1ヴァース目に突入するタイミングで、Metro Boomin のビートが重厚なサウンドに切り替わり、それと同時に 21 Savage の緊迫感漂うウィスパー (囁き声) フロウが繰り出されます。サウンド、リリック共に圧倒的な緊張感が漂う、2人の相性が抜群に発揮された1曲です。

おわりに

トラップシーン最高峰タッグとの呼び声も高い 21 Savage と Metro Boomin の抜群の相性、ご堪能いただけたでしょうか。

今週末にリリースを控える 21 Savage と Metro Boomin によるニューアルバム『Savage Mode Ⅱ』のカバーアート

Cash Money や No Limit など、Pen & Pixel 作品を彷彿とさせる『Savage Mode Ⅱ』のカバーアートには賛否両論あるようですが、同アルバムも2000年代の名盤と並ぶ、もしくはそれらを超えてくるような歴史的な1枚になること間違いなしでしょう。

Written by Riku Hirai

TyFontaine – Internet Money が誇る期待の新星

先月リリースされた Internet Money のニューアルバム『B4 The Storm』に参加し、近頃ますます注目を浴びている新人ラッパー TyFontaine。今回は、そんな若手注目株の生い立ちやキャリア、魅力に迫ります。

生い立ち

TyFontaine (タイフォンテイン) こと Julius Terell は、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.で生まれ育ちました。

My household was pretty normal. 

俺の家庭は至って普通だったよ

My mom’s a dentist, my dad’s a lawyer. I was the only child.

歯科医の母と法律家の父がいて、俺は1人っ子だった

I got kicked out of school a couple times. Played sports. 

何度も学校から追い出されたよ あとはスポーツ (ラクロス) もしていた

I was a kid doing kid stuff, doing hoodrat shit with my friends. 

俺はやんちゃなガキだった 友人とくだらないことばっかりしていたんだ

本人は「普通」と語るものの比較的裕福な家庭で育った TyFontaine は、高校生の頃はスニーカーショップで働いていたそうです。


TyFontaine が働いていたスニーカーショップ「Kickk Spott DC」(現在は閉店済み)

このスニーカーショップは多くの NBA プレーヤーやラッパーが訪れる人気店で、店の裏にレコーディングスタジオを設けており、TyFontaine はその環境に刺激を受けてラップを始める決意をしたそうです。

キャリアの開始 (2018~2019年)

幼い頃は、R&B (Mary J. Blige、Neyo、Usher) やゴスペル (Marvin Sapp)、またバハマ出身の母親の影響でカリプソ (カリブ海の民族音楽) を主に聴いていたという TyFontaine は、5th Grade (日本の小学5年生にあたる) の頃にヒップホップを聴き始めたそうで、彼が初めて聴いたラッパーは、Lil Wayne だったそうです。

彼は、前述したスニーカーショップのスタジオにて Q Da Fool がセッションしている場面を目撃し、「自分にもできる」と確信したといいます。

When I started, I knew that it was possible. 

ラップを始めたとき、俺にもできるって分かった

(中略)

I thought “if they could do it, I could do it” type of thing.

「彼らにできるなら俺にもできる」って思ったんだ

彼は、2018年3月に Tyler Fontaine 名義でラップを始めました。

Tyler Fontaine – Precision (feat. Nuge)

シングルやミックステープ、Clockwork-Productions から公開したミュージック・ビデオなどで頭角を現した彼は、2018年10月に、Taz Taylor 率いる Internet Money Records と契約を結びます。

その後も No Jumper からミュージック・ビデオを公開したり、立て続けにミックステープをリリースしたりと精力的に音楽活動に取り組んでいた彼は、2019年リリースのミックステープ『Waiting on Ascention』や EP『Virtual World』で更に注目を浴びることとなります。

ミックステープ『Waiting on Ascention』

Internet Money の Nick Mira や DT、JRHitmaker らがプロデュースを手掛けたミックステープ。

EP『Virtual World』

Taz Taylor、Nick Mira のエグゼクティブ・プロデュースに加え、Jetsonmade や 10k.Caash らも参加した EP。

自身の音楽性を「versatile, carefree, easy-going (多才で、楽天的で、陽気)」と表現する彼の楽曲の特徴は、Juice WRLDLil Uzi Vert らの魅力を凝縮したようなメロディアスでエモーショナルなフロウです。彼は、いわゆる「エモラップ」に分類される他のラッパーよりもポップで明るいメロディラインと歌唱スタイルを用いており、どんなトラックも自分のものにしてしまう力を持っています。

更なる躍進 (2020年~)

そんな彼は2020年4月、Taz Taylor、Nick Mira を中心に、Jetsonmade や PVLACE、Bugz Ronin ら人気プロデューサー陣を起用したミックステープ『1800』をリリースします。

12曲目の『Moments』では、80年代シンセウェイブ的なトラックを用いて持ち前のハイピッチフロウを披露しており、The Weeknd と Playboi Carti のスタイルをミックスしたかのようなサウンドを楽しむことができます。

Moments

2020年8月には、自身が所属するレーベル Internet Money の1stアルバム『B4 The Storm』に4曲で参加し、Cochise や 24kGoldn、TheHxliday らとの共演も果たしました。

Internet Money のアルバムでの活躍により一層注目を浴び始めた彼は、本日10月16日、Lil Keed や Coi Leray、The Hxliday らを客演に招いたニュープロジェクト『We Ain’t The Same』をリリースしました。

今後、デビューアルバム『Beautiful Michi Girl』のリリースも控えており、ますます活躍するであろう期待の新星 TyFontaine から目が離せません。

Written by Riku Hirai

Cardi B が Offset のどこに惹かれるのかを明かす

Megan Thee Stallion を客演に呼んだ一曲『WAP』が大ヒットを記録している Cardi B。

そんな彼女が パートナーである Offset のどこに惹かれるかを Twitter 上で明かした。以下がそのツイートの翻訳である。

これは変に思われるかも知れないけど、私が彼に惹かれるポイントの一つが彼が数学がとても得意な所なの。それが私にはとてもセクシーに思えるの。

幾度の破局を乗り越え、ビッグパートナーへと成長した二人だが、Offset が数学を得意としていることも二人の良好な関係に寄与しているのだろう。

Jack Harlow が「最も賢い人間は Lil Keed だ」と発言

『What’s Poppin』の大ヒットで一躍その名を世界に知らせた Jack Harlow。

「XXL FRESHMAN CLASS 2020」にも選出され、XXL 主催のフリースタイルも本日公開された。

そんな彼が、XXL の企画「ABCs」にて、「最も賢いラッパーは Lil Keedだ」と、Lil Keed にリスペクトを送った。

スキルフルかつキャッチーなスタイルで瞬く間にファン層を広げる彼からは、今後も目が離せない。

Lil Uzi Vert が8月28日にバーチャルコンサートを開催

現在、コロナウイルスのパンデミックにより様々なメディアでバーチャルコンサートが配信されている。

そんな中、今年『Eternal Atake』をリリースした Lil Uzi Vert が Live Nation でライブ配信型のバーチャルコンサートを開くことが正式に発表された。

https://twitter.com/livenation/status/1296105033813987328?s=21

ちなみに、このライブストリーミングを視聴するには15ドル(約1585円)を支払う必要がある。

Lil Uzi Vert の初バーチャルライブであり、開始予定時間は来週の金曜(8月28日)の午前8時となっている。

Frank Ocean と冨田勲 – Ocean に影響を与えた一人の日本人

But there’s no erasing

意味のないことなんてないんだよ

Frank Ocean – Dust

Frank Ocean に影響を与えたのは Prince や Kanye West であるという話はをよく耳にします。しかし、Ocean に影響を与えたのは R&B や Hip-Hop だけではありません。Ocean は「現代音楽」にもかなり影響を受けているのです。

現代音楽とは、20世紀中盤以降から使われるようになった言葉で、クラシックのジャンルのことを指しています。その音楽性に絶対的な共通性はないものの、無音への傾倒や、不協和音の多用などが傾向として挙げられます。

そして、影響を受けたというその根拠は Ocean の指揮する無料配布マガジン『Boys Don’t Cry』に掲載されている「Frank Ocean の好きな曲50選」の中にあります。この中には、たった一曲だけ日本人の名前が記されているのです。それは、日本が誇る作曲家 / シンセサイザー奏者でもあり、現代音楽のアーティストとも言える 冨田勲 氏です。今日はそんな一人の日本人とオーシャンのサウンドの連関を探るべく、一つの記事を書いていきます。

前半は「みんな知らない Frank Ocean」というのをテーマに、 Wikipadia には掲載されていない Ocean のトリビアルな情報をまとめ、後半に冨田勲が与えた影響について考察するという構成となっています(この記事ではセクシュアリティへの考慮から、Frank Ocean については三人称を使わずに記事を進めさせていただきます)。

Frank Oceanとは

もはや説明不要と言っても過言ではないほど、現代の音楽シーンを語る上での最重要人物となっている Frank Ocean(以下、Ocean)。Ocean については Wikipedia などで詳しく載っているので、今日は皆さんがあまり知らない Ocean の素性をまとめてみます。

Ocean はルイジアナ州ニューオーリンズ出身の 32才のアーティストで、Tyler, The Creator 率いる Odd Future のメンバーとしても広く知られています。(Odd Future は現在実質解散した状態にあります。)

『Nostalgia, Ultra』

Ocean は2011 年に発表したデビューミックステープ『Nostalgia, Ultra』にて、様々な方面から圧倒的な評価を受け、衆人環視の的となりました。

『Nostalgia, Ultra』

では、このアルバム『Nostalgia, Ultra』の中でも伝説となっている一曲について紹介いたします。それは、このテープの 12曲目『American Wedding』です。

『American Wedding』

お分かりの方もいらっしゃると思いますが、これは70年代にアメリカを賑わした伝説的バンド Eagles の『Hotel California』を大胆にサンプリングした楽曲です。

今や音楽の教科書にも掲載されている伝説の曲を現代版のリリックへと落とし込んだ『American Wedding』は、メロディーを差し替えたフックの歌唱や、アウトロでのカリフォルニア出身のグラミー賞受賞プロデューサー/ シンガーである James Fauntleroy による教訓的な独白など、このミックステープの中でも重要なポジションを担う楽曲でした。

『American Wedding』- Live Version

このミックステープは無料で配ったフィジカルなものにも関わらず、ある人物が「この曲は著作権侵害だ」と主張しました。それは原曲の張本人、 Eagles のボーカリスト Don Henley でした。彼は起訴することさえちらつかせ、Ocean を「傲慢で、才能がない人間だ」と言い、「次にライブで『American Wedding』を披露すれば訴える」という事態にまで発展しました。

このことに対して、Ocean はこう答えました。

この男はクソな金持ちか? 新入りを訴えてどうするつもりだ?

あの曲で金は少しも稼いでなんかない。無料でリリースしたんだよ。

というかむしろ、彼に敬意を払ってたんだけどな。

確かにこのアルバムは無料で配られたフィジカル作品なので、Don Henley の主張は現代のサンプリング文化全体への否定のような気もします(ちなみに彼は Kanye West も批判しています)。

『Channel Orange』

その後、第二作『Channel Orange』では名声を欲しいままにします。グラミー賞でも、主要3部門を含む6部門にノミネートされ、記念すべき第一回目の「アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞」と「ラップ/サング・コラボレーション賞」を受賞します。

『Channel Orange』

少し余談を挟みますが、このアーバン「Urban」とは主にアフリカ発祥の音楽を指す言葉であり、差別用語としてグラミー賞が名前を「Progressive R&B」に変更することが今年発表されました。

このアルバムの中からは、少々想世界的なテーマが描かれた楽曲『Pyramids』をご紹介いたします。特徴ある音が折り重なり、それぞれの色を残しながらも完璧なバランスで配置され、全体として完璧な一色の世界ができているような感覚を与えてくれる一曲です。また転調後に全く別の曲調に変化するところも魅力的です。

『Pyramids』

『Blonde』

そして2作目のスタジオアルバム『Blonde』をリリースするとたちまち全米チャート1位を記録するほどバイラルヒットします。

このアルバムの発売に伴い、8月20日にロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、ロンドンで雑誌『Boys Don’t Cry』のポップアップストアがオープンしました。この雑誌にはフィジカル盤の『Blonde』が付録としてついており、デジタル盤とは全く違った構成や楽曲が収録されています。

ここで、もう一つ皆さんが知らないかもしれない衝撃の事実をご紹介いたします。実はこのフィジカル盤の『Nikes』に限って、 KOHH と LOOTA が客演参加しているのです。

『Nikes』ft.KOHH & LOOTA

Frank Ocean と映画

フリッツ・ラング 『メトロポリス』

そして、Ocean はかなりの映画好き(シネフィル)です。そもそも、Frank Ocean という名前の由来も映画『Ocean’s Eleven』(オーシャンと11人の仲間)のタイトル(Ocean)と、そこで主演を務めた、ポップ音楽における最重要のアーティスト/ジャズシンガーの一人である Frank Sinatra の名前を掛け合わせたものなのです。(ちなみに Ocean は Frank Sinatra を最も影響を受けたアーティストの一人だと言っています)

少し映画について触れるならば、XXL Magazine のインタビューで答えた彼の大好きな映画リストから、そのシネフィルぶりを感じとることもできます。

リストには、無声映画期の作品(シュールレアリズムで知られるルイス・ブニュエル作品や、モンタージュ理論の生みの親・エイゼンシュテインの作品、詩人や古劇映画の活動で知られるジャン・コクトーの作品など)から、現代映画の巨匠の作品群(リンチやキューブリック、深作欣二や北野武、ヴィム・ヴェンダースの作品など)まで、Ocean の嗜好が広範囲に渡っていることが読み取れます。

『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(1972) – ルイス・ブニュエル

さらに、選ぶ作品が大作からコアなものにまでわたっており、そのシネフィルぶりは一目瞭然です(少し意外だったのはフランク・シナトラの因縁の相手、ロマン・ポランスキー監督をランクインさせていることですが)。

Frank Ocean とセクシュアリティ

2012年7月4日、Ocean は『Channel Orange』のライナーノーツを兼ねた文章を自身の Tumblr に投稿し、初恋の相手が男性だったことを明かしました。この行動は、マチズムを当然視している南米ルーツの音楽ジャンルに一石を投じました。

Tyler, The Creator や Jaden Smith を始め、様々なアーティストがカミングアウトを堂々とするようになったのも、Ocean の勇気ある行動を契機としているといっても間違いありません。ちなみに、Ocean 自身がカミングアウトを行う勇気が出たのは、音楽的にも最も影響を受けたアーティストの一人である Prince のおかげだと言っています。

Prince が、「性の役割」という古臭い考えを相手にせず、自由に行動してくれたからこそ、自分のセクシュアリティをナチュラルに受け止めることができたんだ。

ちなみに Prince は今となっては伝説的なアーティストであることは間違いありませんが、今から 30 年以上前に、テレビの番組にビキニとヒールを纏って出演したこともあったりと、表舞台でセクシュアリティを公表した黒人としてもその功績を称えずにはいられません。

ここまでが「みんなの知らない Frank Ocean」でした。では次に Ocean の音楽の源流について考察していきます。

Frank Ocean の音と冨田勲による影響

冒頭で説明した通り、Ocean は自分に影響を与えた50曲の中で、一人だけ日本人を選出しており、それが冨田 勲氏なのですが彼は一体どういう人物なのでしょうか。

冨田 勲は1932年4月22日に東京都杉並区で生まれ、父親の冨田 清が当時紡績会社であった鐘紡の嘱託医であったため幼い頃から転勤が多く、中国で幼少期を過ごすなど、安定しない子供時代を経験しました。

慶應義塾高等部に編入してからは友人と協力しながら独学で音楽を学び、慶應義塾大学に入学してからは美術史を学ぶ傍、音楽理論の授業にも積極的に出席していました。大学2年になり、朝日新聞社主催のコンクールの課題曲に応募した合唱曲『風車』がコンクールを獲り、これにより作曲家になる意志を固め、在学中からNHKの音楽番組の仕事をするなど、作曲活動に従事し始めました。

そして冨田氏について特筆すべきことは、彼は日本にシンセサイザーを持ち込んだ張本人であることです。彼はそのあまりの持ち込みの早さから、怪しい機材と疑われ、関税にシンセサイザーを何ヶ月も止められていたという伝説まであるほどです。

また、彼の極めて精巧に作り上げた独自のサウンドは、日本ではクラシックと扱うか、ポピュラー音楽と扱うか分からないため、日本の音楽業界に売り込みを拒否されました。その後、アメリカでクラシック音楽としてチャートにランクインして大ヒットしたのちに日本に逆輸入されました。

冨田 勲『月の光』

幻想的な響きの中に優しい振動を染み込ませ、立体的に構成された波のようなサウンドはクラシック音楽にとどまらず、大衆音楽にまで多大な影響を与えるなど、冨田氏は日本の現代音楽の先駆者とも言えるアーティストなのです。

そして彼の助手としてその音楽的影響を強く受けたアーティストに松武秀樹がいます。彼はのちに YMO(Yellow Magic Orchestra)の第四のメンバーとしてシンセサイザー・マニピュレーターとして活躍することになります。

またこの記事の主題でもある Ocean が彼から多大な影響を受けているという主張の根拠としては、三点をあげておきます。それは「環境(アンビエント)音楽」「サンプリング」「声のインスト化」です。これらの単語を見ただけではまだはっきりしないと思うので、説明していきたいと思います。

Ocean と環境音楽

また冨田氏は他の様々な曲の中で環境音を用いることから、アンビエント・ミュージック(環境音楽)の枠内にいると捉えることもできます。

冨田氏のこちらの曲『亜麻色の髪の乙女』では、美しい今日曲調の裏で風の音など様々な環境(アンビエント)音が組み込まれています。

そして、アンビエントと聞いて思い起こされるのがアンビエントR&Bの創始者、Frank Ocean です。環境音楽という観点でも Ocean は冨田勲の影響が少なからずあると思われます。

Ocean とサンプリング

フランスの印象派を代表する作曲家ドビュッシーの変奏曲をまとめたアルバム『月の光』で世間から評価を得た冨田氏ですが、彼のスタイルは原曲のメロディーは留めて置きながらも、あらゆる音の引き出しを次々と開けていき、新たな世界を構築するスタイルであるといえます。

これは Ocean も行ってきた手法であり、先ほど述べた Eagles のサウンドを取り入れた楽曲『American Wedding』にもその傾向を垣間見ることができます。

Ocean と声のインスト化

また Ocean を象徴するインスト化されたように強く歪んだ声も、冨田氏の影響を強く受けていると言えます。「インスト化された声」と言われてもピンとこない方もいらっしゃると思いますので、名だたる評論家たちから大絶賛を受けた Ocean の最高傑作の一つ『Nikes』を聞いてみてください。

Frank Ocean『Nikes』

この元の声の質を極端に歪ませ、極端に機械化(インスト化)させた「声ではない声」こそ「インスト化された声」と捉えることができます。ここに Ocean の凄みが隠されています。とどのつまり、Ocean の声は人間の声のはるか向こう側まで到達し、もはやそれを楽器のように弄びながら緩慢なトラックに溶け込ませているのです。

しかし、この「インスト化された声」については冨田氏から絶対的な影響を受けたということをここで主張しておきます。それは『アラベスク第一番』にて変質した声が含まれている部分を聞けばおわかりいただけると思います。

『アラベスク第一番』

ちょうどこの曲の1分21秒あたりで極端に機械化された人の声を聞くことができます。これはまさに Ocean の使うそれと遜色ないものと言っても過言ではないでしょう。

最後に

今やスーパースターとなった Frank Ocean と、Ocean が影響を受けた日本人、冨田 勲氏との関係について述べてきました。これまでとは違った切り口の Ocean の音楽分析となりましたが、少しは楽しんでいただけましたでしょうか。

そして、昨年から突然シングルを続々とリリースし始めた Ocean ですが、賞をもらうことに何の意味もないと主張していることを考慮すれば、おそらく『DHL』などジャケットの下に描かれている人形の影に応じた曲をシングルとしてこれから出し続けると僕は予想しています。

シークレットな行動が多い Ocean だからこそ今後も目が離せませんが、またいつか Ocean についてまとめた記事も書こうと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

written by Kensho Sakamoto

XXL FRESHMAN CLASS 2020 : 選出された12人のラッパーたち

毎年恒例の注目アーティスト選出企画 XXL FRESHMAN CLASS。本日遂に発表された今年度の選出ラッパー12人についてまとめました。

Polo G

【本名】Taurus Tremani Bartlett

【生年月日】1999年1月6日

【出身地】イリノイ州シカゴ

シカゴ北部の Old Town エリアにて、両親と3人の兄妹とともに生活していた Polo G は、2016年から楽曲制作を開始。幼い頃は、Lil Wayne や 2Pac、Gucci Mane、Lil Durk、Chief Keef らの楽曲を聴いていたという。2018年リリースの『Finer Things』のバイラルヒットをきっかけに、2019年には『Battle Cry』、『Pop Out (feat. Lil Tjay)』と立て続けにヒットを生み出し、それらの楽曲を収録したデビューアルバム『Die a Legend』は US Billboard にて6位デビュー。

2020年には、セカンドアルバム『THE GOAT』をリリースし US Billboard 2位デビューを飾った。

Polo G についての記事はこちらから↓

【代表曲】

Pop Out (feat. Lil Tjay)

https://www.youtube.com/watch?v=g-uW3I_AtDE

Flex (feat. Juice WRLD)

Jack Harlow

【本名】Jackman Thomas Harlow

【生年月日】1998年3月13日

【出身地】ケンタッキー州ルイビル

Jack Harlow は、12歳の頃にノートパソコンとビデオゲーム「Guitar Hero」付属のマイクを用いてラップを始めたそう。キャリア初期は Mr. Harlow 名義で活動しており、友人と共に Moose Gang なるコレクティブも結成していた。

2015年に自身初の EP『The Handsome Harlow』をリリースした後、シングルやミックステープを次々とリリース。2016年頃には多くのメジャーレーベルから契約のオファーを受けるものの全て断っていたそう。

2018年にはジョージア州アトランタに引っ越し、生活費を稼ぐためにカフェで働いていた Harlow は、その数ヶ月後に DJ Drama と Don Cannon 率いる Generation Now と契約を結ぶこととなる。同年、彼はメジャーレーベルからの初のミックステープ『Loose』をリリース。翌2019年にはミックステープ『Confetti』をリリースし、USツアーも開催した。

2020年1月にはシングル『WHATS POPPIN』をリリース。Lyrical Lemonade の Cole Bennett 監修によるミュージック・ビデオが6000万再生を記録し、世界中に一躍名を轟かせた。同年3月には最新プロジェクト『Sweet Action』を、6月には DaBaby、Tory Lanez、Lil Wayne をフィーチャーした『WHATS POPPIN (Remix)』をリリースしている。

【代表曲】

GHOST

WHATS POPPIN (Remix) [feat. DaBaby, Tory Lanez & Lil Wayne]

NLE Choppa

【本名】Bryson Lashun Potts

【生年月日】2002年11月1日

【出身地】テネシー州メンフィス

高校生までバスケットボールに打ち込んでいた NLE Choppa は、14歳の頃にフリースタイル・ラップを始め、15歳の頃から本格的に音楽活動に取り組み始める。この頃、明確な時期や理由は明かされていないが、彼は少年拘置所に拘留されていたそうで、その経験が彼の人生の転機になったという。

2018年、彼は YNR Choppa という名義の元、ファースト・シングル『No Love Anthem』と、デビュー・ミックステープ『No Love the Takeover』をリリース。また、Choppa が所属するコレクティブ Shotta Fam の楽曲『No Chorus Pt.3』での彼の印象的なヴァースとダンスが話題を呼び、一躍名を馳せる。

NLE (No Love Entertainment) Choppa に改名した彼は、2019年にシングル『Shotta Flow』をリリース。同曲のミュージック・ビデオがわずか1ヶ月で1000万再生を記録し、Billboard Hot 100にて96位デビューを果たした。

その後も、シングル『Shotta Flow』シリーズを続々とリリースし、デビュー EP『Cottonwood』をリリース。2020年にはデビューアルバム『Top Shotta』もリリースした。今年のフレッシュマン選出者の中では最年少 (選出時点で17歳) である。

【代表曲】

Shotta Flow

Walk Em Down (feat. Roddy Ricch)

Rod Wave

【本名】Rodarius Marcell Green

【生年月日】1999年8月27日

【出身地】フロリダ州セント・ピーターズバーグ

E-40 や Chingy、Boosie Badazz、Kanye West、Kevin Gates らの音楽を聴いて育ったという Rod Wave は、5th-grade (日本の小学5年生にあたる) の頃に音楽活動を開始した。

高校卒業の年でもあった2017年に初のミックステープ『Rookie of the Year』をリリース。その後、ミックステープ『Hunger Games』シリーズで人気を集め、2019年リリースのデビューアルバム『Ghetto Gospel』は US Billboard 14位デビューを記録した。

更に2020年リリースのセカンドアルバム『Pray 4 Love』は初週で7.2万ユニットを売り上げ、US Billboard 2位デビューを飾った。

【代表曲】

Heart on Ice

Girl of My Dreams

Baby Keem

【本名】Hykeem Jamaal Carter, Jr.

【生年月日】2000年10月22日

【出身地】ネバダ州ラスベガス

Kendrick Lamar の従兄弟としても知られる Baby Keem は、その Kendrick を擁するビッグ・レーベル Top Dawg Entertainment 所属のアーティストの作品に多数クレジットされている。その例として、Kendrick Lamar の『Black Panther: The Album』や Jay Rockの『Redemption』、ScHoolboy Q の『Crash Talk』、Beyoncé の『The Lion King: The Gift』等での、ソングライティングやプロダクションへの参加が挙げられる。

声変わりを待ってからラップを始めたという彼は、2018年に『No Name』と『Hearts & Darts』の2つのEPをリリースしたのち、ミックステープ『The Sound of a Bad Habit』をリリース。その後、2019年にリリースしたシングル『Orange Soda』が2020年にかけてヒットし、US Billboard にて98位を記録した。同曲収録のミックステープ『Die for My Bitch』も多くの音楽メディアやアーティストから称賛を受け、一躍注目を浴びた Keem は、Kendrick Lamar と Dave Free による新企画『pgLang』のイントロ・ビデオにも起用され話題となった。

【代表曲】

ScHoolboy Q – Numb Numb Juice

Orange Soda

Lil Keed

【本名】Raqhid Jevon Render

【生年月日】1998年3月16日

【出身地】ジョージア州アトランタ

学生時代、Subway と McDonalds で働きながら日常的に音楽制作を行なっていた Lil Keed は、親友 Rudy を亡くしたことをきっかけに、実弟である Lil Gotit と共に真剣に音楽活動に取り組み始める。

Young Thug や Peewee Longway、Big Bank Black らに影響を受けたと語る Keed は、2016年に本格的にキャリアを開始し、2018年にデビュー・ミックステープ『Trapped On Cleveland』をリリース。 同テープがストリートヒットし Young Thug の目に留まった彼は、Young Stoner Life Records と契約を結ぶ。同年には『Slime Avenue』、『Trapped on Cleveland 2』、『Keed Talk to ‘Em』の3つのミックステープをリリース。『Keed Talk to ‘Em』にはTrippie Redd や 21 Savage、Lil Yachty、Lil Durk、Brandy ら大物アーティストが多数参加した。

2019年にはデビューアルバム『Long Live Mexico』を、2020年にはセカンドアルバム『Trapped on Cleveland 3』をリリース。ネクスト Young Thug との呼び声も高い若手ラッパーの1人である。

Lil Keed についての記事はこちらから↓

【代表曲】

Nameless

Wavy (feat. Travis Scott)

Mulatto

【本名】Alyssa Michelle Stephens

【生年月日】1998年12月22日

【出身地】ジョージア州アトランタ

オハイオ州コロンバスで生を受けた Mulatto は、2歳の頃にジョージア州アトランタに移住。彼女は10歳の頃にラップを始め、2016年には、若手ラッパーたちが8週間にわたり力を競い合うアメリカのリアリティTVシリーズ『The Rap Game』に参加、見事優勝を果たした。その結果として彼女は So So Def Records との契約権を勝ち取るが、契約金が少ないという理由でこれを断り、インディでの活動を選んだ。同年には Georgia Music Awards にて Youth Hip Hop/R&B Award も受賞した。

2017年頃から EP やミックステープを継続的にリリースしてきた彼女は、2020年に RCA Records と契約を結び、Gucci Mane や NLE Choppa らとの共演も果たした。

【代表曲】

No Panties

Muwop (feat. Gucci Mane)

Calboy

【本名】Calvin Woods

【生年月日】1999年4月3日

【出身地】イリノイ州シカゴ

音楽活動を始める前は絵を描いて過ごしていたという彼は、2015年から Kidd Cal 名義で楽曲を公開し始める。

2017年には初のミックステープ『Anxiety』を、2018年には Paper Gang Inc. からセカンドミックステープ『Calboy the Wild Boy』をリリース。同年、シングル『Envy Me』がダンスチャレンジによりバイラルヒットし、ますます知名度を上げた彼は、Kodak Black のツアーへの参加も果たした。

2019年には、RCA Records と Polo Grounds Music からEP『Wildboy』をリリース。Moneybagg Yo や Lil Durk、Yo Gotti、Polo G、Meek Mill、Young Thug らをフィーチャーした同作は、US Billboard チャートにて最高30位を記録した。Chance the Rapper のアルバムへの参加も果たした彼は、2020年、EP『Long Live the Kings』をリリース。同郷シカゴのラッパー Lil Durk から強く影響を受けた若手ラッパーの1人である。

Calboy についての記事はこちらから↓

【代表曲】

Envy Me

Givenchy Kickin (feat. Lil Baby & Lil Tjay)

CHIKA

【本名】Jane Chika Oranika

【生年月日】1997年3月9日

【出身地】アラバマ州モンゴメリー

CHIKA は幼い頃から音楽の才能を認められ、バークリー音楽大学への進学も認められていたものの、高額な学費を払うことができずサウスアラバマ大学に進学した。

アメリカ大統領選の翌日にアフリカ系アメリカ人としての訴えを Instagram にポストしたり、トランプ支持者として知られる Kanye West を皮肉るフリースタイルラップを披露したりと、政治関連の動きで注目を集めた彼女は、2019年にデビューシングル『No Squares』をリリース。同年夏には Warner Records と契約を結び、さらに2つのシングルを発表した。

2020年には EP『Industry Games』をリリース。彼女は NPR の Tiny Desk Concert にも出演するなど、今最も注目されているアーティストの1人である。

【代表曲】

Can’t Explain It (feat. Charlie Wilson)

CROWN

Fivio Foreign

【本名】Maxie Lee Ryles III

【生年月日】1990年3月29日

【出身地】ニューヨーク州ブルックリン

2011年に Lite Fivio 名義でラップを始めた彼は、2013年に Fivio Foreign に改名し、800 Foreign Side なるコレクティブ を結成。

2019年リリースの EP『Pain and Love』収録の『Big Drip』のバイラルヒットでようやく注目を浴びた彼は、Columbia Records と100万ドル (約1億円) の契約を結んだ。

2020年、EP『800 BC』をリリースした彼は、Drake のアルバムへの参加も果たした。今年のフレッシュマン選出者の中では最年長 (選出時点で30歳) である。

Fivio Foreign についての記事はこちらから↓

【代表曲】

Big Drip

K Lo K (feat. Tory Lanez)

24kGoldn

【本名】Golden Landis Von Jones

【生年月日】2000年11月13日

【出身地】カリフォルニア州サンフランシスコ

カリフォルニア州ロサンゼルスで生を受け、後にサンフランシスコに移住した彼は、2019年にリリースしたシングル『Valentino』のバイラルヒットで一躍ブレイク。彼は、同曲のヒットを受け LLC、Columbia Records と契約を結び、デビュー EP 『Dropped Outta College』をリリース。彼の楽曲『Game on Your Phone』が人気ゲーム『NBA 2K20』のサウンドトラックに選ばれるなど、西海岸出身の注目ラッパーの1人である。

【代表曲】

Valentino

Mood (feat. iann dior)

Lil Tjay

【本名】Tione Jayden Merritt

【生年月日】2001年4月30日

【出身地】ニューヨーク州サウスブロンクス

15歳の頃に強盗罪で逮捕され、服役中にリリックを書き始めたという Lil Tjay は、2017年にデビュー曲『Resume』をリリース。同曲や、その後リリースした『Brothers』がバイラルヒットし、さらに Polo G との楽曲『Pop Out』は US Billboard Hot 100 チャートにて最高11位を記録。

2019年にはデビュー・アルバム『True 2 Myself』(US Billboard 5位デビュー) を、2020年には EP『State of Emergency』をリリースした。

Lil Tjay についての記事はこちらから↓

【代表曲】

F.N

Zoo York (feat. Fivio Foreign & Pop Smoke)

Jetsonmade (ミュージックキュレーター選出)

【本名】Tahj Morgan

【生年月日】不詳

【出身地】サウスカロライナ州コロンビア

サウスカロライナ州コロンビアで生を受けた彼は、2010年 (当時13歳) 頃から Garageband を使い楽曲作りを始め、翌年2011年には本格的にトラックメイクを始める。

21 Savage のミックステープ『Slaughter King』への参加をきっかけに、DJ Drama や Yung Bans ら著名アーティストとの共演を次々と果たし、彼のコラボレーターとしてよく知られる DaBaby の楽曲を手掛けるようになる。DaBaby のデビューアルバム『Baby on Baby』では5曲に参加し、リードシングル『Suge』は US Billboard Hot 100 チャートにて7位を記録。

2019年には、YoungBoy Never Broke Again や Roddy Ricch、Lil Keed、Smokepurpp、Rico Nasty など今をときめくラッパー達とコラボを果たしたり、J. Cole 擁する Dreamville のセッションへの参加、更には前述した『Suge』が Grammy の「Best Rap Song」や BET Awards の「BET Hip Hop Award for Best Single of the Year」にノミネートされるなど、一躍大物プロデューサーの仲間入りを果たした。2020年には、Playboi Carti のシングル『@ MEH』や J. Cole のシングル『Lion King on Ice』の制作にも携わるなど、現行ヒップホップシーンを代表するプロデューサーの1人である。

Jetsonmade についての記事はこちらから↓

【代表曲】

DaBaby – Suge

Playboi Carti – @ MEH

Written by Riku Hirai

中華トラップビート – ヒップホップシーンで異彩を放つ怪ビートたち

ビデオゲームのBGMのようなピコピコトラック、Playboi Carti や Lil Uzi Vert らが得意とする浮遊感のあるトラック、極端に音数が少なくバスドラムが響く重低音トラックなど。トラップミュージックが急速に人気を博して数年たった今、数々のプロデューサーたちが多種多様なトラックを生み出し続けています。

その中でも、ここ数年のヒップホップシーンにおいて一際異彩を放ちながらも、数々のラッパーたちによって使用されているのが「中華トラップビート」です。「中華トラップビート」とは、民族楽器などの独特な音色によるメロディーを主軸として構成されている、中国的なビートのことです。

三弦のような弦楽器や、笙と呼ばれる中国の管楽器などの音色が用いられることが多く、再生ボタンを押した瞬間に中国の繁華街を歩いている気分にさせてくれます。今回は、数あるトラップビートのジャンルの中から、この「中華トラップビート」が用いられている楽曲についてご紹介していこうとおもいます。

流行の発端

中国的な雰囲気を感じられるトラックは、随分前からちらほらと見受けられましたが、やはり流行の発端となったのは、中国出身のヒップホップグループである Higher Brothers の『Made In China』ではないでしょうか。彼らは、中国でヒップホップシーンが盛んになり始めたタイミングで、チャイニーズラップらしい中華ビートを採用した楽曲をリリースしました。Future や Young Thug などとの共演で有名なプロデューサー Richie Souf による中華トラックに加え、シカゴのラッパー である Famous Dex をゲストに招いたことで、チャイニーズスタイルのトラップミュージックが瞬く間に全世界に広がりました。

中国のヒップホップシーンはもちろんのこと、海外からの注目も集めることに成功した彼らは、のちにリリースしたアルバムに ScHoolboy Q や J.I.D、KOHH などを招くことで、さらなる知名度を獲得していきます。そのなかでも、Ski Mask The Slump God と Denzel Curry を招いた楽曲『One Punch Man』は、Ronny J による中華ビートの上で中国語と英語が混同した勢いのあるラップが話題を呼びました。

MV も少林寺拳法をテーマにしたものとなっており、彼らの武器であるチャイニーズラップの独特なスタイルを全面に押し出しています。もちろん、中国的なトラックが流行した要因が100%彼らにあるとは言い難いですが、アジア圏の文化がクールであるという認知を世界中にもたらした点では、間違いなく彼らの存在は大きいのではないかと思われます。

USヒップホップシーンでの事例

本章では、ここ数年でアメリカのヒップホップシーンでもよく耳にするようになった中華トラップビートを採用した楽曲の中から、重要なものを取り上げてご紹介していきます。まずは、ご存知の方も多いと思われるこちらの楽曲から。

Young Thug 率いる Young Stoner Life Records に所属するラッパー Gunna のデビューアルバム『Drip or Drown 2』に収録されている『Who You Foolin』という楽曲です。Wheezy による高級中華料理店のBGMのような中華トラップビートに、Gunna がしっとりと哀愁のあるラップを載せています。

ちなみに、Wheezy がサンプリングしたのは、中国の人気歌手である Tong Li の『童麗』という楽曲です。メロディはそのまま使用されており、Wheezy はドラムスを重ねただけです。しかし、今となっては原曲のYouTube のコメント欄には「Gunna から」「Gunna が俺をここに導いてくれた」など、Gunna リスナーによるコメントしか見当たりません。

ビートこそ中国的ですが、『ギャングスタだって、たまにはハグが必要なんだ』『リアルであれ。ストリートはお前を愛してくれないぜ。』などと切れ味のあるソリッドなラップを披露しており、内容とトラックのミスマッチ感が楽曲をより一層興味深いものにしています。

先ほど『Who You Foolin』が Wheezy によるプロデユースとご紹介いたしましたが、Wheezy は上質な中華トラップビートを制作することに定評があります。最近では、Iann Dior のニュープロジェクト『I’m Gone』に収録され、Lil Baby をゲストに招いた楽曲『Prospect』も、Wheezy にる中華ビートが採用されており、こちらも『Who You Foolin』に似た雰囲気を感じることができます。

次にご紹介するのは、Setitoff83 というノースカロライナのラッパーによる楽曲です。彼は、Rich The Kid が率いるレコードレーベル Rich Forever に所属するヒップホップトリオ 83 Babies のメンバーで、Stunna 4 Vegas などのような勢いのあるオフビート気味のラップを得意とするラッパーです。

中国雑技団の舞台を連想するようなユニークな音色のメロディループが特徴的な一曲です。レコードレーベルのボスである Rich the Kid をゲストに呼んでおり、彼らしいオフビートなスタイルを味わえます。

三弦などの弦楽器の音色をトラックに使用、またはサンプリングすることで中国的な雰囲気を醸し出すパターンが「中華トラップビート」では王道なようです。それでは、弦楽器以外の音色やサウンドを採用した中華ビートの事例についてもみてみましょう。

Polo G の最新作『THE GOAT』に収録されている『Chinatown』という楽曲です。こちらの楽曲に関しては、タイトルから察しがつく通り、もちろん中華ビートが採用されています。チャイナタウンというだけあって、特定の楽器によるメロディラインというよりは、チャイナタウンの街の喧騒のようなサウンドにドラムスを重ねた怪ビートとなっています。

今回のテーマである「中華トラップビート」からは少し外れてしまいますが、一曲だけ他ジャンルからも中華風のものをご紹介いたします。

皆さんご存知の Justin Bieber が2014年にリリースしたアルバム『Purpose』に収録されている『Hit the Ground』という楽曲です。同アルバムには、Travis Scott や Nas、Big Sean などがクレジットされていることもあり、今回の趣旨から大きく逸脱してしまうわけではないので、ご紹介させていただきます。

ダブ・ステップというジャンルを得意とし、ダンスミュージックシーンを牽引し続けているアーティスト Skrillex などによってプロデュースされた一曲で、フックにあたるメロディーバースに中国的なエッセンスが加えられています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は、近年のヒップホップシーンにおいて異彩を放つ『中華トラップビート』に焦点を当てて、その多様性や成り立ちについて考察してきました。今回ご紹介できた楽曲以外にも、中華ビートに該当するものはたくさんありますので、皆さんも中華トラップビートを探してみてはいかがでしょうか。

written by whoiskosuke

Roddy Ricch のニューアルバムが完成していると発覚

今年にリリースされた DaBaby の楽曲『ROCKSTAR』が大ヒットを記録し、昨年から飛ぶ鳥を落とす勢いの Roddy Ricch。

そんな彼が GQ のインタビューにてニューアルバムが完成しているとコメントした。

今すぐニューアルバムをリリースしても良いかな?まあ、しないんだけど。

GQ

このコメントに対して、インタビュアーが「それはまだ準備できていないから?」と質問すると、以下のように答えた。

準備できているか出来ていないかじゃないんだ。タイミングの問題だよ。俺はここぞという時にドロップしたいんだ。次のアルバムは最高の傑作に違いないよ。

クレジットされていれば売れるというレベルにまで到達した Roddy Ricch。彼のアルバムが今年中にリリースされる可能性も十分あるだろう。

今週のリリース【8月9日〜】

Young Dolph – Rich Slave

Burna Boy – Twice As Tall

Dave East – Karma 3

Kaash Paige – Teenage Fever

Black Noi$e – OBLIVION

Jacob Collier – Djesse, Vol. 3

Boldy James & Jay Versace – The Versace Tape

03 Greedo & RONRONTHEPRODUCER – Load It Up, Vol. 01

Lil Mosey – Certified Hitmaker (AVA Leak)

Trav – Nothing Happens Over Night

Tom The Mail Man – Liephas Evil

2FeetBino – A Story Never Told

Ronny J – Jupiter

Kenny Man – Bale Talk 3

Baby Money – Bank Checc

Loveboat Luciano – IBTS 2

Tech N9ne – MORE FEAR (EP)

Guapdad 4000 – Platinum Falcon Returns (EP)

Jordin Sparks – Sounds Like Me (EP)

Coi Leray – Now or Never (EP)

[シングル]

Drake – Laugh Now Cry Later (feat. Lil Durk)

Nas – Ultra Black (feat. Hit-Boy)

Mac Miller – Ayye / Back in the Day

Snoop Dogg – Nipsey Blue

Internet Money & Gunna – Lemonade (feat. NAV & Don Toliver)

YoungBoy Never Broke Again – Kacey Talk

Jaden Smith – Rainbow Bap

EarthGang – Powered Up

Sheff G & Sleepy Hallow – Tip Toe

Rico Nasty – IPHONE

Nines – Clout

Smokepurpp – Said a Lotta Things

T$an – Never Mattered

IDRYS – Lucky Day

They. – All Mine

K suave – Perky97* (feat. Playboi Carti)

Money Mu – Hittin’ (Remix) [feat. Moneybagg Yo & Foogiano]

Buddy – Ain’t Sweet (feat. Matt OX)

Russ – Throne Talks

Adam Show – After Party (feat. Tory Lanez)

Cookiee Kawaii & Tyga – Vibe (If I Back It Up)

YBN Nahmir – I Remember

Blocboy JB – No Dribble Freestyle

Yung Blud & Denzel Curry – Lemonade

Anderson.Paak – Cut Em In(feat. Rick Ross)

Brokeasf – How (feat. 42 Dugg)

Kooly Bros & Young Thug – Risk (Main)

Dee Watkins – Cash App (feat. Jackboy)

ATL Jacob – Tuck Your Heart

Sunny Diamoinds – Mikey Polo (feat. Famous Dex)

Sada Baby – Whole Lotta Choppas

Lil Keed – アトランタが誇る次世代のラップスター

Young Thug 率いる Young Stoner Life Records に所属するジョージア州アトランタ出身の注目ラッパー Lil Keed (リル・キード)。XXL Freshman Class 2020の有力候補の1人であり、本日セカンド・アルバム『Trapped On Cleveland 3』をリリースした彼の生い立ちやキャリア、魅力に迫ります。

生い立ち

I come from the jungle where you don’t survive. 

他の奴らは生き抜くことができないような、ジャングルみたいな場所からやって来たんだ

1998年3月16日、ジョージア州アトランタにて生を受けた Lil Keed こと Raqhid Jevon Render は、幼少期を Forest Park で過ごした後、Cleveland Ave に引っ越します。この Cleveland Ave はアトランタのゾーン3に位置しており (アトランタは、警察によって1~6までの管轄地区に分けられており、アトランタのスター Young Thug もゾーン3で生まれ育ちました) 、彼は6人の兄弟とともに貧しく過酷な環境下で生活していたそうです。

キャリアの開始とミックステープ

学生時代、Subway と McDonalds で働きながら日常的に音楽制作を行なっていた彼は、親友 Rudy を亡くしたことをきっかけに、実弟である Lil Gotit と共に真剣に音楽活動に取り組むようになります。

Young Thug や Peewee Longway、Big Bank Black らに影響を受けたと語る Keed は、2016年に本格的にキャリアを開始し、2018年にデビュー・ミックステープ『Trapped On Cleveland』をリリース。 Young Thug の影響を強く感じさせるハイピッチで歌うスタイルが彼の特徴です。

亡き親友 Rudy が繋いでくれたというプロデューサー Mooktoven とタッグを組んだ同作が、彼らの地元ゾーン3を中心に人気を集め、ストリートヒットとなります。

このヒットを機に、Keed は憧れのラッパー Young Thug に自身の楽曲を聴いてもらうチャンスを掴みます。

ゾーン3に訪れた Young Thug に、同作収録の『Bag』を聴かせる Lil Keed。

この出来事を経て、Keed は Young Thug に気に入られ、後に Young Stoner Life Records (以下 YSL Records) と契約を結ぶこととなります。

2018年、ミックステープ『Slime Avenue』や『Trapped On Cleveland 2』のリリースでますます注目を集めた彼は、同年末に YSL Records からミックステープ『Keed Talk to ‘Em』をリリースします。

同作には Trippie Redd や 21 Savage、Lil YachtyLil Durk、Brandy ら大物アーティストが多数参加し、Lil Keed はアトランタから世界へ、一躍名を馳せることになります。

Nameless

she see the YSL chain shining

彼女が俺の輝く YSL チェーンを見ている

Young Thug のようなハイピッチ・フロウとキャッチーなコーラスが特徴的な1曲。女性との関係や掴んだ成功について歌った同曲がバイラルヒットし、US Billboard チャートにて最高30位を記録、後にゴールド認定されます。

デビュー・アルバム『Long Live Mexico』

2019年6月、Lil Keed は待望のデビュー・アルバム『Long Live Mexico』をリリースします。タイトルの『Long Live Mexico』とは、同年始に亡くなった彼の友人 Mexico に追悼の意を表したものです。

Young Thug や Gunna、NAV、Moneybagg Yo、Lil Uzi VertYNW Melly、Roddy Ricch らを含む13名を客演に迎えた同作は、US Billboard チャートにて最高26位を記録します。

Snake

CuBeatz & Pyrex Whippa プロデュースによるウクレレのようなストリングスを用いたスロウなトラックと、「Snake」を連呼するだけのシンプルなフックが特徴的な1曲。2バース目入りの苦しそうなハイピッチ・フロウが彼の持ち味で、まさに Young Thug のハイピッチ・パートをそのまま受け継いで進化させたかのようなスタイルを披露します。

Pull Up (feat. Lil Uzi Vert & YNW Melly)

Producer 20 & Jetsonmade プロデュースによる笛系シンセを用いたビートの上で、Lil Keed、Lil Uzi Vert、YNW Melly の3人が金や車、女性などについて歌う1曲。メロディアスなラップを得意とする彼らが、それぞれのフロウで魅力を発揮しています。

様々なアーティストとの共演

2018年から次々と作品をリリースし、憧れの Young Thug に認められたのち YSL Records と契約、更には XXL Freshman Class 2019 にもノミネートされるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いでスターダムを駆け上がってきた Lil Keed。そんな彼は、YSL Records やアトランタのラッパーを中心に、様々なアーティストと共演するようになります。

Young Thug – Goin Up (feat. Lil Keed)

まずは Keed をフックアップした Young Thug との1曲。彼らが出会って間もない時期に制作した楽曲ですが、2人は既に最高のコンビネーションを発揮しています。Thug がイントロで「Keed, yeah」とシャウトアウトする部分や、似たような声質から放たれる両者のハイピッチ・フロウから、彼らが本当の親子だと勘違いするファンもいたほどです (年齢的にはあり得ませんが)。実際 Thug は、Keed を実の息子のように可愛がっています。まさに Keed は、アトランタ・ヒップホップシーンの結束力と Young Thug の多大な影響力が生んだネクストスターといえるでしょう。

※Young Thug がシーンに与えた影響については、以下の記事をご覧ください。

Jacquees – Hot For Me (feat. Lil Keed & Lil Gotit)

ジョージア州ディケーターの R&B シンガー Jacquees の1曲に、Keed は実弟の Lil Gotit と共に参加しています。Keed のシグネチャーである「Keed talk to ’em」の連呼で始まる彼のヴァースは、地声のラップからアドリブと共にハイピッチ・フロウに切り替わっていく展開で、R&B サウンドにしっかり順応しています。優れた歌唱力と美しい歌声を持つ Jacquees と、それに負けじと必死にハイピッチで歌う Keed の2人だからこそ成せる絶妙なコンビネーションです。

88GLAM – Bankroll (feat. Lil Keed)

カナダ・トロントのヒップホップ・デュオ 88GLAM との1曲。Keed は、お得意のハイピッチ・フロウに加え Young Thug のようなダミ声も披露しており、客演にも関わらず主役級の存在感を放っています。Keed はどの楽曲でも同じようなラップをしていると思われがちですが、自分のスタイルを貫きながらも随所に様々な工夫を凝らしており、インタビューでも以下のように語っています。

After just every day being in the studio, trying new things. 

俺はいつも新しいことを試してる

I don’t want people to be like, ‘He sounds the same on every song, that shit’s boring!’ 

「Keed の曲は全部同じでつまらない」って思われたくないんだ

I can sing. I can do straight rap. I do melodies. 

俺は歌えるし、ラップも出来るし、メロディも作れる

I do rockstar shit. It’s real genuine.

ロックだって出来るよ これはマジなんだ

REVOLT

Zaytoven, Lil Keed & Lil Yachty – Accomplishments

同郷アトランタの Zaytoven、Lil Yachty との1曲。Zaytoven のダークなビートと Lil Yachty の脱力ラップ、そして Keed のハイピッチ・フロウと、良い意味で不安感を煽られる楽曲です。 彼らは2020年2月に同曲を収録したコラボ・プロジェクト『A-Team』をリリースしています。未聴の方は是非。

Tee Grizzley – Slime (feat. Lil Keed)

ミシガン州デトロイトのラッパー Tee Grizzley との1曲。Tee Grizzley のハードなラップに続いて、Keed はハイテンポなビートを乗りこなしながら自由なラップを披露します。真面目にラップする Tee Grizzley と、奇妙なアドリブやフロウを聴かせる Keed の相性が意外にもマッチした楽曲です。

johan lenox, Lil Keed & Kota the Friend – throwback thursday

マサチューセッツ州ボストンのシンガー/プロデューサー johan lenox との1曲。Keed とオーケストラ・サウンドという一見意外な組み合わせですが、彼は johan lenox にも Kota the  Friend にもない新たなエッセンスを楽曲に加えており、三者三様のコントラストが魅力的な楽曲です。このようにヒップホップ (トラップ) 以外の楽曲にも起用される Keed は、同じく様々なジャンルの客演をこなす Young Thug に近い立ち位置を確立しつつあるのではないでしょうか。

おわりに

今回はアトランタの注目ラッパー Lil Keed についてまとめてみました。いかがだったでしょうか。

2019年、そして2020年と2年連続で XXL Freshman Class の候補者にノミネートされており、これからますます活躍が期待されている Lil Keed。実弟 Lil Gotit と共にアトランタのシーンを背負うビッグスターになる日も近いかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。

Written by Riku Hirai

『WAP』の MV に Kylie Jenner などの豪華キャストがカメオ出演

Cardi B が、昨年から飛ぶ鳥を落とす勢いの Megan Thee Stallion を客演に迎えた一曲『WAP』をリリースすると同時に、同曲の MV を公開。

CG と実写映像を巧みに織り込んだ同ミュージックビデオは圧倒的な完成度であることに加えて、Kylie Jenner、シンガーやダンサーとして活躍している Normani、スペイン出身のシンガー ROSALÍA といった豪華モデル・アーティストがカメオ出演している。

Normani
ROSALÍA
Kylie Jenner

新型コロナウイルスに対しても様々な経済的・人道的支援を行っている Cardi B。彼女の人気はまだまだ衰えを見せることはなさそうだ。

Frank Ocean の弟 Ryan Breaux が交通事故により死亡

過去に、本名の Lonny Breaux という名前で活動したこともある Frank Ocean。そんな彼の弟、Ryan Breaux が交通事故により死亡したとの報が舞いこんできた。

Ryan Breaux (左) と Frank Ocean

日曜日の午前1時半頃にカリフォルニア州のサウザンドオークスで二人の若者が交通事故により亡くなったとの報道がなされていたが、それが Frank Ocean の弟である Ryan Breaux だと判明した。

マチズモ的な父親の態度に幼少の頃から苦しめられていた Frank Ocean とその一家。弟の Ryan Breaux も含め、被害者である母親や家族に愛の眼差しをいつも向けていた Frank Ocean だけに、今回の出来事による精神的ダメージは計り知れないだろう。

The Life of Kanye – ヒップホップから偏見を取り除いた Kanye West の全て

突然ですが、あなたは Kanye West という言葉を聞いて何を思い浮かべますか?「変人」「宇宙人」などなど、最近の一連の行動を見ていると、あらかたの人が Kanye に対して不信感や偏見を持っているかもしれませんが、彼の音楽面における影響力は絶大なものなんです。

ということで、今回はそんな Kanye West の全てがわかる記事をご用意しました。Kanye がリリースしたほぼ全てのプロジェクトを通して、彼の音楽の全貌に迫りましょう。

Kanye West とは?

Kanye West (以下、Kanye) は1977年6月8日にアトランタで生まれ、イリノイ州のシカゴで育った現在43歳のプロデューサー・ラッパー・ファッションデザイナーです。ここでまず最初に注目してほしいのは、彼が元々プロデューサーであったという事です。

プロデューサー・Kanye West

彼は1990年代に学生として大学に通いながら、プロデューサーとしての仕事を始めました。しかしなかなかヒットには恵まれません。実はこの時期に、ソロデビューを果たすためにかなりレーベル探しに苦労しており、Capitol Records からソロアルバムを出すということがほとんど目前まで決まっていたところで契約が白紙になってしまったこともありました。

好機が訪れたのは2000年代になってからのこと。オールドスクールとニュースクールのハブ的存在、 Jay-Z との出逢いです。そして、Jay-Z にプロデューサーとしての資質を買われて Roc-a-Fella Records とプロデューサーとして契約を結びます。

Jay-Z

そして、これを機に彼は一気にトップアーティストへと上り詰めます。 早速彼は Jay-Z の2001年のアルバム『The Blueprint』において13曲中4曲をプロデュースします。ではこの中から2曲、紹介いたします。

Jay-Z -『The Blueprint』

Jay-Z – Takeover

この曲はジム・モリソンの所属していたアメリカ西海岸出身の世界的バンド The Doors の『Five to One』や David Bowie の『Flame』を大胆にサンプリングした一曲です。また、この曲は Nas をディスってビーフになったことでかなり有名な一曲でもあります。今でこそゴスペルのイメージが強い彼も、源流はサンプリング&ループビートなんです。

Jay-Z – Izzo

続いては『Izzo』ですが、この曲のビートどっかで聞いたことがあるなと感じた方もいらっしゃることでしょう。そうなんです、これは Jackson 5 の『I Want You Back』をサンプリングした一曲なんです。大胆に様々なジャンルに闖入しうる彼の才能は、この時代から顕在ですね。

Common – They say (feat.Kanye West & John Legend

Jay-Z の他にも、 シカゴヒップホップの開拓者ともいえる Common のアルバム『Be』にて、11曲中9曲を Kanye がプロデュースします。では一曲お聞きいただきましょう。Common で『They say (feat.Kanye West & John Legend』 です。

John Legendの聞き心地のよいコーラスから始まる、気持ち良さと軽快さを兼ね備えたビートですね。聴いた人は分かると思いますが、2バース目はカニエのラップパートになっています。

また、R&B においても、彼はプロデューサーとしての才能を開花させていきます。プロデュースした中で有名なものに、Alicia Keys の『You Don’t Know My Name』があります。

Alicia Keys -『You Don’t Know My Name』

往年のソウルビートにコーラスやピアノサウンドを加え、蜿蜿とうなるように音階が変化していく広がりを持ったサウンドが特徴的な素晴らしい曲ですね。

ここまで Kanye のプロデュースシリーズをざっくり紹介していったんですが、「カニエの信仰心の深さはどこからきているのか」が不思議な方もいると思います。実は先ほどの Alicia Keys のアルバムが出るよりも前、2002年の10月23日の出来事を機に、Kanye は信仰心に目覚めます。それは、この日のレコーディング終わり、車に乗って家まで向かう帰路のことでした。

この時、Kanye は居眠り運転をして大怪我を負います。この事故について、後々カニエは「神が救ってくれた」とコメントしており、この出来事で信仰心に目覚めます。

ラッパーとしての Kanye West

ここからは、ラッパーとして活動していく彼について書いていきます。少し長くなりますが、これを読めば Kanye の魅力がより一層理解できるようにまとめました。

Kanye の原点・温情的なサウンド

Kanye は2004年にソロデビューを果たします。そしてこれがいきなり全米チャート2位をとります。カニエファンならみんな大好き『The College Dropout』です。ちなみに、このアルバム名は仕事が忙しくなり、大学を中退したことを意味しています。

『The College Dropout』(2004)

The College Dropout (2004)

このアルバムは彼の信条である家族愛を感じるような温情的なサウンドだったり、でもどこか寂しげなリリックだったりを特徴としています。また、このアルバムのメイキングにおいて驚くべきことは、アルバムリリースの数ヶ月前に音源がリークされていることなんですが、彼はこれを故意的にやったと言っています。

これはリーク曲に対する世間の評判を見て、曲のマスタリングを変更したり、曲を没にしたりするためにやったそうです。実際に、東海岸のレジェンドクルー Wu-Tang Clan の Ol’ Dirty Bastard (通称:ODB) との楽曲『Keep the Receipt』をこのアルバムから外し、一年後の Roc-a-Fella Records から出したミックステープに収録していたりします。

Ol’ Dirty Bastard

The College Dropoutのオススメ曲

このアルバムでのオススメ曲としては、まずは Chaka Khan の『Through the Fire』を大胆にサンプリングした楽曲『Through The Wire』です。 『Through the Fire』(炎の中で) を 『Through the Wire』(ワイヤーの間から)というお茶目なワードプレイに変えちゃう辺りは彼らしくて面白いですね。

気持ちいいサンプリングですね。この曲は一部分のループだけじゃなく、サビをまるごとサンプリングするという大胆な手法を使っていて、それにも関わらずバースに入る部分にも違和感が全くありませんね。

ちなみにこの曲のレコーディングなんですが、Kanye は先ほど言いました居眠り運転の事故で口にワイヤーをいれたままの生活を強いられていて、そしてレコーディングまでワイヤーをつけたまま行いました。そう思って聴いてみると、確かにハッキリ言葉を発していないように聞こえますね。

クラシックへの傾倒

『Late Registration』(2005)

続いては『Late Registration』です。こちらは、リリース後10週連続で全米チャート1位をとり、これ以降のアルバムでKanye はチャートを総ナメしてしていくのですが、今作は前作と比べてかなりクラシック的要素が強くなっています。このアルバムの制作における裏話に、上述の Common のアルバム制作の時に「俺ならこうやってラップするぜ」と思っていたそうで、そこから着想を得たそうです。

勿論、Jay・Z や Nas、The Game、さらには Brandy や Maroon5 の Adam なども客演に迎えた崇高な仕上がりになっています。このアルバムを契機として、温かみやチープさといった印象を払拭した楽曲の作り方をしています。また、このアルバムでは Pop 界のレジェンドプロデューサー Jon Brion を外部プロデューサーとして迎え入れていることで、前作とはまた違ったサウンドの幅を感じます。

Late Registrationのオススメ曲

オススメ曲は Brandy を客演に迎えた『Bring Me Down』です。

こちらはオーケストラの生演奏によるライブの様子

こちらは悲しげな情緒を伺わせるビートにブランディの歌声やカニエのラップがとろけ合うクラシック的一曲となっていますね。カニエの楽曲はやはり、ギャングスターラップ特有の男臭さが消えていてこれがまた素晴らしいですね。他にも独特の電子音から始まる『Celebration』など、このアルバムは前作よりも少し前衛的な構成で出来た曲が多いように感じます。

また、2006年には Pharrell Williams のアルバム『In My Mind』の制作に協力していたり、様々なジャンルを横断した楽曲を作り続けます。

Pharrell Williams

エレクトロニクスへの傾倒

『Graduation』(2007)

そして、2007年には『Graduation』を発表します。このアルバムは、50cent の『Curtis』と同日に発表されたこともあり、二人のセールス対決にも注目が集まりました。結果としては、Kanye が大きく差を開けて売り上げを伸ばし、翌年のグラミー賞で最優秀ラップ・アルバム賞を受賞することになります。また、アルバムのアートワークが日本の現代アートの神様・村上隆氏によって手掛けられており、これまでにも増して、特徴的なビジュアルとなっています。

このアルバムでは、エレクトロニックサウンドへの傾倒が注目されがちですが、ニューヨーク出身の伝説的バンド Steely Dan のサンプリングなど、今までにも増してヒップホップの可能性を無限大に広げ、そのジャンルをメインジャンルに押し上げたアルバムであることも特筆すべき点です。また、一曲一曲がクリアにミキシングされているので、以前にも増して粗雑感が消えています。

Graduationのオススメ曲

2006年に先行シングルで発表し、世間に衝撃を与えた一曲『Stronger』をオススメします。

最高ですね。この曲を聞いたことのある人が多い理由はサンプリング元が Daft Punk の『Harder Better Faster Stronger』だからです。にしても、天才的なサンプリングセンスとしか言いようがありません。

オートチューンの旗手・Kanye West

808s&Heartbreak(2008)

続きまして、『808s&Heartbreak』です。これまた全米1位を取っちゃうんですが、このタイトルの「808」というのは、日本が誇る世界的電子機器メーカー「Roland」の名機である「TR808」を指していて、これが随所で使用されています。

そして、特筆すべき点としては、彼がオートチューンを使った歌唱を中心としてアルバムを作っているところです。実は、現在トラップミュージックを中心に当然のようにヒップホップ界で使われているオートチューンですが、実は Kanye がこのアルバムで使ったことで、様々なアーティストがオートチューンを使うようになったんです。

また、このアルバムがでる前年の母の死や Alexis Phipher との破局など、彼が辛い時期に味わった「Heartbreak」(傷心) が随所で表現されています。

808s&Heartbreakのオススメ曲

オススメ曲は一曲目の『Say You Will』です。

この曲のサウンドで登場するピコピコ音が心電図のように作用し、母の死と彼の心が傷ついているという二つのコノテーションを含んでいるように感じさせられます。 また、リリックも情緒的なものになっています。

When I grab your neck, I touch your soul.
Take off your cool then lose control.

君の首を握った時、君の魂を感じるんだ。
君から冷静さを奪って、滅茶苦茶になろう。

ジャンルレスな存在・Kanye West

『My Beautiful Dark Twisted Fantasy, Watch The Throne』(2010)

2010年にリリースされたこのアルバムは何とも簡易な言葉で表現できない仕上がりとなっています。『Graduation』で結実させたヒップホップのメソッドを一度解像度を落とすことで、荒唐無稽とも言えるほど荒涼とした、かつ希死念慮までもを含んだ酸鼻の情緒の波に音階を同調させています。確かに新しさこそ感じることは少ないのですが、それでも彼がそれまで積み上げてきたその全てがこのアルバムには詰まっています。

Jay-Z や Rick Ross、John Legend、Alicia Keys、Rihanna、Bon Iver や Elton John までを客演に呼んだこのアルバムはピッチフォークをはじめ、ローリングストーン誌など、各音楽批評のトップメディアから満点の評価を叩き出しました。

それでもグラミー賞の年間最優秀アルバム賞を得られなかったことを考えれば、彼が Jay-Z と共にその授賞式を辞退したことはやむを得ないのかもしれませんね。

『My Beautiful Dark Twisted Fantasy, Watch The Throne』のオススメ曲

Pusha T をフィーチャーした一曲『Runaway』です。

Let’s have a toast for the douchebags.

勘違い野郎に乾杯だ。

たった1音の旋律から増幅するこの曲は、かなり教示的な一曲だと感じると同時に、その自嘲的なリリックにユーモアさえ感じとることができます。Taylor Swift のMTV授賞式を邪魔するという失敬によって彼はハワイでレコーディングをせざるを得なくなったわけですが、唖然とするほどストイックにレコーディングを行ったそうです。モデルの Amber Rose との破局もあったのですが Kanye は心が不安定な時こそ最高の音楽を作ってしまうんですね。

続いては、Fergie、Alicia Keys、Elton John、Rihanna や Kid Cudi といったスターたちを次々に使う『All Of The Lights』 です。

2. All Of The Lights

PV も最高ですね。少女が歩くシーンから始まる映像は曲にぴったりで、ビートが鳴り出した瞬間の高揚感はたまらないですね。途中のコーラスからの畳み掛けるような勢いは本当にたまらないです。

『Watch the Throne』(2011)

辛い時期を闘った Kanye なんですが、2011年には Roc-a-Fella Records と Def Jam Recordings より、恩人 Jay-Z と共作のアルバム『Watch the Throne』をリリースします。このプロジェクトは元々、EPとして発表するつもりだったのですが、色々な構想がうまく行くうちにアルバムにしてしまおう、となって作られたアルバムです。

このアルバムには、Frank Ocean が2曲もメイン客演として入っていたり、The Dream や Beyonce なども参加しています。そして、このアルバムから大量にプロモーションビデオが出されたことでも世間を驚かせました。

『Watch the Throne』のオススメ曲

Frank Ocean と The Dream をフィーチャーし、プロデューサーに 88Keys とMike Dean を加えた一曲目『No Church In The Wild』 です。

どこかしらに野生的な攻撃性を感じさせる曲調にはアドレナリンが吹き出しそうになります。曲調が特徴的なことに加え、リリックも意味深いものとなっています。

What’s a god to a non-believer who don’t believe in anything? Will he make it alive? Alright, alright, no church in the wild.

何も信じちゃいない無神論者にとって神(救い)って何なんだ?彼は生き抜くことができるのか?わかってるよ、荒れ果てた場所(彼らの住む場所)に教会(救い)なんて無いってことは。

このラインは Frank Ocean のコーラスの一部で、この曲中で三回出てくる印象的なフレーズなんですが、これはギャングの世界 (wild) を生きるラッパー達は神なんてものにすがっていたら生きていけないということを意味しています。

また、面白いなと思うのが、普通アメリカの宗教の大部分を占めるキリスト教にとってもイスラム教徒などにとっても神は唯一の存在(唯一神)なので、「the God」と表記するのが当然なのですが、ここでは無神論者からの目線のリリックなので、「a god」と書かれています。神に救いなど求めないという姿勢が表現された一曲ですね。

『Kanye West Presents GOOD Music Cruel Summer』(2012)

続いては、Kanye が自ら2004年に作ったレーベルで Def Jam Recordings の傘下である GOOD Music より出されたレーベルアルバムの『GOOD Music-Cruel Summer』です。こちらはレーベルでのアルバムにはなりますが、Kanye によるプロデュースアルバムで、彼自身が楽曲に多く参加しているので紹介いたします。

『Cruel Summer』のオススメ曲

『I Don’t Like ft. Pusha T, Chief Keef, Jadakiss& Big Sean』

この曲は、客演の一人でシカゴ出身のラッパー Chief Keef の一年前の曲をカニエがサンプリングしていますので、そちらの方で聞き覚えがある方もいると思います。美しい旋律だけでなく、ここまで攻撃的でアンダーグラウンドなビートもやってのける彼には驚嘆ですね。

転調の神・Kanye West

『Yeezus』(2013)

そして2年の時が過ぎ、7作目のアルバム『Yeezus』をリリース。このアルバムはこれまでずっと続いてきた Roc-a-Fella Records と Def Jam Recordings から出される最後のアルバムとなります。次回作からは GOOD Music と Def Jam Recordings よりリリースされるようになります。

今作はプロデューサーとして Mike Dean や Daft Punk、Arca や Travis Scott を招いていて、この作品でも革新的な電子サウンドを取り込んだ楽曲が多くみられます。また、リリースされる15日ほど前にプロデューサー Rick Rubinを招き、このアルバムをさらに凝縮するべく、マスタリングをギリギリまで行っています。

そして、何よりこのアルバムの特徴といえば、転調の多さです。この転調の多さは Travis Scott にもかなり影響を与えたようで、転調の王者 Travis Scott の原点とも言えるアルバムでしょう。

『Yeezus』のオススメ曲

まずは、Travis Scott を中心に Mike Dean なども共にプロデュースした一曲『New Slaves』です。

『New Slave』

この曲では一見単純そうなビートが繰り返されているように思いますが、その後ろで水の沸騰するようなポコポコとした音やコーラス・バスドラムのサウンドなど細部まで精巧に作り上げられています。そして驚くべきは2分51秒の転調の衝撃ですね。

『Bound 2』

このビートはアメリカのソウルグループ Ponderosa Twins Plus Onにより1971年にリリースされたアルバム『2 + 2 + 1 =』の一曲『Bound』の大胆なサンプリングを軸に作られています。「Uh-huh, honey」というフレーズが頭から離れませんね。Youtube の PV はピアノの伴奏から始まる Explicit バージョンとなっているので是非原曲とも聴き比べてみてくださいね。

ゴスペルへの傾倒

『The Life of Pablo』

The Life of Pabloのオススメ曲

正直全部オススメなんですが、抜粋して紹介していきたいと思います。

『Ultralight Beam』

We don’t want no devils in the house, God. We want the Lord. And that’s it.

この家に悪魔なんていらないの、あなたを感じたいの、それだけ。

少女の上記のフレーズで始まる印象的なスタートの曲です。また、その女の子のインスタグラムにてそのサンプリング元を見ることができますので是非チェックしてみてください。

これはある女の子が神父の説法のモノマネみたいなことをしているところなんですね、なんとも愛らしい。そして曲は The-Dream と Kanye のバースに入ります。

We on an ultralight beam. This is a God dream. This is everything.

みんな神の光に包まれている。これが神の与えてくれる希望だ、それだけさ。

実はこのライン、初めの女の子の発言に対して呼応する構造になっているんですよね。また、ここでの神の光はつまり無償の愛、キリスト的用語で言えば、「アガペー」を意味するのでしょう。この曲では 女性シンガー Kelly Price の圧倒的歌唱力も味わうことができます。彼女は幼少の頃から教会に通い、ゴスペルに大きな影響を受けたシンガーです。

Kelly Price

そしてその後、Chance The Rapper の心地よいバースがあり、曲の終盤に Kirk Franklin を使ってしまうという徹底したゴスペルサウンドへのこだわりが随所に見られます。Kirk Franklin はゴスペルとヒップホップを融合し、アーバン・コンテンポラリー・ゴスペルを作り出した張本人でアメリカでも圧倒的人気を誇るアーティストなんです。

『Father Stretch My Hands, Pt.1』

この曲は Metro Boomin のプロデュースということですが、始まりから最高ですね。「stretch my hands」というのは神を賛美するときに天に向かって手を伸ばすことを意味していて、一般的な Sunday service (日曜礼拝)や祈りを捧げるときに行われる行為です。

ちなみに『Father I Stretch My Hands to Thee』という曲は James Cleveland の代表曲で、Kanye はこの曲を参考に作っています。

James Cleveland

まあこの曲は『Pt. 2』もあるので聞いてみてください。ちなみに『Pt. 2』はみなさんご存知 Desiigner の『Panda』を Kanye がリリース前にネットで見つけ、すぐさまサンプリングできるように権利を買い取ったとのことです。その Desiigner は『Freestyle4』にも客演で参加しており、この後一花咲かせるためのきっかけとなりました。

(Father Stretch My Hands)『Pt.2』

かなり推敲されきった楽曲ばかりですが、次の曲は完成度は本当に高いものの、そのリリックが物議を醸します。

『Famous』

I feel like me and Taylor might still have sex
Why? I made that bitch famous (Goddamn)

俺とテイラー(スウィフト)は今もやってるかもな。なぜかって、俺があのアマを有名にしたからだよ。

このリリックに対して Taylor Swift サイドがかなり批判したのですが、リリース前に Taylor Swift に許可を取っていたという電話をキム・カーダシアンが通話記録から発見し、一旦事態は収束しました。しかし、事態は今年になって急展開を見せました。なんと、結局は Kanye 夫妻が嘘をついていたというのがまたもや通話記録から発見されたのです。否定的なラインはその本人に悪影響を与えるため、Taylor Swift が怒る理由も理解できますね。

この楽曲もパワフルな Rihanna の声と緩慢とした Kanye のラップが荘重としたサウンドの上で見事なハーモニーを奏でています。また、この楽曲には Swizz Beatz も参加しており、彼のことを Kanye は史上最高のヒップホッププロデューサーだと言っています。

Swizz Beatz

続いては『Waves』です。この曲にはChance the RapperとChris Brownをフィーチャーしています。Chance the Rapper といえば、Kanye も認める凄腕ラッパーな訳ですが、彼が他の楽曲にも様々に「テコ入れ」を行ったことでリリースが遅れたとも言われていますから、彼のプロデュース力も底知れぬものなのでしょう

最後に僕のカニエの数々の曲の中で最も好きな曲を紹介します。

Saint Pablo

この楽曲・アルバムのタイトルにもなっている「Pablo」についてなのですが、これはキリストの使徒の一人である「パウロ」を指します。パウロはもともと、ユダヤ教徒のファリサイ派と呼ばれる過激な思想を持つ宗派に属しており、キリシタンを迫害し、嘲笑するような態度でした。しかし、突然キリストの声が聞こえ、目が見えなくなります。それをキリスト教徒が祈りにより直してしまいました。そのような経験から彼はキリスト教へと回心したのです。『The Life of Pablo』はそんな人の人生というのがテーマのアルバムなのです。

また、この曲はイギリスのシンガーである Sampha がコーラスを担当しています。かなりの美声なのでぜひ聞いてみてください。

Sampha

このアルバムの名前は、当初『So Help Me God』と発表していたにも関わらず、その後『SWISH』にすると言ったり『Waves』だと言ったりして最終的に『The Life of Pablo』となったんです。

Kanye West と信仰心

『The Life of Pablo』に対して「信仰をバカにしてる」・「本当のキリシタンに失礼だ」という意見が多いのですが、そもそも彼はキリシタンではありません。彼は、「キリスト教徒では無いが、神を信じている」と言っており、004年の「New York Times」でも、以下のように発言しています。

I have accepted Jesus as my Savior.

俺はキリストを”救済者”として考えている。

2009年の「Vibe Magazine」では、

I just think God has put me in a really good space.

俺にとって神とは自分を良い方向に導いてくれる存在なんだ。

この2つの供述を見ても、Kanye にとって神とは救済者であり、かつ良いパワーを与えてくれる存在であって、それ以上でもそれ以下でも無いのかも知れません。

また、Kanye は2019年の1月に「Sunday Service」をはじめましたが、これも宗派を問わず、愛を求め願う者は誰でも参加できるものになっています。ちなみに、「Sunday Service」自体は単に「日曜礼拝」という意味なので Kanye が始めたものではありません。

精神崩壊と『ye』

『ye』 (2018)

そして、約2年ぶりとなるプロジェクトが発表されました。『ye』です。このアルバムは、今までのどの作品よりも、内省的で、精神崩壊を表したアルバムでした。この年のカニエと言えば、奴隷制度の過去について肯定したり、トランプ大統領を支持したりと今までにまして暴虐な発言をしていました。

このアルバムでも『The Life of Pablo』で大成させたゴスペル的ヒップホップと言えるサウンドが随所で見受けられます。

トランプ大統領と共に苦笑いをするKanye

『Yikes』の中では薬物中毒と格闘する姿が描かれており、『Violent Crimes』では女性を暴力的に支配してきた過去を娘に打ち明けるようなラインも見られます。彼にとってこの年は自らをも失望させた時期だったのかも知れません。

『ye』のオススメ曲

『Violent Crimes』

070 Shake の歌声がたまらないですね。Sound Cloud にて人気を獲得した彼女をキャスティングし、転調を含んだ美しいビートというステージの上で彼女を奔放に、あるいは寄る辺なく躍らせてしまう彼の才能には脱帽です。

『Ghost Town』

Shirley Ann Lee・PARTY NEXT DOOR・070 Shake という近年力をつけてきた勢力に加え、自身のレーベルより長年の古株である Kid Cudi を絶妙なタイミングでコーラスとして使った至極の一曲です。

続きましては、その Kid Cudi との共同プロジェクト「KIDS SEE GHOSTS」のアルバムについてです。

Kanye West と Kid Cudi

『KIDS SEE GHOSTS』 (2018)

実は、Ronald Oslin Bobb-Semple より、このアルバムの収録曲『Freeee (Ghost Town Pt. 2)』に Kanye がマーカス・ガーベイのスピーチを再現した「The Spirit of Marcus Garvey」という音声が使用されていることに対し、訴えを起こしました。これは曲の中心として使っているのでフェアユースとは言えないだろと訴えを起こされ、話題となっていました。

KIDS SEE GHOSTSのオススメ曲

1. Feel The Love

Pusha-T を招いた同曲は、コーラスを中心に構成されているにもかかわらず、途中から暴力を声にしたようなバース・アドリブが展開され、それに合わせてビートも荒れ狂ったように展開されていく素晴らしい一曲です。

You bust down a Rollie, I bust down a brick, then I flood it, nigga.

お前はロレックスをアイス(ダイヤモンド)まみれにして、俺はここをコカインまみれにするんだよ。

これは bust down を使ったワードプレイで、ダイヤモンドなどで時計などを装飾するという意味と、コカインをやるという意味をかけたものになっています。

ゴスペルへの回帰

『JESUS IS KING』(2019)

次は 2019 年にリリースされた『JESUS IS KING』です。突然リリースするという情報が流れ、最後まで寝ずにマスタリングするから待ってくれと、いつも通りリリースを延期した Kanye West。

僕の予想は日本時間で夜中の2時だったのですが、1時にたまたまSNSを開くとカニエがたった今リリースしたということで奇跡的にリリース後すぐに聴けて嬉しかったです。

『JESUS IS KING』について

まずは、 Kanye が声を一切出さないと言う、イントロ的な役割の曲『Every Hour』をお聞きください。

1. Every Hour

2019年の1月頃から始まったカニエの新プロジェクト「Snuday Service」のコーラス部隊が陽気に歌いまくる曲です。この曲のリリックで印象的なものが、旧約聖書の150篇の神への賛美の詩を収めた「詩篇」からの直接引用の部分です。

Let everything that has breath praise the Lord.
Praise the Lord.

生きとし生けるもの全ては主を敬いなさい。主を掲げなさい。

2. Selah

パイプオルガンのようなサウンドから始まるまさに聖歌のような始まりですね。意外なことかも知れませんが、実はキリスト教音楽っていまだに作られ続けているんです。20世期に入ってからもフランスの印象主義の作曲家クロード・ドビュッシーなどもキリスト教音楽のアーティストとして有名ですね。

カニエほどの才能があればキリスト教音楽に近いものが作れちゃうんですね、しかもそれをヒップホップというテーゼの上で成し遂げていることには驚きです。ドラムスを見事なバランスで扱っている点にも是非注目してみてください。また、耳を澄まして聴いてほしいのは、コーラスのみに聞こえるハレルヤの場所でも後ろで小さくリズムビートが鳴り続けているポイントです。ほんとうに細かいところまで抜かりがないですね。

3. Follow God

三曲目のこちらですが、TLOPで紹介した「Father I Stretch My Hands to thee」をサンプリングしています。これは言わば、TLOPの『Father Stretch My Hands, Pt. 1』そして『Pt. 2』の続きに当たる『Pt. 3』とも言える曲ですね。見事なサンプリングです。この曲が一番再生されてる理由も理解できますね。

4. Closed On Sunday

この曲のラインがまた面白いですね。

Closed on Sunday, you’re my Chick-Fil-A.

日曜日に閉まっている、あなたは私にとってのチックフィレイ(アメリカのファストフードレストラン)だ。

この Chick-Fil-A とはチキンとサンドイッチが有名なアメリカのファストフードレストランのことです。このレストランの創業者 Truett Cathy は彼の宗教的信条に従って、日曜日は安息日だから働かない、というのを会社のルールで決めていて、敬虔なクリスチャンとして知られています。

次で最後の紹介にします。

5. On God

これは Pi’erre Bourne のトラックを使った一曲です。音なのにビームが出ているように感じますよね。それをカニエが見事なバランスでラップしている。半端ないです。

2020 と Kanye West

そして2020年になり、YEEZY と GAP のコラボレーションを発表するなど、コロナ渦でも話題を欠くことのなかった Kanye West。

そんな彼が、突然 MV と共に弟のような存在である Travis Scott を客演に呼んだ一曲『Wash Us in the Blood』を発表します。

このミュージックビデオは、Solange や Jay-Z のMV監督としても知られる、映画監督の Arthur Jafa によって作られました。車の激しいアクションのシーンは思わず目を見開いてしまいそうになりますね。また、兄弟分とも言える Travis Scott を絶妙な使い方で使っている点にも注目です。

(Kanye West と Travis Scott の関係については以下の記事を参照ください)

そして 7月5日にはアメリカの大統領選挙に出馬する意向を示し、実際に出馬することがほとんど確定となったり、ニューアルバム『DONDA』をリリースすると発表したり、演説で号泣しながら中絶廃止を訴えたり、とコントロバーシャルな話題を振りまき続ける Kanye West からは今後も目が離せません。

最後に

フランクオーシャンのプロデュースの事など、プロデュースの面については他にも色々と書きたいことはあるのですが、またの機会にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

XXS オリジナルプレイリストはこちら↓

https://music.apple.com/jp/playlist/the-life-of-kanye/pl.u-NpXmDyGCmgrABjV

The Kid LAROI – オーストラリアの新星ヒットメーカー

Juice WRLD の遺作『Legends Never Die』への参加や、Lil Tecca や Lil Tjay などの人気若手ラッパーたちとの共演で注目が集まる中、満を辞して待望のニュープロジェクト『Fuck Love』をリリースしたばかりの The Kid LAROI。今回はそんな彼の生い立ちやキャリア、魅力について迫ります。

The Kid Laroi とは

The Kid LAROI (ザ・キッド・ラロイ) こと Charlton Howard は 2003年8月16日にオーストラリアのシドニーに生まれました。現在のヒップホップシーンでは珍しいオーストラリア出身で、まだ16歳とかなり若いのも特徴の一つです。

シドニーで生まれた The Kid LAROI (以下 LAROI) は幼少期からヒップホップを中心とする音楽に親しんでいました。彼の母親はオーストラリアの音楽をほとんど聴かない人物だったそうで、母親が幼少期の LAROI に Kanye West や 2Pac 、Erykah Badu などの音楽を聴くことをすすめたことが、彼がヒップホップと出会うきっかけとなったそうです。

彼の音楽は Juice WRLD や Trippie Redd のそれと比較されることが多く、「サウンドクラウドラップ」や「エモラップ」にカテゴライズされることが多いです。実際に彼が音楽の道を志し始めたときには、彼はすでに Juice WRLD の大ファンだったそうで、Juice WRLD による影響はかなり大きいとインタビューの中でも語っています。

キャリアの開始

LAROI は2018年にオーストラリアのラジオ番組の新人アーティスト発掘コーナーである Triple J Unearthed High にてファイナリストまで勝ち上がります。コンペティションにて知名度を格段に上昇させた LAROI は同年に初の EP 『14 WITH A DREAM』を SoundCloud にて公開します。

1曲目に収録されている『GO GET IT』では、EP のタイトル通り「14歳にして大きな夢を思い描く」彼の決意や大志がひしひしと感じられます。メロディアスなラップや、フックを歌い上げるスタイルの楽曲が多い現在の彼に対し、初期はシリアスなラップを淡々とこなすスタイルが特徴的です。

4曲目に収録されている『Blessings』では、メロディアスでありながらもシリアスさを持ち合わせる力強いラップを堪能することができます。当 EP の中では、こちらの楽曲が特に大きな話題を呼び、彼のキャリアを躍進させるきっかけとなりました。

Juice WRLD をはじめとした SoundCloud 発のエモラップを好むリスナーたちを中心に徐々にファンベースを築き上げていった LAROI は2019年に Juice WRLD も所属する Lil Bibby によるレコードレーベル Grade A Productions や Columbia Records との契約を交わしました。

その後、 LAROI は Juice WRLD によるライブツアーのオーストラリア公演への同行を果たし、憧れだった人気ラッパーたちに仲間入りします。ツアーの際に憧れの存在である Juice WRLD との親交を深めた彼は、のちに彼とのコラボ曲も発表します。

Juice WRLD と The Kid Laroi

The Kid LAROI の楽曲とスタイル

彼のキャリアや生い立ちについておさらいした上で、彼の楽曲についてご紹介していきます。今回が初めての長編プロジェクトということで、まだまだリリースした楽曲の数は多くありませんが、すでに多くの人気アーティストとのコラボレーションを果たしていたりと、楽曲のクオリティはかなり高いものとなっています。

Diva (feat. Lil Tecca)

メガヒット『Ransom』などでも有名な SoundCloud 発のラッパー Lil Tecca をゲストに招いた楽曲です。当時 LAROI は16歳、Lil Tecca は17歳とかなり若い二人のコラボレーションです。ミュージックビデオは 2億5千万回以上の再生回数を誇る Lil Tecca の『Ransom』も監修した Cole Bennett によるもので、サウンドクラウドラッパーたちにとっての夢を若くして叶えました。

The Kid LAROI & Juice WRLD – GO

LAROI の憧れの存在でもあった故 Juice WRLD をフィーチャーした楽曲です。楽曲自体は Juice の死後にリリースされましたが、オーストラリアでのツアーに同行した際にレコーディングされた楽曲で、ミュージックビデオにもその時の様子が映し出されています。

最後のフックでは、LAROI が担当するメインメロディに、まるで今この瞬間も生きているかのように Juice がハーモニーを重ねます。互いをリスペクトしあっていたという二人の美しいハーモニーは必聴です。

The Kid LAROI & Lil Tjay – Fade Away

NY・ブルックリンを拠点とし、哀愁漂う切ない楽曲からドリルミュージックまで幅広くこなすラッパー Lil Tjay をフィーチャーした楽曲です。 哀愁を感じるトラックの上で、Lil Tjay は十八番である切なくも魅力的な声色でラップし、LAROI は力強い歌声で歌い上げます。

Tell Me Why

7月17日にリリースされたばかりのこちらの楽曲は、Juice WRLD へのトリビュートソングです。憧れの存在であり、互いをリスペクトし合う最高の仲間でもあった彼との突然の別れをテーマにした楽曲です。

Tell me why, tell me why
なぜか教えてよ。

It’s so hard to say goodbye
さよならを言うのは辛すぎるよ

お気づきの方も多いかもしれませんが、彼のプロジェクトのカバーアートには度々日本のアニメにインスパイアされたと見られる作品が採用されています。今作の『Fuck Love』に関しても、渋谷の街並みを背景にキャラクター化された LAROI の姿を確認することができます。将来的には日本で公演を行ってくれる日も来るかもしれません。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はオーストラリアの新星ヒットメーカー The Kid LAROI の生い立ちやキャリア、魅力について迫りました。まだ始まったばかりの彼の音楽キャリアですが、これからも彼から目が離せません。

Written by whoiskosuke

Kanye West が浮気を疑った Meek Mill と Kim Kardashian の会合の写真が流出

先日、Kanye West の妻である Kim Kardashian が Meek Mill と会っていたことを理由に離婚しようとしていたと明かした Kanye West。

上記のツイートは現在削除されているが、Meek と Kim が実際に会っている写真が TMZ より流出した。

しかし、これは2018年の、刑務所改革運動に関して共に行動を起こしていた中での会合であり、Kim と Meek は Kanye の意見には全否定をしている。

あいつ (Kanye West) は嘘つきだ。

Kim はカニエの連日の行動に関して、彼の双極性障害の事実を公表すると共に治療が必要だと表明している。

大統領選挙の件もあり、今後も Kanye から目が離せない。

Kanye West が来週にニューアルバム『DONDA』をリリースか

米大統領選挙への出馬を巡って、世の中を騒がしている Kanye West。

そんな彼が、来週7月24日に母親の名前を冠した『DONDA』というタイトルのアルバムをリリースする、と Twitter 上で発表した。

『DONDA』

発表されたトラックリストの中には、『Yandhi』と冠されたアルバムでリリースされるとみられていた楽曲『New Body』もリストアップされている。

ただ、このツイートは現在削除されている。音楽において完璧主義と言われる Kanye だけに、今回もアルバムが24日にリリースされるかは定かではない。

ヒップホップと Rolex

過酷な環境を生き抜き、音楽で成功することを夢見るラッパーたち。ヒップホップ業界では、苦労の末に掴んだ成功を「フレックス (自慢)」することが文化となっており、一種の美徳とされています。そんな彼らのフレックス文化の中で、重要な役割を果たすのが高級腕時計です。今回は、その中でも圧倒的な人気を誇る腕時計メーカー「Rolex」とヒップホップの関係性について考察します。

Rolex とは

まずは Rolex という腕時計メーカーについて、簡単にご説明します。

Rolex は、ドイツ人の Hans Wilsdorf が1905年に創業したスイス発の腕時計ブランドです。創業当初の同社の腕時計の精度は決して高くはありませんでしたが、創業者である Hans Wilsdorf の熱心な研究によりムーブメントの品質向上に成功。その結果、商標登録からわずか2年後に、腕時計として初のクロノメーター認証 (高い品質を認められた時計だけに与えられる称号) を受けるという快挙を達成します。

Rolex の創業者 Hans Wilsdorf

Rolex を語るにあたって欠かせないのが、同メーカーが生み出した3つの発明です。

1. オイスターケース

1926年に開発された「オイスターケース」は、その名の通り牡蠣の殻のように固く閉じる頑丈な時計ケースのことです。

当時、水は腕時計の最大の弱点であり、防水時計はほとんど認知されていませんでした。そんな中、Rolex はイギリスのオイスター社が開発したオイスターケースを採用し、完全防水の腕時計を開発しました。

2. パーペチュアル

「永遠」を意味する「パーペチュアル」は、1931年に開発された自動巻き上げ機能です。当時は手巻き時計が主流であったため、人々は数日おきに手動で時計を巻き直していました。そんな中、腕を振るだけで自動でゼンマイが巻き上がる革命的な仕組みが発明され、手間を省くだけでなく、オイスターケースの防水機能を更に向上させることとなりました。

3. デイトジャスト

1945年に開発された「デイトジャスト」は、午前0時になると自動で日付が変わる日付表示機能のことです。

日付表示機能自体は当時から存在していましたが、自動で日付が変わる機能と、今現在よく見られる文字盤上の小窓に日付が表示されるデザインは、この発明がきっかけで定着したものです。

精度の追求と3つの発明によって信頼を獲得した Rolex は、ドレスモデルからスポーツモデルまで、様々な種類のモデルを輩出しながら今日まで進化を続けてきました。

ヒップホップと Rolex

1900年前半から徐々に信頼を獲得し、世界を代表する腕時計メーカーとなった Rolex は、1970年代に誕生したヒップホップ文化において重要な役割を担うことになります。

ここからは、Rolex について言及した代表的な楽曲をご紹介しながら、その関係性について見ていきます。

The Notorious B.I.G. – Who Shot Ya?

Pussy when I want, Rolex on the arm

いつでも女を呼べるし、腕には Rolex 

ニューヨークのキングとの呼び声高い Biggie の楽曲『Who Shot Ya?』では、ラッパーとしての成功の象徴として Rolex がネームドロップされています。宿敵 2Pac へのディス曲として疑惑を呼んだ同曲ですが、1994年の 2Pac 銃撃事件以前、彼らは親しい交友関係にありました。実は、Biggie が始めて手に入れた Rolex は、2Pac からプレゼントされたものだったそうです。

親しい仲間への友好の証として Rolex を贈った 2Pac は、Rolex 愛好家としても知られており、同メーカーをヒップホップシーンに浸透させたラッパーの1人です。

2Pac が愛用していたのは、ダイアモンドが施されたイエローゴールドの Day Date (デイデイト)。Rolex の高級ラインにのみ使用される「President bracelet」を用いた Day Date は Rolex が誇る最上位ドレスモデルであり、定価にしておよそ300万円から1000万円を超えるものまで存在します。ちなみにこの「President bracelet」とは、1956年に当時のアメリカ大統領アイゼンハワー氏に Day Date が贈られたことがきっかけで付けられた名称で、ヒップホップにおいても Rolex を意味するスラングとして「President」というワードが頻繁に用いられます。

Warren G – Regulate

I’m gettin’ jacked, I’m breakin’ myself

俺はやられる ボロボロになるんだ

I can’t believe they takin’ Warren’s wealth

Warren の (俺の) 物を奪おうとしてくるなんて信じられない

They took my rings, they took my Rolex

奴らは俺のリングと Rolex を奪った

I looked at the brother, said “Damn, what’s next?”

奴らを見て言ったんだ 「次はなんだ?」ってな

G Funk の流行を支えた Warren G が1994年にリリースした名曲『Regulate』でも、音楽で成功を収めた結果手に入れた「Wealth = 富」として、Rolex がネームドロップされています。「自らが敵に襲われ、財産である Rolex を奪われてしまう」という、強さを誇示することが一般的であるヒップホップ界においては珍しいラインですが、ヒップホップ全盛期として知られる90年代においても Rolex は富の象徴として扱われていたことが分かります。

2Pac をはじめとした人気ラッパーによる着用及びリリックでの言及により、アメリカ中でいっそう人気を獲得した Rolex の腕時計。当時から、立派な家、高級車、高級腕時計の3つを手に入れることが成功の証とされていたアメリカ社会において、Rolex をはじめとする高級腕時計を自慢することがラッパーたちの間でも流行していきました。

Nas – Nas Is Like

Came a long way from blasting TECs on blocks

ゲトーで銃を発砲してた頃から長い道のりを歩んできた

Went from Seiko to Rolex, 

SEIKO も今じゃ Rolex だ

Nas は自身の代表曲『Nas Is Like』にて、このようにラップします。平均して約1桁以上の定価の差がある2つの時計メーカーを比較することで、自身がどれほど成り上がってきたのかを表現しています。

このように様々なラッパーが Rolex を着用するようになった中で、特に目立って Rolex を愛用していたのが Jay-Z です。ラッパーとしての仕事以外にも、プロデューサーや作家、スポーツクラブのオーナーなど、多様なビジネスで成功を収めていた彼は、時計愛好家として Rolex の多くのモデルを所有していました。

彼が着用していたモデルとして有名なのが、Day DateDay Date ⅡSky Dweller (スカイドゥエラー)、Daytona (デイトナ) などです。

左から Day Date、Day Date Ⅱ、Sky Dweller、Daytona

その中でもやはり最上位ドレスモデルの Day Date が彼のお気に入りだったようで、セカンド・アルバム『In My Lifetime, Vol. 1』のカバーアート写真に映る際も、彼はプラチナ製の Day Date を着用しています。

Kanye West – Runaway (feat. Pusha T)

(Pusha T)

Invisibly set, the Rolex is faceless

ダイヤで埋め尽くされ、文字盤が見えない Rolex

Rolex 好きで知られる2人 Kanye West と Pusha T による1曲。

特に Pusha T は、自身のアルバムのタイトルを『Daytona』と名付けるほど、Rolex の Daytona を愛用しています。この Daytona とは、2020年現在においてもなお最も高い人気を維持する、Rolex が誇る最上位スポーツモデルです。

財力を誇示することでステータスを獲得するラッパーたちにとって、前述した最上位ドレスモデル Day Date と、最上位スポーツモデル Daytona は特別な存在であり、圧倒的な人気を誇ります。

Daytona

そんな Pusha T は同曲にて、「Rolex をダイヤモンドで埋め尽くしたことによって、文字盤が見えなくなってしまった」と歌っています。

このように腕時計 (あるいは他のジュエリー) をダイヤモンドで埋め尽くす行為は、「Iced out」もしくは「Bust down」などと呼ばれ、ヒップホップ・シーンでは好んで用いられるカスタム装飾です。ラッパーたちは手に入れた Rolex を更に派手に装飾すべく、Ben Baller や Mr. Flawless、Eliantte などをはじめとするジュエラーに足を運びます。

ダイヤモンドで装飾した Rolex を好むラッパーが増える一方で、「やはり Rolex はそのままの状態が美しい」と主張するラッパーも現れます。

A$AP Ferg – Plain Jane

Tourneau for the watch, presi Plain Jane

Tourneau (*1)で時計を買う ロレックスは「Plain Jane」だ (*2)

(*1) 高級腕時計を取り扱う New York の老舗リテーラー
(*2) Plain Jane は装飾を施していない Rolex のこと。本来の意味は、「普通の女の子」

A$AP Ferg は Genius のインタビューでも、「Rolex はそれ自体に価値がある。ダイヤモンドを装飾してしまったら価値を下げることになるんだ。ピカソの絵に付け足しはしないだろ」と発言しています。

Travis Scott – Watch (feat. Lil Uzi Vert & Kanye West)

Travis Scott、Lil Uzi Vert、Kanye West と、現代ヒップホップシーンを代表するファッションアイコン3人が、タイトル通り「Watch (腕時計)」について歌う1曲。こちらの楽曲では、「Plain Jane 派」と「Iced out 派」の両者の意見を聴くことができます。

(Lil Uzi Vert)

Look, pull up Sky Dweller, and it’s vanilla

俺のバニラ色の Sky Dweller (*1) を見ろ

All white, that Plain Jane

オールホワイトで Plain Jane

(*1) Sky Dweller は、Rolex が展開する実用性に富んだ旅行者向けのドレスモデル

(Kanye West)

Look at my Rollie, look at your Rollie

俺の Rolex を見ろ (*1)

Your shit rockless, my shit hockey goalie

お前のはダイヤが足りない 俺のはアイスホッケーのゴールキーパーだ (*2)

You should gon’ hide it, man, it’s too bad

哀れだからさっさとそれを隠せ

Like a bald n***a still wearin’ durags, ha

ドゥーラグでハゲ頭を隠すみたいにな

(*1) Rollie は Rolex を表す頻出スラング
(*2) アイスホッケーと、ダイヤモンドを表す「Ice」をかけている。つまり Kanye の Rolex はアイスホッケーのゴールキーパーのように氷 (ダイヤモンド) に囲まれている、ということ

装飾を施していないそのままの Rolex を自慢する Lil Uzi Vert と、ダイヤモンドで装飾した Rolex を自慢する Kanye West。

同曲が物語るように、ラッパーたちの間でも Rolex への思いや好みはそれぞれ異なることが分かります。

Gunna – Oh Okay (feat. Young Thug & Lil Baby)

Two-tone Presi’ Rolex

ツートンの Rolex

Yeah, this drip you can’t catch

お前らには到底真似できない

アトランタのラッパー Gunna は『Oh Okay』という楽曲にて自身の Rolex を自慢するラップを披露しますが、後に Men’s Health のインタビューにて以下のように語っています。

This watch is a two-tone Prezi Rolex.

この時計はツートンのロレックスだ

I had to buy two watches to make this one watch, because they don’t make two-tone watches.

でも、ロレックスはツートンの時計を作っていないから、これを作るために二本の時計を買わなければならなかったんだ

The only reason I really bought it is because on the song “Oh Okay” I said ‘Two tone Prezi Rolex, Yeah this drip you can’t catch

何故こんなことをしたかというと、俺が『Oh Okay』という曲で『ツートンのロレックス、お前らには到底真似できない』とラップしてしまったからなんだ

つまり Gunna は『Oh Okay』の制作時にはまだ「ツートンの Rolex」を持っておらず、後にリリックとの辻褄を合わせるためにそれを作った、ということです。「嘘つき」とも「有限実行する真面目なラッパー」ともとれるリアルなのか否か判断しづらいリリックですが、若手ラッパーがつい先走って自慢してしまうほど、Rolex の所持がヒップホップゲームにおける重要なステータスであることが分かります。

贈り物としての Rolex

2Pac が友好の証として Biggie に Rolex を贈ったように、Rolex は贈り物としても大きな役割を果たします。

中でも DJ Khaled は、頻繁に Rolex をプレゼントすることで知られています。彼は、2017年にリリースしたアルバム『Grateful』が大成功を収めた後、彼のチームのメンバーたち全員にゴールドの Rolex Day Date (1つあたり約370万円) をプレゼントしました。

DJ Khaled は、アトランタのラッパー Future にも誕生日プレゼントととして Rolex Sky Dweller (約200〜400万円) を贈っています。

そんな Future も、息子の5歳の誕生日に Rolex Datejust (約310万円) をプレゼントしています。

このように、成功したアーティストたちは自らが Rolex を身につけるだけでなく、親しい人々に感謝や愛の形として Rolex を贈ります。また、プレゼントとしての役割はもちろんのこと、「Rolex を誰かにプレゼントできる」というステータス誇示の意味合いも少なからずあるでしょう。

おわりに

今回は、Rolex が担うステータス性と、ラッパーたちが Rolex を取り入れ流行させてきた背景に焦点を当て、ヒップホップと Rolex の関係性について考察しました。今回ご紹介した楽曲以外にも Rolex について言及した作品は多数存在しますので、これを機に是非探してみてはいかがでしょうか。また、ヒップホップシーンにおいて高い人気を誇る Rolex 以外の高級腕時計メーカー「Patek Philippe」や「Audemars Piguet」、「Richard Mille」などについても、いずれ (ご要望があれば) まとめる予定です。最後までお読みいただきありがとうございました。

Written by Riku Hirai

Kanye West が大統領選挙に出馬する可能性が濃厚に

昨日、Kanye West の選挙チームの一人である Steve Kramer が『ニューヨーク』誌に「もう彼は選挙を戦わない」と話したという報道があり、大統領選への出馬の可能性が低いだろうとみられていた Kanye West。

そんな彼が、7/15日に『Federal Election Commission(連邦選挙委員会)』に出馬を届け出た。その証拠がこちらの画像である。

ちなみに、この立候補の文書は以下のリンクから見ることができる。

https://docquery.fec.gov/cgi-bin/forms/C00751701/1422253

また、政党(Party)の箇所には「BDY」と記されており、これは Kanye が宣言していた「Birthday」党からの出馬を示しているとみられる。

ただ、留意すべきは、もう一つ重要な書類を提出しなければいけないということだ。その書類では5千ドル(約53万円)の金額を調達するか、支払わなければならないため、そちらの書類が受理されて初めて立候補が確定することになる。

アニメとヒップホップ – 自身を主人公に投影するラッパーたち

日本が世界に誇るカルチャーの一つであるアニメや漫画。外国の方々に「日本といえば」と尋ねると、間違いなく侍や忍者と並びアニメや漫画が挙がるでしょう。また、実際にたくさんの外国の方々がアニメや漫画といったカルチャーを通して日本に興味を持ち始めています。

こうした世界的な傾向は、ヒップホップの世界においても色鮮やかに現れ始めています。アニメや漫画の精神を自らの作品に反映する者、アニメのサウンドを作品に落とし込む者など、その表現方法は様々ですが、日本のアニメや漫画に影響された作品群がヒップホップのサブジャンルとなり得る日が刻一刻と近づいています。

非現実的、ファンタジー的なイメージの強いアニメや漫画に対し、リアルな現状を泥臭く訴えるイメージが強いヒップホップ。一見真逆の存在とも思える両者ですが、本当にこれらは正反対の性質をもつカルチャーなのでしょうか。そこで今回は日本のアニメや漫画のカルチャーとヒップホップの関係性に焦点を当て、なぜラッパーたちは自らの作品にそれらのカルチャーを取り入れるのかを考察していきたいと思います。

アニメキャラクターを自身に投影

アニメの要素を自身の作品に取り入れるアーティストたちは、時にアニメの主人公に自身を投影します。今となってはゴスペルアルバムをリリースしたり、大統領選への出馬意向を示したりとアニメとは無縁の世界に身を置いているように見える、Kanye West もその中の一人です。まずはこちらのミュージックビデオをご覧ください。

Kanye West による三枚目のスタジオ・アルバムである『Graduation』に収録されている『Stronger』のミュージックビデオです。ネオンが輝く東京の街並みや近未来的なロボットなどが登場し、SFアニメを連想させるものとなっております。勘の良い方ならすでにお気づきかもしれませんが、実はこちらのミュージックビデオは、大友克洋によるSF漫画・アニメである『AKIRA』に実際に登場するシーンなぞらえて制作されています。

検証動画をご覧いただければ一目瞭然ですが、金田のバイクに跨って東京の街を疾走するシーンや、病院でうなされるシーンなどが、原作とほとんど同じ構図で再現されています。それに加えて、ミュージックビデオ内には「タスケテ!」や「ウゴクナ!」などの日本語のテロップまで挿入されています。

アニメキャラクターに自身を投影するラッパーは他にも多数存在し、その一人が Lil Uzi Vert です。最近でも『Futsal Shuffle 2020』や『That’s A Rack』などのアートワークに自身をアニメキャラクターにデフォルメ化したものを起用したことから、アニメ好きというイメージは浸透しているように思えますが、彼が作品にアニメのエッセンスを加え始めたのはそれよりも前にさかのぼります。

Lil Uzi Vert が2016年にリリースした3枚目のミックステープ『Lil Uzi Vert vs. the World』収録の『Ps & Qs』のミュージックビデオです。日本の学校を舞台に、学園生活を通しての恋愛をテーマにしたビデオです。下駄や招き猫が映し出されたり、背景には浮世絵や日本語が書かれた黒板などが確認できます。特徴的なのは、全体を通して被写体の瞳がかなり大きく加工されている点で、日本のアニメキャラクターの瞳が潤いを持った大きな描写で描かれていることを表現しようとしたのでしょう。

ビデオ内では頻繁の実写と2Dアニメの描写が切り替えられ、クライマックスではCGアニメに切り替わる構成となっており、Lil Uzi Vert が主人公の学園アニメを見ているような錯覚を視聴者に起こさせます。

ここまででご紹介した Kanye West と Lil Uzi Vert の事例に共通することは「自信を主人公に投影している」点です。ほとんどのアニメや漫画は、主人公が「何か」と戦うことによってストーリーが展開していきます。『AKIRA』のようなSF作品では、特定の敵と身体的な戦いを繰り広げますし、一見戦いとは無縁に見える『けいおん!』のような学園ドラマでも、「軽音楽部の廃部」という事実と闘います。

ヒップホップは社会に対する反骨精神が現れやすい音楽です。アニメのキャラクターに自身を投影することによって、そのような「自分 vs 世界」的なマインドを上手く表現することができたのではないでしょうか。先ほども言及した Lil Uzi Vert のミックステープのタイトルも『Lil Uzi Vert vs. the World』となっており、主人公の Lil Uzi Vert が世界と戦う一つのアニメ作品のように思えてきます。

アニメサウンドとヒップホップの融合

アニメの要素を作品に取り入れる際、サウンドを利用してその世界観を表現する方法も主流です。アニメの主題歌をサンプリングして制作したトラックに乗せてラップをしたり、作中に登場するアイコニックな効果音を曲中に挿入したりと、こちらも手法は様々です。

Wiz Khalifa が Snoop Dogg をフィーチャーして 2016 年に公開した楽曲『No Social Media』は、「ひぐらしのなく頃に」のメインテーマをサンプリングして制作された楽曲です。Wiz Khalifa や Snoop Dogg がアニメのリファレンスを用いていることに意外性があり、興味深い楽曲となっています。

JID や EarthGang などが所属するレーベル Dreamville のボスである J. Cole も日本のアニメの楽曲をサンプリングしています。彼の4枚目のスタジオ・アルバムより、プロジェクトタイトルにもなっている楽曲『4 Your Eyez Only』は、日本でもかなり有名な国民的アクション漫画「ルパン三世」のサウンドトラックに収録されている楽曲をサンプリングしています。

最近のシーンの傾向から、アニメやオタク文化に魅了された若手ラッパーたちが、日本のアニメや漫画のカルチャーを楽曲に取り入れている印象を抱きがちですが、実は Wiz Khalifa や Snoop Dogg、そして J. Cole などのレジェンド級のラッパーたちも同じように自身の楽曲とこれらのカルチャーをミックスしています。

続いては、アニメに登場するアイコニックな効果音をアクセントとして楽曲に加えるパターンをご紹介します。 はじめにご紹介するのは、 Trippie Redd による最新アルバム『A Love Letter to You 4』より、故 Juice WRLD と未だに服役中のフロリダのラッパー YNW Melly をフィーチャーした『6 Kiss』です。

曲が始まると同時にイントロ的な役割を担っている可愛らしいサウンドは、『美少女戦士セイラームーン』の第3期に登場した「ムーンスパイラルハートアタック」という技を発動する際に流れるサウンドの一部です。ちなみに、曲中定期的に挿入されているピカン!という効果音は、ウォルト・ディズニー社とスクエア・エニックスの提携によって制作された家庭用ゲームソフト「キングダムハーツ」に登場する効果音です。

アニメ調アートワークの流行

アニメや漫画の世界観を自身の作品にて表現する際、大きな役割を果たすのがアートワークです。楽曲のプロモーションを行う時、ストリーミングサービスなどで配信する時など、ほとんど全てのプロセスにおいて、作品の顔となり得るのがアートワークだからです。

アートワークは、記事前半で述べたような「自身をアニメキャラクターに投影」する際に大変役立つようです。現行のヒップホップシーンには既にラッパーたちをアニメ化しアートワークを制作する、いわゆる「絵師」的存在のアーティストも登場し始めています。

その中の一人が Artxstic という人物です。彼は Lil Uzi Vert の『Futsal Shuffle 2020』や『That Way』のアートワークも担当した人物で、主にラッパーたちをアニメキャラクター化したデジタル画を制作しています。

Artxstic のインスタグラムアカウント (@artxstic)

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は、アニメとヒップホップの関係性に焦点を当てて、なぜラッパーたちは自らの作品にそれらのカルチャーを取り入れるのかについて考察してきました。ご紹介した楽曲意外にも、アニメや漫画にリファレンスを置いた作品はまだまだ存在しますので、これを機に探してみてはいかがでしょうか。

whoiskosuke

Chance the Rapper が Kanye West の大統領選出馬を支持

Kanye West の Sunday Service に参加したことでも知られるシカゴ出身のラッパー、Chance the Rapper。

君たちがジョー・バイデンの方がカニエ・ウェストよりも大統領に相応しいと考えているなら、それはなぜだい?

「トランプみたいな大統領はもうイヤだ(*1)」と言いたいのは分かるが、トランプを追い出したいかために、ジョー・バイデンを支持すべきだと考える訳を教えてくれないか?

#1・・・「get trump out」は「トランプ大統領を追い出す」という意味と、「切り札を出す」という意味をかけています。

そんな彼が今日、Twitter 上で上記の文章を投稿した。このように、彼は Kanye West の大統領選出馬について、支持する立場をとった。

Kanye と同じくシカゴをホームタウンとするラッパーとして、同胞に敬意を示した Chance は、この他にも自身の考えを述べた。

(Kanye West の母へのトリビュートソングを引用して)

君たちみんながバイデンに投票するよう説得しているんだね。失望したよ。

正直に言うけど、君たちの多くが人種差別主義者だよ。

みんなが「大統領らしく」という言葉を使うことに対して思うことがあるんだ。彼らが大統領らしいかどうかっていう基準を持っているなら、アンドリュー・ジャクソン(*1) は大統領らしく振る舞っていたってことだよね?

#1・・・アンドリュー・ジャクソンは第七代アメリカ合衆国大統領であると同時に黒人奴隷農場主であり、生粋の白人至上主義者として知られています。

Juice WRLD – シカゴ出身の若きレジェンド

YouTube にて記事の内容をまとめております。
動画でご覧になりたい方はこちらからどうぞ。

Last time, it was the drugs he was lacing

彼はドラッグと闘っていた

All legends fall in the making,

レジェンド達は皆、志半ばで堕ちていく

sorry truth, Dying young, demon youth

残念だけど事実なんだ 若くして死ぬ 悪魔が若者を狙っているんだ

Legends – Juice WRLD

2019年12月8日、ヒップホップシーンのみならず現代音楽シーンを牽引していた若きスター Juice WRLD が逝去。わずか21歳という若すぎる死に、世界中が涙を流しました。

今回は、今週金曜日に彼の死後初となるアルバム『Legends Never Die』がリリースされたことを踏まえ、今一度彼の人生について振り返ります。

生い立ち

Juice WRLD こと Jarad Anthony Higgins は、1998年12月、イリノイ州シカゴにて生を受けました。翌1999年には家族で州内のホームウッドに移住しますが、Juice が3歳の頃に両親が離婚。それ以降は彼と彼の兄、そして母親の3人で暮らしていくこととなります。

4歳の頃にピアノを習い始めた Juice は、後にギターやドラムのレッスンも受けるようになり、学校の授業ではトランペットも演奏するなど、幼い頃から音楽に慣れ親しんでいました。

信心深く保守的な母親の影響で、ヒップホップを聴くことが許されなかった Juice は、「Tony Hawk’s Pro Skater」や「Guitar Hero」等のビデオゲームに使われていたロックやポップス (Billy Idol や Blink-182、Black Sabbath、Fall Out Boy、Megadeth、Panic! at the Disco など) を聴いて育ったといいます。

音楽面での英才教育を受けていた一方で、Juice は幼い頃から大量のドラッグを使用していました。6年生の頃にリーンを飲み始めた彼は、その後パーコセットやザナックスも使用するようになり、次第にドラッグに依存していきました。

キャリアの開始

高校1年生の頃に音楽活動を開始した Juice (キャリア初期は JuicetheKidd という名義の下活動) は、2015年に初めて SoundCloud に楽曲をリリースしました。

Forever

ほとんどのヴァースを自身のスマートフォンで録音したという1曲。まだまだ音質やフロウ、ラップスキルに未熟さや粗削りさが残るものの、持ち前のハスキーな歌声と切ないリリックからは、皆さんが思い浮かべるであろう昨今の Juice WRLD らしさを感じることができます。当時は、ラップ・パートが楽曲の大半を占めており、ブレイク後の彼が得意としていた歌いながらラップするスタイルとは一味違う魅力があります。

JuicetheKidd 名義の元、ミックステープ『What Is Love?』(1曲のみの収録) や EP『Juiced Up The EP』をリリースした後、彼は尊敬するラッパー 2Pac が出演している映画『Juice』と、「世界を獲る」という意味の「World」にちなんで、現在の名前である Juice WRLD という名前に変更しました (ちなみに、WRLD は単純にスペルミスだそうです)。

2017年には、今となっては Juice とのタッグで有名な Nick Mira によるプロデュースの楽曲『Too Much Cash』をリリースします。

Too Much Cash

この頃から Juice は急激にスキルアップを果たします。JuicetheKidd 時代よりも多彩なフロウを駆使し、ブレイク後の彼のスタイルにも通づるキャッチーなメロディラインを用いたシンキング・ラップも聴くことができます。

当時、高校を卒業し工場で働き始めた Juice は、その仕事に不満を覚えわずか2週間で退職。その後ますます音楽活動に専念するようになった彼は、同年に初のフルレングス EP『999』をリリースします。この EP に収録されていたのが、後に大ヒットを記録する『Lucid Dreams』でした。

EP『999』

ちなみに「999」は彼が好んで用いる数字で、悪魔 (邪悪なもの) の数字とされる「666」をひっくりかえ返したもの。「どんなに困難な状況でも、それをひっくり返してポジティブに前に進もう」というメッセージが込められています。

同 EP のリリース後、彼は Waka Flocka Flame や Southside、G Herbo ら大物アーティストから注目を受け、同郷シカゴ出身のラッパー Lil Bibby 率いる Grade A Productions と契約を結ぶことになります。

ヒット曲とデビューアルバムのリリース

2017年末、Juice は3曲収録の EP『Nothing Different』をリリース。同 EP 収録の『All Girls Are the Same』がヒットし、人気ヒップホップ・チャンネル Lyrical Lemonade の Cole Bennett が監修したミュージック・ビデオが発表されます。

All Girls Are the Same

All girls are the same, they’re rotting my brain, love

女の子はみんな同じだ 俺の脳を腐らせていく

Think I need a change, before I go insane, love

俺は変わらなきゃいけないんだ 狂ってしまう前に

この『All Girls Are the Same』は、Juice が自身の恋愛観と弱さを正直に曝け出した1曲です。「大勢の女性を従える」ということが一種のフレックスであり、ステレオタイプでもあるヒップホップ (音楽) 業界において、Juice は真実の愛を求めていました。彼は、真実の愛を追い求める中で負ってしまった心の傷を美しくも哀しいメロディに乗せて歌い、同じ悩みを抱える人々の共感を呼びました。

同曲で一躍名を馳せた Juice は、2018年、大手レーベル Interscope Records と300万ドル (約3億2000万円) の契約を結びます。

そして 2018年5月、彼は EP『999』収録の『Lucid Dreams』を正式にシングルリリースします。

Lucid Dreams

I have these lucid dreams where I can’t move a thing

動くことができない場所で明晰夢を見るんだ

Thinking of you in my bed

ベットの中で君の事を考える

You were my everything

君は俺の全てだったんだ

Thoughts of a wedding ring

結婚指輪の事まで考えてた

Now I’m just better off dead

今じゃ俺は死んだ方がましさ

I’ll do it over again

もう一度やり直したいんだ

I didn’t want it to end

終わらせたくなんかなかった

I watch it blow in the wind

風に吹かれるのを見ている

I should’ve listened to my friends

友人の意見を聞くべきだった

Leave this shit in the past, but I want it to last

この過ちを過去に葬るよ でも俺は続けたいんだ

You were made outta plastic, fake

君はプラスチックでできた偽物だった

I was tangled up in your drastic ways

俺は君の極端なやり方に振り回されてた

Who knew evil girls had the prettiest face?

誰よりも可愛い女の子が悪女だなんて分かるはずないだろ

You gave me a heart that was full of mistakes

君がくれた心は嘘だらけだった

I gave you my heart and you made heart break

俺は君に心を捧げたのに、君はそれを壊したんだ

映画 Léon のエンディング・テーマとしても知られる Sting の名曲『Shape of My Heart』をサンプリングしたビートの上で、Juice が自身の失恋についてエモーショナルに歌う同曲は、いわゆる「エモ・ラップ」を代表する1曲です。

同曲は、US Billboard Hot 100 チャートにて74位デビュー、後に最高2位を記録し、2018年に最もストリーミング再生された楽曲の1つとなりました。

2つのヒット曲を世に送り出した Juice は、同月に待望のデビュー・アルバム『Goodbye & Good Riddance』をリリース。同アルバムは、US Billboard 200 チャートにて15位でデビューし、3週目には6位まで浮上しました。

様々なアーティストとの共演

デビュー・アルバム『Goodbye & Good Riddance』のリリースを皮切りに、Juice WRLD は様々なアーティストと共演するようになります。

アルバムリリースから約2ヶ月後には、Lil Uzi Vert をフィーチャーしたシングル『Wasted』をリリースし、アルバム『Goodbye & Good Riddance』にも追加。

Wasted (feat. Lil Uzi Vert)

キャリア初期は Lil Uzi Vert と比べられることも多かった Juice ですが、程良く脱力して歌う Juice と、声を絞り出して力強く歌う Lil Uzi Vert のバランスが取れた良曲です。

初めて人気アーティストとの共演を果たした彼は、YBN Cordae と Lil Mosey をツアーアクトに呼んだファースト・ツアー「The WRLD Domination Tour」も開催しました。

Travis Scott – No Bystanders (feat. Juice WRLD & Sheck Wes)

Travis Scott が2018年にリリースしたアルバム『ASTROWORLD』収録の1曲。Sheck Wes と共に客演参加した Juice は、楽曲の肝となるイントロとポスト・コーラスにあたる部分で、メロディアスなエッセンスを加える役割を果たしています。

Ski Mask the Slump God – Nuketown (feat. Juice WRLD)

親友同士として知られる Ski Mask the Slump God との1曲。こちらの楽曲では、Juice が普段滅多に見せない、がなり声で激しく叫ぶようなラップを聴くことができます。この楽曲を聴いて、Juice と Ski Mask、そして今は亡き XXXTENTACION とのコラボ曲も聴いてみたかったと痛感するファンの方も多いのではないでしょうか。

2018年10月、Juice WRLD は Future とのコラボ・ミックステープ『WRLD ON DRUGS』をリリースします。

Fine China

主にドラッグに関するリリックを歌う Future と、「Future の影響でリーンを飲み始めた」と語る Juice WRLD の相性は、音楽面においても抜群でした。両者とも、かすれ気味な声で歌うメロディアスなフロウを得意とし、15歳の歳の差があるとは思えないほどのコンビネーションを発揮しました。

セカンド・アルバムのリリース

2019年3月、Juice は待望のセカンド・アルバム『Death Race for Love』をリリースします。

2018年10月に、イギリスの人気ラジオ DJ、Tim Westwood の番組に出演し、約1時間の間ほぼノンストップでフリースタイルを披露したことでも知られる彼は、同アルバム収録の楽曲を全てフリースタイルでレコーディングしたことを明かしています。

Tim Westwood TV でのフリースタイル

Robbery

She told me put my heart in the bag

彼女は俺に言ったんだ 俺の心をバッグに詰めろ

And nobody gets hurt

そしたら誰も傷つけないって

Now I’m running from her love,

俺は今、彼女の愛から逃げている

I’m not fast

でも俺は速くない

So I’m making it worse

それが事態を悪化させているんだ

Now I’m digging up a grave, from my past

だから今、過去を埋めるために墓を掘っている

I’m a whole different person

過去の俺はもういない

It’s a gift and curse

愛は贈り物であり、呪いだ

But I cannot reverse it

俺にはどうすることもできないんだ

アルバムの先行シングルとしてリリースされた『Robbery』では、Juice が彼の心を奪った彼女を Robbery (強盗) に例えて歌います。Nick Mira 手掛ける哀愁漂うピアノが特徴的なビートと、感情に訴えかけるような Juice のフロウが完璧にマッチした楽曲です。

Fast

I been living fast, fast, fast, fast

俺は生き急いでいる

Feeling really bad, bad, bad, bad

気分は最悪だ

Time really moves fast, fast, fast, fast

時間は早く過ぎていくんだ

Better hurry up and get in your bag, bag, bag, bag

急いでバッグに詰めたほうがいいぜ

I wear Dior, not a fad, ‘ad, ‘ad, ‘ad

Dior を着ている 流行りには流されない

I know all these n***as gettin’ mad, mad, mad, mad

奴らが怒っているのは分かっている

My hand on my trigger, I’ma die for respect, yeah

引き金に手を添えて リスペクトされながら死んでやる

Fucking with my money, you’ll get dealt like that, yeah

俺の金を奪おうとするなら、痛い目を見るぜ

『Fast』では、Juice が20歳という若さで富と名声を手にし、彼の生きる世界の時の流れが急激に早くなってしまったことについて歌っています。若くしてスターダムを駆け上がった彼ならではの苦悩がひしひしと伝わる1曲です。

これらの楽曲を収録した同アルバムは、初週165,000ユニットを売り上げ、US Billboard 200 チャートにて1位デビューを飾りました。

突然の死

セカンド・アルバムが大成功を収めた後、Nicki Minaj のツアーに参加したり、多様なアーティスト (K-Pop グループの BTS や、Ellie Goulding、Benny Blanco、YoungBoy Never Broke Again など) との共演を果たしたりと順風満帆なキャリアを積んできた Juice WRLD。

ファンや友人、恋人らに心配されていた薬物使用に関しても、Juice は依存していたリーンの使用をやめることを宣言し、精神的にもポジティブな方向に向かっているように見えました。

俺はもう永遠にリーンを使わない お別れだ

そんな彼に、ある日突然不運が襲います。2019年12月8日、Juice WRLD は薬物のオーバードーズ (過剰摂取) によりこの世を去りました。

当時、Juice はプライベートジェット機でシカゴ・ミッドウェイ国際空港に向かっており、彼とその仲間たちは、機内へ銃を違法に持ち込んでいました。それを知ったパイロットが地上にいるスタッフに通報し、着陸後直ちに立ち入り検査が行えるよう、FBI(連保捜査局)と FAA(連保航空局)の捜査官が空港に駆けつけていました。Juice は、この立ち入り検査によって発覚するであろう薬物所持の罪を軽くするために、所持していたパーコセットを大量摂取し発作を起こしたと考えられています。Juice WRLD こと Jarad Anthony Higgins は、わずか6日前に21歳の誕生日を迎えたばかりでした。

彼は、2018年にリリースした故 Lil Peep と故 XXXTENTACION への追悼曲『Legends』にて、「レジェンドたちは皆若くして死んでしまう」と嘆いていましたが、彼もそのレジェンドたちの仲間入りをしてしまうという、何とも悲劇的な結末を迎えてしまいました。

そんな彼の悲し過ぎる死から早半年が過ぎ、今週10日、遂に彼の遺作『Legends Never Die』がリリースされました。今週は、そんな彼 Juice WRLD がこの世に残した遺産に浸ってみてはいかがでしょうか。

Written by Riku Hirai

Yeezy Company がコロナ渦で2億円以上のローンを借りていたことが発覚

先日『Wash Us in the Blood』をリリースし、大統領選挙に出馬することも正式に発表するなど、話題沸騰中の Kanye West。

『Wash Us in the Blood』

「The Hollywood Reporter」 によると、彼が率いる Yeezy brand が SBA(the Small Business Administration) からパンデミックによるローンを借りていたそうだ。

SBA は およそ二億千万円から五億三千万円強の融資(貸付)を行っていることから、最大で五億円を超える借金をしている可能性も考えられる。先日、 Yeezy は GAP とのコラボを大々的に発表しているだけに、経済面への心配が募るばかりである。

Gucci Mane が2700万円相当のダイヤモンドを歯に埋め込む

今週、豪華メンバーを引き連れてニューアルバム『So Icy Summer』をリリースしたばかりの Gucci Mane。

そんな彼が、2700万円相当のダイヤモンドが施されたインプラントをお披露目した。

https://twitter.com/rapallstars/status/1279793899616317443?s=21

歯に直接ダイヤモンドを埋め込むスタイルは Drake や Lil Uzi Vert などの他の大物ラッパー達もお気に入りのようだが、今後はグリルズに変わるヒップホップシーンの流行となるのであろうか。

Gucci と提携し、ブランドラインを創設することも仄かしている Gucci Mane。今後も彼から目が離せない。

Roddy Ricch がリークによるストレスをジョイントで紛らわす

『The Box』の大ヒットにより、一流ラッパーの仲間入りを果たした Roddy Ricch。

客演で参加した Pop Smoke の最新アルバム『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』の一曲『The Woo』も絶賛ヒット中の彼だが、Drake との楽曲がリークされたことでも話題となっていた。以下の動画がそのリーク曲である。

https://twitter.com/nyleakerz/status/1279767085535694848?s=21

そんな彼が、インスタグラム上でリークされたことへの不満を露わにすると共に、ジョイントでストレスを紛らわした。

https://www.instagram.com/p/CCRSd-NH1Ke/?igshid=g9l4uy3wivxg

動画内で以下のように発言している。

おい、リークするなんて最低だぜ

リーク曲はヒップホップリスナーの間でかなりの好評を博しているが、果たして Drake との楽曲はリリースされるのだろうか。

差別撤廃を訴え続けるラッパー達 – 今聴くべきプロテストソング4選

米ミネソタ州ミネアポリスで、George Floyd 氏が警察官によって殺害された日から早1か月以上が経過しました。今回の事件、そして後に続く反レイシズムの運動は、主にSNSを通じて史上類を見ないほどの規模で世界に広がり、アフリカ系アメリカ人に対する差別の歴史、現状を多くの人が知ることになりました。世界各国の多くの人たちがアメリカ社会の人種差別の現状をアメリカだけの問題ではなく普遍的な人種差別の問題と受け止め、差別的な制度の変革を今も訴え続けています。

多くのアフリカ系アメリカ人の人たちにとって、音楽は自身が生きている現実を表現するプラットフォームとしての役割を常に果たしてきました。実に、公民権運動以前の時代から、多くのアーティストが音楽を通して人種差別や貧困といったアメリカ社会の不平等について取り上げ、社会、そして個人の意識の改革の必要性を訴えてきました。今回の事件後も、多くのラッパーやR&Bアーティストが反レイシズムの曲をリリースしています。

そこで、今回は人種差別を取り上げている曲を4曲ご紹介させていただきます。全曲最初から最後まで解説したいところですが、今回は重要な部分の解説にとどめておきます。

1. Joey Bada$$ -『Land of the Free』

2016年にリリースされた『ALL-AMERIKKKAN BADA$$』収録の一曲。

3年以上前の作品ですが、アメリカ社会に根付く人種差別の現状をテーマにしたアルバムなので、そこに込められたメッセージは現在の状況と通ずるところがたくさんあります。

The Notorious B.I.G.の名曲『Juicy』と同ネタを使ったトラックに乗せて、この曲はこんな一節で始まります。

Can’t change the world unless we change ourselves

俺たち自身が変わらなければ世界を変えることはできない

Die from the sicknesses if we don’t seek the health

健康を求めなければ病気で死んでしまう

この「病気」は「人種差別やアメリカ社会の腐敗といった問題」、「健康」は「その問題の改善・解決」という様に解釈できるでしょう。

何が問題であるかを考え、その解決を求めるために行動しないと、結局は自分自身もその問題に足を捕らわれ、その犠牲になってしまう。つまり、私たちの目の前にある問題を解決するためには、一人ひとりの自己変革が不可欠であることを訴えています。

Genius

歌詞解説サイトの Genius にて、Joey はこの一節をあらゆる人々に向けて書いたものだと語っており、この曲自体は人種差別、アメリカの腐敗がテーマですが、人種差別だけでなく私たちの生きている社会に転がる様々な問題に対して「あなたならどのように向き合い、どのような行動をとるのか?」と問題提起しています。

この曲が収録された『ALL-AMERIKAN BADA$$』は、Joey が400年に至る黒人差別の歴史と向き合い、それに対する解答として出した非常にシリアスな作品ですが、そこに込められたメッセージは力強く、私たち一人ひとりに向けられた普遍的なメッセージなのではないでしょうか。

またアルバムを通して感じられるのは悲観的な雰囲気ではなく、悲劇的な環境の中においても希望を失わずに戦い続けようとする一人の若者の気高い精神です。

このアルバムが今のアメリカを代表する作品であることはまず間違いないでしょう。

2. Lupe Fiasco –『WAV files

続いては、Kanye West の『Touch the Sky』へのフィーチャリングでも知られるシカゴのリリシスト Lupe Fiasco が2018年にリリースしたアルバム『DROGAS WAVE』に収録されている1曲『WAV files』。

アトランティックレコードを離れた後の彼の作品は、以前ほど爆発的にヒットしているわけではないですが、作品自体のクオリティはむしろ上がっているように思います。

このアルバムは「中間航路(黒人奴隷をアフリカからアメリカ大陸や西インド諸島へと運ぶ大西洋航路のこと)で奴隷船から海に飛び降りた奴隷」をテーマとしたコンセプト・アルバムです。

奴隷船のイメージ図

アメリカの人種差別の歴史について考えるとき、奴隷貿易の歴史は避けて通れません。黒人差別の歴史を木に例えるならば、奴隷貿易は根の部分にあたるといえるでしょう。中間航路や奴隷貿易の悲惨さについては、様々な記録や文献があるので一度調べてみることをおすすめします。

そして、この曲はそのような奴隷の亡霊の視点で書かれており、彼らが実はまだ死んでおらず、他の貿易船を沈めながらアフリカ大陸に帰るべく海中を歩き続けているという、とても斬新で衝撃的な内容が展開されていきます。

My bones is why the beach is white

砂浜が白いのは、そこに俺の骨があるからだ *1

Why the beach is white ’cause they bleached us light

砂浜が白いのは、あいつらが俺たちを明るく染めたからだ *2

So I’m goin’ back home, I took a leap last night

だから俺は帰るべきところへと向かっている。俺は昨夜飛び込んだんだ

So I’m walkin’ on water ’til my feet just like Jesus Christ

この足がイエスキリストみたいになるまで俺は海の上を歩き続ける *3

Wow, walkin’ on water

海の上を

*1・・・海に飛び込み亡くなった奴隷たちの骨が海岸まで流れ着いたことを意味しています。
*2・・・奴隷の所有者たちは奴隷たちからアフリカ独自の宗教や言語などの文化を取り上げ、西洋の文化や価値観を強制しました。
*3・・・イエスキリストは大嵐の中海の上を歩いたとされています。

静かにピアノがループするビートの効果も相まって、本当に海に飛び込んだ奴隷たちが海の底を歩いているイメージが浮かんでくるようです。また、特筆すべきなのは3ヴァース目の構成です。このヴァースで、彼は初めの部分以外ほとんど韻を踏むことなくひたすら実在した奴隷船の名前を挙げていきます。彼ほどのスキルがあれば奴隷貿易について語りながらいくらでもパンチラインを作ることができたはずですが、あえて韻を踏まず、名詞だけを並べていくという手法を彼は意図的に選択しました。

これは、おそらく他のどのラッパーもやっているようでやっていない画期的なアプローチでしょう。そんなアプローチが功を奏して、どれだけ多くの船が奴隷を連れて大西洋を航行していたのかが明確に分かる上に、語り手である奴隷たちの亡霊が奴隷船を沈めながら海中を往来しているイメージが浮かび上がってきます。

この曲の内容はフィクションですが、歴史の中で忘れられた存在である、奴隷船から飛び込み海の藻屑と化した何十人・何百人の名もなき奴隷たちに光を当て、「彼らはただ無残に死んだのではなく、今も故郷に向かって歩いているのだ」と語ることで、全く新しい視点を投げかけるものとなっています。

また、擬人法や比喩など、様々なイメージを想起させる効果がたくさん使われており、聞けば聞くほど深みを感じる非常に文学的な作品でもあります。是非1度リリックを追いながら、その魅力とメッセージに触れてみてはいかがでしょうか。

3. Kenneth Whalum –『Might Not Be OK (feat. Big K.R.I.T.)』

次は、Jay-Z の『4:44』にも参加したテネシー州メンフィスのサックス奏者である Kenneth Whalum が、2016年に Big K.R.I.T. を客演に迎えリリースした1曲『Might Not Be OKです。

この曲は、同年7月にルイジアナ州バトン・ルージュにてアルトン・スターリンというアフリカ系アメリカ人の男性が警官によって射殺された事件を受けてリリースされ、警察によるアフリカ系アメリカ人への暴行を取り上げています。

リリースに至った経緯は Big K.R.I.T. 本人が Genius のインタビューにて詳しく説明しているので是非見てみてください。

この曲は Big K.R.I.T. の淡々とした語り出しからヴァースが始まります。

Mommas been cryin’ and they gon’ keep cryin’

ママたちはずっと泣き続けてる、これからも泣き続けるだろう

Black folk been dyin’ and they gon’ keep dyin’

黒人たちは死に続けてる、これからも死に続けるだろう

Police been firin’ and they gon’ keep firin’

警察は銃をぶっぱなし続けてる、これからもそれを続けるだろう

The government been lyin’ and they gon’ keep lyin’

政府は嘘をつき続けている、これからも嘘をつき続けるだろう

Kenneth Whalum –『Might Not Be OK (feat. Big K.R.I.T.)』

ここで、彼は黒人が実際に今どのような状況に生きているのかを端的に表現しています。

黒人たちが警官の手によって命を失うたび、母親は自分の子どもの死を嘆き悲しむが、司法は事件の事実に直面せず、殺した警官は正しく裁かれることはない。これに対して抗議の声を上げ、正義を訴えても、また同じように黒人が警官の手によって殺され、不起訴処分で終わる、という繰り返し。

今日に至るまでたくさんの人が、幾度となく黒人に対する不当な逮捕や暴行に反対し、殺人に関わった警官を裁くよう訴えてきましたが、警官による黒人への暴行が後を絶つことはなく、そのような警官の処遇は起訴どころか無罪放免で済まされてきました。

そのような変わらない差別の現状に対して、ようやく当事者の黒人たちだけでなく、他の人たちも共に声を上げよう、社会全体としてこの問題と向き合おうという動きが高まり、今回のような国際的な抗議活動が行われる結果になりましたが、「黒人への差別をやめろ」というメッセージは、大昔から訴えられてきました。

何年、何十年、何百年と続く差別の中で、状況を変えたくてもなかなか変わらない、そんなどうしようもない現実に対する怒りや悔しさといった悲痛な感情が、曲が進むにつれて感情的になっていく彼のラップから、ひしひしと伝わってきます。

4. J. Cole –『Be Free

2014年、ミズーリ州セントルイス群ファーガソンにて Michael Brown という18歳の黒人の青年が警官によって殺された事件に対するアンサーソングとしてリリースされた1曲。

この事件でも彼の殺害に関わった警官は不起訴処分とされ、不当な措置であるとして大規模な抗議運動が行われました。この事件からもうすぐ6年が経ちますが、未だ解決したとは言えません。

J. Cole は今世代最高のラッパーの名声を勝ち取っており、成功者であることは疑いようがないですが、この曲ではそのようなブランドは一切関係なく、アメリカという地に生きる一人の黒人男性としてこの事件に対する自身の心情をさらけ出しています。

All we wanna do is take the chains off

俺たちはただこの鎖を外したいだけなんだ *1

All we wanna do is break the chains off

俺たちはこの鎖を断ち切りたいだけなんだ

All we wanna do is be free

俺たちはただ自由になりたいだけなんだ

All we wanna do is be free

俺たちはただ解放されたいだけなんだ

*1・・・鎖は奴隷の動きを制限するために使われていました。

非常にシンプルでありながら力強さを感じるフックには、奴隷制時代から現代にいたるまで一貫して訴えられてきた黒人たちのメッセージの本質が凝縮されています。

「自由に生きたい、俺たちが願っているのはただそれだけなんだ」という言葉は、どれだけ長い間、アメリカ社会が彼らの声を理解せず、無視し続けてきたかということを示しています。

Can you tell me why

なあ教えてくれ、何でなんだ

Every time I step outside I see my niggas die

俺が外に出るたびに誰かが死ぬのを見なきゃいけないのは何でなんだ

I’m lettin’ you know

お前に言っておく

That there ain’t no gun they make that can kill my soul

どんな銃も俺の魂を殺すことはできない

Oh no

何てことだ

『Middle Child』などの曲での自信に満ちた堂々とした姿とは違い、歌いながらラップする彼の姿は悲しみや悔しさに打ちひしがれていて、いまにも崩れ落ちそうです。

そのような状況でもなお、彼は「銃では俺の魂は殺せない」と叫びます。どれだけ警察が、そして社会が黒人の命を奪おうとしても、その精神や存在まで否定することは不可能なのだということを宣言するこの言葉は、彼の悲痛な叫びの中でもひときわ鋭く響いてきます。この曲は彼の最高傑作の1つであり、アメリカに生きる黒人の痛みや悲しみをこれ以上ないほど鮮明に描写した作品です。

おわりに

今回は黒人差別をテーマとしたものの中でも特にストレートに響く楽曲をご紹介させていただきました。ヒットチャートに載ることは少なくとも、黒人差別や社会の腐敗をテーマとしたラップ・ソングは他にもたくさんあります。今回ご紹介できなかった楽曲はプレイリストにまとめておりますので、この機会に是非聴いてみてはいかがでしょうか。

Hip Hop の歴史は、黒人たちが生きてきた歴史ととても深い関係にあります。昨今、George Floyd 氏の殺害事件をきっかけに史上最大規模の反人種差別の動きが世界へと広がっており、Black Lives Matter の運動、そして人種差別についての意識啓発の動きが高まっている中、彼らの音楽から学ばされること、感化されることは沢山あるのではないでしょうか。

https://music.apple.com/jp/playlist/protest-songs/pl.u-kv9lq7js7VY5Ga1?l=en

Nozomu Yoshida

『Savage Mode 2』のリリース日が近い可能性が浮上

先日、子供が無料でインターネット上にて金融を学べるプロジェクトを作り出した 21 Savage。

そんな彼が先週、『Savage Mode 2』のリリースを仄めかすツイートをし、ファンの間で「リリースが近いのではないか」と噂になっていた。

そして本日、『Savage Mode』の共作者であるプロデューサー Metro Boomin が『Savage Mode 2』を連想させるツイートを投稿。これにより、『Savage Mode 2』のリリースが近いことにより一層現実味が出てきた。

昨年グラミー賞にノミネートされるものの、惜しくも Tyler, The Creator に敗れた 21 Savage と、早くもレジェンドプロデューサーに仲間入りしつつある Metro Boomin。彼らのプロジェクトの続編がリリースされれば、ヒット作となること間違いなしだろう。

Iry Gotti が「唯一若い世代で一目置いているのは Travis Scott だ」と発言

Ashanti や Ja Rule、そして Jennifer Lopez などのプロデュースで知られ、Murder Inc. の創業者でもある Iry Gotti。

そんな彼が、今週行われた 「The Breakfast Club 」のインタビューで、若い世代のラッパーについて発言した。以下がその要約である。

俺が唯一尊敬しているアーティストは Travis Scott だよ。前のアルバム(ASTROWORLD) を誰かが流した時に、「誰だこいつは」ってなったんだ。

また、次のようにも言っている。

今の若い世代で、唯一考えやエネルギーが作品にみなぎっているのは Travis Scott だよ。

やはり、プロデューサーにさえ指示をする Travis Scott の音楽性はレジェンド世代のプロデューサーにも良く感じられたようだ。

SahBabii – カルト的人気を誇るミステリアスなラップスター

今週末の7月3日に約2年ぶりとなる待望のニュープロジェクト『BarNacles』をリリースする SahBabii。一部のリスナーからはカルト的な人気を誇りながらも、SNS の更新は最低限であったり、他のアーティストの楽曲へのゲスト参加が極端に少なかったりと、いまだに謎に包まれているミステリアスな彼。今回はそんな彼の生い立ちやキャリア、魅力について予習しておきましょう。

SahBabii とは

SahBabii (サーベイビー) こと Saaheem Valdery は1997年2月24日にシカゴで生まれました。彼の出身はアトランタだと思っている方も多いかもしれませんが、実はイリノイ州シカゴ出身で13歳まではシカゴで暮らしていました。13歳の時に彼の実の兄であり、彼の楽曲に度々客演として参加している T3 というラッパーの音楽活動を本格的に行うためにアトランタに引っ越して以来、アトランタを拠点として活動しています。

SahBabii という名前の由来ですが、インタビューでは叔父に貰った名前だと明かしています。彼の叔父は TeeBaby というラッパーなのですが、そのラップネームの一部である「Baby」と、SahBabii の本名である 「Saaheem」 の一部を組み合わせて生まれた襲名型のラップネームです。最近は「Baby」をという語を自身のラップネームに盛り込むラッパーが多くなってきていますが、飽和しつつある Baby ブームと一線を画すことに成功しています。

キャリアの開始

アトランタに引っ越した直後、SahBabii の名義のもとで楽曲制作を開始しました。先に活動を始めていた兄である T3 の力を借りて『Pimpin Ain’t Eazy』と『Glocks & Thots』というミックステープを2年連続で制作、リリースしました。この頃の楽曲は、Young Thug の初期のミックステープを彷彿とさせるようなサウンドを多用しており、現在の彼のスタイルとはかけ離れたものとなっています。

その後3年間はシングルを不定期でリリースする以外に、目立ったアクションを起こしておらず、先述のミックステープを聴いていたファンたちからも忘れ去られようとしていた 2017年に突如として3作目のミックステープ 『S.A.N.D.A.S.』をリリースしました。

ちなみに空白の3年間についてですが、彼が使っていた楽曲制作ソフトの CuBase が起動できなくなっていたり、マイクなどの機材が壊れてしまったりと SahBabii は様々なトラブルに見舞われていたようです。インタビューでは、T3 の寝室で壊れたマイクを使用して『S.A.N.D.A.S.』をレコーディングしたことを明かしています。

Pull Up Wit Ah Stick の大ヒット

3作目のミックステープ 『S.A.N.D.A.S.』にも収録されており、先行してシングルでもリリースされていた 『Pull Up wit ah Stick』という楽曲なのですが、こちらの楽曲が彼のキャリアを大きく躍進させるキッカケとなりました。彼が自身のインスタグラムに投稿した同曲のスニペットが話題となり、その後すぐに SoundCloud にて100万再生を達成しました。

SahBabii を中心にモブを形成した彼の仲間のギャングたちが、様々な種類の銃器をカメラに向けながら踊っているミュージックビデオですが、こちらも最近の彼の楽曲のイメージからはかけ離れたものとなっており、意外にもギャングスタミュージックを感じられるものとなっています。

独特な世界観

Pull Up Wit Ah Stick で一斉を風靡した彼ですが、それ以降はガラッと路線を変更し、彼なりの世界観を全開に表現した楽曲やミュージックビデオを連発しています。日本のアニメにリファレンスを置いた楽曲や、ライムのために訳のわからないリリックを連続するマンブルな楽曲などをリリースし、独特の世界観を作り上げていることも、いつまで経っても彼がミステリアス生まである原因のひとつなのではないでしょうか。

お聴きいただいたのは4作目のミックステープ『Squidtastic』に収録され、その中でも特に異彩を放っていた『Anime World』という楽曲です。タイトルからお察しの通り、先ほど少し言及した日本のアニメにインスピレーションされた楽曲です。リリックには、忍者や車輪眼、スサノオノミコト、他にも様々な日本語が登場し、なおかつそれらで心地よく韻を踏んでいるのでとても面白いです。

ちなみに中盤で挿入される日本語のセリフは、SahBabii 自身がツイッター上で日本語話者を募集し、直接スタジオに招き入れてレコーディングされたものとなっています。

SahBabii は、ここ数年のヒップホップシーンにおいてかなりの知名度を獲得していますが、その知名度に反してほとんどシーンに姿を表しません。自らのプロジェクトにゲストを呼ぶこともかなり稀ですし、他のアーティストの楽曲に参加したことも、両手で数えられるほどしかありません。

そんな中、SahBabii が他のラッパーの楽曲に参加したレアなケースをご紹介します。フロリダのラッパー Ski Mask The Slump God の EP『BE AWARE THE BOOK OF ELI』に収録されている『COOLEST MONKEY IN THE JUNGLE』という楽曲で、タイトルを見て頂ければ分かる通り、H&Mの不祥事の直後にそれを揶揄する様にリリースされた楽曲です。

 Murda Beatz によってプロデュースされた楽曲で、ジャングルの奥地で聞こえてきそうな奇妙なサウンドの上で、Ski Mask と SahBabii が独特なフロウでラップしています。

続いても SahBabii が客演に招かれているレアケースです。イギリス・ウエストロンドンの AJ Tracey と カナダ・トロントの SAFE、そしてアメリカ・アトランタの SahBabii が三国から一同に集結した、「最もコラボが予想されていなかった一曲」です。

MV に関しても、ハリーポッターシリーズに登場するホグワーツ魔法学校のような古城を舞台に広げられ、SahBabii の世界観ともマッチした荒めのCGアニメも挿入されています。

ニューアルバム 『BarNacles』

SahBabii は、ニューアルバム『BarNacles』の存在を2019年の夏にインスタグラムストーリーズにて明かしました。しかし、待てど暮らせど一向に彼がアルバムをリリースする動きはなく、月日だけが過ぎていきました。あれから一年が過ぎようとしていた2020年の5月、彼は突如『Double Dick』と題されたニューシングルと、同曲のミュージックビデオを公開しました。

SahBabii と度重なる共演を重ねているプロデューサー Teezr による浮遊感のあるトラックの上で、彼らしい軽快なフロウと、耳を疑ってしまうほど内容のないラップを披露してくれています。内容のないラップをいかにスタイリッシュにラップしてみせるかが、彼の腕の見せ所とも言えますが、文字に起こすとその薄さが浮き彫りになります。

Hippo booty bouncin’ (Bouncin’)
カバみたいなお尻が跳ね回る。

Rhino booty bouncin’ (Bouncin’)
サイみたいなお尻が跳ね回る。

Elephant booty bouncin’
ゾウみたいなお尻が跳ね回る。

That ass outta control, I think it need some counselin’
お尻たちは制御不能だ。カウンセリングをして落ち着かせなきゃ。

そして、シングルのリリースから一ヶ月が経過した 2020年の6月、彼は突如アルバムのカバーアートとリリース日をSNS上に投稿しました。タイトルは予告されていた通り『BarNacles』で、前回に引き続き海をモチーフにしたアートワークとなっています。ちなみに『BarNacles』とは「フジツボ」という意味で、港なんかに行くとテトラポットにへばりついてる「アレ」です。画像を掲載することも考えましたが、集合体恐怖症の方々への配慮として、言葉での掲載に留めておきます。(アルバムカバーの SahBabii の顔の横、左足の奥にフジツボが確認できます。)

リリースの約一週間前には、トラックリストも公開されましたが、相変わらず客演は実兄の T3 のみ。ここまでくると、意図的に有名なラッパーとの共演を避けているとしか思えません。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は今週末にニュープロジェクト『BarNacles』をリリースする SahBabii についてまとめてみました。ミステリアスな彼が生み出すニューサウンドから目が離せません。

NoCap – 痛みを歌うアラバマの新鋭ラッパー

明日6月30日にニュープロジェクト『Steel Human』のリリースを控える注目ラッパー NoCap。XXL Freshman Class 2020 にもノミネートされている彼の生い立ちやキャリア、魅力について予習しておきましょう。

NoCap とは

NoCap (ノーキャップ) こと Kobe Vidal Crawford は、映画「フォレスト・ガンプ」の舞台となったことでも知られる湾岸都市、アラバマ州モービル出身の21歳 (1998年生まれ)。ちなみに名前の「No Cap」とは、2018年以降大流行した「嘘じゃない、本気で」という意味のスラングです。

当時の母親のボーイフレンドの影響で、8~9歳の頃にラップを始めたという NoCap は、彼と彼の兄、そして母親のボーイフレンドの甥の3人でグループを組んで活動し始めました (NoCap 以外の2人は既に音楽活動を辞めているそうです)。

幼い頃からラッパーとしてのキャリアを積み上げてきた NoCap は、2017年にデビューシングル『Boss Moves』をリリース。2018年にはシングル『Legend』で注目を集め、デビューミックステープ『Neighborhood Hero』や、同郷モービル出身のラッパー Rylo Rodriguez とのジョイントテープ『Rogerville』をリリースし、更にはアトランタの人気ラッパー Lil Baby のアルバム『Street Gossip』への参加を果たすなど、彼にとって飛躍の1年となりました。

2019年にはシングル『Ghetto Angels』がバイラルヒットし、同曲収録のミックステープ『The Backend Child』をリリース。その後、銃撃事件への関与により逮捕されるものの、同年末にリリースしたミックステープ『The Hood Dictionary』は US Billboard 200 にて最高80位 (R&B/Hip-Hop チャートでは最高39位) を記録しました。

NoCap の楽曲とスタイル

NoCap のスタイルについてご説明する前に、まずは彼の最初のヒット曲を聴いていただきましょう。

Legend

YoungBoy Never Broke Again や Polo G、Kevin Gates らと比較されることが多い NoCap は、オートチューンを効かせたヘロヘロな声で、歌うようにラップするスタイルを得意とします。彼は、困難な環境を生き抜いてきた苦労や葛藤、哀しみ、そして現在の成功や名声を、エモーショナルに、時に力強く歌い上げます。

NoCap は決して技巧派というわけではないのですが、彼の癖になる絶妙なヘタウマラップが南部ヒップホップらしい味を出しています。

Spaceship Vibes (feat. Quando Rondo)

I think about you all day and at night I watch the stars shoot

いつも君のことを考えていて、夜には流れ星を眺める

I know love is not a game but I can’t control what my heart do

「愛」はゲームじゃないって分かってるけど、自分の心をコントロールできないんだ

I fucked up so many times, I know you thinking I don’t want you

俺は何度も過ちを犯した 君は、俺に愛されてないって思ってるんだろ

I never tell you lies, I’m always giving you the hard truth

絶対に嘘はつかないよ 君にはいつも真実を話してる

Remember we was way more than friends, I just wonder, “Would you love me again?”

俺らがまだ付き合っていない頃を思い出してくれ もう一度愛してほしいんだ

I’m always having spaceship vibes, sometimes I think that I’m an alien

俺はいつも「スペースシップ・バイブス」を持ってる 俺はエイリアンなのかもな

ジョージア州サバンナ出身のラッパー Quando Rondo を客演に招いたこちらの楽曲は、シンプルで美しいピアノループと切ないリリックが特徴的なラブソングです。

NoCap は、恋人や失恋について歌う楽曲も多くリリースしています。こういった楽曲でも、R&B 歌手のような圧倒的な歌唱力で歌うのではなく、無骨で未熟な歌唱力で気持ちのままを歌う彼ならではの魅力があります。

Ghetto Angels  

And it’s crazy, we ’posed to took Duke to the graveyard to see Fred

狂ってるんだ 俺たちは Duke を Fred の墓参りに連れて行こうとしていた (2人とも NoCap の友人)

Phone ring an hour later, damn Cap, Duke dead

1時間後に電話が鳴った 嘘だろ、Duke が死んだ

I guess since we didn’t take him He went to the graveyard to see Fred on his

俺たちがあいつを連れて行く代わりに、あいつは自ら Fred に会いに行ったんだ

NoCap といえばこの曲『Ghetto Angels』です。今は亡き友人たちに向けて歌った同曲が YouTube にて4000万再生を記録し、後に Lil Durk と Jagged Edge を招いたリミックスもリリース。

痛みを伝えるリリックと心に響く歌声が絶妙にマッチした、まさに NoCap らしい1曲です。

What You Know

Fake love, real hate

偽の愛と、本当の憎しみ

I don’t know which one is worse to me

どっちが悪いのか俺には分からないんだ

ミックステープ『The Hood Dictionary』収録の1曲。アコースティックギターを用いたトラックと NoCap の哀愁漂うボーカルが絶妙にマッチした同曲は、深く考えさせられるリリックも魅力的で、まさに No Cap (リアル) な1曲です。

Count A Million (feat. Lil Uzi Vert)

I think that I can count a million with my eyes closed

目を閉じたままでも大金を数えることができるぜ

今週リリース予定のニュープロジェクト『Steel Human』の先行シングルとしてリリースされた1曲。彼のキャリア初期の楽曲と比べると、かなりラップのクオリティが上がっています。

人気ラッパー Lil Uzi Vert と共に成功について歌う同曲が話題を呼び、彼のニュープロジェクトへの期待も更に高まっています。

おわりに

いかがだったでしょうか。今回はアラバマ州モービルのラッパー NoCap についてまとめてみました。

Lil Baby や YoungBoy Never Broke Again、Lil Uzi Vert ら大物ラッパーとの共演も果たし、XXL Freshman Class 2020 にもノミネートされている新鋭ラッパー NoCap。名前負けしないリアルなリリックを届ける彼の今後に要注目です。

Gucci Mane が GUCCI の協力の下、自身のブランドラインを立ち上げることを示唆

昨年、GucciCruise20 のコレクションにて GUCCI と協力してコラボレーションアイテムを発表した Gucci Mane。

そんな彼が Twitter にて、GUCCI のブランド内で、自身のブランドラインを立ち上げることを示唆。

https://twitter.com/gucci1017/status/1275741391709261826?s=21

GUCCI といえば、2018-19 AW コレクションにて発表したバラクラバ帽風のトップスが、ブラックフェイス(黒人以外の役者が黒人の役を演じるために施す化粧)を想起させることから、人種差別的だという批判を受けていた。

GUCCI 2018-19 AW コレクション

Gucci Mane の言い分が本当なら、ブランドとしてもかなりの勝負に出ることとなる。近頃の人種差別撤廃運動の影響も考えられるが、どちらにせよ楽しみであることは間違い無いだろう。

Nick Mira – Juice WRLD のサウンドを創り上げた若き天才プロデューサー

爽やかでありながらメロディアスで、哀愁さえも漂う Juice WRLD の楽曲を作っているプロデューサーは誰なのかと疑問に思ったことはないでしょうか。

今回は Juice WRLD や Trippie Redd などにビートを提供するプロデューサー Nick Mira の魅力についてまとめてみようと思います。

生い立ちとキャリア

Nick Mira はヴァージニア州出身のアメリカ人で、現在19歳(2000年生まれ)という若きプロデューサーです。彼は昔からギターやピアノを弾くことが好きで、それが現在のプロダクションにも反映されています。

彼はキャリアを始めるにあたっての自分のインスピレーションとして、Pharell Williams や Kanye West、Metro Boomin などを挙げています。そんな彼は2017年、 Taz Taylor によって設立されたビートメーカーのレーベル Internet Money Records に加入します。

ちなみに、彼らのタグである「Inernet Money B**ch」は Nick がプロデュースした Trippie Redd の『Love Me More』や Lil Tecca の『Ransom』などで聞くことができます。また前述の『Love Me More』や、テキサス出身のラッパー 10k.Caash 、度々Nick のビートを使っている Ty Fontaine など、彼がプロデュースした曲には時折彼のタグが使われています。

『Love Me More』

これは Nick の当時の彼女の声を録音した「Hahahaha, Nick, you’re stupid」というタグです。

スタイル

Nick Mira は、小さい頃から弾いていたギターやピアノを使ったメロディアスなビートが特徴的です。彼の作る曲は、メロディアスでありながら切なさや哀愁を兼ね備えていることから「Emo Rap=エモラップ」に分類されるビートが多いです。

この例として、テキサス出身のプエルトリコ人ラッパー iann dior と Trippie Redd の『gone girl』が挙げられます。

『gone girl』

この曲はエコーがかかったギターの旋律が特徴的なビート上で、iann dior の若々しいフレッシュな声とエモラップの先輩的立ち位置の Trippie Redd の声が見事にマッチした曲です。また、彼は様々なインタビューで「音を重ねすぎなくても、曲をヒットさせることができる」と語っています。

その代表例が Lyrical Lemonade の MV でも大きく話題になった Lil Tecca のメガヒット、『Ransom』です。

『Ransom』

この曲はメロディと、ベルのような音を使った「パッ、パッ、パン」というベース音を組み合わせた点が特徴的です。

ハイハットや 808 のパターンが非常に単純なため、シンプルな音でもボーカルさえマッチすればヒットを生み出せるということを Nick は証明しています。哀愁が強いビートではありませんが、おすすめの1曲です。

ビート製作の生配信と「Mira Touch」

Nick Mira はたまにライブ配信サイト「Twitch」にて、ビート作りのライブ配信をしています。このライブ配信では、事前にアーティストからもらったボーカルを使ってビートを作ったり、10分でビートを作るチャレンジをしたり、音楽好きの興味をそそる絶妙なコンテンツが多いです。

最近のライブ配信では、Trippie Redd と Lil Nas X が別々で Nick に送信したボーカルを、それぞれのキーが同じであったために一つの曲にするという凄技を見せていました。この配信は後々、YouTube にもアップされているので見逃しても視聴可能です。

また、この配信中に Nick 自身や視聴者のコメント欄で何度も見かけるフレーズがあります。それが「Mira Touch」です。「Mira Touch」とは、Nick がビートにあるメロディやドラムを足したときや、シンプルにハイレベルなビートを作っている状況を意味する言葉です。みなさんも、ぜひこの「Mira Touch」を生配信で見てみてください。(彼のインスタストーリーを見張っていればたまにやっています)

Nick MiraとJuice WRLD

ここまで Nick Mira のスタイルやスキルについて述べてきましたが、彼のキャリアは Juice WRLD なしでは語ることができません。Nick や Internet Money の仲間たちは、Juice WRLD がまだサウンドクラウドで200人ほどしかフォロワーがいない時に初めて彼にトラックを提供しました。

そのトラックを使用したのが『All Girls Are The Same』です。この楽曲ではピアノに近いサウンドのシンセサイザーを重ねて、可愛げがありつつも切なさが際立った Juice WRLD にピッタリなメロディを作り出しています。

またドラムではハイハットをあえて少し乾いたような音にすることで、ビート自体に弾みをつけています。この曲の製作工程は、Genius の「Deconstructed」というシリーズにて取り上げられています(Nick は当時17歳)。

そして同時期に Juice の代名詞とも言える曲がリリースされます。それが『Lucid Dreams』です。この曲は Nick が作り出しそうなメロディーを Sting の『Shape Of My Heart』をサンプリングすることで彼の世界観を表現した曲です。

この名曲をサンプルするアイデアは非常に Nick らしく、サンプル元の凄まじい哀愁を残しつつ、トラップビートとして進化させた「エモラップ」の頂点のようなビートと楽曲です。これはまさに「Mira Touch」が起こった瞬間です。

この二曲が収録されているアルバム『Goodbye & Good Riddance』では8曲で Nick がプロデュースに参加しています。

それ以降も2019年の Juice の死まで多くの曲をプロデュースしました。その中から最後に一曲、2019年にリリースされた『Empty』を紹介します。この曲は美しいピアノの旋律がオシャレで、弾けるようなクラップとハイハットが特徴的なビートです。

このビートに、助けを求めるような Juice のボーカルと、フックの 「I feel so god damn empty」というフレーズが相まって、その言葉通り心に穴が開いたような感覚になります。個人的には Nick Mira のビートの中でも Juice の曲の中でも、かなりエモーショナルな気持ちになる曲で、最も哀愁度が高い曲だと言えます。

このように Nick Mira と Juice の相性は抜群なのです。だからこそ、Juice WRLD がいなくなって、この二人のタッグを味わえないことは本当に残念で仕方がありません。ちなみに Juice の死後にリリースされた『Righteous』も Nick がプロデュースした名曲なのでぜひ聞いてみてください。

最後に

Nick は上記の曲以外にも今は亡き XXXTENTACION と Trippie Redd の名曲『Fuck Love』や Young Thug のアルバム『So Much Fun』のイントロ曲『Just How It Is』など様々な曲に参加しています。まだ19歳という若さにも関わらず、様々なラッパーたちと音楽を作る Nick Mira に今後も注目です。

また、記事内で紹介した Genius の「Deconstracted」では、記事内で紹介した『Ransom』と『Empty』のバージョンもありますので、是非みてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

XXS オリジナルプレイリストはこちらから↓

https://music.apple.com/jp/playlist/nick-mira/pl.u-2aoqrRYuNWXxYz0?l=en

written by Dannie Ramsden

日本食とヒップホップ – 食文化から考察するラッパーの FLEX 論

ラッパーたちは脳をフル回転させ、自らのラップを武器に大金を稼ぎます。彼らの中にはラッパーとして成功するまでは、まともな食事を摂ることも出来ないほど貧しかった者も山ほどいます。アトランタの危険地帯である Zone 6 出身の Young Nudy は 『Judge Scott Convicted』 にてこのようにラップしています。

I done robbed a lot of n****s ‘cause I had to n***a

それしか生きる方法が無かったから、俺はたくさん盗みをしてきた

I ain’t have no food on the table n***a

食卓に食べ物は無かったんだよ

このような厳しい環境を生き抜いて、自らの手で生み出したお金で高級な食事を食べることは、彼らにとって至福のひと時であり、一種のステータスでもあります。そして、ラッパーたちが良いものを食べていることを言及する際、かなりの確率で「日本食」が用いられます。今回は、リリックに頻出する日本食レストランである「Nobu」と「Benihana」をご紹介するとともに、ヒップホップと日本食の関係性について考察していきます。

Nobu と Benihana のロゴマーク

ではまず初めに、なぜ大金を手にしたラッパーたちはこぞって Nobu や Benihana に行くのでしょうか。その理由はこのように考えられます。日本食は生ものや日本独特の食材を使用する為、海外(特に欧米)において、そこまでハイクラスなレストランでなくても比較的高めの価格設定となっています。各国で日本食が独自の進化を遂げ、その土地ならではの姿に変化している場合もありますが、基本的に寿司などを満足に食べようとすると、ファーストフードでの一食にかかる食費に比べると、ずいぶん高額になってしまうのが現実です。

ですので彼らにとって、「高いステーキを食べること」よりも「高級日本料理店に通うこと」の方がステータス化しやすくなっているのです。また、生の魚などを食べる習慣が少ない海外では、寿司や刺身などを食べることは、未だ体験したことのない新しい領域に踏み出すような感覚だといいます(最近では寿司はかなり普通になってきましたが)。そこまで裕福でない場合、自分の口に合うかわからないものに高いお金を出すのは気が引けますよね。しかし彼らは一般の人々と違って、新しいものにも挑戦出来るほどの財力があることを見せつけているのです。

Nobu

Nobu マイアミ店の店内

Nobu はシェフである松久信幸によって創設され、現在全世界に50店舗を展開する高級日本食店です。新宿2丁目の「松栄鮨」などで修行を積んだ後に、俳優であるロバート・デ・ニーロとの共同事業としてNobu を立ち上げました。現在ではアメリカはもちろん、ヨーロッパやアジア圏、日本にも事業を拡大しており、世界中の人々から愛されています。そして、アメリカに20店舗出店していることもあり、アメリカのラッパーたちにも広く親しまれています。レストランNobu はリリックにも頻出する重要なキーワードであり、気になっていた方も多いのではないでしょうか。

松久信幸 と DJ Khaled

ラッパー達は度々、自身の贅沢なライフスタイルを一般の人々やヘイターのそれと比較して、その違いを強調するような内容のラップをします。相手を挑発するようなストレートな内容から、少し難解に暗示されたさりげない内容まで中身は様々ですが、Drake は自身の楽曲である 『Gyalchester』 でこのようにストレートにラップしています。

Can’t get Nobu, but you can get Milestone

お前はマイルストーンには行けるけど、ノブに行く金はねぇだろ

Milestones は Drake の出身であるカナダのステーキハウスの名前です。Drake はこのラインでヘイター達に対して「俺は金があるからノブで飯を食えるけど、お前らはせいぜいマイルストーンに行く金しかねぇだろ!」と挑発しています。

ちなみにマイルストーンの価格帯は、そこまで安いというわけではなく、カナダの子供たちが誕生日に特別に両親に連れて行ってもらえるといったイメージのお店です。満足にステーキを食べて1人4000円程度といった感じで、一般庶民にとっては特別なお店というのが本音です。カナダなのでチップもありますしね。Drake は韻を踏むため、そして自分の出身地発祥のお店なので マイルストーンを選んだのでしょうが、対比が甘くなってしまい、痛烈さに欠けるラインとなってしまっている印象です。

いつのまにかマイルストーンについての説明になってましたが、ここで Nobu の料理がどの位の価格帯なのかを見てみましょう。ちなみにNobu は寿司などの日本食や、「Nobuフード」と呼ばれる、和食に南米や欧米のエッセンスを取り入れた料理を展開しています。ここでは一例として、Nobu ロサンゼルス店の一品料理と寿司のメニューを見てみましょう。

Nobu Los Angels の公式サイトより

ご覧の通り、枝豆が$8 (日本円で約850円)、サーモンやエビのお寿司が一貫で$6 (日本円で約640円) とかなり高価なものとなっております。寿司に関しては日本では二貫108円で食べれちゃいますからね。更に、トロなんかは m/p と記載されており、いわゆる「時価」となっています。

自らのライフスタイルを他者のものと比較するリリックはよくみられるものですが、自分自身の現在と過去の生活を比較するパターンも多いです。Gunna による楽曲『King Kong』に客演として参加した Young Thug はこのようにラップをしています。

Yeah, we was eating at Nobu
そうだよ。俺たちはノブで食事をしてた
Came a long way from Kroger
Kroger で買い物をしてた時代から長い道のりを歩んできたよ

Young Thug が通っていたと思われる Cleveland の Kroger

松久信幸氏は、ビバリーヒルズに新しい寿司レストランである Matsuhisa Beverly Hills もオープンしています。こちらの店舗にもハリウッドスターやラッパーたちが出入りしており、舌の肥えた著名人たちを唸らしているようです。また Matsuhisa Beverly Hills では、オリジナルグッズの展開も行なっているようです。A$AP Bari も「松久」と漢字で刺繍が施されたベースボールキャップを身に付けている姿を自身のインスタグラムに投稿し、Matsuhisa Beverly Hills のオフィシャルアカウントをタグ付けしています。

Benihana

Benihana の店内

続いてはBenihana についてです。こちらのお店は、東京出身のロッキー青木氏がニューヨークで1964年に開業した、アメリカにおける鉄板焼きのパイオニア的存在です。Nobu が新鮮な刺身や和食を提供する日本食レストランであるのに対し、Benihana は主に日本風の鉄板焼きを提供するグリルレストランです。お客さん 2〜10人ほどに対して専属のシェフが1人付き、パフォーマンスをしながら真ん中の鉄板でお肉や野菜などを焼いてお客さんのお皿に分けていくスタイルです。このようなレストランや食事のスタイルを、アメリカでは「Teppanyaki」 や「Hibachi」 と呼んだりします。

Benihana に関してもNobu と同様、多くのラッパーたちに愛されているレストランです。それを裏付けるようにリリックにも度々登場しますし Jeezy や Lil Wop、Lil Durk などのラッパーたちが 『Benihana』 というタイトルの楽曲をリリースしていたりします。今回はその中から Lil Durk が Kodak Black を客演に呼んだ 『Benihana』 のリリックの一部を紹介します。

Went to Benihanas, I told ‘em no onion

紅花に行った。俺はシェフたちにオニオンは要らねぇって言ったんだ。

Kodak Black のパーソナルな一面が現れたラインで面白いと思います。Lil Yachty はインタビューで「野菜とフルーツを全く食べないし、主食はピザだよ」と語っていましたが、やはりラッパーには野菜嫌いが多いのでしょうか。ちなみに Benihana において玉ねぎといえば Onion Volcano というパフォーマンスの事を指していると思われます。分解した玉ねぎを火山の形に積んで、その中に水を注ぎ蒸気を噴火に見立てるというパフォーマンスです。

2017年の時点で 『Gyalchester』 において容易に Nobu に行ける財力をアピールしていた Drake ですが、『Omertà』において Benihana にも言及しています。

To me, Benihana is pigeon food

俺にとってBenihana なんてスズメの飯だ

かなり攻めた鋭いラインを披露した Drake 。全世界のBinihana ファンを一斉に敵に回すと同時に、普段どんな食事をしているのかという疑問を浮かばせます。そして案の定 Benihana ファンたちはこのラインに反応し始めました。大御所ジュエラーの Ben Baller は自身のツイッターにてこのようにツイートしています。

I do not give a fuck what anyone thinks , I love Benihana and I’m gonna try to go tonight and order extra extra garlic butter on my fried rice in honor of drake. In fact extra garlic butter on everything period.

「俺は誰かが考えている事なんて気にしない。俺は Benihana が大好きだし、今夜も Benihana に行って Drake の名誉の為にフライドライスにガーリックバターをかけまくるぞ!まじで俺は全てにガーリックバターをかけるぜ。」

まとめ

ジュエリーやお金、ファッションなどを通して自らのステータスを誇示するラッパーたちですが、「日本食」もそのツールの一つとして用いられているようです。中には、現地で独自の進化を遂げた日本の文化が、日本でのそれとは全く違った形で解釈され、音楽の中に組み込まれている様子を見ることもできます。今回は「日本食」にフォーカスした記事でしたが、特定のものに焦点を当ててヒップホップを分析することで、また違った角度からヒップホップを楽しむことができるのではないでしょうか。

Lil Nas X や RMR の活躍からみる「カントリー・ラップ」の進化

2019年、世界中のチャート首位を独占した Lil Nas X の『Old Town Road』をはじめとし、現行ヒップホップシーンを盛り上げるニュージャンル「カントリー・トラップ」。

今回は、ヒップホップとカントリーミュージックの融合の歴史に触れながら、「カントリー・トラップ」とその注目アーティストについてまとめていきます。

ヒップホップとカントリーの融合

ヒップホップとカントリーミュージックの融合は、今に始まったことではありません。まずはその誕生について、簡単にご説明します。

Shawn Brown a.k.a. The Rappin’ Duke – Rappin’ Duke

1984年、スタンドアップコメディアンの Shawn Brown が 『Rappin’ Duke』なる楽曲をリリース。「主に西部劇や戦争映画にてヒーロー役を演じていた俳優 John Wayne(別名 Duke)がラップをする」というコンセプトの元作られた同曲が、その後のカントリー・ラップの礎となります。

Remember Rappin’ Duke? Duh-ha, duh-ha

Rappin’ Duke が「Duh-ha, duh-ha」って歌ってたのを覚えてるか

You never thought that hip-hop would take it this far

当時はヒップホップがこんなに盛り上がるなんて思ってなかっただろ

The Notorious B.I.G. – Juicy

The Notorious B.I.G. も自身の楽曲にて『Rappin’ Duke』について言及しています。

1987年にはカントリー・デュオ Bellamy Brothers が『Country Rap』をリリースします。

Bellamy Brothers – Country Rap

バンジョーやハーモニカを用いた王道カントリーサウンドにラップを載せるスタイルは、この頃から既に存在していました。

カントリー・ラップの進化

その後、一時的な流行として衰退しつつあったカントリー・ラップは、90年代後半に再び注目を浴びることとなります。

Kid Rock – Cowboy

ロックからファンク、ヒップホップ、メタル、ジャズ、カントリー、ブルースまで幅広い音楽性を持つミクスチャーバンド Kid Rock が、カントリーやサザン・ロックに影響を受けたサウンドの上にラップを乗せた楽曲『Cowboy』を1998年にリリースしました。

そして、今日のカントリー・ラップを創り上げたといっても過言ではないのが、Pimp C と Bun B からなるヒューストンのラップ・デュオ UGK です。

UGK は、1994年に、カントリー調のギターリフやピアノソロを用いた『It’s Supposed To Bubble』をリリースします。

UGK – It’s Supposed To Bubble

99年には『Belts to Match』にて初めて自身の楽曲を「カントリー・ラップ・チューン」と定義しました。

UGK – Belts to Match (feat. Smitty & Sonji)

Down here we ain’t makin’ hip hop songs know what I’m sayin’

ここで言っておくが、俺たちは「ヒップホップ・ソング」は作らない

We makin’ country rap tunes, so uh separate us from the rest

「カントリー・ラップ・チューン」を作っているんだ、他と一緒にしないでくれ

その後、カントリー・ラップ(あるいは「ヒックホップ」)は、UGK や Bubba Sparxxx、Nelly、Cowboy Troy など南部のアーティストを中心に人気を集めていきます。

Bubba Sparxxx – Deliverance

Nelly – Ride Wit Me (feat. St. Lunatics)

カントリー・ラップを押し上げた UGK の Pimp C は、2007年に惜しくも亡くなりますが、その後もカントリー・ラップを引き継ぐ新世代が現れます。

Big K.R.I.T. – Country Sh*t (Remix) [feat. Ludacris & Bun B]

また、新世代ではありませんが、Snoop Dogg もカントリー・ミュージシャンの Willie Nelson と楽曲制作を行ったりと、ヒップホップとカントリーのコラボレーションは絶え間なく行われてきました。

Snoop Dogg – Superman (feat. Willie Nelson)

カントリー・トラップの誕生

そして2017年、「カントリー」と、アトランタ生まれのヒップホップのサブジャンル「トラップ」が融合した「カントリー・トラップ」が誕生します。

Young Thug – Family Don’t Matter (feat. Millie Go Lightly)

カントリー調のギターリフに連続的なハイハットと808ベースをミックスしたトラックを用い、Young Thug が「Yeehaw」というカントリー由来のアドリブを放ちながら歌うようにラップする同曲が、いわゆる「カントリー・トラップ」の起源とされています。

もう1曲、初期のカントリー・トラップとして挙げられるのが、Lil Tracy & Lil Uzi Vert の『Like A Farmer』です。

Lil Tracy & Lil Uzi Vert – Like A Farmer

I’m sippin’ lean like a Coors Light 

「Coors Light」みたいにリーンを飲む

「Coor Light」とは、アメリカ南部及びカントリー・カルチャーにおける象徴的なビールブランドの名称で、Lil Tracy と Lil Uzi Vert は南部訛りを強調しながら、自身の生活とカントリーカルチャーを比較しています。

カントリー・ラップが「カントリー」に重きを置いていたのに対し、カントリー・トラップは「トラップ」をベースに構築されていることが、同曲のサウンドから窺えます。

そして、2018年から2019年にかけて爆発的にヒットしたカントリー・トラップ・アンセムが Lil Nas X の『Old Town Road』です。

Lil Nas X – Old Town Road (Remix) [feat. Billy Ray Cyrus]

Nine Inch Nails の『34 Ghosts IV』からサンプリングしたバンジョーの音色と、現行ヒップホップの王道トラップサウンドをミックスした同曲は、一時は Billboard のカントリー・チャートから除外されるものの、最終的にはカントリー・チャートに復活し、HOT 100にて首位を獲得しました。

「初めて(Old Town Road を)聴いたとき、明らかにカントリーだと思った」と語るカントリー界の大御所 Billy Ray Cyrus のリミックスへの参加もあり、同曲は17週連続1位という US Billboard 史上最長の記録を打ち出し、カントリー・トラップというジャンルを世界中に認知させました。

カントリー・トラップのネクストスターたち

Lil Nas X に続いて、カントリー・トラップを自身の楽曲に取り入れるラッパーも増えていきました。

Fly Rich Double – Big Boom

実はこの Fly Rich Double というラッパーは、Lil Nas X が『Old Town Road』をリリースする前からカントリー・トラップのスタイルを取り入れていました。様々なジャンルに挑戦したいと語る Lil Nas X とは異なり、Fly Rich Double はカントリー・トラップを軸に勝負していく意向を示しています。

RMR – Rascal

2020年突如として話題を集めたのがこのアーティスト、RMR(Rumour)です。SAINT LAURENT の防弾チョッキにバラクラバ(目出し帽)、そして銃という、如何にもギャング臭漂う装いの彼が発するのは、攻撃的なラップではなく美しい歌声。そのミスマッチさが話題を呼び、彼 RMR は一躍時の人となりました。

オハイオのカントリー・グループ Rascal Flatts のグラミー受賞曲『Bless the Broken Road』のメロディラインを引用した同曲がバイラルヒットし、今週末にリリース予定のデビュー EP『DRUG DEALING IS A LOST ART』には Westside Gunn や Future、Lil Baby、Young Thug といった錚々たる顔ぶれを客演に迎えるニューカマー RMR。未だ謎多きカントリー・トラップの新星に要注目です。

RMR『DRUG DEALING IS A LOST ART』
トラックリスト

おわりに

このように、80年代から90年代にかけて誕生した「カントリー・ラップ」は、ヒップホップ及びカントリー・ミュージックの両者に強く影響を受けながら進化し続けてきました。

ヒップホップシーンにおいてトラップというジャンルが主流になった今日にも、「カントリー・トラップ」と呼ばれるニュージャンルが生まれ、今や切っても切り離せない関係となったヒップホップとカントリー・ミュージック。今後の進化にますます目が離せなくなりそうです。

Written by Riku Hirai

Loyle Carner の特徴にみる Brit School から得たもの


皆さん Brit School はご存知でしょうか。

ご存知の方もそうでない方も、今回は Loyle Carner の魅力を味わうことで、Brit School が彼に与えた大いなる影響に驚くこと間違いないでしょう。

Brit School について

まず、Brit School とは、 Amy Winehouse や Adele などを輩出したロンドンに校舎を構える学校のことです。

Brit School は音楽だけでなく、演劇、ダンス、映像、アートワーク、プロデュース、マーケティング、ファッションやゲーム、アプリまで、あらゆる分野を学ぶことができる、いわばアーティスト育成学校で、日本の東京藝術大学のような学校です(日本の高校に位置づけられる学校ではありますが)。

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The BRIT School

ちなみに学費が高いことで有名なイギリスではほぼ唯一、国の財源で賄われているため授業料が無料の学校です。これは貧富の差が激しいイギリスにてアーティストを目指す学生への救済措置とも言えます。

昨今イギリス出身で注目度が高いアーティストにも見事に Brit School 出身者が多いんです。例えば FKA Twigs や Rex Orange County 、 Raye から King Krule、Octavian まで、ジャズや R&B、ポップやオルタナティブ、ヒップホップなどそのジャンルは多岐に渡ります。

そしてもちろんヒップホップのアーティストも例外ではなく、実際に多くの有名なラッパーが卒業しています

今回はその中から Loyle Carner について書いていきたいと思います。

Loyle Carner について

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最初に、サウスロンドン出身の Loyle Carner についてですが、彼はヒップホップがお好きではない方にもオススメのアーティストです。

演劇を深く学んでいた彼は、情緒豊かなサウンドを作るのが得意で、そのとろけるようなおしとやかなビートの上で、温かみを含んだ低い声をのせるスタイルを特徴としており、そのまろやかさはジャズや R&B がお好きな方にもぴったりハマること間違い無しでしょう。

まず Loyle Carner (以下、Carner) こと Benjamin Gerard Coyle-Larner は、1994年に「音楽の街」サウスロンドンのランベスで生まれ、同じくサウスロンドンのサウス・クロイドンで育ちました。若くして父親が他界してしまった彼は女手一つで育てられました。

また、 Loyle Carner というステージネームは本名の Coyle Larner の C と L を入れ替える、いわゆるスプーナリズム(語音転換)にちなんでいます。

幼い頃から、ADHD と難読症に悩まされた彼でしたが、13歳になった2008年に、イギリスの映画『10,000 BC』にて役者をするほどまでに、病気を克服していきました。

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『10,000 BC』

その後、サウスロンドンにあり、400年の歴史を持つ男子校 Whitgift School で中等教育を受けた後、名門音楽学校 Brit School に進学し、音楽と演劇について学ぶこととなります(演劇が中心だったそうです)。

そして、音楽と演劇の活動を両立し、2012年にはアイルランドのダブリンで行われたギグ(ライブ)で初めて人前で音楽を披露する機会を得ます(奇遇にも、彼とのちに様々なコラボレーションをすることとなる Tom Misch も同年に音楽活動を開始しています)。

Brit School を卒業した後、ロンドン・ドラマセンター (キングスクロスにある演劇の学校)にて、『ロミオとジュリエット』や『ハムレット』で知られるシェイクスピアの劇を中心に学んでいた彼ですが、父がてんかんを起こして亡くなってしまったことを機に、音楽の道に絞ることとなりました。

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そして、2014年に最初の EP『A Little Late』を出した後、2015年には Joey Bada$$ の UK ツアーのサポートアクトに選ばれ、2016年には Nas のロンドンO2アリーナ公演のサポートも務めます。

その後、BBC SOUND OF 2016 に選出されるという風に一気にスターダムの階段を駆け上がって行きます、そして2017年のデビューアルバムの『Yesterday’s Gone』ではUKチャート初登場で14位となり、あらゆるメディアから賞賛を浴びました。

極めつけは2018年のブリットアワードにて「最優秀新人賞・最優秀男性ソロアーティスト賞」をダブル受賞したことでしょう。

また、この2018年には東京で初単独来日公演をソールドアウトさせていて、UK屈指のラッパーとしてその地位を確かなものとしました。

そして昨年には 2nd アルバム『Not Waving, But Drowning』をリリースしています。

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『Not Waving, But Drowning』

アルバムのタイトル『Not Waving But Drowing』は Stievie Smith の詩を引用した言葉です。

この詩は不幸にも溺死した男の話です。一緒に海水浴にいっていた友達は海にいる彼が手を振っていると思っていたが、実際は溺れてたじろいでいただけだったという皮肉とも風刺ともとれる詩です。

このアルバムには各所で「一見大丈夫に見えても心の中はズタズタな現代人=彼自身」が描かれています。インターネットが主流となった時代だからこそ、形を伴わない陰湿でジメジメとした言葉は時に重く、ネットリと心の深淵にまで到達しうることは皆さん容易に理解できるのではないでしょうか。

Loyle Carner の魅力

①日常的なリリック

Carner の魅力はまずなんといっても「日常的なリリック」でしょう。

リリックの魅力については、まず最新アルバム『Not Waving, But Drowning』に収録されている『Ottolenghi』をお聴きください。

この曲は、ニュージーランド出身で主にロンドンで活動しているJordan Rakeiを客演 / プロデュースに迎えた一曲で、デビューアルバムの『Yesterday’s Gone』以来、最初の先行リリース曲です。

 料理の得意な彼は、自身と同じく ADHD を抱えている子供達に料理教室を開区など、様々な支援活動を行なっています。そんな彼は Yoram Ottolenghi という料理家を敬愛しており、今曲のタイトルはその料理家の名前を引用したものです(電車で Ottolenghi の著書『イエルサレム』を読んでいたら、聖書を読んでいると勘違いされたことから、彼の名前をタイトルにしています)。

番組で共演した二人 – 『British GQ』

I was sat up on the train
電車の椅子に腰掛けて

Staring out the window at the rain (aye)
窓から降りゆく雨を見ていた

I heard this little lady must’ve felt the pain ask her mum if the blazing sun’ll ever shine again
そこにいた少女は物悲しそうに母親に尋ねたんだ「光り輝く太陽が二度と現れなかったら」って

I felt ashamed feel the same not her mother though
母親でもないのに自分に聞かれたみたいに感じて恥ずかしかったよ

Nah, started to laugh got her son involved (aye)
母親が笑い始めると息子さんもつられ笑いをしちゃって

Mention the past like a running joke
その母親が「お決まりのジョーク」みたいに過去を語って

And told her ‘without all the rain there’s no stunning growth’
娘にこう言った「雨が無ければ、華やかな成長もない」って

『Ottolenghi』

場面は雨降りの車内、流れゆく人混みの中で感じた甘美なひと時を、なんの変哲もない隠密な日常を、 Carner は見事な感性で、ありありとその味わい豊かなリリックをリスナーの耳元までゆったりと広げていきます。

まさに雨を表象する情緒的なサウンドもさることながら、早口ながらもうつろな出来事を描写する一曲には感嘆以外の言葉がありません。

ADHD is the best and the worst of me

ADHD は素晴らしくて最低なものだよ

『INDEPENDENT』- Saturday 13 April 2019

インタビューでこうも答える彼にとって、ADHD を抱えたことで過酷な経験も伴ったものの、素晴らしい才能を開花させる触媒であったのでしょう。また、こういった言葉も残しています。

I’d rather have a real life than lots of girls and drugs.

「ありふれた非日常」よりもリアルな日常の方がいいんだ。

『INDEPENDENT』- Saturday 13 April 2019

「溢れるほどの女や薬が偏在する生活」は彼にとってリアルなものではなく、ただのフェイクであるという、徹底的なリアリズム精神を持った彼の感性を物語る言葉ですね。

このような「日常的なリリック」も Brit School で様々な才能と出会っていく中で完成した彼なりの個性であることは間違い無いでしょう。

②ジャジーなブーンバップサウンド

極めてジャズ的で物静かなサウンドの印象がある彼ですが、ヒップホップの影響を強く受けたジャズと、耳にすっきりと入ってくる90年代の東海岸的なブーンバップが最上の配合で混ぜ込まれたサウンドを持つ曲も多くあります。

代表的なものは『You Don’t Know』です。

コーラスとブーンバップ的なキックスはまさに彼のサウンドのルーツともいえるものです。このジャズ的感覚を養ったのが Brit School であることは言うまでもないでしょう。

『NO CD』もブーンバップサウンドが、ギターのサウンドを基調として刻み込まれている面白い一曲です。

この曲では、彼を象徴する落ち着いた曲調ではなく、敬愛する Kendric Lamar の雰囲気さえも感じさせるスキルや歯切れの良い声を見せてくれています。

ヒップホップにジャズを組み合わせるというやり方も、Brit School であらゆるジャンルの音楽と触れ合って育った感性によるものでしょう。

③サウンドに溶け込む声

彼のこれまた重要な要素は「サウンドに溶け込む声」です。

まずは『Ain’t Nothing Changed』をお聞きください。

イタリアの音楽家で、映画音楽への功績で知られる Piero Umiliani の 『Ricordandoti』を大胆にサンプリングしたこの曲は、ジャジーな趣を含んだ残り香を味わいながら、その微かな匂いを殺さずに溶け込ませる彼の声の良さ、発声法を感じ取ることができます。

彼には一つ一つの音節を見事に分割し、強調する音と抜く音とを見事に、そして瞬時に使い分ける能力があります。

このような発声法にも、やはり Brit School での演劇の学びが生きていることは間違い無いでしょう。

実践を重要とする学校だからこそ、実際のセリフの言い回しや発声法など、彼を特徴付ける「声」が育て上げられたに違いありません。

また、Tom Misch を客演に呼んだ一曲『Damselfly』では、Tom Misch サウンドともいえるジャジーで聴き心地抜群のトラックにぴったりの声を披露しています。

オススメ曲

次に、彼を有名にした曲でもある『The Isle Of Arran』を聞いてください。

スコットランド沖にある3つの島からなるアラン諸島について歌ったこの曲。

1969年に発表されたゴスペル・クラシック『The Lord Will Make A Way』のサンプリングから始まっているこの曲はピアノ・ベースのシンプルなビートです。

この曲は若いながらも頑張る父親達を称賛した曲で、彼自身インタビューで以下のように答えています。

僕の友人の多くが自分の父親と上手くいっていなくて、中にはそれでも父親になってる奴もいて、踏ん張りながら頑張る若い父親達を称賛したかったんだ

母への愛情が行き過ぎたエディプスコンプレックス的問題を抱える現代の少年(それは彼自身とも通ずる)とその父親との関係という、なんともリリックにするには難しい内容になっています。

若い頃に父を失った彼にとっては父との関係というのは身近でないからこそ大切だと感じているのかもしれません。

There’s nothing to believe in, believe me

信じるものなんてない、あるとすれば自分自身だ

父がいないからこそ自分を信じてきた彼の経験と、信仰心への抵抗から来る父(God)への宣言でもある印象的なラインです。やはり J cole や Kendric Lamar を崇める彼のラインは一つ一つが意味深くて面白いですね。

次に Tom Misch の 2ndEP 『Beat Tape2』に客演で参加している曲、『Nightgowns』を聞いてみてください。

『Nightgowns』

サウスロンドン出身のこの二人のコラボは本当に最高です。現行のロンドンのジャズシーンを牽引する Tom Misch のサラッとした聴き心地に Carner のローな声が見事にマッチした一曲です。

また、 Jorja Smith とのコラボ曲『 Loose Ends 』は二人の息がぴったりです。(Jorja Smith はイングランドの中央部のウォルソール出身なので、ロンドンからは結構距離がありますが)

『Loose Ends』

他にも Sampha とのコラボ曲である『Desoleil』は、曲が進むにつれ少しずつ上がっていくボルテージが思いがけない光源となり、途方もない内側のエネルギーを照らし出す一曲になっています。

『Desoleil』

最後に

いかがだったでしょうか。Brit School が彼に与えた影響は彼の特徴から感じ取れたのではないかと思います。

シングルをあまり出さず、売り出そうという意識が少ない彼はあまり楽曲制作の状況を漏らしたりはしませんが、今年の終わり頃に何かプロジェクトをやってくれるのではないかと期待しています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Kensho Sakamoto

JayDaYoungan – ニュースターと見るルイジアナのラップ事情

俺が最も影響を受けたのは、Boosie Badazz や Kevin Gates だ。もちろん Lil Wayne は偉大で最高だけど、俺が一番聴いていたのは その二人だったね。

FADER

子供の頃から同郷出身のラッパーたちの音楽を聴いて育ってきたと語った、ルイジアナ出身の若手ラッパー JayDaYoungan 。今週末にニュープロジェクト『BABY23』のリリースを控えていることも踏まえ、今回はそんな彼についてご紹介いたします。

JayDaYoungan とは

JayDaYoungan (ジェイ・ダ・ヤンガン) は、ルイジアナ州の東端に位置する小さな街、ボガルサで生まれ育ちました。彼が尊敬する Kevin Gates や Lil Wayne の故郷であるニューオーリンズや Boosie Badazz の生まれたバトンルージュなどと比べると、面積的、人口的にもかなり小規模な街です。

夜空に打ち上げられた花火のようなユニークなヘアスタイルが特徴的な JayDaYoungan (以下、Jay) は、先ほど引用したインタビューで述べていた通り、同じくルイジアナ出身の Boosie Badazz や Kevin Gates などの音楽を聴いて育ちました。

Jay は高校時代、NBA のプロ選手になる夢を抱いていました。Rajon Rondo をロールモデルにバスケットボールに打ち込んでいた彼でしたが、目立った功績を残せずにいた彼に対し、彼の母親はバスケットボール以外のの道を真剣に考えるように説得していたそうです。

Jay が憧れていた頃に Chicago Bulls でプレーする Rajon Rondo (現在は Los Angles Lakers に所属)

そんな矢先、成績の不振や校外でのトラブルが積み重なり、所属していたチームでバスケットボールを続けることができなくなった彼は、母親の言葉を思い出し、もう一つの道として候補に挙げていた「ラッパーになること」を真剣に考え始めました。

高校二年にのときに、友人の一押しを受け、初めて YouTube に楽曲を投稿したそうですが、なんとその楽曲が一日で1000回ほど再生されました。彼はその時の感情についてこのように語っています。

俺の町の人口は、一万人ちょっとだ。俺の街の人口の1/10に相当する人々が、1日で俺の曲を聴いたなんてまじで信じられないぜ。

全くキャリアのない彼にとって、たった一日でそれほどの人々に楽曲を聴いてもらえたことは、その後の彼の自信につながったようです。

一方学校では、試験中のカンニングや無断欠席を繰り返したことが原因で、高校三年生の時に退学を余儀なくされてしまいます。学校に行く必要がなくなった彼は、熱心に取り組んでいたラップにさらにフォーカスし始めたのです。

ラップスタイル

彼のラップスタイルは、ルイジアナ特有の独特な歌声やフロウを踏襲した不思議なものです。Boosie や Lil Wayne のような、ねっとりと耳に絡みつくような声や、NBA YoungBoy の楽曲にもよく見られる詰め込みフロウなどを楽曲の至る所に散りばめており、ミックステープを通して聴いても飽きのこないスタイルです。

今回は、彼の楽曲からの主軸となるスタイルを三つに分けてご紹介します。一つ目は、詰め込みフロウです。ルイジアナでは主に、NBA YoungBoy がよく用いる手法で、小説に入りきらないはずの言葉数を、巻き舌や早口で無理やり詰め込んでしまうスタイルです。

「詰め込みフロウ」が顕著な NBA YoungBoy による 楽曲『Genie』 (1:43 からが該当箇所)

NBA YoungBoy のファンであることを公言する Jay ですが、彼はその詰め込みフロウに少し違った角度からアプローチし、自らのスタイルに添うように甘く消化させている印象があります。まずはこちらの楽曲をお聴き下さい。

昨年リリースした七枚目のミックステープ『Endless Pain』に収録されている楽曲『Different Emotions』です。お聞きいただくとわかるように、フックからいきなり独特な詰め込みフロウを披露してくれています。

楽曲の所々にこの手法を用いる NBA YoungBoy に対し、詰め込んで完成したフロウを、一曲を通して同じメロディでラップし続けているのが分かります。「所々ではなく、ずっと詰め込む」ことで、全体を通して一貫性が生まれ、心地よさが生まれています。

6枚目のミックステープ『Forever 23』に収録されている『Catch Me In Traffic』や、最新作『Misunderstood』に収録されている『Shooters』なども、同じような手法を用いてラップしています。

二つ目は流れるようなメロディアスなフロウです。Lil Durk の記事でも紹介しましたが、メロディアスなフロウを楽曲に取り込むラッパーは年々増加傾向にあります。YK Osiris のように完全にメロディアスに振り切ったものや、CalBoy のようにハードなラップの随所にメロディアスなフロウを組み込むものまで、その形式は様々ですが、Jay はちょうどその中間を行くニュートラルなスタイルを得意とします。

ラップとしても、メロディアスな楽曲としても聞くことができ、リスナーの捉え方次第でどちらにも変化してしまう、といった具合です。

デビューアルバムの先行シングルとしてリリースされていた『23 Island』です。ゆったりとしたトロピカルなトラックに、かなりユニークなフロウでアプローチします。ハードなラップに疲れた時に聴きたくなるような楽曲です。

七枚目のミックステープ『Endless Pain』に収録されている楽曲『Repo』です。こちらもメロディアスなスタイルでのアプローチですが、タイトルにもなっている『Repo』で延々と脚韻を踏み続ける展開です。心地よいメロディとともに、ラップらしいしつこいライムを聴くことができ、彼らしい楽曲と言えるでしょう。

三つ目は、ゆったりとしたバラード調のアプローチです。失恋や人生などのシリアスな内容をエモーショナルなラップに載せるスタイルです。ミクステやアルバムの後半に時たま収録される程度で、彼のメインスタイルとは言えませんが、作品に緩急をつける大変重要な役割を担っていますので、ご紹介しておきます。

ルイジアナのラップゲーム

ルイジアナといえば、本記事でも何度も言及した Boosie Badazz や Lil Wayne、Kevin Gates などが現在のシーンを率いており、Webbie や 故 Lil Snupe なども輩出してきました。そして、次世代の若手たちということで、NBA YoungBoy や Fredo Bang、そして今回ご紹介している JayDaYoungan などが続く形になっています。

独特で唯一無二なスタイルを確立しており、近年のシカゴやブルックリンのような盛り上がりを見せても良いのではないかと思われますが、まだそこまでの知名度には届いていないのが現状です。

アトランタ勢が仲間同士でコラボ曲を量産したり、はたまたジョイントプロジェクトを制作したりして盛り上がりを高めているのに対し、ルイジアナのラッパーたちはそこまで頻繁にコラボをしませんし、どちらかといえば他の地域のラッパーとの共演が目立つように感じます。

もちろん、Fredo Bang は最新作『Most Hated 』に Kavin Gates を招いていましたし、 Jay に関しても憧れであった Boosie をデビューアルバムに招いたりと、ちょくちょくの共演が見られるものの、アトランタを含む他の地域ほどの同郷意識は見られません。

JayDaYoungan が憧れの存在である Boosie Badazz を招いた楽曲。二人のスタイルを比較できます。

実際に Jay 自身もルイジアナが抱えるこのような問題について、インタビューにて言及しています。

これはルイジアナが抱える一番の問題だよ。

ルイジアナのアーティスト同士で、もっと積極的にコラボレーションをして、仲良く付き合っていく必要があると感じているんだ。ビーフなんかしている場合じゃないんだよ。

VLADTV

俺の個人的な意見だから異論は認めるけど、俺はルイジアナの音楽が最高だと思ってる。

協力して、コラボを積極的にしていけば、とても大きなムーブメントを起こせるはずだ。

VLADTV
該当部分は13:20あたりから始まります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はルイジアナのニュースター JayDaYoungan についてご紹介してきました。今週末にリリース予定のニュープロジェクト『BABY23』には Kevin Gates の参加が見られますし、彼を筆頭としてルイジアナのラップシーンがさらなる盛り上がりを見せてくれることを期待しましょう。

whoiskosuke

XXL FRESHMAN CLASS 2019 : 選出された11人のラッパーたち

1. DaBaby

DaBaby とは

DaBaby こと Jonathan Lyndale Kirk はオハイオ州クリーブランド生まれの27歳(91年生まれ)。5歳の頃ノースカロライナ州シャーロットに引っ越します。彼のエピソードとして有名なのが、ウォルマート(スーパーマーケット)での銃殺事件です。2018年、Kirk が二人の子供を連れて買い物をしていた時、銃を持った男が彼のジュエリーを奪おうとしてきたそうです。Kirk は二人の子供を守るためにその男を銃殺しました。この事件は後に正当防衛が認められ、起訴も取り下げられています。

DaBaby のキャリア

2015年に初のミックステープ『Nonfiction』をリリースして以降、立て続けにミックステープをリリースしていた彼は、2019年に Interscope Records からデビューアルバム『Baby on Baby』をリリースします。Offset や Rich Homie Quan、Rich the Kid、Stunna 4 Vegas らを客演に迎えた同アルバムは、Billboard 200 において初週25位をマークしました。年齢的にもキャリア的にも「フレッシュ」とは言い難い彼ですが、ラッパーとしての才能と注目度はフレッシュマンに相応しいのではないでしょうか。

DaBaby の代表曲

『Suge』

『21』

2. Gunna

Gunna とは

Gunna こと Sergio Giavanni Kitchens はジョージア州カレッジパーク出身の26歳(93年生まれ)。一部のファンからは、「Gunna ではなく本名をステージネームにした方が良い」と言われています。母親と4人の兄と共に生活していた彼は、ラッパーになる前は DJ やドラッグディーラーとして活動していました。

Gunna のキャリア

Cam’ron や Outkast を聴いて育ったという彼が音楽制作を始めたのは15歳の頃でした。キャリア初期は「Yung Gunna」として活動しており、2013年に初のミックステープ『Hard Body』をリリースします。その後、彼は共通の友人を通して Young Thug と繋がり、Young Thug のレーベル「Young Stoner Life Records(以下YSL)」と契約を結びます。この出会いがなければ今の Gunna はいないと言っても過言ではありません。そんな彼は、2016年から2018年にかけて YSL からミックステープ『Drip Season』シリーズを3作リリースします。2018年にリリースされた Lil Baby との共作『Drip Harder』も話題となりました。

そして2019年、デビューアルバムとなる『Drip or Drown 2』をリリースします(アルバム名は、Gunna が2017年にリリースした EP『Drip or Drown』から) 。Young Thug、Wheezy、Turbo 監修の同アルバムは、Billboard 200において初週3位をマークし、華々しいデビューを飾りました。

2018年から2019年にかけて一挙にブレイクし、彼が客演に呼ばれていないアルバムはなかったと言っても過言ではないほど様々なアーティストとの共演を果たした Gunna は、まさに2019年のフレッシュマンに相応しいのではないでしょうか。今後の活躍にも期待です。

※ Gunna についての記事はこちらから↓

Gunnaの代表曲

『Oh Okay(feat. Young Thug & Lil Baby)』

Lil Baby & Gunna『Drip Too Hard』

3. Megan Thee Stallion

Megan Thee Stallion とは

Megan Thee Stallion こと Megan Pete はテキサス州ヒューストン出身の24歳(95年生まれ)。ちなみに、自身の身長と美しさが Stallion(種馬)に似ているという理由から、Megan Thee Stallion というステージネームを付けたそうです。彼女はテキサスサザン大学に在学中の現役大学生でもあります。

Megan Thee Stallion のキャリア

彼女の母親はラッパー「Holly-Wood」として活動していたこともあり、幼い頃からスタジオに同行していたという Megan は14歳でラップを始めました。その才能はラッパーであった母もすぐに認めるほどであり、彼女は Instagram にフリースタイルラップを投稿することによって瞬く間にファンベースを確立させていきました。2016年からミックステープをリリースし始めた彼女は着々と人気を集め、2019年リリースのミックステープ『Hot Girl Meg』は Billboard 200において、初週10位をマークしました。それ以降客演としての仕事も増やしてきた Megan は、次世代の Nicki Minaj や Cardi B と言っても過言ではないほど、実力間違いなしのフィメールラッパーです。

※ Megan Thee Stallion についての記事はこちらから↓

Megan Thee Stallion の代表曲

『Cash S**t(feat. DaBaby)

『Big Ole Freak

4. Blueface

Blueface とは

Blueface こと Johnathan Michael Porter は、カリフォルニア州ロサンゼルス出身の22歳(97年生まれ)。学生時代はアメリカンフットボールに打ち込み、2014年の「East Valley League championship」という大会でチームを優勝に導いた経歴を持ちます。

アメフトに打ち込む Blueface

Blueface のキャリア

Blueface Bleedem としてキャリアをスタートさせた彼は、2017年に彼にとって初となるシングル『Dead Locs』をリリースします。そして、その後リリースした楽曲『Thotiana』が爆発的にヒットし、独特な声とオフビートなラップで人気を博した彼は、Cash Money West と契約を結びました。

Blueface の代表曲

『Thotiana

『Bleed it

5. Lil Mosey

Lil Mosey とは

Lil Mosey こと Lathan Moses Echols はワシントン州シアトル出身の17歳(02年生まれ)。2019年のフレッシュマン選出者の中では最年少のラッパーです。彼は高校に通っていましたが、音楽活動に専念するため退学したそうです。

Lil Mosey のキャリア

Meek Mill のデビューアルバム『Dreams and Nightmares』から多大な影響を受けたという Lil Mosey は、13歳から14歳の頃にラップを始めました。2016年にラッパーとしてのキャリアを本格的に始動させた彼は、2018年にデビューアルバム『Northsbest』をリリース。同アルバムに収録されている楽曲『Noticed』がバイラルヒットし、Billboard Hot 100にて80位まで登りつめました。

自身を「マンブルラッパー」ではないと主張する彼ですが、今後同世代ラッパーたちとどのように差をつけていくのか楽しみです。

Lil Mosey の代表曲

『Noticed

Lil Mosey & Chris Brown『G Walk』

6. Roddy Ricch

Roddy Ricch とは

Roddy Ricch こと Rodrick Wayne Moore, Jr はカリフォルニア州コンプトン出身の20歳(98年生まれ)。アトランタで暮らしていた時期もあり、アトランタテイストのラップスタイルを得意とします。

Roddy Ricch のキャリア

Meek Mill や Future、Speaker Knockerz、Young Thug などから影響を受けたという彼は、8歳の頃にラップを始めました。デビューミックステープ『Feed tha Streets』で注目を集めた彼は、続くシングル『Die Young』のヒットにより一躍名を知らしめます。歌心のあるフロウや多彩なビートアプローチを得意とする彼は、フレッシュマン選出をきっかけにますます活躍すること間違いなしでしょう。

Roddy Ricch の代表曲

『Die Young

Marshmello & Roddy Ricch『Project Dreams』

7. Tierra Whack

Tierra Whack とは

Tierra Whack こと Tierra Helena Whack はペンシルベニア州フィラデルフィア出身の23歳(95年生まれ)。幼い頃に父親と疎遠になった彼女と2人の妹は、母親の手によって育てられました。アートアカデミーに3年間通っていたという彼女は、音楽活動にはもちろん芸術活動にも力を入れており、芸術を学ぶために日本に訪れたこともあるそうです。楽曲や MV、Instagram などからも、彼女の芸術的センスの高さが伺えます。

Tierra Whack のキャリア

10代の頃から「Dizzle Dizz」という名のもと活動していた彼女は、2017年に自身の本名である「Tierra Whack」という名義で活動を始めました。同年彼女はInterscope Records と契約を結び、楽曲を次々とリリースします。そして2018年、彼女は15曲(各曲1分ずつ)収録のアルバム『Whack World』をリリース。各曲にショートムービーを付けたビデオアルバムもリリースし、15分で聴けるアルバムという新鮮さや、独特な世界観を持つムービーが大きな話題を呼びました。音楽面、芸術面共に才能溢れる彼女の今後に期待です。

Tierra Whack の代表曲

『Only Child

『Hungry Hippo

8. YBN Cordae

YBN Cordae とは

YBN Cordae こと Cordae Dunston はノースカロライナ州ローレー出身の21歳(97年生まれ)。2018年のフレッシュマンに選出された YBN Nahmir も属するYBN(Young Boss N***as)クルーの一員です。テニスプレーヤーの大坂なおみ選手との交際でも話題となりました。

大坂なおみ選手と YBN Cordae

YBN Cordae のキャリア

父の影響で幼い頃からヒップホップを聴いていたという彼は、10歳でラップを始め、15歳で自らリリックを書き始めます。10代の頃から「Entender」という名のもと3作のミックステープをリリースしていた彼は、2018年に YBN クルーに参加し、「YBN Cordae」として活動を始めました。J. Cole の若手ラッパーに対するディスソング『1985』へのアンサーソングとしてリリースした『Old N***as』が話題となり注目を集めた Cordae は、話題性だけではなく巧みなラップスキルとオールドスクール的要素を兼ね添えており、Dr. Dre もその実力を認めています。Logic や Chance the Rapper などの実力派ラッパーともコラボを果たした彼は、2019年のフレッシュマンの中でも一二を争う注目株でしょう。

YBN Cordae の代表曲

『Old N***as』

『Bad Idea (feat. Chance the Rapper)

9. YK Osiris

YK Osiris とは

YK Osiris こと Osiris Williams はフロリダ州ジャクソンビル出身の20歳(98年生まれ)。現在はアトランタに在住しています。名前の YK は「Young King」の略だそうです。

YK Osiris のキャリア

幼い頃から音楽を作っていた彼は、17歳の頃に初めてネット上に自身の楽曲をアップしました。2017年にリリースした『Fake Love』は SoundCloud で140万再生を記録し、その後リリースする『Valentine』は Lil Uzi Vert がリミックスに参加。その『Valentine』のヒットによって、彼はビッグレーベル Def Jam との契約を結びます。わずか数曲のリリースでここまで漕ぎ着けたのですから才能は本物です。ソウルフルな R&B と今日のヒップホップをミックスしたスタイルを得意とする YK Osiris の今後の活躍に要注目です。

YK Osiris の代表曲

『Valentine』

『Valentine Remix (feat. Lil Uzi Vert)

『Worth It

10. Comethazine

Comethazine とは

Comethazine ことFrank Childress はミズーリ州セントルイス出身の20歳(98年生まれ)。「Comethazine」とは、「promethazine(プロメタジン)」と「cocaine(コカイン)」の2つの薬物名を組み合わせたものだそうです。高校を中退している彼ですが、高卒認定を受けるため夜間学校に再入学しています。

Comethazine のキャリア

50 Cent や Rick James、Chief Keef、Nipsey Hussle、Lil B などに影響を受けたという彼は、17歳の頃本格的に音楽活動を開始しました。SoundCloud や Youtube に楽曲をアップしてファンベースを獲得していった彼は、2017年に Alamo Records と契約を結びます。

そして2018年、彼の新曲『Bands』が突如として SoundCloud の再生回数ランキングのトップに浮上します。実はこれが、SoundCloud の楽曲差し替え機能を巧妙に利用したチート行為で、YBN Nahmir のヒット曲『Bounce Out With That』で100万再生を稼いだのち、Comethazine が自身の楽曲に差し替えたのでした。そんなずる賢さだけでなく、A$AP Rocky や Lil Yachty など、人気ラッパーとのコラボレーションも果たした彼の今後に注目です。

Comethazineの代表曲

『Bands

Comethazine & A$AP Rocky『Walk (Remix)』

11. Rico Nasty

Rico Nasty とは

Rico Nasty こと Maria-Cecilia Simone Kelly はメリーランド出身の22歳(97年生まれ)。プエルトリコ人の母とアメリカンアフリカンの父を持つ彼女は、大麻所持によって当時通っていた学校を追い出されたのち、パプリックスクールに通いながら音楽制作を始めます。

Rico Nasty のキャリア

高校在学時にラップを始めた彼女は、初のミックステープ『Summer’s Eve』をリリースします。高校卒業後、彼女はより本格的に音楽制作に取り組み、『The Rico Story』、『Sugar Trap』と2作のミックステープをリリースします。その後も次々とシングルやミックステープをリリースし、5作目のミックステープ『Sugar Trap 2』は、アメリカの音楽誌「Rolling Stone」にて「2017年のベストラップアルバム」としてリストアップされました。そして2018年、彼女はAtlantic Records と契約を結びます。

2019年には Kenny Beats とのジョイントテープ『Anger Management』をリリースし、ますます世間に名を知らしめています。

パンクラップやトラップメタル、もしくは「シュガートラップ」とも称される独特なスタイルを貫く Rico Nasty の今後の活躍に期待です。

Rico Nasty の代表曲

『Key Lime OG

『Again

※各アーティストの情報や年齢は、2019年6月現在のものです。

Kanye West が与えた影響と Travis Scott の「転調」について

Yeah, this shit way too formal

だめだ、これじゃ堅すぎる

y’all know I don’t follow suit

俺は「型にはまる」のは好きじゃないんだ(別訳:俺がスーツを着ないって知ってるだろ?)

Travis Scott – SICKO MODE

常に新しさを求め、他のラッパーとは一線を画す存在、Travis Scott(以下、Travis)。

そして「オートチューン」・「セレブ指向」・「プロデューサー気質」・「転調」という4つの要素を聞けば誰もが Travis を連想することは間違い無いでしょう。

しかし、これら4つの要素が共通するラッパーがもう一人います。それは皆さんご存知 Kanye West(以下、Kanye)です。ということで今回は Kanye の影響などもみながら、 Travis を形作る四つの要素をまとめていきたいと思います。

【はじめに】

最初に、ざっくり Travis について紹介いたします。

Travis Scott こと Jacques Berman Webster II は 1992年 4月30日にテキサス州ヒューストンで生まれました。

治安が悪いことで有名なサウス・パークで幼少期を過ごす Travis ですが、まず彼は父が会社経営者でありながらソウル・ミュージシャン、祖父はジャズ・ミュージシャンという音楽一家に生まれたということを念頭においておかなければなりません。

ちなみに叔父がかなりの腕前のベーシストで、彼の愛称が Travis だったことから、彼のステージネームは生まれています。(「Scott」 は彼が敬愛してやまない Kid Cudi の本名 Scott Ramon Seguro Mescudi からきています)

Kid Cudi についての記事はこちら

また、地元ヒューストンにおける彼の幼少期の憧れはやはりテーマパークでした。このテーマパークの名前が Astroworld であることは言うまでもありませんね。

1980年代のAstroworldのコマーシャルビデオ

Travis はエルキンス高校に通い、卒業後はテキサス大学サンアントニオ校に通っていましたが、大学2年生の時に音楽キャリアを追求するために中退しました。やはり、Travis が今売れているほとんどのラッパーと違う点は、決して貧乏だったわけではなく、裕福な中流階級であったということです。ちなみに、これは Kanye にも共通します。

Kanye West の全てがわかる記事はこちら

彼のキャリアは 2008年にまで遡ります。友人の Chris Holloway とデュオ「The Graduates」を結成し、最初のミックステープ『The Graduates』を発表します。そして、このミックステープには彼の嗜好がわかる曲がたくさんあります。

『Day ‘n’ Nite』

この曲は皆さん知っているとおり、Kid Cudi の『Day ‘N’ Nite』からきた曲で、エクスペリメンタル・ヒップホップの生みの親とも言える Kid Cudi の特徴であるロック的なギター・ベースのサウンドなどが見受けられます。

また、『No Introductions』と言う楽曲は Kanye の『Flashing Lights』をサンプリングした曲です。

そして2012年に Epic Records と契約。同じ年の11月に Kanye 率いる GOOD Music と契約。そして2013年4月に T.I. が率いる Grand Hustle と契約し、スター街道を登っていきます。

Travis の細かいキャリアについて話したいところですが、皆さん結構知っていることも多いと思いますので省略いたします。またいつか Travis 単体の記事を書くときに解説したいと思います。

さて次に、Travis を形成する4つの要素の内の「オートチューン」について、Kanye が Travis に与えた影響を見ていきましょう。

【オートチューン】

T-Pain によってブラックミュージックに取り入れられ、今ではほとんどのラッパーが多かれ少なかれ使う「オートチューン」。

オートチューンの歴史についてはこの記事を参照ください。

数々のラッパーと比べても分別がすぐにつくダミダミとしながらもざらつきを含んだオートチューンボイスは Travis を特徴づける重要な要素です。そして Travis のシグネチャーともなっている「オートチューン」の歴史において最も重要となるアルバムが Kanye の『808s&Heartbreak』なんです。

Travis が Kanye に圧倒的な影響を受けているというのはこのアルバムを聞けばすぐにわかること間違いなしです。次は「セレブ指向」について、Kanye が与えた影響とともに見ていきましょう。

【セレブ指向】

Travis と聞けば、 Kylie Jenner との関係などのイメージも強く、セレブ的であると言うイメージも強いのではないでしょうか。(彼はそう呼ばれることをひどく嫌っていますが)

Travis がコラボした商品がすぐに売り切れることは彼がこの時代を代表するファッション・アイコンであることを示していますね。中でも彼とコラボした Nike の 「Air Jordan 1」などは今でもプレ値がつき、高額で取引されています。

Nike Air Jordan 1 Retro High Travis Scott

ちなみに、先日 Nike と Cactus Jack のコラボ Air Max 270 も発売されましたね。みなさん応募はしましたか?

Nike × Cactus Jack Air Max 270 (2020/ 5/29発売)

しかし、こういったファッション・アイコン的なイメージやセレブ的イメージの先駆けもまた、Kanye West なのです。それは Kanye の「YEEZY BOOST」における大成功や、Kim Kardashian との関係を考えれば容易に理解できることでしょう。

YEEZY BOOST 350 V2

次は Travis の特徴である「プロデューサー気質」について、Kanye が与えた影響とともに見ていきましょう。

【プロデューサー気質】

次は Travis の理解において重要となる3つ目の要素、それはプロデューサー気質であることです。これにおいても Kanye が圧倒的な影響を与えていることは間違い無いでしょう。

Travis が他のラッパーと違って、超有名なプロデューサーまでもを彼のスタイルに追従させたり、制作において直接トラックやミキシングの指示を出したりすることは有名ですね。でも、これは当然のことなんです。なんといっても若くして父親に DTM の機材やドラムスを教わっていた Travis にとってビートメイク、ミキシング、マスタリングは全て自分で行うのが当然だったからです。

そして、プロデューサーを統率するというのをを証明する事実として、『Goosebumps』のプロデューサーとして知られる Cardo はインタビューでこう語っています。

「Travisとコラボをする人は彼とシンクロしなければならない。彼が表現しようとすることを全て受け入れる必要があるんだよ」

Cardo

そして、プロデュースする能力は、Kanye や GOOD Music に所属するプロデューサー達からかなりインスパイアされていることも間違い無いです。実際、Travis は Kanye 率いる GOOD Music との契約において、Kanye が指揮する最強プロデューサー集団「Very GOOD Beats」のメンバーとして迎え入れられているのです。

また、アルバムに多くのアーティストを適材適所で使う Travis のスタイルも Kanye から影響を受けていること間違いなしです。(これはあらゆるラッパーに影響を与えたと言うべきですが)実際に Travis と同じ G.O.O.D.Music の一員で、『Astro World』にもプロデューサーとして参加している CyHi The Prynce はこう語っています。

CyHi The Prynce

「多くのコラボレーションをするという風潮は、ラッパー達がアルバムオブザイヤーで Adele とかと戦うために、乗る必要がある風潮なんだ。この方法はKanye Westから始まったものだね」

そして最後に今回の記事の目的でもある「転調」について触れたいと思います。

【転調】

まず転調とは何か?ということですが、辞書的な意味ではこうなります。

楽曲の進行中に、その調を他の調に転ずること。

広辞苑

つまり感覚的に言えば「同じ曲の中で曲が変わる」という現象のことです。そして転調するときには必ず「繋ぎ」の部分があります。例えば音を歪ませたり、一旦フェードアウトさせたり、メロディーラインだけ抜いたりというのが一般的です。また、この転調の効果は「聞いている人間が予期しているものとは異なる音が構成される」ことであって、映画でいうところのサスペンスのような効果です。

そして、それは驚きを誘発します。驚きがあるというのは「楽曲を飽きさせないこと」にも深く貢献する要素です。

『SICKO MODE』での「転調」はみなさんの記憶にも深く刻まれていることでしょう。この PV の中で、突然白黒に切り替わって始まるダンスのシーンはヒップホップ史に残るイメージといって間違い無いでしょう。そして、実はこの「転調」においても Kanye による影響は絶大なものです。では、「転調」について触れていきましょう。

『Yeezus』と転調

Kanye の『Yeezus』はあまり知られていない事実かもしれませんが、ヒップホップにおける転調を世に知らしめた作品なのです。(それ以前にも Kanye は転調を使うことはありましたが、このアルバムでは特に徹底してそのスタイルが現れています)

ではまずその証拠として『Hold My Liquir』をお聞きください。

この重厚なサウンドを元に、幾重にも広がり続けるトラック、複数回の継続的、断続的な「転調」が繰り返されています(「転調」について、詳しくは当記事下部の【番外編】をご参照下さい)。また、独特のロック的ギターやベースの音使いなど、様々な面で素晴らしいこの楽曲ですが、とりわけその「転調」の凄みに驚かない人などいないでしょう。

『New Slaves』でもその特徴は顕著です。

2分53秒あたりでの転調は誰もが感動すること間違いなしです。

他にも、『Blood On the Leaves』での1分8秒でのドラムスを用いた転調や『Send It Up』での0分57秒時点で起こる転調などあげ始めればキリがありませんが、どうして Travis に影響を与えたと言い切れるのかと思う方もいらっしゃることでしょう。

実は、このアルバムには Travis がプロデューサーとして参加しているのです。特に『On Sight』は Travis が中心となって作られた一曲です。この曲が最も転調の顕著な例を示していることは間違い無いでしょう。1分17秒での転調にご注目ください。

また、2012年に作られていたものの、様々な問題で 2013年にリリースされることとなった Travis の最初のフルレングス・アルバム『Owl Pharaoh』は Kanye West と Mike Dean が中心となってプロダクションを務めています。

その中でも『Bad Mood / Shit On You』における何重にも折り重なった転調は、彼のその後の音楽基盤に多大な影響を与えていることでしょう(ちなみにこの曲の中心製作者 Emile Haynie は Travis を含め、R&B や Alternative Rock などあらゆるジャンルを横断し、様々なアーティストに影響を与えた名プロデューサーであることも忘れてはいけません)。

そして Travis は『Rodeo』において完全に「転調」のスタイルを完成させます。その中でも、『90210』の転調は言うまでもなく、彼のスタイル/シグネチャーを刻印した一曲です。

2分40秒での衝撃をぜひ味わってみてください。

こうして、Kanye のスタイルに学びながら、Travis はヒップホップにおける転調の重要性を、いよいよ最高到達点へと押し上げてしまったのです(この後、番外編として「転調」についてかなり細かく解説したものをご用意させていただきましたので、より深く理解したい人は最後まで読んでいただけると幸いです)。

【最後に】

最後まで閲覧いただき、ありがとうございました。

Travis Scott は今でこそ「転調の天才」というイメージを欲しいままにし、プロデューサーも動かすほど一人でなんでもやってのけるイメージですが、そこには Kanye West の影響が深くあるんですね。

そして、今回は読みたいという人のためだけに【番外編】をご用意いたしました。かなり細かい内容にはなりますが、より深く「転調」を理解したい人は以下をお読みになってください。

【番外編】

【4種類の転調について】

転調には様々なパターンがありますが、今回の記事では大まかには二つの基準で分けます。

一つ目の基準は、転調後のトラックの持続期間が短いか長いか、つまり短期的か長期的かであり、二つ目の基準は転調が起こる前の音と関係しているか無関係か、つまり継続的か断続的かになります。

つまり組み合わせで言うならば ⑴短期的継続 ⑵長期的継続 ⑶短期的断続 ⑷長期的断続 という4つの転調のパターンに分けることができます。少し漢字が多くて理解しにくいと思うので、わかりやすく実証するため、これらのあらゆる要素が組み合わさった『SICKO MODE』を見てみましょう。

【『SICKO MODE』における11箇所の転調】

驚くことに、この曲中では転調が計11回行われています。先ほど説明した 4種類の転調が全て使われておりますので、11個全てを見ていきましょう。

【1個目】

まず一つ目が1分あたりで Drake の下記のフレーズの直後に音が歪みながらリヴァーブを起こし、キックの音で全く違うトラックに変わるシーンです。

「Young La Flame, he in sicko mode」

ここは前の音と関係のないトラックが Travis のバース中ずっと続いていることから ⑷長期的断続に分類される転調となっています。

【2個目】

2つ目に、1分40秒あたりで Big Hawk と Swae Lee による下記のフレーズが聞こえた後、キックスが消失し、元々かなり小さくなっていたマリンバのような弾ける音のみになるトラックです。

「Some-Some-Some-Someone said」

ここは前のトラックからなっていた音が持続され、少しの間だけ続くことから⑴短期的継続 に分類される転調です。正直、この2つ目の転調はいわゆる「音抜き」と呼ばれる類のもので、転調だと気付きにくい、あるいは転調とは違うとお考えの方もいらっしゃると思います。あくまでこの記事の解釈では「全ての音がなくならなず、ある程度時間が持続する音抜き」であれば転調とみなしますので、も ⑴ 短期的継続の転調と考えてもらってかまいません。なぜなら、それが聞いている人間が予期しているものとは異なる音で構成されているからです。

【3個目】

そして3つ目は、1分54秒のあたりで同じ方法 ⑴短期的継続 を使って元のトラックに戻るところです。

【4個目】

その後の4つ目は割と複雑に構成されているのですが、2分34秒の Travis による「Who put this shit together? I’m the glue」のフレーズの音抜きを契機として、2つ目の転調後と同じビートに移行します。

これもやはり⑴ 短期的継続の転調です。

そしてトラヴィスの代名詞である「特殊な転調」はこの後の5つ目と6つ目です

【5個目】

5つ目と6つ目はほとんど一体となっているのですが、5つ目が2分48秒の時点で、一気にキックスと大きく歪み響いていく音に切り替わるところです。

ここは、そのあと9秒ほどの短期間だけ続く、大きく歪んだトラックを導くことから ⑶短期的断続の転調です。

そしてこの5つ目の転調とその後のトラックは6つ目のこの曲最高の地点(2分57秒のダンスのシーン)を導き出すための「繋ぎの役割」も担っているのです。

つまり5つ目の転調は6つ目の転調の一部でもあり、このような「二重の転調」によってこの曲最大の見せ場が作り出されているのです。

【6個目】

そして、6つ目の転調は言わずもがな、⑷長期的断続 の転調です。

ここまででお気づきの方もいると思われますが、最初の方に載せた表で言う「上の部分」、つまり「断続的な転調」の方が圧倒的に衝撃を与えます、もちろんそれは続くと思われていたトラックが突然シャットアウトされるからです。(その中でも長期的断続の転調は衝撃は大きいが難易度はかなり高くなる)

【7個目】

そして7つ目が Tay Keith のプロデューサータグが流れた後です。ここでは気づくのが難しいかもしれませんが、元々のトラックにオルガンのようなビートがプラスされ、それが一定期間続きます。

つまりこれは ⑵長期的継続の転調になります。

【8個目】

8つ目も 7つ目と同じ、⑵長期的継続の転調で、3分20秒あたりの高音の金切り音を「繋ぎ」として起こる転調で、その後にはキックスが入ってきています。

この後の3分30秒あたりでのオルガンの音がたされるところはいわゆる「繋ぎ」の部分がないことから、単に音数が増えただけで転調ではないとみなすことができるでしょう。(4分11秒でも同じことが起こっています)

【9個目】

9つ目は Drake のバースでの音抜きを「繋ぎ」とした転調です。ここではオルガンの音がなくなっていますが、その前の音は継続しているので ⑵長期的継続の転調となります。

【10個目】

10個目が 4分23秒の転調で、これまたキックスが足され、ある程度の時間継続しているタイプ ⑵長期的継続の転調にあたります。

【11個目】

11個目は 5分1秒の時点で起こる ⑵長期的断続の転調です。

この5分の曲の中に、11個もの転調があるなんて本当に驚きですね。

【おまけ】

またいつか Travis Scott をより深く理解できる記事を書きたいと思います。【番外編】までお読みいただきありがとうございました。

Written by Kensho Sakamoto

Lil Yachty と巡る、素敵なマンブルラップの世界

Lil Yachty (リル・ヨッティー) 、またの名を Lil Boat (リル・ボート) が世界中のヒップホップリスナーに注目され始めたのは、今から4年ほど前の2016年頃でした。

Lil Yachty

真っ赤なブレイズに、カラフルなビーズをあしらった独特なヘアースタイル。寝起きのような締りのない声色。様々なスタイルに挑戦し、常に新たなサウンドを創り出そうとする前向きな姿勢。数え切れないほどのユニークなキャラクターを持った Lil Yachty に、私たちリスナーは一瞬にして虜になりました。

Lil Yachty は、はっきりと言葉を発さないでラップする、いわゆる「マンブルラップ」のカテゴリでその名を轟かせました。

「マンブルラップ」と聞くと、ひょっとするとどこかネガティブなイメージをお持ちの方もおられるかもしれません。ここ数年では、Playboi Carti Lil Uzi VertYoung Thug などのいわゆる「マンブルラッパー」がシーンを台頭したこともあり、ネガティブなイメージは払拭されてきてはいますが、それでも、「マンブルラップ」という言葉がネガティブな意味合いで使われているのをよく目にします。

しかし、Lil Yachty の場合は、マンブルラップの枠を飛び越えてポップミュージックや R&B などのあらゆるジャンルのアーティストから引っ張りだこになっています。一時はネガティブなイメージさえ押し付けられていたマンブルラップアーティストの一人が、なぜここまで各方面からの人気を得たのでしょうか。今回はその活躍の裏に隠された「マンブルラップ」の魅力と共に、Lil Yachty についてまとめてみようと思います。

Lil Yachty ってどんなラッパー?

Lil Yachty (以下 Yachty) こと Miles Parks McCollum は、アトランタの西側に位置する小さな町メーブルトンに生まれました。

彼の音楽を聴いたことがあっても、彼のキャラクターについてあまり知らない方もおられるかもしれません。そんな方々には、まずこのインタビュー動画をお勧めします。(彼についてよくご存知の方も、ご視聴を強くお勧めします。)

I don’t eat fruits or vegetables
俺は果物も野菜も食べない
I eat pizza everyday… every single day
ピザは毎日食べるよ、毎日欠かさずにね

インタビュアーの「君について、みんなが知らないことを幾つか教えてよ」という質問に、このような驚きの回答を示した Yachty。

さらに、インタビュアーに「このままだと、リスナーのみんなは君のことを『変なヤツ』のカテゴリーに入れちゃうよ?」と警告されたのに対し、「どうぞお好きに。」と一言で答えてしまいます。インタビュアーも、困惑を隠しきれず全体的に気まずい雰囲気になってしまっていますが、この動画こそが世界中のリスナーが彼のキャラクターに魅了されている理由を明確に示していると思います。

マクドナルドで働いていた経験もある、ごく普通の少年だった Yachty は、2016年にリリースしたシングル『One Night』で一躍有名になります。ハイハットの効いた浮遊感のあるビートの上に、ほとんど抑揚のない気怠そうな歌声をのせる今までにないスタイルは、賛否両論こそありましたしたが、間違いなく世界中に広まりました。

各方面のアーティストとの共演

『One Night』で一挙に注目を集めた彼は、同年にミックステープ『Lil Boat』をリリースします。『One Night』が収録されていることから、もちろんリリース前から期待値が高かったミックステープですが、見事その中からもヒットを生み出します。それは Young Thug や Quavo、Skippa da Flippa を招いた楽曲『Minnesota』です。

幼児向けの数え歌のような単調なメロディーのトラックに、トラックと同じメロディーでアプローチする類をみないスタイルは、聴く者全ての心を鷲掴みにしました。Young Thug や Quavo など、各方面からのゲストを一曲に詰め込むことで、更なるリスナーの獲得に成功しました。

また Yachty は、2016年に Chance The Rapper によってリリースされたミックステープ『Coloring Book』に収録されている楽曲『Mixtape』にも参加し、そこでも大きな爪痕を残しました。

Chance The Rapper や Young Thug と言った実力派ラッパーと肩を並べて、ほとんど無名だった Yachty はソリッドなラップをラストバースで披露します。他の二人に劣らないそのラップスキルは、Chance のリスナーたちの間でも話題となり、すぐさまその口コミは拡散されました。

いわゆるマンブルラップの元祖である Young Thug や、アトランタトラップの大御所である Quavo 、シカゴの Chance らとの共演を果たした Yachty ですが、その勢いは止まることを知らず、更なるジャンル間の跳躍を見せてくれました。

その一例として挙げられるのは、Charli XCX との楽曲『After the Afterparty』での活躍です。オートチューンをバリバリに効かせ、ポップ寄りのフロウで歌うことで、ポップミュージックとの意外な融合を実現しています。この楽曲への参加を通して、Yachty はメロディアスなスタイルでポップミュージックのリスナーたちからの認知度も上昇させました。

このように、ジャンルの壁を跳躍して様々なアーティストとの共演を果たすことで、ヒップホップコミュニティ以外からの認知度を上昇させ、その結果としてヒップホップシーンの盛り上がりにつながりました。ジャンル間の共演のハードルを下げた人物として、間違いなく Lil Yachty の名前が上位に上がってきます。

スタイルの多様性

Yachty は、他のアーティストの楽曲に参加するのみならず、自らのプロジェクトにおいても様々なスタイルへの挑戦を試みてきました。本章ではその一部をご紹介します。

Not My Bro

1枚目のミックステープ『Lil Boat』に収録されているインタールード的なポジションの楽曲です。Yachty のメインフィールドである『マンブルラップ』を究極まで突き詰めた一曲となっており、リリックを見ながら聴いても何を言っているかわからないレベルです。ラップがうまいとはお世辞にも言えませんが、眠たげな声色と、一隻のボートが海原にポツンと浮かぶ様子が頭に浮かぶような穏やかなトラックが、何故だか心地よさを醸し出しています。

Beautiful Day (feat. Kylie Jenner)

『Lil Boat』をリリース後に制作された楽曲を集めたミクステ『After da Boat』に収録されている楽曲です。驚くべき点は、Kylie Jenner が客演として参加していること(ほとんどラップは披露せず、ただふざけている間にバースは過ぎ去っってしまいます。)ディズニーランドのパレードで流れてきそうな、可愛らしいトラックの上で四分間のショータイムが繰り広げられます。

前半の Yachty のバースでは、メリハリのないだらだらとしたラップから台詞のパート、さらには本気のラップなどが詰め込まれており、四分間が一瞬で過ぎ去ると共に、聴き終わったと同時に「今のは何だったんだ」という不思議な感想に襲われる迷曲となっております。

she ready (feat. PnB Rock)

2枚目のスタジオアルバム『Lil Boat 2』に収録されている PnB Rock をフィーチャーした楽曲です。『Lil Boat 3』の先行シングルを二曲ともプロデュースした Earl on the Beat によるプロデュースで、蒸気機関車の煙が吹き出すようなサウンドのポジティブな良トラックです。

Ty Dolla $ign のように、ヒップホップと R&B を行き来するようなスタイルで有名な PnB Rock をフィーチャーすることで、Yachty ならではの陽気な雰囲気を、他の楽曲とは少し違ったアプローチの仕方で実現しています。

Dripped Out (feat. Playboi Carti)

まずは、Lil Yachty の三枚目のスタジオアルバム『Nuthin’ 2 Prove』に収録されている Playboi Carti を招いたこちらの楽曲です。こちらも Earl on the Beat による 8ビットゲームのサウンドエフェクトのようなピコピコトラックに、乳児が泣きじゃくるようなラップが印象的です。

マンブルラップシーンを台頭するに二強の共演で、リリックを理解せずとも楽しめる素敵な楽曲に仕上がっています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は Lil Yachty と共に素敵なマンブルラップの世界をご紹介しました。「薄っぺらくて、軽すぎる」と批判されることもあるマンブルラップですが、これも一つの立派なジャンルだと考え、単純に楽しんでみるのも良いのではないでしょうか。

最新作の『Lil Boat 3』にも、A$AP Rocky や Tyler, The Creator、Young Thug などが参加しており、大変聞き応えのある作品になりそうです。約2年ぶりに Lil Yachty ワールドに連れて行ってくれることを期待して、楽しみに待つとしましょう。

Young Thug がシーンに与えた影響と今日の「ベイビーボイス」ラップ

昨今の流行である Playboi Carti の「ベイビーボイス」ラップをはじめとし、今や USヒップホップシーンのトレンドとなった高音で歌うラップスタイル。今回は、ヒップホップにおけるオートチューンの歴史や、今日の流行のきっかけを作ったラッパー Young Thug の影響に触れながら、その成り立ちや進化について考えていきます。

オートチューンの歴史

まずは、ヒップホップシーンにおけるオートチューンの歴史について簡単におさらいしようと思います。

オートチューン(Auto-Tune)とは、アメリカのアンタレス社が1997年に製品化した音程補正ソフトのことで、地球物理学者の Andy Hildebrand が地震データ解析用ソフトが音程補正にも応用できることを偶然発見し、開発に至ったそうです。

初期の Auto-Tune

90年代後半から様々なジャンルにおいて用いられてきたオートチューンは、2000年代中頃から、ヒップホップや R&B においても多く使用されるようになります。

いわゆる「ケロケロボイス」を用いて歌うスタイルが T-Pain を中心に流行を見せ、Kanye WestLil Wayne、Akon らが後に続いたことで更にその人気に火がつき、メロディへ傾倒するアーティストが増えていきました。

T-Pain – Buy U a Drank (Shawty Snappin’) [feat. Yung Joc]

Kanye West – Heartless

彼らの楽曲を聴いていただければ分かるように、オートチューンは「音程補正」という本来の用途よりも、一種の「エフェクト」に近い用法で、ヒップホップシーンに浸透していきます。

オートチューンの流行とそのフォロワーたち

そんなオートチューン黎明期のアーティストたちのフォロワーであり、以後のヒップホップシーンに多大な影響を与えたラッパーの1人が Future です。

彼は、オートチューンを多用して歌うスタイルを取り入れたデビューアルバム『Pluto』で注目を集め、ラップと歌唱を行き来するスタイルを更に浸透させました。

Future – Turn On The Lights

Future が新しいスタイルで一世を風靡し、若いラッパーに多大な影響を与えるなか、次に現れたのが Young Thug でした。

Lil Wayne 直系のオートチューンを用いた高音ラップを得意とする Young Thug ですが、彼の奇声にも近い独特な歌唱法は世間を騒がせました。

Young Thug – Picacho

ジェンダーレスなファッションスタイルでも知られる Young Thug は、楽曲においても中性的あるいは女性的ともとれるようなハイピッチ・フロウを披露します。

Future & Young Thug – Real Love

Young Thug – The London (feat. J. Cole & Travis Scott)

彼がシーンに登場した当時は、そのファッションや音楽性から、「ゲイ的だ」と批判する声も少なくありませんでしたが、何と言われようと自分のスタイルを曲げずに進み続けた彼の信念が、以後のヒップホップシーンに多大な影響を及ぼすことになります。

ハイピッチ且つ中性的なスタイルの定着

Young Thug の活躍を皮切りに、オートチューンやピッチ変更を用いた高音且つ中性的な歌唱スタイルが音楽シーンに広がります。

2010年代以前にも、Nas が自身の女性オルターエゴ「Scarlett」としてピッチを上げた女性のような歌声でラップする事例がありましたが、そのような高音パートをオルターエゴ的な位置付けとして楽曲の一部分に用いるアーティストも増えていきました。

Nas – Sekou Story (feat. Scarlett)

Frank Ocean の『Nikes』や、Tyler, the Creator の『RUNNING OUT OF TIME』などでも(Young Thug の影響とは言えないものの)ピッチを上げた中性的な歌唱パートが取り入れられ、ヒップホップ、R&B からポップスまで、しっかりメインストリームに浸透していることが窺えます。

Frank Ocean – Nikes

Tyler, The Creator – RUNNING OUT OF TIME

中でもヒップホップシーンにおいては、その盛り上がりが顕著でした。明らかに Young Thug に影響を受けたであろう高音で歌う若手ラッパーが続々と登場し、シーンを盛り上げます。

SahBabii – Marsupial Superstars (feat. T3)

Coca Vango – Sauce All One Me

Haiti Babii のフリースタイルラップ

「ベイビーボイス」ラップの登場

そして2018年から2019年にかけて、中性的もしくは女性的という域を超えた、まるで幼児のような声で歌ういわゆる「ベイビーボイス」ラップが登場し話題を呼びました。

今日のベイビーボイス・ラップと呼ばれるスタイルを始めたのは、Young Thug の YSL Records とサインしているアトランタのラッパー Lil Keed でしょう。彼もまた Young Thug に影響を受けたラッパーの1人ですが、他の Young Thug フォロワーとは一線を画すような、極端に高いピッチで歌うフロウを聴かせます。

Lil Keed – Nameless

Lil Keed の裏声でシャウトするレコーディング風景も非常に興味深く、一見の価値ありです。

そして、最初にベイビーボイス・ラップが大きな注目を浴びたのは、Young Nudy & Playboi Carti の未リリース楽曲『Pissy Pamper』のバイラルヒットでした。

※未リリース楽曲のため音源無し。

この楽曲では、Playboi Carti が今にも泣き出しそうな幼児のように歌うフロウを披露し、未リリースにも関わらずリーク曲が Spotify のチャートにて1位を獲得しました。

このヒットを受け、Playboi Carti はベイビーボイス・ラップに傾倒するようになります。幼児のような声で絞り出すように歌うラップと耳に残る軽快なアドリブを織り交ぜた彼のスタイルは、もはやラップというより一種の楽器としての側面が強く、Young Thug よりも更に音にフォーカスした進化系であるといえます。

Playboi Carti – @ MEH

Drake – Pain 1993 (feat. Playboi Carti)

Young Thug のスタイルを誇張して進化させたようなこの新しいスタイルは、賛否両論あるものの、チャートではしっかり好成績を残します。実際、Playboi Carti だけでなく、この「ベイビーボイス」ラップと呼べるような歌唱法を用いる若手ラッパーが次々と現れています。

その中でも、現時点でのベイビーボイス・ラップの究極形態が、アトランタの新人ラッパー 645AR でしょう。彼のベイビーボイスはもはやホイッスルボイス(裏声系のシャウト)や金切り声にも近く、「果たしてこれはベイビーなのだろうか」という疑問も生まれるほど衝撃的なスタイルです。

645AR – 4 Da Trap

このように、2000年代中頃からヒップホップシーンに浸透し始めたオートチューンを用い歌うラップスタイルは、2010年代に登場した Future や Young Thug の影響を強く受けながら今日のスタイルへと進化を遂げました。

世間が待望している Playboi Carti の新譜が本当にリリースされるのかどうかは怪しいですが、ヒップホップファンや音楽評論家から賛否両論を受けるベイビーボイス・ラップの今後と、その影響を受けた新たなアーティストやスタイルの登場を楽しみに待ちたいと思います。

Written by Riku Hirai

Gunna | 『Drip Season』から『WUNNA』までの軌跡

アトランタを中心として、発展を続けるトラップミュージック。Future や Young Thug、Gucci Mane などがその代表として挙げられますが、その勢力はアトランタにとどまることはなく、今や世界中に広まりつつあります。今回はそんなトラップミュージックのニュースター Gunna についてまとめてみたいと思います。

今週末に待望のニューアルバム『WUNNA』をリリース予定の Gunna。そんな彼の生い立ちや、これまでの作品についてこの機会におさらいして行きましょう。

生い立ちとキャリアの開始

Gunna (ガンナ) こと Sergio Giavanni Kitchens は、ジョージア州のカレッジパークに生まれました。カレッジパークは、たくさんのラッパーを生み出したトラップミュージックの聖地であるアトランタの北部に位置する小さな街です。

本名の Sergio Kitchens (セルジオ・キッチンズ) は、ラップネームの Gunna よりも数倍かっこいいと話題になり、本名をラップネームにした方が良いという声が多数上がったことも記憶に新しいです。

実は彼、Gunna 名義で本格的にラッパーとして活動する以前に、 Yung Gunna という別名義下で活動していました。2013年には Yung Gunna としてミックステープ『Hard Body』をリリースしています。柔らかく優しい声質はほとんど現在と変わっていませんが、明らかに現在と比べてフロウやリズムキープにおいて未熟さが感じられます。

ミクステのタイトルにもなっている『Hardbody』というこちらの楽曲。楽曲のタイトルを連呼するだけのフックに、今ではあまり聞くことのできないアグレッシブなフロウが特徴的です。楽曲の完成度は高くないとはいえ、ヘロヘロなラップとアグレッシブなフロウが共存している不思議なスタイルには、惹きつけられる部分もあります。

『Drip Season』シリーズや『Drip or Drown』シリーズで知られ、高級ブランドを身に纏っている現在の姿とは程遠い、坊主頭の彼を見ることのできる MV にも注目です。(未だに再生回数が16000回であることから、Yung Gunna 時代にはほとんどファンベースを築けていなかったようです。)

Young Thug との出会い

いかにも冴えないラッパーというイメージだった彼に、その後のキャリアを180° 転換する大きな転機が訪れます。それが、アトランタのラップスター Young Thug との出会いです。

Young Thug の親友である Keith Troup というラッパーを通して Gunna と Thug は出会いました。 二人を繋ぎとめた Keith Troup はその後すぐに亡くなってしまいましたが、Thug は Gunna の実力を認め、自身のミックステープ『Jeffery』に参加するチャンスを与えました。Gunna は『Floyd Mayweather』にて Gucci Mane と Travis Scott という超豪華メンバーに混ざって本気のラップを見せつけました。

『Floyd Mayweather』を聴いた Thug のファンたちは、ビッグネームに混ざる謎の若手ラッパーの名前に興味を持ち始め、 「Young Thug のアルバムに参加している Gunna というラッパーがヤバイ」という噂が瞬く間に広がり始めました。大物ラッパーが自らのキャリアに満足するのではなく、積極的に若手をフックアップして、ラップゲーム全体を盛り上げようとする姿勢は本当に素敵なものだと思います。

1st ミックステープ 『Drip Season』

『Floyd Mayweather』によって爆発的に認知度を得た彼は、2ヶ月後に Gunna 名義下での初めてのミックステープ『Drp Season』をリリースします。ちなみにこの時点で Young Thug が率いるレコードレーベル YSL Records との契約を果たしています。

彼をフックアップした張本人である Young Thug はもちろん、のちに YSL との契約をはたすラッパー Nechie や Young Trez などに加え、プロダクションには Narcos や Billboard Hitmakers、そして現在も Gunna とタッグを組んで楽曲制作に勤しむ Wheezy などが参加しています。

Cop Me a Foreign (feat. Young Thug)

Gunna が自らの名義下で初めて Thug を招いた記念すべき楽曲です。Yung Gunna 時代からは想像もできないほど、多彩なフロウやメロディーラインを用い、明らかにレベルアップしている事を感じ取る事ができる楽曲となっています。

再生時間は5分10秒と、トラップミュージックの中ではかなり長い方に分類されるこちらの楽曲ですが、面白いのは二人のバースの占有率です。Gunna のフックから幕開けし、1分58秒までは Gunna のバースが続きますが、その後の3分12秒は全て Thug によってラップが繰り広げられるという、ホストとゲストが逆転した構成になっています。

Gunna によってラップされたフックを、2回目のフックはそのまま Thug がラップし直していたりと、面白い要素をできるだけ詰め込んだ欲張りな楽曲となっています。目まぐるしく変化する Thug のフロウにも要注目です。

2nd ミックステープ 『Drip Season 2』

一作目のミクステで完全に勢いに乗った彼は、その7ヶ月後に二作目のミクステ『Drip Season 2』をリリースします。当時セルフタイトルアルバムをリリースした直後だった Playboi Carti や YSL 所属の Lil Duke、 他にも HoodRich Pablo Juan などが客演として参加しています。さらに、プロダクションには TM88 や Zaytoven、Pi’erre Bourne などの名だたるメンバーを招き、かなり華のあるミクステに仕上がりました。

Pi’erre Bourne のトラックを使用し、Playboi Carti 色に染まった『YSL』や、不穏な雰囲気のトラックに落ち着いたラップをのせた HoodRich Pablo Juan との『Mayors』などから感じ取れるように、Gunna は他のラッパーの雰囲気にうまく馴染む事ができるラッパーだと思います。このような適応性の高さも、のちに彼が参加した楽曲がリリースされない週がなかった状況を作り出した一つの要因なのではないでしょうか。

3rd ミックステープ『Drip Season 3』

奇抜でキャッチーなアルバムカバーが目を引く三作目のミックステ『Drip Season 3』は、2018年の2月にリリースされました。一年以上のインターバルを挟む事なく、コンスタントにプロジェクトをリリースしていくスタイルも、彼の人気にさらに火をつけて行きました。すでに超人気ラッパーに仲間入りしていた彼の新譜は、もちろんのこと期待されていたわけですが、本作はその期待を優に超えてきた傑作と言えます。

Lil Uzi VertLil Durk、NAV などの勢いのある若手をたくさん招き、トラックリストが公開された時点でファンたちは大盛り上がりでしたし、プロダクションには Metro Boomin や London On Da Track 、Turbo などが参加し、これまでのキャリアの集大成的なミクステに仕上がっています。(これだけ力を入れた作品がミクステというのもまた一興です。)

Car Sick (feat. Metro Boomin & NAV)

Metro Boomin による浮遊感のあるトラックの上で、Gunna と NAV が交互にラップしていく構成のこちらの楽曲。Tesla Pill という、テスラ社のロゴが刻印された MDMA をテーマにした楽曲で、ドラッグを服用することで起こる身の回りの変化などをラップしています。

テスラ社のロゴと MDMA の一種である Tesla Pill

Oh Okay (feat. Young Thug & Lil Baby)

Turbo によるアコースティックギターのトラックの上に Young Thug と Lil Baby を招いたこちらの楽曲。これぞ YSL という雰囲気の楽曲に仕上がっています。Gunna の同じメロディのラインを淡々と繰り返すスタイルはこちらの楽曲で顕著に聞く事ができます。

これを機に出会った Gunna と Lil Baby は、のちにジョイントミックステープ『Drip Harder』をリリースし、兄弟のように互いのパートナーとなります。

1st アルバム『Drip or Drown 2』

三枚のミクステを順調にリリースし、すでに強固なファンベースを築き上げていた彼ですが、このタイミングでデビューアルバム『Drip or Drown 2』をリリースします。ちなみに二、三作目のミクステの間に全曲 Wheezy によってプロデュースされた EP である『Drip or Drown』をリリースしているので、本作は『2』となっています。

服を着てサングラスを掛けたまま、傘を持つ自身の姿がアルバムカバーとして採用されましたが、こちらのカバーは、実際に逆さまに水中に潜った写真を上下反転させて制作されたそうです。撮影風景を想像すると、なかなか面白いシーンが脳内に浮かんできます。

「Drip or Drown 2 のカバーアートに使用された元の写真」

今回のアルバムには、Young Thug や Lil Baby に加え Playboi Carti の三人のみをフィーチャーし、ミニマムにまとめ上げています。デビューアルバムということもあり、自身の実力に目を向けて欲しいという彼なりの戦略なのでしょうか。

プロデューサーに関しても、ほとんどの楽曲が Wheezy や Turbo によるものとし、全体的にコンパクトにまとめ、自らのブランディングに徹しているような印象を受けます。アウトロでは今までとは一味違った中華ビートを採用し、スキルの幅広さも強調しています。

Same Yung N***a (feat. Playboi Carti)

Wheezy と Turbo のゴールデンタッグによるトラックに、Playboi Carti が参加したこちらの楽曲。彼らにしてはシンプルなトラックですが、小節が終わるごとに強くエコーがかけられたプロデューサータグが何度も響き渡るのが面白いです。

Really anytime I smoke the best dope
どんな時でも最高のウィードを吸うぜ

I pop off a tag when I change clothes
着替えるたびに新品の服のタグを切る

Ain’t that same young nigga from the ghetto
地元の他の奴らとは、ワケが違うんだよ

ラップを通してキャリアを築き上げ、今やリッチとなった彼らが「地元でフラフラしてる奴らとはワケが違うぞ!」という内容をラップしています。Playboi Carti の珍しく落ち着いたフロウにも注目です。(現在多用しているベイビーボイスに移行する途中という感じです。)

2nd アルバム『WUNNA』

『Drip or Drown 2』から、約1年3ヶ月のブランクを経て、今週の金曜日に2作目のスタジオアルバムである『WUNNA』のリリースがアナウンスされました。

リリース前夜に、アルバムカバーとトラックリストが公開されました。アルバムカバーは、レオナルド・ダヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」を模した自身のキャラクターの周りに、星座記号が刻まれた帯や、星座記号が配置されているデザインとなっています。

トラックリストによると参加するラッパーは、Young Thug や Lil Baby、Travis Scott など、プロデューサーは Wheezy や Turbo、Tay Keith などとされており、今回のアルバムも前作同様に比較的ミニマムな客演に押さえ込んだ印象を抱かせます。

『WUNNA』のトラックリスト

ちなみにアルバムタイトルの『WUNNA』ですが、Twitter にて『Wealthy Unapologetic N***a Naturally Authentic 』の頭文字をとった略語であると明かされています。先行シングルの『SKYBOX』をリリースしたタイミングで、インスタグラムで、サブアカウント的なポジションの @wunna という ID も取得していました。(開設当時はプライベートアカウントでしたが、現在は誰でもフォローしなくてもみることができます。)

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はトラップ界のニュースターである Gunna についてまとめてみました。今週末にリリースされる『Wunna』をキッカケに、さらに人気に火が付くと予想されますので、今後の彼のキャリアからも目が離せません。

XXS オリジナルプレイリスト : https://music.apple.com/jp/playlist/gunna-a-new-star-of-trap-music/pl.u-jV89B8Wtd1A86o2?l=en

Lil Wayne の「駄作」が現在のヒップホップに与えた多大な影響

XXS Magazine をご覧の皆さん、お久しぶりです。音楽ブログ「にんじゃりGang Bang」のアボかどです。

2020年というキリの良い数字の今年。Kanye West『My Beautiful Twisted Fantasy』や Drake『Thank Me Later』、Waka Flocka Flame『Flockavelli』など、多くの名作が10周年を迎えました。そして、「迷」作として歴史に残ってしまった一枚の作品も今年で10歳。今回は、Lil Wayne が2010年にリリースした悪名高いアルバム、『Rebirth』について考えていきます。

Lil Wayne のキャリアのおさらい 

まず、『Rebirth』に至るまでの Lil Wayne のキャリアを軽くおさらいします。

1982年生まれ・ルイジアナ州ニューオーリンズ出身の Dwayne Carter こと Lil Wayne は、8歳からラップを始めて91年頃には Birdman と出会い Cash Moneyと契約。95年にはB.G.とのユニット「The B.G.’z」でアルバム『True Story』をリリースします。

その後 The B.G.’z に JuvenileとTurk を加えた面子で、スーパーグループの The Hot Boys を結成。Juvenile のソロでの成功も追い風となり、The Hot Boys のメンバーとして Lil Wayne も90年代後半に高い人気を獲得します。

99年にはソロでの1stアルバム『Tha Block Is Hot』をリリースし、ラッパーとしての高い実力をアピール。Juvenile ほどではありませんでしたが、その評価を確実に高めていきます。

Lil Wayne『Tha Block Is Hot』

The Hot Boys 期の Lil Wayne は、ぬめりのある高音で Juvenile や B.G. の影響を感じさせるネチネチとしたラップスタイルが特徴でした。 

高い人気を集めた The Hot Boys でしたが、00年代前半に Cash Money から Lil Wayne 以外のメンバーが次々と脱退し、解散してしまいます。しかし、残ったLil Wayne は Jay-Z などの影響が見えるスタイルに移行しながら、Cash Money の看板を担うラッパーとして成長。

そして、05年には様々な転機が訪れます。一つはニューオーリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」で Cash Money のスタジオが大きな被害を受け、拠点をニューオーリンズからフロリダに移したこと。そしてもう一つは Cash Money の看板プロデューサー、Mannie Fresh のレーベル脱退です。

この二つから Lil Wayne はプロダクションを一新し、05年リリースのアルバム『Tha Carter II』では The Runners や Cool & Dre といったフロリダのプロデューサーを起用します。その後はミックステープを量産し、難解なワードプレイを駆使したパンチライン重視のスタイルに開眼。フリーキーなフロウも抜群の冴えを見せ、自他共に認める「Best Rapper Alive」となりました。 

Jay-Z や Kanye West、故 Betty Wrightら大物も参加した08年のアルバム『Tha Carter III』は大ヒットを記録。スカスカのビートでフックらしいフックもなくひたすらラップするシンプル極まりない『A Milli』(もっと言うとMVもチープ)のような曲もヒットしたことからも、その尋常ではない勢いが伺えます。 

ロックに目覚めたLil Wayne 

快進撃を続ける Lil Wayne は、09年初頭にロックアルバム『Rebirth』のリリースをアナウンスしました。そして DJ Infamous & Drew Correa のタッグが制作したシングル『Prom Queen』を発表。プロデュースした二人も「シングルにすると言われたが、最初は俺たちに気を使ってジョークを言っているんだと思った」「ロックアルバムを作る噂は聞いていたが、808にギターを乗せる程度だと思っていた」と後に語っていましたが、同曲はヒップホップから大胆に逸脱したヘヴィなグランジ系の曲に仕上がっていました。

そして、この挑戦的な曲はかなり賛否が分かれることとなります。というか、ほぼ否でした。さらにライブで自ら弾いたギターも衝撃的な腕前で、悪い意味での話題を集めます。Lil Wayne のギターは、ギターサイトの Ultimate-Guitar による17年の企画「ワースト・ギターソロトップ10」でも1位にも選ばれるなど、時が経っても忘れられないほどのものでした。 

これらの評価から『Rebirth』には不安の声も多く聞かれましたが、相変わらず客演等でのラップでは高い実力を発揮。『Rebith』は延期が繰り返され、その間に Nicki Minaj や Drake が Young Money からブレイクを果たしたこともあり、Lil Wayne 自体の人気が衰えることはありませんでした。

そして、当初の09年4月の予定から大幅に遅れた10年2月に、ついに『Rebirth』はリリースの時を迎えました。 

Lil Wayne『Rebirth』

『Rebirth』は初週で17万枚を越えるセールスを記録し、全米チャートに2位で初登場。Lil Wayneの変わらぬ人気を見せつけました。Cool & Dre や J.U.S.T.I.C.E. League らのフロリダのプロデューサーを迎えて制作された同作は、ヒップホップ的なアプローチの曲がないわけではないですが、報じられた通りかなりロックに寄せた曲が中心。ヴォーカル面ではオートチューンまみれでズルズルと歌ったり、シャウト気味の力強いスタイルなどを聴かせていました。

しかし、かなり攻めた色物的な内容の同作はリスナーを混乱させ、各メディアからも非常に厳しい評価を受ける結果となりました。米メディアの Complex の11年の企画「酷かったラップアルバムワースト50」でも4位にランクインし、Lil Wayne のキャリア史上最悪の迷作という烙印が押されました。 

この低評価が堪えたのか、一枚作ったらスッキリしたのか、理由は不明ですが以降 Lil Wayne のロックへの言及は減少。作品でもロック的な音に乗ることはほぼなくなり、ポツポツとやっていた曲でも11年の『How to Love』のように、『Rebirth』的なアプローチはあまり取らなくなっていきます。 

後進のラッパーの活躍による再評価 

「Best Rapper Alive」である Lil Wayne の人気は凄まじく、その影響力の高さは「Lil」と名乗るラッパーの増加からも伺えます。そして、そんな Lil Wayne の影響下にあるラッパーが、2010年代半ば頃からロックを導入したスタイルで次々と登場していきました。 

その代表的なアーティストの一人に、フロリダのラッパーの XXXTentacion がいます。

XXXTENTACION

15年に発表した出世曲『Look at Me!』はサウンドこそヘヴィなトラップ系ですが、そのシャウトも取り入れた発声には『Rebirth』での Lil Wayne のスタイルから地続きのものが感じられます。

XXXTentacion は以降も1st アルバム『17』で内省的なギターを導入し、2ndアルバム『?』ではさらにヘヴィなロック色の強い曲も収録。『NUMB』や Lil Wayne とも関わりが深いTravis Barkerが参加した『Pain = Bestfriend』などは、『Rebirth』に入っていてもおかしくないようなアプローチの曲になっています。

XXXTentacion は惜しくも亡くなってしまいましたが、Lil Wayne とも死後に疑似共演を果たしたほか、今年 Lil Wayne が「現在最も好きなアーティスト3人」を語った際にも名前が挙がりました。Lil Wayne がロックに挑んだ時に拠点にしていた地・フロリダから、Lil Wayne からの影響を語りロックを見事に取り入れた音楽性で成功したラッパーが現れたことは、なんとも美しい話ではないでしょうか。 

「Lil」系ラッパーの代表格である Lil Uzi Vert もまた、Lil Wayne からの影響が伺えるラッパーの一人です。

Lil Uzi Vert

ロックスター的なイメージを打ち出し、オートチューンにまみれたズルズルとした歌フロウを多用するそのスタイルには、サウンドこそロック的ではないものの確かに『Rebirth』的な要素が感じられます。

先に『Rebirth』を酷評した Complex も、Lil Uzi Vert らの活躍を受け17年に「Lil Wayne のワーストアルバムは彼の最も影響力の強いアルバムでもある」という記事を発表。後進のラッパーの活躍により、同作の再評価が確実に進んできています。 

ロック×ヒップホップの現在 

「Rebirth」にプロデュースで参加した Cool & Dre は、同作のリリース直前にこのようなことを語っていました。 

「『Rebirth』は、ヒップホップやR&B以外の音楽を作ってみたいというアーティストに新たな道を開くアルバムになる。そういう人はたくさんいるはず。 Prince & The Revolution がチャートを賑わしていた頃のような、音楽の多様性をまた見たい。Lil Wayne はただのヒップホップアーティストではなく、我々の世代を代表するアーティストになるはずだ。彼と一緒に活動していることを誇りに思う」。 

当時は完全な失敗作とされた『Rebirth』でしたが、その挑戦は後のラッパーに確実に影響を与え、ヒップホップにさらなる多様性を与えました。同作がなければ、もしかしたら現在のヒップホップは全く別物になっていたかもしれません。 

XXXTentacionらの活躍でロックを取り入れたヒップホップは今では大きな市民権を獲得し、今年に入ってからもアトランタの新鋭・Kenny Mason がロック色の強いアルバムをリリースし話題を集めました。日本でも kZm や (sic)boy、Lil Soft Tennis らがロックを取り入れた曲を発表しています。

そして、これまでにも Lil Wayne からの影響をたびたび語ってきたラッパーの一人である、Kendrick Lamar も次作でロックを取り入れていると報じられています。師匠の雪辱を果たすことができるのか、それとも師匠のように迷作と呼ばれてしまうのか。Kendrick Lamar は SNS 等であまりプライベートを明かさないので、「外出自粛でギターを始めていたらどうしよう・・・」とも思ってしまいますが、楽しみに待つことにしましょう。 

アボかど
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北欧の革命家 Yung Lean の全て

皆さんこんにちは!

今回は、今週に最新アルバム『Starz』をリリース予定の、スウェーデンのストックホルム出身のラッパー/プロデューサーであるYung Lean について書いていきたいと思います。

はじめに

Yung Lean こと Jonatan Leandoer Håstad (以下、便宜上Leanと呼ぶ) は1996年7月18日にスウェーデンのストックホルムで産声を上げました。

父は幻想文学の作家でもあり、仏文学の翻訳の仕事をしながら、出版社を持つ文学者 Kristoffer Leandoer、母はロシア・ベトナム・北アメリカで活動するLGBT団体に所属する人権活動家の Elsa Håstadという恵まれた環境で育った彼。

さらに母方の祖父はイギリスの劇作家として有名な Arnold Wesker です。

このように、身内の環境によって練り上げられた文体は彼の独特な比喩表現にも現れています。(後ほどリリックについても解説いたします。)

彼は生まれた後、旧ロシア帝国の一部であったベラルーシ共和国で子供時代を過ごし、3歳あたりでスウェーデンのストックホルムに戻ったため、ロシア語とスウェーデン語に揉まれながら成長していくことになります。

ベラルーシ共和国の国旗

高校生になり、マクドナルドでバイトをする傍ら、グラフィティのカルチャーやドラッグに溺れていく彼は、ヤケを起こすことが多くなり、15歳という若さでマリファナの使用による保護観察処分を受けます。

影響を受けたアーティストや仲間、Sad Boys が出来るまで

ストリートカルチャーとおんぶに抱っこで育った彼は、徐々にヒップホップに興味を持つように。

ちなみに彼は、この青年期に影響を受けたアーティストとして、50 Cent や The Latin Kings、そしてNasなどを挙げています。

Nas『Illmatic』

ちなみにこのあけすけに荒れていた時期、後に世界をあっと驚かせることとなるクルー、Sad Boys の心臓ともいえるプロデューサー・DJのGud(Yung Gud) と出会います。

Yung Gud

そして、後のDrain Gangのメンバーも含んだクルー Hasch Boys を結成します。

彼らと共に似通った音楽を聴いていくことになる Lean ですが、このクルーに対して次第に愛想を尽かすようになり、同じくクルーのメンバーであった Yung Sherman ・Yung Gud と共にトリオで「Sad Boys」を結成し、Hasch Boys は解散してしまいます。

そして2012年ごろには、自力で作ったスタジオを基地として、 Yung Sherman ・Yung Gud がプロデュース・ミックスを担当し、Lean も作曲を始めます。

次第に彼らは SoundCloud や Tumblr に曲をアップし始め、莫大なフォロワーを築いていくこととなります。

本格的始動と『Ginseng Strip 2002』のヒット

そして転機は2013年に早くも訪れます。

それは『Ginseng Strip 2002』の大ヒットです。かなりのダウン・ビートの上で、メロディーラインをあえて無くし、極めてまどろんだスタイルでバズを生み出します。

この曲では、やはり彼らしくお茶目ではあっても、独特な言葉遣いがなされています。

Get my dick stuck inside a lamp shell

俺のイチモツが二枚貝に挟まって抜けないから

Get it out with sperm cells and hair gel

精子とヘアージェルを使って抜くんだ

※ lamp shell は二枚貝の別称で、女性の cunt を二枚貝と喩えて、それが狭いから抜けない、という独特な言い回しをしています。

※精子とヘアージェルを並列させているのは、おそらく映画『メリーに首ったけ』にて、主人公がジェルと間違えて精子を頭につけたことから着想を得たと考えられます。

また、PVにおいてもヒップホップアングルと称される下からのアングルはあまり見られないことに加え、「ヨンリーンやり手」など少し奇妙な形で、想世界的な極東の国、日本を表現しており、現在2800万回を上回る再生数を叩き出しています。

そして、その勢いそのままに彼はアルバム『Unknown Death 2002』・さらにそのアルバムから漏れてしまった三曲(バイラルヒット曲『Ginseng Strip 2002』も)を含んだEP『Lavender』をリリースし、世界にその名を轟かせます。

『Unknown Death 2002』
『Lavender』

『Unknown Death 2002』からは『Gatorade』を紹介します。

『Gatorade』の凄さはやはり、声がほとんどトラックに埋れてしまっている点でしょう。

これは一見、ミックス・マスタリングのレヴェルが低いことが原因だと思われるのですが、それは全く違います。実際、その他の曲で、ヴォーカルがはっきりと聞こえる曲も普通にあります。

この、「声がトラックに隠れてしまうこと」により、この曲全体が不思議な湿り気を帯びるのです。それはまるで、スチームサウナについた窓のよう、奇妙なくぐもりを保ったままに、その窓の外に移りげな美しいトラックがひょっこりと顔を出しているのです。

この傾向は『Lavender』の一曲『Greygoose』にも現れていますが、とりわけ驚くべきは『Lavender』に収録されている一曲『Oreomilkshake』でしょう。

この曲中では夜空を感じさせる近未来なトラックが使われており、二種類の声を巧みにタバコの煙のよう、くゆらせながら、見事な配合で織り込ませます。

それはまるで「サウナルーム」と「夜空を抱え込んだサハラ砂漠」を行ったり来たり、ゆらりゆらり、カラッとした湿り気が刻まれた4分16秒の旅のよう。

2013年後半から翌年の2014年にかけてヨーロッパツアーを巡行したのち、北アメリカにてツアーを行った Sad Boys はめきめきと力をつけていきます。

そして 2014年12月23日に『Unknown Memory』をリリースします。

スターとの出会い

wit Travis Scott

『Unknown Memory』

『Unknown Memory』では、Kanye West 率いる GOOD Music と契約し、ファンの中では伝説とされるアルバム『Days Before Rodeo』をリリースしてすぐの Travis Scott を客演に招いた一曲を聴くことができます。

この曲の楽しみにはオートチューンバリバリ期寸前のスキルフルな Travis Scott を聞けることにもあります。

そしてこのアルバムの醍醐味はなんといっても『Yoshi City』でしょう。

今までのチープなものとはうって変わって、完璧に調整された証明や空間、近未来的な乗り物を駆使した PVも見もののこの曲。

「Yoshi City」は、直訳すると「(マリオの)ヨッシーの街」であって、マリオは任天堂のキャラクターであること、それから「Tokyo City we’re burned out」からこの曲が始まることから、東京のことだとわかります。しかし、この「Yoshi City」は実際の東京とは少し違います。

端的にいうと、「Yoshi City」は彼らの心の中にある理想郷としての「東京」、ないしは心象としての「ジャパンの都市」を意味し、つまりは「どこにも存在しないどこか」なのです。

実際、Vice誌のインタビューの中でも、彼は「スウェーデンでの疎外された気持ち」について語っており、リリックでもどこにも所属できない感情や、どのような型にはまらない自分を表現しています。

Smoking loud, I’m a lonely cloud

上物を吸う、俺は孤独な雲だ。


I’m a lonely cloud, with my windows down

一人ぼっちの雲のよう、心さえ閉ざして


I’m a lonely, lonely; I’m a lonely, lonely

俺は孤独、寂しいのさ。一人ぼっちで寂しいんだよ。

※最初の smokeの煙と雲を見事にかけたこのラインは、恐らく17世紀のイギリスのロマン派の詩人 William Wordsworth の『水仙』の有名な始まり「I wandered lonely as a cloud(一人漂う雲のごとく)」を引用していると思われます。

– Yung Lean 『Yoshi City』

Fuck norms, fuck a normal life

決まり事なんてクソくらえ、当たり障りない人生なんてどうだっていい。


Fuck norms, I’ll break em out

規範なんてどうだっていい、俺が全部壊してやる

– Yung Lean 『Yoshi City』

また、彼は社会風刺もリリックに収めています。

I’m an aristocrat without the progress.

俺は何の進歩もない貴族だよ。

これは、貴族は何の進歩も求めずに規範に収まった奴らなのだと言うのを暗示する、彼の気持ちが見え隠れする一文でしょう。

– Yung Lean 『Yoshi City』

素晴らしい一曲ですね。個人的なお勧めとしては、11曲目の『Leanworld』です。

この曲の凄みは、重厚でありながらも寂しさを包み込んだビートが、もはやリリックを通さずとも伝わってくるところです。後半のコーラスとパイプオルガンの音の物悲しさには鬼気迫るものがありますね。

その次の曲『Sandman』の変態ビートについても言いたいところですが、あまり長くなってもよくないので、リンクだけ貼っておきますね。

そして2016年の前半になり、アルバム『Warlord』およびそのデラックス盤をリリースします。

『Warlord』

このアルバムからは一曲、元々友達の兄貴でもある Bladee との一曲『Highway Patrol』を紹介します。

Bladeeの Drain Gang とLean のSad Boys は元々 Hasch Boysだったこともあって親交が深いのですが、やはりこの二人の共演は最強ですね。

I see green lights, missed misfits smokin’ cannabis

青信号が見える、大麻を吸う失敗作の不適合者(仲間)達と

ここでは green lights と大麻がかけられていますが、Leanはよく仲間達(自分も含め)を社会不適合者だと言います。

また、この近未来的であると同時に甘美なビートの上で、Bladee は自分のリリックを巧みに引用します。

What’s your blood type, what does it taste like?

血液型は何だ、その血はどんな味がするんだ?

この曲は『Sugar』のリリック『Your blood tastes so sweet like sugar, baby』に通づるものですね。

またこの頃、彼ら Sad Boys はブランドライン「Sad Boys Entertainment」を立ち上げます。

さらには Calvin Klein’ の AW16 Campaign のモデルに抜擢される彼。

実はそこで、みなさん大好き Frank Oceanと出会います。

wit Frank Ocean

この年のアメリカツアの移動中にバスが銃で襲撃されるという事件があったものの、ツアーを見事に成功させた彼。

その後、Frank Ocean の伝説のアルバムで、世界最大の音楽批評メディア、ピッチフォーク誌の2010年代アルバムランキングで見事1位を獲得し、グラミーにて最初の最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞を受賞した『Blonde』の 『Self Control』と『Godspeed』にバックコーラスで参加します。

この曲の Lean のコーラス部分のリリックは、オーシャンの叶いはしない恋心を表しているのですが、何だかグループに溶け込めない Leanの寂しさを表しているようにも聞こえます。

Keep a place for me, for me

僕の居場所を置いといてよ、僕の

I’ll sleep between y’all, it’s nothing

君たちと一緒に寝ても、何もないんだよ。

It’s no thing, it’s nothing

そこには、何もないんだよ

Keep a place for me, for me

僕にも居場所をくれないか、僕の

これは何か彼の集団=規範に馴染めない気持ちを表しているようにも感じます。

with A$AP Ferg

そしてこの年の終わり頃にはミックステープ『Frost God』をリリースします。

『Frost God』

この中では、A$AP Fergを客演によんだ曲であり、このプロジェクトを表していると言っても過言ではない一曲『Crystal City』を紹介します。

また、このアルバムでの人気曲、『Hennessy & Sailor Moon』でも Bladee を客演に呼び、これまた人気曲となります。

何と言ってもこの曲の醍醐味は彼のぐったりとした歌唱でしょう。彼を知らない人でも底無し沼のようにハマってしまうでしょう。

再び Sad Boys 時代

そして彼は『Crystal City』以降、客演をほとんど呼ぶことなく、Sad Boys 単体でプロジェクトを進めるようになります。

この時期の最初の作品は 2017年11月にリリースされたアルバム『Stranger』です。

『Stranger』

Youtube での再生回数は千万回弱ではありますが、『Red Bottom Sky』のヒットはみなさんの記憶にも新しいのではないでしょうか?

ちなみに、このアルバムのうち、『Red Bottom Sky』・『Hunting My Own Skin』・『Skimask』はストックホルムの小規模レーベル「YEAR0001」を通して作られたものです。

この時期(2017年〜現在)の彼を特徴付ける、Joji のようなメロディーを含んだ耳残りの良いヴォーカルを混ぜ込んだスタイルが存分に発揮されている一曲といえます。

2018年にはアルバム『Poison Ivy』をリリースする彼ですが、そこは少し省略して、同じ年に出された Drain Gang の Thaiboy Digitalを客演によんだ一曲『King Cobra』を紹介します。

やはり、Sad Boys と Drain Gang 、そして彼らを繋ぐストックホルムの孤高のレーベル「YEAR0001」の関係が、最強のフローチャートを作り出していますね。

この彼らのドロっとした物狂わしいフローはなかなか真似できるものではないでしょう。

最新アルバム『Starz』

そして今週、Lean はついに最新アルバム『Starz』をリリースします。

『Starz』

何曲か先行トラックがリリースされていますが、まず注目するべきは『Pikachu』でしょう。

やはり低く持続するフローは健在ですが、2017年以降に見られるメロディーラインも少し取り入れられた曲です。

しかし、このハイブリット的スタイルの1番の注目曲は『Boylife in EU』です。

PVのビビットなスタイルもさながらに、やはりこの曲のフック直前での沈み込み、またそこから繰り出される耳残りの良いメロディーラインはたまりません。

元々のダウナーなフローに Jojiのように美しくも歪みを内包したヴォーカル、また変態的な世界観を作り出すトラックにはあぜんとしてしまいますね。

最後に

今回は Yung Lean についてでした。また、Drain Gang 周りを中心とした記事も書きたいと思います。最後までお読みくださり、ありがとうございました。

XXS Magazine 特製プレイリストはこちらから↓

https://music.apple.com/jp/playlist/yung-lean-swedish-napoleon/pl.u-GgA590VcZ1GAeaY?l=en

ニューヨークの若きポップスター Lil Tjay とは

明日5月8日に待望のミックステープ『State of Emergency』のリリースを控える注目若手ラッパー Lil Tjay。今回は、今年の XXL フレッシュマン最有力候補でもある彼の生い立ちやキャリア、魅力について迫りたいと思います。最後までお読みいただければ幸いです。

生い立ちとキャリアの開始

ガーナ人の両親を持つ Lil Tjay(リル・ティージェイ)こと Tione Jayden Merritt は、ニューヨーク・サウスブロンクス出身の19歳(2001年生まれ)。

10代前半から喧嘩や強盗行為を繰り返していたという彼は、15歳の頃に強盗の罪で少年刑務所に送られます。

そしてこの出来事が、結果的に彼の人生の転機となります。

It was not fun.
楽しくなんてなかったよ
It’s not nothing that I would want to do again, 
刑務所でもう一度したいことは何もないけど
but I learned a lot from it. 
そこでたくさんのことを学んだんだ
I feel like if I wasn’t to go to jail,
もしそこに行くことがなければ
I probably wouldn’t be the person I am—I wouldn’t. 
おそらくおれはおれ自身じゃなかったと思うよ
’Cause I wouldn’t have sat down and wrote those songs 
だって、椅子について曲を書くような
and I never would’ve been able to focus on what I want to accomplish. 
おれが成し遂げたかったことに集中できるチャンスはなかっただろうから
So it’s like it was actually a good thing for me. 
だから刑務所での暮らしは、実際おれにとって良いものだった
It made me open my eyes and stuff like that.
おれの目を覚ましてくれたんだ

Rolling Stone

Tjay がこう語るように、彼は服役中にリリックを書き始め、ラッパーとしてのキャリアをスタートさせました。

自身初のバイラルヒット

2017年末に刑務所から釈放された Tjay は、彼が初めてスタジオでレコーディングした楽曲『Resume』をリリースします。

当時、Facebook 以外の SNS は利用していなかったという彼がリリースしたこの楽曲は、SoundCloud にてたった2日間で5000回再生を記録します。

そんな無名なラッパーの楽曲の再生数増加には、ある仕掛けがありました。それは「有名ラッパーの楽曲名をタイトルにし、再生数を稼ぐ」という、バイラルマーケティングの生みの親 Soulja Boy が取り入れた手法でした。

Soulja Boy が、『Crank That』を 50 Cent の『In The Club』と偽ってリリースしヒットさせたことに倣い、Tjay は、『Resume』を Uncle Murda の『Rap Up』と偽りリリースしました。これが結果的に功を奏し、『Resume』は彼自身初のバイラルヒットとなりました。

ヒットの量産

『Resume』のヒットを受け、Tjay は本格的に音楽活動に取り組むことを決意します。

続いて SoundCloud にアップした『Brothers』はリリースされるや否やたちまち再生数を伸ばし、Tjay は Columbia Records と契約を結びます。

Bodies drop all the time I don’t feel nothing

仲間が殺られたって何とも感じない

Swear to god y’all gone make me go kill something

敵は迷いなく殺してやると神に誓うぜ

Told my shooters no mercy or chill button

おれの仲間たちには慈悲も躊躇もない

I done been through so much I don’t feel nothing

色々経験しすぎたんだ、だから何も感じない

『Brothers』にて、Tjay は自身が経験してきたストリートでの生活や刑務所での経験、心の痛みなどをストレートに表現しています。

I speak about stuff I been through.

おれは経験したことを歌っているんだ

I don’t talk about stuff that’s fake.

嘘は歌わない

I speak from the heart.

心のままを歌うんだ

Every lyric got a meaning behind it.

全てのリリックにはちゃんと意味がある

XXL

インタビューにてこうも語るように、自身の経験をベースとしたリアルなリリックも彼の魅力の1つです。

ここでもう1曲、彼のキャリア初期の楽曲をご紹介したいと思います。

None of Your Love

カナダのポップシンガー Justin Bieber のヒット曲『Baby (feat. Ludacris)』のメロディラインを大胆に引用した1曲。

この曲からも分かるように、Tjay はポップシンガーのように歌うスタイルを得意としています。

I used to just watch Justin Bieber videos and be like, 

幼い頃から Justin Bieber のビデオを見ながら、

“Damn, this is going to be me.” 

「おれもこんなふうになれるはずだ」って思ってた

I never thought about how I was going to get there, 

どうやって成功するかなんて考えたこともなかったけど

but I knew it would happen.

絶対できるって信じてたんだ

Pitchfork

ヒップホップ誕生の地ブロンクスで生まれ育ち、過酷なストリートライフを送ってきた10代の若者像からは若干離れたイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、実際 Tjay は、Justin Bieber や Michael Jackson、R. Kelly、Usher など、ポップスもしくは R&B シンガーから多大な影響を受けたと公言しています。

ちなみにご紹介した楽曲『None of Your Love』で引用されている『Baby』の権利問題はクリアしていないそうですが、Tjay はこれからも懲りずに Justin Bieber の楽曲を引用していく意向とのことです。いかにもティーンらしい強気さが良いですね。

初のトップ20入り

その後デビューEP『No Comparison』をリリースしたのち、Tjay は、Columbia Records のレーベルメイトであった Polo G の楽曲『Pop Out』に参加します。

この『Pop Out』はリリースされてから約3ヶ月後に Billboard Hot 100において95位で初登場し、さらにその2ヶ月後には同チャートにて11位まで上り詰めました。

Tjay は自身にとって(Polo G にとっても)過去最大のヒットを生み出し、ますます勢いづくこととなります。

デビューアルバムのリリース

Polo G と共にヒット曲を生み出した Tjay は、満を辞してデビューアルバム『True 2 Myself』をリリースします。

キャリア初期のヒット曲から最新曲まで詰め込んだデビューアルバムには、Lil Wayne や Lil Baby、Lil Durk といった大物ラッパーに加え、同郷ニューヨークから Jay Critch や Rileyy Lanez らが参加しています。

Decline (feat. Lil Baby)

アトランタの人気ラッパー Lil Baby を客演に迎えた1曲。ゆったりとした哀愁漂うトラックの上で、Tjay は心の痛みを優しいメロディに乗せて歌います。

Woulda had a cap and gown if Smelly was still around

もし Smelly(※1)が生きていれば、(大学の学位授与式などで着用する)帽子とガウンを持っていたのに

But it’s pain in me, 

心が痛むんだ

thinking about it make me get so angry

思い出すだけで怒りが湧いてくる

(※1) 亡くなった Tjay の仲間の名前。Tjay は Smelly に音楽的なインスピレーションを受けたそうで、自身の楽曲内で度々ネームドロップします。ヒット曲『F.N』でも「I wish my n***a Smelly could’ve seen me lit now (Smelly に今のおれの成功した姿を見て欲しかった)」とラップしています。

Mixed Emotions

アルバム内でも特に際立つ綺麗なメロディラインを奏でる1曲。

I can’t wait to take a picture next to Nicki and Wayne

Nicki Minaj や Lil Wayne と一緒に写真を撮るのが待ちきれないんだ

引用したラインでは、「Nicki Minaj や Lil Wayne といったシーンのトップアーティストと肩を並べるようになった自分」と「同業者というより未だに彼らの1ファンである自分」という2つの側面を上手く表現しています。楽曲をリリースし始めてからわずか2年足らずでスターダムを駆け上がった彼ならではのリリックです。

『Leaked (Remix)』にて Lil Wayne との共演を果たす Tjay

そんな全体を通して甘い歌声で歌い上げる、ポップス或いは R&B 寄りな作風の同アルバムは、初週4.5万枚を売り上げ、Billboard Hot 200にて5位デビューを飾りました。

ニューミックステープ『State of Emergency』

そして Tjay は、明日5月8日にミックステープ『State of Emergency』をリリース予定です。

先日、Don Q や 6ix9ine、A Boogie らにディスを飛ばし、「俺がニューヨークのキングだ」などと豪語する様子も話題となったように、それほど自信のある作品に仕上がっているのではないでしょうか。

「おれこそがNYのキングだ。あの歌ってるヤツ(A Boogie)とか、髪の毛が虹色の裏切り野郎(6ix9ine)はイケてないぜ」と豪語。数日後に「おれがわるかった、昔の Tjay に戻るよ」と謝罪しています。

今回はおさらいとして、ニューミックステープのリードシングルをご紹介したいと思います。

Ice Cold

Demons in my head, 

頭の中に悪魔がいるんだ

I got too many n***as gone

おれは沢山の敵を始末してきた

Kids out here dyin’, 

ここでは多くの子供たちが亡くなり

mama hurt, cryin’ 

母親は傷つき涙を流す

I ain’t even think I’d see eighteen and I ain’t lyin’

無事18歳になれるなんて思ってもなかったよ、嘘はつかない

ストリートに蔓延る犯罪や、人々の命を脅やかす新型コロナウイルスの流行など、地元ニューヨーク(や世界の現状)を「Ice Cold (氷のように冷え切った世界)」と表現した1曲。

自身の心の痛みや、成功してからの生活について言及しながら哀愁たっぷりに歌い上げる彼の姿からは、とても10代とは思えない貫禄を感じます。

ミックステープには、同郷ニューヨーク出身のラッパーたち(故Pop Smoke や Fivio Foreign、Sheff G、Sleepy Hallow など) を客演に迎えた楽曲も収録予定です。

故Pop Smoke との楽曲『War』や『Mannequin』で見られたような、ブルックリンドリルサウンドでスピットする Tjay のラップも聴くことができそうです。

おわりに

いかがだったでしょうか。今回はニューヨーク・サウスブロンクス出身のラッパー Lil Tjay についてまとめてみました。

ストリートで経験した心の痛みや葛藤をメロディに乗せて歌い上げる次世代のポップスター Lil Tjay。そんな彼にますます目が離せない1年となりそうです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

XXS オリジナルプレイリスト : https://music.apple.com/jp/playlist/a-teen-pop-star-from-new-york/pl.u-WabZp5aUdl0GmpA?l=en

Riku Hirai

シカゴの新しいサウンドを創り出したパイオニア Lil Durk とは

現在のシカゴのヒップホップシーンを牽引し、シカゴ内外の若手たちに強い影響を与え続けている Lil Durk。今週の金曜日には、ニュープロジェクト『Just Cause Y’all Waited 2』のリリースを控えています。そこで今回はそんな彼の生い立ちやキャリア、魅力に迫りたいと思います。

はじめに

Lil Durk (以下 Durk) は、アルバムやミックステープ、自身が率いるクルーである OTF (Only The Family) のコンピレーションアルバムを含め、19枚ものプロジェクトをリリースしており、本記事で全てを紹介することは極めて困難な試みとなります。ですので、本記事においては「ドリル色の強い Lil Durk」と「メロディアスなスタイルの Lil Durk」という二つのカテゴリに分けることで、彼の魅力を伝えることができたらと考えています。(このカテゴリ分けに関しては「独特なスタイル」の項目で解説しています。)

生い立ちとキャリアの開始

Lil Durk (リル・ダーク) こと Durk Banks は、Chief Keef や Lil Reese などをはじめとする数々のドリルMCを輩出したことでも知られる、イリノイ州シカゴで生まれ育ちました。

彼の父親は、1993年にドラッグの密売によって逮捕され、一時は終身刑を言い渡されることが危惧されていた、生粋のギャングスタです。シカゴ最大のギャングである Gangstar Disciples のメンバーでした。幸いなことに、彼の父親は、昨年の2月に約25年の懲役を終えて自由の身となりました。

晴れて釈放された父親 (右手前) と食事を楽しむ Lil Durk (右奥)

アメリカでもトップクラスに治安が悪いことで知られるシカゴのサウスサイドで生まれ育った Durk は、ギャングの抗争に参加するために在学していた高校を中退しました。そしてその同年、初めての子供を授かったことをきっかけに、ラッパーとして活動していくことを真剣に考え始めました。

独特なスタイル

生まれ育った場所がその聖地であることもあり、Durk はドリルミュージックのカテゴリの中で活動を始めました。不穏なビートの上で暴力的なラップを乗せるのがドリルの一般的なスタイルであり、彼もはじめはそのようなスタイルの楽曲をリリースしていましたが、ある時から新しいジャンルの開拓に力を入れ始めました。

Durk は、ドリルミュージックでは一般的でないメロディアスなフロウを取り入れ始めたです。今では当たり前のように見受けられるスタイルですが、当時はこのようなスタイルでラップをする者はおらず、異端児扱いされたこともあったようです。このような点において、Durk の楽曲は他のシカゴドリルMC である Chief Keef や Lil Reese などと異なっています。

Calboy や Polo G など、現在ではごく一般的に受け入れられているメロディアスなスタイルのラッパーたちが活躍できる基盤を築いたのは、間違いなく Durk の功績だと言えます。

現在では、ほとんどドリルの臭いを感じさせず、メロディアスに振り切った楽曲を中心に制作している彼ですが、時には「俺はドリルミュージックのパイオニアの一人だ!」と言わんばかりの激しい楽曲を世に送り出し続けているところも彼の魅力です。

ドリル色の強い Lil Durk

この章ではまず、彼の音楽の基盤となっている「ドリルミュージック」色の強いスタイルの楽曲を紹介していきます。主に初期にリリースされた『I’m a Hitta』シリーズや、DJ Drama によってホストされた『Signed to the Streets』、Lil Reese とのジョイントミックステープ『Supa Vultures』などのプロジェクトがこのカテゴリに当てはまります。

ドリル色の強い彼のアルバムには、シカゴドリルのパイオニアの一人である Lil Reese をゲストに招いていたり、Chei Keef と数々の名曲を生み出したプロデューサーである Young Chop をプロダクションに招いていたりと、至る所にドリルならではの要素が見受けられます。

L’s Anthem

初期にリリースした2枚目のミックステープ『I’m Still a Hitta』の六曲目に収録されているこちらの楽曲。タイトルは「Lの聖歌」で、その名の通りの楽曲です。「L」とは、Lil Durk が生まれ育った地域ストリート「Normal」 のニックネームである「Lamron」の頭文字であり、逆から読むことでギャングコミュニティー内でコードネーム化されています。

「Lamron」のクルーは Lil Durk が所属する Black Disciples の一部であり、そのモットーは「Life, Love & Loyalty」です。全てが L から始まることから、自らのフッドについてラップした曲を「Lの聖歌」 と名付けています。