フロリダの若手ラッパー YNW Melly とは

みなさんこんにちは。ここ最近 YNWクルーのラッパーたちが大きく動き出しています。“YNW”とは “Young N***a World” の略称であり、今回紹介する YNW Melly が所属しているフロリダを拠点とした楽曲制作グループの名称です。

Melly の実弟である YNW Bslime は先週待望のアルバム “BABY GOAT” をリリースしましたし、まだまだ無名ですが YNW Khris は SoundCloud にて楽曲を発表し始めました。

YNW Melly (左) と YNW Bslime (右)

そんな中 YNW のリーダーである YNW Melly が本日、三枚目のアルバムである “Melly vs Melvin” をリリースしました。ということで、彼の過去の楽曲や、本日リリースされたアルバムについて紹介していこうと思います。

YNW Melly って誰?

それではまずは基本情報から。YNW Melly こと Jamel Mourice Demons は 1999年3月1日生まれの20歳。フロリダ生まれのラッパーです。YNW Melly の特徴としては、メロウなフロウやオートチューンをバリバリに効かせたフックなどがあげられます。決してラップが上手いという訳ではありませんが、キャッチーなメロディーによって人々の心を掴んで離さないと言えるでしょう。

過酷な幼少期

彼は1999年の3月1日にオハイオ出身の両親のもとに生まれました。彼の母親が彼を授かった時なんと彼女は14歳であり、9th grade (日本の中学3年生で15歳)の時に Melly を出産しました。

父親は Melly が生まれてすぐに失踪してしまった為、母親と母方の祖母によって育てられました。フロリダの Brierwood という地域に3人で暮らしていましたが、家賃の支払いが困難になった為、更に貧しい地域に移り住みました。

彼は15歳の頃から SoundCloud に楽曲をアップし始め、同時にアメリカの2大ギャングの1つである Bloods に加入しました。その翌年、彼は Vero Beach 高校の周辺で同学校の生徒に向かって銃を発砲した罪に問われて、数ヶ月の間刑務所に拘留されています。

ここで彼による楽曲を1つ紹介します。1つ目のミックステープ “I Am You” に収録されている “Mama Cry” という楽曲です。この曲は、先程説明しました16歳の時に起こした発砲事件によって刑務所に入れられてしまった彼が、母親に向けて懺悔するという内容なのですが、こちらの曲のMVに彼が家のソファの下から本物の銃を見つけてしまうシーンが生々しく描かれています。

そんな彼ですが、厳しい家庭環境の影響もあってか多重人格障害や注意欠陥症を患っているようです。彼のデビューアルバムである “We All Shine” に収録されており、“Mixed Personalities” という楽曲もタイトル通り多重人格についての楽曲です。

ちなみにこの曲はKanye West を客演に呼んでいるのですが、よく考えてみると彼の素晴らしい功績だと言えます。Lil Pump は18歳、Smoke Purpp は20歳にして Kanye とコラボ曲を発表しましたが、いずれも Kanye からのオファーです。もちろんそれでも凄いんですが、Melly の場合は自身のアルバムに Kanye を客演として呼んでいます。

YNW Crew

YNW クルーの仲間である YNW SakChaser と YNW Juvy を殺害した罪で起訴されているMelly ですが、他にも YNW Peso などのクルーが存在します。彼らは全員ラッパーとして活動しており、楽曲が日の目を見ない頃から力を合わせて活動していました。フロリダはアトランタなどに比べて有名なラッパーが少ないこともあり、彼らは大人たちに「ラッパーなんかより仕事を見つけた方がいいぜ。」とか「ウェンディーズで働いとけよ。2年後には解雇されるだろうけどよ。」などとからかわれていた過去を SakChaser は振り返って語っています。こちらのオフィシャルのドキュメンタリーで、彼らの生活の多くを知ることができますのでぜひご覧ください。( Melly のおかんとかも登場するので見応えあり。)

Murder on My Mind

“We All Shine” をリリースした直後である、2019年の2月に彼は仲間であるYNWクルーの YNW SakChaser と YNW Juvy の2人を殺害した容疑で起訴されました。更に2019年の5月には彼に死刑が宣告される可能性が生じていると TMZ によって伝えられました。

今現在もバリバリ牢屋の中にいる Melly ですので、今回のアルバムは獄中からのリリースということになります。

そのようなニュースが報道されたことがきっかけに、Billboard のチャートの上位に急上昇した曲が “Mind on My Murder” という楽曲です。この楽曲は彼が過去にギャングの仲間を誤って銃撃、殺害してしまった事件について歌っているものです。

そもそも、自分が加害者である殺人事件のことを楽曲にすると時点で、並大抵の狂人ではないとお分かり頂けると思います。そしてこの曲なのですが、リリックがとにかくリアルです。彼がなぜ、どのように仲間を殺してしまったのかが嫌というほど鮮明に描かれています。以下、”Mind on My Murder” の生々しいリリックを抜粋。

って感じで、頭の中に事件の現場が鮮明に浮かび上がりましたよね。このようなリアルすぎる YNW Melly の楽曲の特徴の1つです。日本に住んでいる僕らが想像もしないようなことが、この世界のどこかで実際に起こっていることに気づかされ、耳を覆いたくなるリリックも沢山あります。

更に、更にですよ。彼はこの ”Murder on My Mind” を殺害された被害者の視点に立って、全く逆の目線でラップした “Mind on My Murder” を発表しています。先程紹介したリリックも全て被害者の受け身の形に置き換えられています。生粋のサイコパス気質で本当に怖いっていうか、普通に引くレベルやわ。

もうリリックだけでリスナーに事件の様子を鮮明に想起させておいた挙句、MVでそれをビジュアライズして、そのイメージを確固としたものに仕立て上げてくれています。悪魔の権化かよ。

Melly vs Melvin

さて、ここからは本日リリースされた ”Melly vs Melvin” についてです。まず、アルバムのタイトルの ”Melvin”ってなんや?と思う方もいらっしゃると思いますが、簡単に言うと Melvin は Melly の第二の自分です。

Genius のインタビューで「俺は多重人格で、他の人間が中にいる。Mellyはみんなから愛されていて、みんなのことを愛してる。Melvinは、Mellyを悪い人間から守ってくれるもう一人の自分なんだ」と語っています。ということで、今作のテーマは自分と自分自身のもう一つの自分との間に起こる闘争や葛藤と言ったところでしょうか。

アルバムのアートワークも Melly と Melvin の二つの顔が描かれているデザインとなっています。

今回のアルバムですが、一曲目から Melly らしい楽曲になっていると思います。ピアノビートの上で地声とハイトーンボイスを織り交ぜた独特なフロウを披露してくれています。今年に入って1週目に “We All Shine” をリリースした彼ですが、約一年ぶりにやっと帰ってきた!って感じがしましたね。アルバム全体としても、客演をほとんど迎えず実力だけで勝負してる感はありますね。(獄中なので客演を迎えることが難しかったというのもあると思いますが。)

今作の5曲目である”Billboard” では早口言葉のようなフックを披露しています。

Used to rob n****s for that bill, when I get board, now I’m on billboards

金を盗んでたよ。でも俺は今ビルボードのチャートにランクインしてる

YNW Melly – Billboard

音源を聴いていただければわかる通り、早口言葉のようなワードプレイをラップしています。

続いて紹介するのは 9曲目にの “100K” という楽曲。こちらのが楽曲では今作のテーマにもなっている二重人格的なリリックが見受けられます。

I would not ever change on you lil’ baby

俺は絶対君への思いを変えることはないよ
I promise I love you, and never would put no one body above you

君を愛してるって約束するし、君より誰かを愛することはない
Ugh, I might just fuck on your sister

くそ!君の姉妹とヤちゃうかも

YNW Melly – 100K

彼女への愛する想いを優しく歌い上げたすぐ後に、彼女の姉妹とセックスするかもしれないと言っちゃうあたり、完全にMelvin が見え隠れしています。インタビューでは、「Melvin は僕を悪い人間から守ってくれる存在」とか言ってたくせに、都合のいいように Melvin を使って言い訳しようとしているのが見え見えです。

今回のアルバムは、逮捕される前にレコーディングしたものということもあり、少し新しさにかける部分もありましたが、獄中から新曲を出したということ自体に意味があることだと思います。

Music By YNW Melly

ここからはいつものようにおすすめの楽曲を紹介していこうと思います。まず初めに紹介するのは “772 Love” という楽曲です。

タイトルにある “772” とは、彼が16歳の頃に発砲事件を起こした高校周辺の地域のエリアコードで、彼はこの地域を当時の好きだった女の子とドライブしていました。この曲はその頃のほろ苦い思い出をメロウなフロウに乗せて甘く歌い上げています。狂気的な楽曲を制作する反面、このようなラブソングも同時にこなしてしまうギャップには惹かれてしまいます。

YNW Melly – 772 Love

YNW Melly の楽曲を聴く際に押さえておきたいポイントの1つでもあるのが、オートチューンバリバリな奇妙な歌声です。初めて聴く人は、受け付けない歌声かもしれませんが、Melly を好きになる人は彼のそのようなスタイルに惚れ込む人も多いです。こちらの曲で存分に楽しめますので一度聞いてみてください。ちなみに2:44秒くらいから本領発揮します。

YNW Melly – Alarm

おわりに

Melly への深すぎる愛によって長ったらしい記事になってしまいました。しかし、 Melly についての情報がここまでまとめられた記事が他にないと思うので、これから Melly を知る方、もっと知りたい方の目に止まってくれれば嬉しいです。ここまで読んでいただいてありがとうございました。ではまた次回!

↓今回紹介した楽曲などを収録したオリジナルプレイリストです。

https://music.apple.com/jp/playlist/melly-vs-melvin/pl.u-2aoqp4bfNWXxYz0?l=en

コメントする