Griselda Records の新星 Stove God Cooks とは

記事の内容を動画でもご紹介しています。

皆さんは、Griseldaを筆頭に盛り上がりを見せるネオ・ブーンバップ/アンダーグラウンドヒップホップシーンをチェックしていますでしょうか。アンダーグラウンドシーンをしっかり追っていなくても、現行シーンをある程度チェックしている方なら、Westside GunnやConway the Machine、Benny the Butcherらの名前は聞いたことがあるかもしれません。

そこで今回は、Griseldaムーブメントの中でも注目度の高いラッパーの1人であるStove God Cooksについてご紹介します。

Stove God Cooksとは

Stove God Cooksは、ニューヨーク中央部に位置する商工業都市、シラキュース出身のラッパーです。今でこそ活躍するラッパーが増えたシラキュースですが、Cooksによると、当時はシーンと呼べるシーンもなく、商業的な成功を収めたラッパーは1人もいなかったそうです。

かなりのヒップホップヘッズだったという兄の影響で、Capone-N-NoreagaやMobb Deepなどを聴いて育ったというCooksは、兄が書いたリリックをさも自分が書いたものかのように学校で披露していたそうですが、次第にそのストックがなくなり、自らリリックを書くようになったそうです。

その後、Puff DaddyやMaseをはじめとするBad Boy Records所属のアーティストの楽曲を好んで聴くようになったという彼は、「単にラップが上手いラッパー」よりも「ヒットを生み出すことができるラッパー」に憧れを抱き、フックのライティングに力を入れ始めます。2007年から2009年頃に地元のスタジオを借りてレコーディングを始めたというCooksですが、当初それらをリリースすることはなく、小さなイベントでDJにプレイしてもらい、身内で盛り上がるだけに過ぎなかったそうです。

しかしその後、Cooksは自身の楽曲をTwitterにアップし始めます。すると、90年代から活動するヒップホップグループBrand NubianのメンバーLord JamarがCooksの楽曲を気に入り、彼をBusta Rhymesに紹介します。Busta Rhymesに才能を認められたCooksは、Busta率いるConglomerate Recordsと契約。その後Cooksは、ある人物との出会いによってキャリアを大きく前進させることになります。

その人物が、現在のネオ・ブーンバップムーブメントを創り出したゴッドファーザー、Roc Marcianoです。

Bustaが、Flipmode Squadのリユニオンアルバムを製作するために元メンバーであるMarciをスタジオに呼び出したことが、CooksとMarciの出会いのきっかけでした。BustaがCooksの楽曲を再生したところ、Marciがそれを気に入り、CooksとMarciは関係を築き始めました。

最初はMarciのドラムレスビートが苦手だったというCooksですが、彼が得意とするメロディックな要素を加えたスタイルでスピットしてみたところ、思いの外ビートにハマり、次第にこのスタイルが好きになっていったそうです。共にスタジオ入りすることは一度もないまま、Marciから送られてくるビートを用いてひたすら楽曲を作ったCooksは、全曲Marciプロデュースによるデビュープロジェクト『Reasonable Drought』をリリースします。

「とりあえず何かしらの作品を世に発表したかったからリリースした」と語るCooksですが、同作は彼の予想をはるかに上回る高い評価を獲得。このアルバムが、Griselda Recordsを率いるバッファローのラッパーWestside Gunnの目にも留まり、CooksはGriseldaムーブメントに接近することになります。

より多くの人にCooks & Marciの『Reasonable Drought』を聴いてほしいと考えたWestside Gunnは、自身のアルバム『Flygod Is an Awesome God 2』収録の3曲でCooksを起用。

Westはそれ以降も、自身の全てのアルバムでCooksをフィーチャーし、2021年10月頃にCooksはGriselda Recordsに正式加入します。

『Hitler Wears Hermes 8: Side B』収録の『Ostertag』では、Cooksは「次のアルバムを7枚限定で、1枚100万ドル (約1億円) で売るかも」とラップ。

I might sell my next shit for a million (For a million)

次のアルバムを100万ドルで売るかもな

Only seven copies and I’m dead for real (I’m so serious)

7枚だけだ 本気だぜ

Westside Gunn – Ostertag (feat. Stove God Cooks)

昨年11月、Cooksは実際に7枚限定、100万ドルのアルバム『If These Kitchen Walls Could Talk』を発売しました。こちらのアルバム、なんと現在も奇跡的に売れ残っているみたいなので、経済的に余裕のある方はぜひ買ってみてはいかがでしょうか。

https://stovegodstore.com/products/stove-god-cooks-if-these-kitchen-walls-could-talk

Cooksは今後、「Roc Marcianoフルプロデュースのアルバム」や「Westside Gunn監修のアルバム」のリリースを控えているそうで、もしそれらが年内にリリースされれば、2022年は彼にとって躍進の1年となるでしょう。

CooksはHOT97のインタビューにて、アンダーグラウンドシーンに留まらず、商業的な成功も目指したいと語っており、「アンダーグラウンド・クラシックを作りながら、RihannaやDrakeなどメインストリームアーティストのソングライティングをすること」を将来的な目標として掲げているそうです。

終わりに

いかがだったでしょうか。今回は、アンダーグラウンドシーンの注目株、Stove God Cooksについてご紹介しました。

Roc Marcianoとの『Reasonable Drought』をきっかけにネオブーンバップウェーブに乗り、Griselda Recordsとの契約を勝ち取った期待の新星Stove God Cooksから今後ますます目が離せなくなりそうです。

Written by Riku Hirai


Playlist “Stove God Cooks”

【Apple Music】

https://music.apple.com/jp/playlist/stove-god-cooks/pl.u-gxblq5RT50A7vEa?l=en

【Spotify】

https://open.spotify.com/playlist/2DXLbNgx83Q8Mr9vwxuijY?si=MwhRCQjqQVahVotMg7nElw

Drakeも認めたポートランドの新星ラッパーYeatとは

※記事の内容を動画でもご紹介しています。

昨年突如としてシーンに現れた、今1番ホットなラッパーと言えば誰が思い浮かぶでしょうか。その1人として挙げられるのが、DrakeやLil Yachtyらに実力を認められ、現在人気急上昇中のラッパーYeatでしょう。

今回は、彼Yeatの生い立ちやキャリアについてご紹介します。

Yeatの生い立ち

YeatことNoah Oliver Smithは2000年2月26日、メキシコ人の父とルーマニア人の母のもと、カリフォルニア州アーバインにて生を受けます。

10代半ばにオレゴン州ポートランドに移住した彼は、Lakeridge High Schoolに進学。バスケットボールやサッカーをしていたこともあったそうですが、それらに熱中することは特になく、次第に大麻やドラッグにハマっていったそうです。ドラッグに明け暮れる日々を過ごしたYeatは、自身の怠惰な生活を見つめ直し、音楽活動を開始します。

Yeatのキャリア

Lil Yeatというステージネームで活動を始めた彼は、2015年に楽曲をリリースし始めます。

「シンプルで、誰もが聞き覚えのあるような名前にしたかった」と語る彼は、Lilを取り除き、「Yeat」というステージネームに変更します。

Yeatは2018年に1st EP『Deep Blue Strips』をリリースします。

オートチューンを用いてメロディアスに歌うフロウを得意とするYeatは、T-PainやKanye West、Young Thug、Futureらから影響を受けたそうで、特に幼い頃から母親の影響で聴いていたT-Painのスタイルが、現在の彼の音楽性に多大な影響を与えているそうです。

1st EPのリリース後、ユニークなサウンドで注目を集めたYeatは、Wheezyや10Fiftyら著名プロデューサーを迎えたミックステープ『I’m So Me』を含む3枚のプロジェクトをリリースします。

2020年には『We Us』と『Hold Ön』の2枚のEPをリリースするなど、継続的なリリースを続けてきたYeatは、2021年に突如としてブレイクを果たします。

2021年にリリースしたミックステープ『4L』収録の楽曲『Sorry Bout That』がTikTokを中心にバイラルヒット。

その後、未リリース楽曲『Gët Busy』のスニペットがソーシャルメディア上で注目を集めることとなります。

大手レーベルInterscope RecordsとサインしたYeatは、待望のデビューアルバム『Up 2 Më』をリリースします。

先程ご紹介した楽曲『Gët Busy』は、DrakeがInstagramストーリーズで引用したことで更なる話題を呼び、Yeatにとって過去最大のヒットソングとなりました。

This song already was turnt, but here’s a bell

この曲は既に盛り上がっているけど、ここから更にベルが鳴るぜ

(実際に次の小節からベルが加わります)

Yeat – Gët Busy

同曲にこのようなラインがあるように、Yeatはエレクトリックなレイジサウンドに、ベルをアクセントとして付け足したビートを頻繁に用いており、自身のトレードマークとして提示しています。

今年2021年には、セカンドアルバム『2 Alivë』のリリースも控えているそうで、今後更なる活躍が見込まれるYeatから目が離せなくなりそうです。

Riku Hirai

月間おすすめアルバム【2021年3月】

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OMB Peezy – Too Deep For Tears

アラバマ州モービルのラッパーOMB Peezyのセカンドアルバム。哀愁漂うトラップビートとOMB Peezyの歌心のあるフロウが堪能できます。Blac YoungstaやJacquees、King Vonらが参加。


Lancey Foux – FIRST DEGREE

UK・ロンドンのラッパーLancey Fouxのミックステープ。Lancey Fouxらしいサイケデリックなビートチョイスと絞り出すような高音フロウが映える1枚です。Skeptaが参加。


CHIKA – ONCE UPON A TIME

アラバマ州モンゴメリーのラッパーCHIKAのEP。6曲というボリュームながらも、CHIKAの高い歌唱力とラップスキルが存分に発揮された1枚です。BJ the Chicago Kidが参加した『FAIRY TALES』での多幸感あふれるテンポチェンジがハイライト。


Joyce Wrice – Overgrown

カリフォルニア州ロサンゼルスのシンガーJoyce Wriceのデビューアルバム。90年代後半~2000年代初期のR&Bを彷彿とさせるサウンドとJoyce Wriceの美しく伸びのある歌声が魅力的な1枚です。Freddie GibbsやWestside Gunn、KAYTRANADAら豪華客演陣の参加に加え、Joyce Wriceと同じく日本にルーツを持つシンガーUMIが参加した『That’s On You (Japanese Remix)』も収録。


Benny the Butcher & Harry Fraud – The Plugs I Met 2

ニューヨーク州バッファローのラッパーBenny the ButcherとブルックリンのプロデューサーHarry Fraudによるコラボ・プロジェクト。サンプリングやジャズホーン、ストリングスなどを用いたニューヨークらしい上質なブーンバップと、Benny the Butcherのキレの良いラップが完璧な相性を見せる1枚です。Fat JoeやFrench Montana、Rick Hydeらの参加に加え、2 Chainzが参加した『Plug Talk』での佐井好子『胎児の夢』のサンプリングにも注目です。


24kGoldn – El Dorado

カリフォルニア州サンフランシスコのラッパー24kGoldnのデビューアルバム。現行のトラップサウンドをポップに昇華させた、24kGoldnの抜群のメロディセンスと力強いハスキーボイスが光る1枚です。FutureやDaBaby、Swae Leeらが参加。

Written by Riku Hirai


先月のおすすめアルバムはこちら↓

注目R&BシンガーJoyce Wriceがデビューアルバム『Overgrown』に込めた想いとは

Joyce Wrice (ジョイス・ライス) は、日本とアメリカにルーツを持つ、カリフォルニア州サンディエゴ出身の注目R&Bシンガーだ。90年代後半から2000年代初期のR&Bを彷彿とさせるサウンドと美しく伸びのある歌声で世界中から注目の視線を浴びる彼女は、starRoや向井太一ら日本のアーティストとの共演でも知られている。

今回は、本日デビューアルバム『Overgrown』をリリースした彼女の人となりを、i-D Magazineによるインタビューを抜粋しながらご紹介する。


– サンディエゴでどのように生まれ育った?

私は日本人の母とアフリカンアメリカンの父親のもと、サンディエゴの小さな町チュラビスタで生まれ育った。私の父は軍人として日本に駐留していて、そこで母と出会ったの。その後、父はサンディエゴに異動となり、母は私をサンディエゴで育てることに決めたそう。母は、私が環境や友達を変え続けなければならないことを心配していたからね。同時に彼女は、私にも日本の文化に触れてほしいと強く思っていたんだ。幸運にも、サンディエゴには良質な日本の市場とコミュニティがあったよ。

ミュージックビデオでは日本語を話す姿も。

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– 仏教を教えられていたと聞いたが、今でも信仰している?

私の母は仏教徒で、彼女は20代後半頃に東京で日蓮仏教を学んだんだ。母が私に教えてくれたことの1つは、「他の人を助けることが自分自身を助ける最良の方法である」という教えよ。なんらかのコミュニティに属せば、問題への向き合い方や目標達成へのプロセスを共有でき、自分は1人じゃないって気づくことができるんだ。自分が取り組んでいることを共有し、そしてまた仲間の行動に刺激を受けるのは素晴らしいことだよ。

1人っ子だった私は、母と時間を過ごすことが多くて、学校が休みの日は彼女と仏教徒の集会によく足を運んだの。私はそこで、仏教信仰によって自らの人生を変える母の姿を目の当たりにしたんだ。それがきっかけで私も仏教を信仰するようになったってわけ。それ以降、私は毎朝晩、真剣に読経に取り組んできたよ。私はロサンゼルス中南部のグループに所属していて、今は彼らと直接会うことはできないけど、Zoomを使って電話をするんだ。遠隔での読経でも私たちが団結できるように、朝に皆んなで同時に行うの。他の人と一緒にやるほうが簡単だからね。

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「アーティストとしての自分」を見つけるにあたって、最も決定的だったことは?

実際のところ、自分の声を見つけて曲を作る段階において、私はかなり行き詰まっていたんだ。私はセンシティブな性格で、自己不信と不安に苦しんでいたの。でも、他のアーティストの活動に目を向け、彼らがどのように音楽に向き合っているのかを知り、自らの全てを曝け出すことに決めたとき、私はその過程の美しさに気づいたんだ。私たち全員がそれぞれ独自のストーリーを持っていることを再確認できたよ。その過程で挫折せずに、自らのストーリーを伝えることが私の使命だと感じたの。私の曲を聴いた他の誰かにもその過程の美しさが伝わってほしいしね。こういう風に考えるようになってからは凄く気が楽になったし、自分がすべきことにフォーカスできるようになったよ。

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– ニューアルバムのタイトル『Overgrown』に込められた意味は?

本当は去年リリースする予定だったんだけど、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で遅れてしまったの。去年リリースしていれば収録されることはなかったであろう、強いインパクトのあるインタールードや楽曲を作ることができたし、実際この遅延は私にとって意味のあるものだったよ。 『Overgrown』という楽曲を作ったとき、一緒に仕事をしたプロデューサー兼ライターのMack Keaneに私の苦労について相談したんだ。私は当時、自分に価値を見出せず、自信を失っていたの。彼との相談中、私は彼のピアノ演奏に乗せてフリースタイルを始めたのを覚えているよ。私にとって『Overgrown』とは、「カラフルな花でいっぱいの自分の庭」、つまり「自分の感情」や「自分の雑念」を意味するんだ。当時この「自分の庭」は雑草に覆われていて、手入れが必要だったの。アルバム制作の全てのプロセスは、まさにセラピー・セッションのようなものだったよ。このアルバムは私が行った「ガーデニング」の結果と言えるかもしれないね。

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– Freddie Gibbsとのコラボレーションはどのように実現した?

私がTwitterで彼に連絡したら、彼は「明日レコーディングするからその楽曲を聴きたい」って返事をくれたんだ。彼は私の曲をかなり気に入ってくれたよ。彼は頭の中でリリックを書き、スタジオを歩き回りながらフロウを模索したのち、レコーディング・ブースに入って自身のヴァースを如何にも簡単に仕上げたんだ。彼の声はとても魅力的で、なんといってもビートへの乗り方がとてもスムーズなの。彼とのコラボは私にとって本当に刺激的だったし、私も自分の信念を曲げずにアーティストとしてのキャリアを長続きさせたいって思ったよ。音楽を長くやっていると、物事がうまくいかないことはよくあって、途中で諦めてしまう人もたくさんいる。でもFreddieは前に進み続けたんだ。彼は色んな困難に直面しながらも決して諦めることはなく、今では大成功を収めている。そういった意味で、彼とのコラボレーションは私にとってかなり刺激的なものだったよ。

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– 初期の楽曲ではフックとヴァースの両方を1人で録っていたのに対して、今では大物アーティストの客演ヴァースを沢山手に入れている。これはあなたにとって感慨深いものなのでは?

本当にその通りだよ。このアルバムはまさに夢の実現なの。実家に帰って自分の幼少期の写真を見ると思うんだけど、当時は私がこんなことを実現できるなんて夢にも思わなかったよ。私はどちらかと言うと恥ずかしがり屋で、自分を表に出すのが得意ではなかったけど、自分を表現しなければならなかった。このアルバムの制作において素晴らしかった点は、強制的なコラボレーションがなかったことなの。このアルバムに参加してくれたアーティストは皆、私自身が大ファンであり深く尊敬する人々なんだ。彼らも私のことをそう思っていてくれていると感じるよ。私たちは皆、音楽について話し合うだけの関係ではなく本当の仲間なんだ。


Written by Riku Hirai

月間おすすめアルバム【2021年2月】

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Pooh Shiesty – Shiesty Season

テネシー州メンフィス出身のラッパー Pooh Shiesty のデビュー・ミックステープ。彼は、不穏なピアノと808ベースを効かせたトラップビートを用いて、Gucci Maneの影響を感じさせる気怠いフロウを聴かせるラッパーで、過激且つ挑発的なリリックにも定評があります。2021年最注目ラッパーの1人である彼のデビュー作は一聴の価値ありです。


Devin the Dude – Soulful Distance

テキサス州ヒューストン出身のラッパーDevin The Dudeの11枚目のスタジオ・アルバム。Slim ThugやScarfaceら同郷ヒューストン出身のベテラン陣が参加した今作は、彼らしい緩いファンクを軸としながら、ブーンバップや現行トラップも多く取り入れた作品に仕上がっています。新しいサウンドを積極的に取り入れつつも自身のスタイルを貫く、彼の安定感が発揮された1枚で、タイトル通りソウルフルなラップとヴォーカルが堪能できます。


slowthai – TYRON

イギリス・ノーザンプトン出身のラッパーslowthaiの2ndアルバム。SkeptaやA$AP Rocky、Dominic Fike、James Blakeなど、国やジャンルを問わない豪華客演陣の参加が目立つ今作で、slowthaiは洗練されたビートと持ち前の独特な声を用いて自身の感情を吐き出します。社会への不満を露にした前作と通ずる部分はあるものの、自身の本名Tyronをアルバムタイトルに用いたことからも分かるように、今作では彼の内省的なアプローチが多く見られます。


Z-Ro & Mike D – 2 The Hardway

テキサス州ヒューストン出身で、共にScrewed Up ClickのメンバーであるZ-RoとMike Dによるコラボ・アルバム。H-Townサウンド全開のプロダクションと、2人のソウルフルなラップ&ヴォーカルが光る1枚です。Lil’ KekeやC-Note、Big Pokeyら現Screwed Up Clickメンバーに加え、2016年に銃撃で亡くなった旧メンバー3-2も参加。


Duke Deuce – Duke Nukem

テネシー州メンフィスのラッパーDuke Deuceのデビュー・アルバム。90年代後半から2000年代初期のThree 6 Mafiaを彷彿とさせるクランクをベースに、活気の良いラップや耳に残るアドリブ、更にはオートチューンを効かせて歌うスタイルも披露します。今作では、FoogianoやLil Keed、Mulattoなどメンフィス以外のラッパーを多く客演に起用しており、クランクのサウンドに適応してラップする彼らの新たな一面も垣間見ることができます。


Drakeo the Ruler – The Truth Hurts

カリフォルニア州ロサンゼルスのラッパーDrakeo the Rulerのミックステープ。不穏でダークなビートと、Drakeoのボソボソと呟くような低い声が圧倒的な緊張感を生み出し、聴く者を西海岸のフッドに誘います。Don Toliverとの意外な組み合わせや、先日急逝したKetchy the Greatの4曲での参加、DrakeoとDrakeの夢の共演など聴きどころ満載の1枚です。

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Written by Riku Hirai


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月間おすすめアルバム【2021年1月】

2021年注目すべきUKのネクストスターたち

前回は、UKラップシーンを牽引する若手アーティストとして、Daveやslowthai、Lancey Fouxらについてまとめました。

UKラップシーンを牽引する若手アーティストたち

今回は、ラップシーンに留まらず、様々な音楽から影響を受けて進化を続けるUKの新世代アーティストを数名ご紹介します。

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1. Pa Salieu

ガンビア共和国にルーツを持つ、コヴェントリー出身のラッパー。J Hus系譜のアフロスウィングをベースとしながら、グライムやUKドリル、ダンスホーム、レゲエ風味のビートなども巧みに乗りこなします。UKラップ的なフロウからレゲエ調のアプローチまでこなす彼のスタイルは、同じくガンビア共和国にルーツを持つJ Husと比較されがちですが、彼はJ Husより更にアフリカルーツに回帰したストリート色の強い音楽性を提示しています。


2. Bakar

ロンドン出身のシンガー。カリフォルニアのヒップホップ・プロデューサーMadlibや、イギリスのロックバンドFoalsから影響を受けたと語るBakarは、インディーロックやパンク、ヒップホップなどをミックスしたジャンルレスな音楽性で注目を集めています。また彼は、Louis VuittonやPradaのモデルにも起用されるなど、ファッションシーンにおいても活躍しています。


3. ENNY

ナイジェリアにルーツを持つ、ロンドン出身のラッパー/シンガー。2020年に本格的に音楽活動を開始したENNYは、デビューシングル『He’s Not Into You』をリリースした後、Jorja SmithのレコードレーベルFAMMと契約。同郷ロンドン出身の注目シンガーAmia Braveと共にリリースしたメジャーデビュー・シングル『Peng Black Girls』はUKシングルチャートTOP100入りを果たしました。レイドバックしたラップやソウルフルなヴォーカル、詩的なリリックが魅力的な注目アーティストです。


4. Arlo Parks

ナイジェリア、チャド、フランスにルーツを持つ、ロンドン出身のシンガー。彼女は、ネオソウルやインディロック、ヒップホップなどをミックスしてポップスに昇華させた音楽性から、次世代のベッドルーム・ミュージックを代表するアーティストとして注目されています。2021年リリースのデビューアルバム『Collapsed in Sunbeams』はUKアルバムチャートにて最高3位を記録し、各音楽メディアからも高い評価を獲得しています。


5. Central Cee

中国と南米にルーツを持つ、ロンドン出身のラッパー。父親の影響で幼い頃からヒップホップを聴いていたという彼は、14歳の頃にYouTubeに楽曲をアップロードし始めます。キャリア当初はトラップビートを用いてメロディアスに歌うラップスタイルを武器としていた彼ですが、2020年頃からはUKドリルビートを用いてパンチラインをスピットするスタイルに移行。このスタイルチェンジが功を奏し、ジャジーなUKドリルソング『Loading』のヒットにより彼は一躍人気を獲得します。盛り上がりを見せるUKドリルシーンにおいて、一際目立つ存在になりつつある彼から目が離せません。


Written by Riku Hirai

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月間おすすめアルバム【2021年1月】

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Nyck Caution – Anywhere But Here

ニューヨーク・ブルックリン出身でPro Era所属のラッパーNyck Cautionのデビュー・アルバム。ブーンバップを軸にトラップも取り入れた同作では、Nyck Cautionのスキルフルなラップとエモーショナルなヴォーカルが堪能できます。Joey Bada$$やDenzel Curry、CJ Flyらが参加。


UnoTheActivist – Unoverse

ジョージア州アトランタ出身のラッパーUnoTheActivistの2ndアルバム。シンセサイザーを効かせた浮遊感のあるトラップビートにUnoTheActivistの気怠いマンブルラップが映える1枚です。Mar90s、MDMAが参加。


Jazmine Sullivan – Heaux Tales

ペンシルバニア州フィラデルフィアのシンガーJazmine Sullivanの4thアルバム。トラップの流れも汲んだシンプルなビートの上で、Jazmine Sullivanが愛について力強く歌い上げます。彼女の圧倒的な歌唱力はもちろんのこと、インタールードを通して視点が切り替わる構成も魅力的な1枚です。


Cosmo Pyke – A Piper For Janet

ロンドン・ペッカムのシンガーCosmo PykeのEP。クラシックギターやトランペットなどの生音を用いたジャジーなサウンドとCosmo Pykeのソウルフルなヴォーカルが魅力的な1枚で、わずか4曲という曲数ながらもジャズやソウル、ロック、レゲエなど様々なジャンルのエッセンスが堪能できます。


Chip – Snakes & Ladders

ロンドン・トッテナムのラッパーChipのミックステープ。グライムやドリルビートの上ではタイトなラップを、ダンスホールやアフロビーツの上ではメロディアスなフロウを聴かせるChipの器用さが光る1枚。Dizzee RascalやHeadie One、MoStackらが参加。


Arlo Parks – Collapsed in Sunbeams

ロンドン・ハマースミスのシンガーArlo Parksのデビュー・アルバム。ネオソウルやインディロック、ヒップホップなどの要素をミックスしてポップスに昇華させた次世代のベッドルーム・ミュージックです。彼女が自身の影響源として名前を挙げるFrank Oceanの『Ivy』のカバーも収録されています。

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Written by Riku Hirai

Lil Skies – 疾走感溢れる若き才能

本日ニューアルバム『Unbothered』をリリースしたペンシルバニア州出身のラッパー Lil Skies。昨年、Internet Money のアルバムや映画『Fast & Furious 9』のサウンドトラックへの参加で再び注目を集め、今後更なる活躍が見込まれる彼の生い立ちやキャリアに迫ります。

生い立ち

Lil Skies (リル・スカイズ) こと Kimetrius Christopher Foose は、1998年8月4日、ペンシルバニア州チェンバーズバーグにて生を受けました。彼の父親はラッパー Dark Skies として活動しており、「Lil Skies」というステージネームはこれに肖ったものだそうです。Foose 一家は、Skies が3rdグレード (小学3年生) の頃に同州のウェインズボロに引っ越しますが、その数年後、父親が職場での化学爆発事故により怪我を負い職を失ってしまいます。この出来事をきっかけに、Skies はアルバイト (McDonald’s と日本食レストラン) とドラッグディールを始めました。

キャリアの開始

ラッパーの父親の影響で3歳の頃にフリースタイルを始めたという Skies は、2012年に初のプロジェクト『Birth of Skies Vol. 1』をリリース。その翌年には父親とのコラボ・プロジェクト『Father-Son Talk』をリリースします。

2015年には『Good Grades Bad Habit』(現在削除済み)、2016年には『Good Grades Bad Habit 2』とミックステープをコンスタントにリリースし、地道ではあるものの着々とプロップスを獲得していきます。

2017-18年 – 飛躍の1年

2017年、Skies はミックステープ『Alone』やシングル数曲をリリースします。その中でも Landon Cube をフィーチャーした『Red Roses』が、 Lyrical Lemonade の Cole Bennett 監修によるミュージック・ビデオの後押しを受けバイラル・ヒット。これがレーベル関係者の目に留まり、彼は Atlantic Records と契約を結びます。

息子 Lil Skies のミュージック・ビデオが1000万回再生を突破し嬉し泣きする父 Mike Skies

2018年にはメジャーレーベルから初のミックステープ『Life of a Dark Rose』をリリース。

同ミックステープは Billboard Hot 200 にて23位デビューを果たし、最高10位を記録します。同作収録の『Nowadays』と『Red Roses』は、Billboard Hot 100 にてそれぞれ最高55位と69位を記録。メジャーデビュー・ミックステープとしては大成功と呼べる功績を残します。

Nowadays (feat. Landon Cube)

Nowadays I’m too cool for a girlfriend

最近、1人の彼女には勿体ないぐらい俺はクールだ

Nowadays I don’t know when the world spins

時間を忘れてしまうぐらい忙しいんだ

Live your life like we die when the world ends

今日が最後だと思って生きよう

So it’s alright every time we fuckin’ break a sin

だから罪を犯したって大丈夫さ

Skies と Landon Cube の抜群の相性と、軽快で疾走感のあるビート&リリックが魅力的な1曲です。

2019年 – デビュー・アルバムのリリース

2019年3月、Skies は母親の名前を冠したデビュー・アルバム『Shelby』をリリースします。

母親 Shelby Foose をフィーチャーしたショート・ドキュメンタリー

母の名前をアルバム名にすることに決めたんだ

彼女は俺のインスピレーションだから

愛しているよママ

このアルバムをあなたに捧げる

同アルバムは初週で5.4万ユニットを売り上げ、Billboard Hot 200 にて5位デビューを飾りました。

I

I don’t want the fame

名声はいらない

I don’t want to play these games

ラップ・ゲームに参加したいわけじゃない

Tired of hiding from the pain

痛みから隠れるのに疲れたんだ

Never hanging with the lames

ダサいやつらとは絡まない

Skies は同アルバムにて、自身が経験してきた鬱や仲間の死、失恋、アーティストとしての苦悩、またそれらが引き起こした大麻依存について赤裸々にラップします。耳触りの良いメロディアスなフロウと、ありのままの感情を曝け出したストレートなリリックが魅力的な1枚です。

2020-21年 – 注目のコラボとセカンド・アルバムのリリース

2020年7月、Skies は映画『Fast & Furious 9』のサウンドトラック収録曲としてシングル『Red & Yellow』をリリースします。

翌月には Internet Money のアルバム『B4 The Storm』に参加。

Internet Money – Lost Me (feat. Lil Mosey, iann dior & Lil Skies)

人気映画シリーズのサウンドトラックへの参加や注目アーティストとのコラボレーションを果たし、更に幅広い層からの人気を獲得した Skies は、本日2021年1月22日、待望のセカンド・アルバム『Unbothered』をリリースしました。

デビュー当初から少しずつスタイルを変えながら成長を見せてきた Skies ですが、ネット上では「昔のスタイルに戻ってほしい」というファンの要望も散見され、彼はこれに対して以下のように返答しています。

俺がデビュー当初から変わらず同じ人間でいることや、同じ音楽を作り続けることを望むのはやめてくれ

俺は人間で、常に成長し変化している

3年前の自分で居続けることはできない

今は全く違う人生を歩んでいるんだ

俺がこれに対して言及するのは最後だ

同じような音楽を作り続けないからってアーティストを罵る人々がいるけど、俺たちも人間なんだ

そして俺は俺が感じたことを音楽で表現している

新しいサウンドに挑戦するのは間違ったことじゃないだろ

とにかく、俺の本当のファンたちを愛しているよ

(Instagram ストーリーズより)

おわりに

今回は、本日ニューアルバム『Unbothered』をリリースしたペンシルバニア州出身のラッパー Lil Skies の生い立ちやキャリアについてまとめました。若くして才能を開花させ、常に成長し続ける彼の今後にますます目が離せなくなりそうです。

Written by Riku Hirai

2021年リリース予定の注目ヒップホップ・アルバム

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Drake『Certified Lover Boy』

カナダ・トロントのラッパー Drake の6枚目のスタジオ・アルバム。2019年4月に初めてアナウンスされた同アルバムは、前作『Scorpion』のリリースから約2年半の月日を経て今年の1月にリリースされる予定。先行シングル『Laugh Now Cry Later』に参加した Lil Durk に加え、Roddy Ricch や Jessie Rayez らの参加が噂されている。

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J. Cole『The Fall Off』

ノースカロライナ州ファイエットビルのラッパー J. Cole の6枚目のスタジオ・アルバム。2018年リリースの前作『KOD』に『1985 (Intro to “The Fall Off”)』というアウトロ曲が収録されたことをはじめに、2019年11月には Cole が Day N Vegas Music Festival にて2020年内のアルバムリリースをアナウンス。

しかし2020年には、Cole はシングル2曲を発表するものの、結局アルバムがリリースされることはなかった。彼は『The Fall Off』の他にも『The Off Season』や『It’s A Boy』といったプロジェクトのリリースも示唆している。

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Travis Scott『Utopia』

テキサス州ヒューストンのラッパー Travis Scott の4枚目のスタジオ・アルバム。大ヒットを記録した前作『ASTROWORLD』のリリース以降、McDonald’s や PlayStation とのコラボレーションを果たすなど音楽活動以外でも活躍を見せてきた Travis は、2020年7月にニューアルバムのタイトルを発表。同年10月には、ラジオDJに向けて送った手紙にて、アルバムを2021年にリリースすることを仄めかした。先行シングル『FRANCHISE』に参加した Young Thug や M.I.A.、Future らに加え、Roddy Ricch や Don Toliver、Kevin Parker、Hit-Boy らの参加が噂されている。

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Migos『Culture Ⅲ』

ジョージア州ローレンスビルのヒップホップ・トリオ Migos の4枚目のスタジオ・アルバム。2018年、メンバーの Quavo が「アルバムを2019年の頭にリリースする」と発言して以降、これまで幾度となくリリースが延期されてきた同アルバムは、Migos の『Culture』シリーズの最終章になる予定。彼らによると、アルバム名を変更する可能性や、別のプロジェクト『Quarantine Mixtape』を先にリリースする可能性もあるという。

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Young Thug『Slime Language 2』

ジョージア州アトランタのラッパー Young Thug (& YSL Records) の2枚目のコンピレーション・アルバム。2020年5月に、YSL Records 所属のラッパー Gunna がアルバムの存在を明かした後、Young Thug 本人も Twitter にて「#Slimelanguage2 8-16」とツイートしアルバムのリリースを仄めかした。Young Thug の誕生日であり、前作『Slime Language』のリリースから2周年でもあった8月16日にも、噂されていたブラックフライデーにも結局アルバムがリリースされることはなく、12月に先行シングル1曲が発表された。同アルバムには YSL Records 所属のアーティストに加え、Nav や Roddy Ricch、Lil Uzi Vert、Juice WRLD、Future、Lil Baby、Swizz Beats らの参加が噂されている。

Written by Riku Hirai

Playboi Carti『Whole Lotta Red』リリースまでの軌跡

これまで幾度となくリリースが延期されてきた Playboi Carti のニューアルバム『Whole Lotta Red』。今回は、その存在が明かされてから2年以上の月日を経て本日遂にリリースされた同アルバムの歴史について振り返ります。

2018年: ニューアルバムの告知

2018年8月、Playboi Carti (以下 Carti) はニューアルバム『Whole Lotta Red』の存在を明かします。

俺の次のアルバム (タイトル) は『Whole Lotta Red』だ

この『Whole Lotta Red』とは、Carti が所属するストリート・ギャング Bloods のチームカラーと、咳止めシロップ (通称: リーン) の色を指しています。

2019年: 未発表曲のハイプとリリース詐欺

2019年3月、Carti は GQ 誌にて、Louis Vuitton のアーティスティック・ディレクターとして知られる Virgil Abloh を同アルバムのクリエイティブ・ディレクターに任命したことを発表します。

この発表と同時期に、Young Nudy、Playboi Carti、Pi’erre Bourne による未発表曲『Pissy Pamper (Kid Cudi)』が、Young Nudy の友人の Instagramライブにてプレビューされ、ファンの間で大きな話題となります。

Pi’erre Bourne がプロデュースを手掛ける同曲では、山根麻衣『たそがれ』がサンプリングされています

Young Nudy と Pi’erre Bourne のアルバム『Sli’merre』に収録予定だった同曲は、Instagramライブでのプレビュー後ハッカーによって直ちにリークされ、更には Carti も自身のライブ (Rolling Loud) で披露するなど、瞬く間に人気を獲得します。

その結果、未リリースにも関わらず非公式のリーク音源が Spotify の US Viral 50チャートにて1位を獲得しました。

6月には The Fader 誌にて、Trippie Redd や Gunna、Pi’erre Bourne、Don Cannon、Maaly Raw、Richie Souf、Roark Bailey らが同アルバムに参加していることを発表。

そして7月には、ウィスコンシン州ミルウォーキーで行われたライブにて、Carti は本格的にアルバムのリリースを告知します。

60日以内にニューアルバムをリリースしようとしている

嘘はつかないよ

(中略)

ノーフィーチャー (客演無し) だ

しかし結局、2019年内にアルバムがリリースされることはなく、客演参加を除いて自身の楽曲を1曲もリリースしない1年となりました。

2020年: 『Whole Lotta Red』のリリース

2020年1月、Carti は Culture Kings でのインタビューにて、2020年にアルバムをリリースすることを発表します。

準備は出来ている

俺は皆んな以上に準備万端だよ

俺がラップできることを世間に分からせてやるんだ

やばいラインが揃ってる

それが『Whole Lotta Red』だ

同年4月、Carti はシングル『@ MEH』をリリース。同曲は Billboard Hot 100にて最高35位を記録するものの、各方面から酷評を受け、最終的にアルバムには未収録となりました。

『@ MEH』のリリースから約1ヶ月後、Drake との楽曲『Pain 1993』をリリース (Drake『Dark Lane Demo Tapes』収録)。同曲が Billboard Hot 100にて7位デビューを飾り、Carti は自身初のTOP10入りを果たします。

そして11月、Carti はアルバムが完成したことを Instagram にて発表します。

12月にはヒップホップ・パーソナリティの DJ Akademiks が、『Whole Lotta Red』はクリスマス (12月25日) にリリースされると公言します。

https://twitter.com/akademiks/status/1337223450927239168?s=21

Carti のファン達にこの情報を届けるために、俺は文字通り魂を売ったよ

今夜 Carti のアルバムはリリースされないけれど、クリスマスにリリースされる予定だ

そして、Kanye West と一緒に Givenchy のデザイナーである Matthew Williams がエグゼクティブプロデューサーを務めているらしい 独占情報だ

DJ Akademiks は Twitch のライブ配信にてこの情報を先行公開し、その配信時の音声が『Whole Lotta Red』収録の『Control』のイントロにそのまま使用されました

12月21日、Carti は DJ Akademiks の発言通り、クリスマスにアルバムをリリースすることを正式発表します。

https://twitter.com/playboicarti/status/1341250702169935872?s=21
https://twitter.com/playboicarti/status/1341249071030267905?s=21
『Whole Lotta Red』のカバーアートは、70年代後半に出版されていたパンクロック雑誌『Slash Magazine』の表紙をオマージュしたもの

そして本日12月25日、Playboi Carti は遂にニューアルバム『Whole Lotta Red』をリリースしました。

世界中のヒップホップ・ファンが待望していた同アルバムには、Kanye West や Kid Cudi、Future ら大物ゲストが参加し、プロダクションには F1lthy や Wheezy、Pi’erre Bourne、Richie Souf、Roark Bailey、Maaly Raw、Starboy、Art Dealer、Outtatown らがクレジットされています。24曲1時間超えというボリューミーな今作には、比較的最近レコーディングされたと思われる楽曲に加え、過去にリーク済みの楽曲も数曲収録されました。

リリース前に噂されていた Travis Scott や Post Malone、Lil Uzi Vert らとの楽曲や、前述した『Pissy Pamper (Kid Cudi)』に Kid Cudi 本人が参加したアップデートバージョン等は未収録だったため、今後それらを収録したデラックス盤がリリースされる可能性は高いでしょう。

https://twitter.com/playboicarti/status/1341487626344308736?s=20

おわりに

今回は、Playboi Carti のニューアルバム『Whole Lotta Red』のリリースを記念して、2年以上に及ぶアルバムリリースまでのプロセスを振り返ってみました。

「60日以内にリリースする」「嘘はつかない」などと発言しながらアルバムリリースを延期し、2018年から本日までファンを焦らし続けた Playboi Carti。今年の年末年始は、そんな彼の待望の新作『Whole Lotta Red』の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

Written by Riku Hirai