ブルックリンドリルの後継者 Fivio Foreign とは

皆さんこんにちは。今回は大ヒット曲『Big Drip』でおなじみの NY・ブルックリンのドリルラッパー Fivio Foreign についてまとめてみようと思います。今週の金曜日(2020/4/24)にニュープロジェクト『800 B.C.』をリリース予定ですので、ご存知の方もそうでない方も彼について予習しておきましょう。

Fivio Foreign ってどんなラッパー?

Fivio Foreign(ファイヴィオ・フォーリン)は、NY・ブルックリン出身のドリルMCです。最近では、Pop Smoke の『Meet The Woo Vol. 2』に参加したり、Tory Lanez や Rich The Kid などと楽曲を発表したことから、知名度は上昇し続けています。

少しマニアックな話になりますが、Fivio Foreign (以下 Fivio) はニューヨークに多数存在するギャングの中で、800 Foreign Side という Woo に分類されるグループに属しています。そして Pop Smoke はというと、こちらも Woo に分類される Flossy 90s に所属。Woo に分類される名称が異なったギャングは、拠点とする地域によって分けられることが多いですが、Woo 全体としてはつながりを持っています。

ニューヨークでは Woo と Cho の二派による対立が激化していますので、Woo のメンバー同士(例えば Fivio Foreign と Pop Smoke)の共演はみられますが、Woo と Cho のメンバー同士のの共演は実現しません。少し話が脱線したので元に戻しましょう。

有名になってからほとんど時間が経っていない彼ですが、ラッパーとしてのキャリアは6年ほど前から続いています。と言いましても、地元ブルックリンのラッパーの楽曲に客演として参加することがほとんどで、自らの名義での楽曲のリリースは全くと言って良いほどありませんでした。

そんな彼が、本格的に楽曲をリリースし始めたのは昨年の2019年です。そんな中、彼がリリースしたデビューEP『Pain and Love』が近年のブルックリンドリルの人気の波とぶつかって、空前のバズを起こします。

1st EP『Pain and Love』

2019年6月5日に Fivio はデビューEP『Pain and Love』をリリースしました。Pop Smoke や Drake との共演も果たしたロンドンのプロデューサー AXL Beats が、収録されている4曲すべてのプロデュースを担当し、近年のドリルミュージック逆輸入の流れを体現したものとなっています。タイトルの『Pain and Love』は、アルバムカバーの通り、彼の両手に刻まれたタトゥーの文字から由来しています。

『Big Drip』

EPの一曲目に収録されているこちらの楽曲は、彼のキャリアを語る上で避けては通れない一曲です。こちらの楽曲が彼の人気を爆発させた奇跡の一曲だと言っても過言ではありません。

彼のセカンドプロジェクト『800 B.C.』には、Lil Baby と Quavo が参加した本曲のリミックスも収録されています。

Pop Smoke と Fivio のスタイルはよく比較対象にされるようですが、前者は低い声でオオカミのようにラップするのに対し、後者は高い声で弾けるようなラップをします。

銃声を真似たアグレッシブなアドリブが曲の随所に散りばめられていますが、彼の場合はアドリブの域を超えて、もはやそれがリリックと化しています。

『It’s Me』

続いて紹介する楽曲はこちら。ブルックリンドリルのカテゴリー内では比較的珍しいゆったりとしたトラックの上で、穏やかな口調でラップしています。主に過去の回想をそのまま歌詞に書き起こしたような内容なのですが、曲調とは裏腹にストリートで生き抜くことの厳しさを生々しくラップしています。

I’m from a small town
俺は小さなまちで育ったんだ

Blocks they wouldn’t walk down
あいつらが歩けないほど危険な地域でな

No drive-bys, we doin’ walk-downs
車からの銃撃はしないぜ、俺らは車から降りて敵を狙い撃

I was dead broke
俺はまじで貧乏だった

Writin’ rhymes where the roaches at
ゴキブリが這い回るような場所でライムを書いていたよ

Mama Lottie knew I was a star before I wrote a rap
俺がラップを書く前から、ママは俺がスターだって知ってた

‘Cause I was always the one gettin’ noticed, but they didn’t notice that
俺は注目されるべきだったのに、他の奴らは俺のヤバさに気付かなかったからな

EPリリース後

Pop Smoke 『Sweetheart (feat. Fivio Foreign)』

EPリリース、『Big Drip』の大ヒット後、彼はブルックリン内外を問わず、数々のビックネームとの共演を果たしました。その中でも特に目立ったものは、ほぼ同時期からブルックリンドリルシーンを台頭してきた Pop Smoke との楽曲『Sweetheart』ではないでしょうか。プロダクションには、 Pusha T や Nicki Minaj との共演で知られるブルックリンのプロデューサーが参加し、ドリルトラックに挑戦しています。

Fivio Foreign & Rich The Kid 『Richer Than Ever』

アトランタの人気ラッパー Rich The Kid と共にリリースしたシングル『Richer Than Ever』です。こちらの楽曲は、『Big Drip』などのプロデュースした AXL Beats で、完全に Fivio の土俵に Rich The Kid を引きずり込んだものとなっています。Rich The Kid も、ブルックリンドリル特有のフロウに挑戦していますが、意外と違和感がなくて不思議な感覚を覚えます。

Tory Lanez『K Lo K (feat. Fivio Foreign)』

カナダ・ブランプトン出身で、IGライブを賑わせている Tory Lanez が Fivio を客演に招いた楽曲です。タイトルの『K Lo K』とはドミニカ共和国でよく使われる「調子はどう?」を意味するスラングで、どことなく異国の香りが漂うトラックとなっています。

プロデュースを担当するのは Tory Lanez と数々の楽曲を制作している E.C Fresco で、メロディーラインは Tory Lanez っぽく、ドラムス(特にハイハット)はドリルミュージックっぽく、2人の音楽スタイルのちょうど中間を行くようなトラックとなっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。彼がすでにリリースしている楽曲はまだまだ非常に少ないため、本記事で半分以上をカバーできていると思います。

残念なことに、ブルックリンドリルのビッグスター Pop Smoke が今年の2月に亡くなってしまいました。志半ばでブルックリンのストリートに遺された Pop Smoke の想いを、大切に背負ってトップに上り詰めることができるのは、間違いなく彼だと思います。

左 Fivio Foreign と 右 Pop Smoke

そんな彼が、ブルックリンドリルの後継者となってくれるよう願いつつ、金曜日にリリースされるニュープロジェクト『800 B.C.』を楽しみに待ちましょう。

whoiskosuke

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