XXS Magazine が選ぶ
2023年ベスト・アルバム10選

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10. Brent Faiyaz – Larger Than Life

メリーランドのシンガーBrent Faiyazのミックステープ。

TimbalandやThe Neptunesの影響を感じさせる00年代R&Bサウンドをオマージュしつつ、A$AP RockyやBabyface Rayら現行ラッパーをフィーチャーすることでモダンなムードに昇華した1枚。煌びやかなサウンドと、哀愁漂う甘美な歌声に惚れ惚れする36分間。


9. MIKE, Wiki & The Alchemist – Faith Is A Rock

ニューヨークのラッパーMIKE、Wikiと、ビバリーヒルズのプロデューサーThe Alchemistによるコラボ作。

MIKEのディープボイスとWikiのハイトーンボイス、そしてAlchemistのサンプルチョイスが光るミニマルなビートが絡み合う傑作。特に、粘り気のあるWikiのラップはAlchemistのドラムレスビートと相性抜群。

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8. Ken Carson – A Great Chaos

アトランタのラッパーKen Carsonの3枚目のスタジオアルバム。

Playboi Carti『Whole Lotta Red』以降のトレンドを継承したレイジビートに、Ken Carsonのマンブルラップが映える1枚。歪んだ低音が際立つアグレッシブなサウンドながら、繰り返し聴けてしまうキャッチーさも兼ね備えた良作。レイジシーンにおける最高傑作の1つであることは間違いない。

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7. Asake – Work of Art

ナイジェリア・ラゴスのシンガーAsakeの2枚目のスタジオアルバム。

アフロビーツを軸に、アマピアノ的なアプローチをふんだんに取り入れた1枚。全編を通して暴れるログドラムとAsakeの脱力感のあるヴォーカルが、不思議な中毒性を生み出す。英語とヨルバ語を使い分けたライミングも巧みで、ヒップホップ/ラップ的な影響も随所に感じ取れる。

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6. Teezo Touchdown – How Do You Sleep At Night?

テキサスのシンガーTeezo Touchdownのデビューアルバム。

インディロックやパンク、ヒップホップ、R&Bをごちゃ混ぜにしたようなアルバムゆえに統一感はないものの、Teezoの抜群のポップセンスが光る1枚。時折若き日のAndré 3000を思わせる声で、力強く耳に残るメロディを歌い上げる様には、デビュー作とは思えない貫禄さえ感じさせられる。

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5. Sampha – Lahai

UK・ロンドンのシンガーSamphaによる2枚目のスタジオアルバム。

ジャングルやトラップ(ヒップホップ)等の電子的なリズムを刻みながら、生音をふんだんに取り入れたハイブリッドなアプローチを試みる。アンビエントかつ繊細なビートの上で、Samphaの温もりのある歌声が映える、多幸感に溢れた1枚。

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4. Earl Sweatshirt & The Alchemist – VOIR DIRE

ロサンゼルスのラッパーEarl SweatshirtとビバリーヒルズのプロデューサーThe Alchemistによるコラボ作。

ほとんどサンプルのみで構成されたAlchemistのドラムレスビートの上で、Earlの気怠く淡々としたラップが絡み合う1枚。11曲27分とコンパクトながらも、ソウルフルなものから不穏なものまで、全編を通して多様なサンプルチョイスが楽しめる。主役のEarlはもちろんのこと、今作で2曲に参加したVince StaplesのラップもAlchemistのビートと相性抜群。

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3. Daniel Caesar – NEVER ENOUGH

カナダ・トロントのシンガーDaniel Caesarの3枚目のスタジオアルバム。

ミニマルで洗練されたビートの上で、Danielのとろけるような甘い歌声が際立つ説明不要の極上R&B。セクシー且つ、切なさを助長する美しいファルセットは今作でも健在。同郷トロントの注目シンガーMustafaをフィーチャーした『Tronto 2014』 や、ボーナスバージョンでRick Rossの甘々ヴァースが追加された『Valentina』など、聴きどころ満載。

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2. Larry June & The Alchemist – The Great Escape

サンフランシスコのラッパーLarry JuneとビバリーヒルズのプロデューサーThe Alchemistによるコラボ作。

ドラムの鳴りを抑えたAlchemistの渋くミニマルなビートの上で、Larry Juneがレイドバックした低音ラップを聴かせる。ジャケ写通り、サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジをドライブしながら聴きたい1枚。

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1. MIKE – Burning Desire

ニューヨークのラッパーMIKEの6枚目のスタジオアルバム。

ビートは、MIKE自身が別名義dj blackpowerとして大半をセルフプロデュースしている。ソウルやジャズのサンプルを軸としたビートの上で、MIKEの低く淡々としたラップが哀愁を生み出す。全編通してソウルフルながら、時に独特なリズムを刻んだり、歪んだドラムスが鳴り響いたりと、暖かさと荒々しさが共存したビートが至高な1枚。『U think Maybe?』では、ロンドンのサックス奏者Vennaをフィーチャーし、サンプルベースのアルバムに華を添えている。

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Honourable Mentions of 2023:

・Navy Blue – Ways of Knowing
・Jay Worthy & Roc Marciano – Nothing Bigger Than The Program
・Lil Yachty – Let’s Start Here.
・billy woods & Kenny Segal – Maps
・Mach-Hommy & Tha God Fahim – Notorious Dump Legends, Vol. 2
・Nicholas Craven & Ransom – Deleted Scenes 2
・Don Toliver – Love Sick
・Young Nudy – Gumbo
・Elmiene – El-Mean
・Bakar – Halo


プレイリスト『Album of the year 2023』: https://music.apple.com/jp/playlist/aoty-2023-xxs-magazine/pl.u-NpXmba7tmgrABjV?l=en


Written by Riku Hirai

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昨年の年間ベストアルバムはこちら↓

XXS Magazine が選ぶ
2022年ベスト・アルバム10選

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10. Vince Staples – RAMONA PARK BROKE MY HEART

カリフォルニア州ロングビーチのラッパーVince Staplesの5thアルバム。

メロウで温かみのある西海岸サウンドと、Vinceのスムース且つ程よく力の抜けたラップが光る1枚。Vinceは哀愁漂うビートの上で、自身を取り巻く環境やシステムの現状についてスマートに、半ば冷笑的にスピットする。

また、キャリアの中で様々なサウンドにチャレンジしてきたVinceだが、今作はウェストコースト・ラップへの原点回帰作といえるだろう。Mustardとの共演 (#4『MAGIC』#13『BANG THAT』) をはじめに、DJ Quikの名曲『Dollaz + Sense』のサンプリング (#3『DJ QUIK』) や、Suga Freeのネームドロップ (#10『LEMONADE (feat. Ty Dolla $ign』) など、西海岸オマージュが随所に散りばめられた1枚だ。


9. Blxst – Before You Go

カリフォルニア州ロサンゼルスのシンガー/ラッパー/プロデューサーBlxstのデビューアルバム。

哀愁漂うギターサウンドを軸に、Blxstのスムースなヴォーカル&ラップが光る1枚。
自身も一部制作に携わる、2000’sフレーバー漂うビートの上で繰り出される彼の抜群のメロディセンスには毎度唸らされる。

“現代のNate Dogg”との呼び声も高く、今や西海岸シーンを牽引する存在となったBlxst。今年はKendrick LamarやKehlani、Chris Brownらビッグネームとの共演に加え、Burna BoyやFireboy DMLらアフロビーツ勢ともタッグを組むなど、多方面で活躍を見せた。躍進を続ける彼のサウンドは今後どのように進化していくのか。2023年も目が離せない。

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8. Westside Gunn – 10

ニューヨーク州バッファローのラッパーWestside Gunnの『Hitler Wears Hermes』シリーズ最終章。

お決まりのGriseldaメンバーに加え、DJ Drama、A$AP Rocky、Doe Boy、さらにはレジェンド陣を大集結させた超豪華スペシャル丼。

自身の息子FlyGod Jr.が手掛けるトラップチューン #2『FlyGod Jr』や、Busta Rhymes、Raekwon、Ghostface Killahらニューヨークの大御所たちとマイクリレーを交わす #8『Science Class』など、新旧問わずラップファンなら聴きどころ満載の1枚だ。
最後はGriseldaのメンバーが順番にスピットする10分超えのアウトロ曲 #12『Red Death』で幕を降ろすなど、10作続いたシリーズ最終章に相応しい仕上がり。

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7. Mike Shabb – Bokleen World

カナダ・モントリオールのラッパー/プロデューサーMike Shabbの今年2枚目となるアルバム。

Westside Gunn『10』収録の #10『Switches On Everything』のビートを手掛けるなど、プロデューサーとしても定評のある彼がセルフプロデュースを務めた今作では、ソウルフルなものから不穏なものまで、ドラムレスを中心に極上のビートが堪能できる。

Mach-Hommyの影響を感じさせる華のあるフロウを軸に、アーリースウィングさせたトリプレット・フロウ #13『K.D Stats』や、オートチューンを効かせたヴォーカル #18『Ravien (Outro)』も披露する。
2023年、アンダーグラウンドシーンを席巻すること間違いなしの超優良株。

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6. Babyface Ray – MOB

ミシガン州デトロイトのラッパーBabyface Rayの2ndアルバム。

現行ミシガンサウンドからダークなバンガーチューン、メロウなトラップまで、バラエティに富みながらも統一感のあるプロダクションの上で、極限まで力を抜いたレイジーラップがグルーヴを生み出す。耳に残るオフビートなフロウに着目しがちだが、パーソナルなライフスタイルを生き生きと語るストーリーテリングや、随所で魅せる秀逸なワードプレイなど、リリシズムも一級品だ。

同じく今年リリースのアルバム『FACE』とどちらを選ぶか迷ったが、彼が文字通り今年の”顔”であることに違いはない。

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5. Boldy James & Nicholas Craven – Fair Exchange No Robbery

ミシガン州デトロイトのラッパーBoldy Jamesと、カナダ・モントリオールのプロデューサーNicholas Cravenによるタッグアルバム。

2022年最もハードワークだったのはこのラッパー、Boldy Jamesだろう。1年で計4枚もアルバムをリリースした彼だが、中でも一際目立ったのがNicholas Cravenとの本作だ。

サンプリングセンスに物を言わせたCravenのミニマルで温かみのあるビートと、Boldyの冷ややかで淡々としたラップが絶妙なケミストリーを生み出す。
Roc Marciano以降の”ドラムレス期”を代表する作品となること間違いなしの傑作だ。

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4. billy woods – Aethiopes

ニューヨークのラッパーbilly woodsとプロデューサーPreservationによるタッグアルバム。

民族音楽やフリージャズ、レゲエをサンプリングしたPreservationのアブストラクトなプロダクションと、woodsの詩的で思慮深いリリックが混じり合った、他に類を見ない前衛的な1枚。

“古代ヨーロピアンによるアフリカンの呼称”である『Aethiopes』というタイトルや、レンブラントの絵画『2人のアフリカ人』を引用したアートワークからも分かるように、本作はジンバブエにルーツを持つwoodsならではのアフリカに焦点を当てたコンセプトアルバムだ。ゆえに歴史的事象への言及や、小説、映画からの引用も多く、読み解くにはかなりの背景知識を要する本作だが、未聴の方には是非、個人的”記事オブザイヤー”である『アートとラップ、アート・ラップの再検討(Earl Sweatshirtとbilly woodsを例に)』 by 久世さんを参照しながら聴いてみていただきたい。

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3. Benny the Butcher – Tana Talk 4

ニューヨーク州バッファローのラッパーBenny the Butcherの3rdアルバム。

マスターピースとの呼び声高い前作『Tana Talk 3』の続編だけに期待値/ハードルが上がりきっていた今作だが、肉屋は期待を裏切ることはなかった。
ソウルフル、あるいはGriselda十八番のグライミーなブーンバップの上で、Bennyはこれまでの苦悩や成功までの道のりを力強く気合の入ったラップでスピットする。
#10『Guerrero』では、過去作『Tana Talk 3』と『Burden of Proof』収録の全タイトルをリリックに散りばめるなど、遊び心を交えながら巧みなラップを繰り広げる。

フロウ、ケイデンス、ライムスキーム、ワードプレイと、どこをとっても高得点を叩き出すBennyのラップスキルに圧倒される1枚。

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2. Future – NEVER LIKED YOU

ジョージア州アトランタのラッパーFutureの9thアルバム。

彼にとって約2年ぶりのソロ作となる今作では、同郷アトランタのプロデューサーATL Jacobを全面的に起用。プロダクションにおいては、初っ端いきなり初音ミクサンプリングから始まり、ダーク且つハードなトラップビートを軸に、Drakeみ溢れるムーディなR&Bトラックまで、インストだけでも楽しめる作品に仕上がっている。

そんな良質なビートの上で、Futureは多彩なフロウを披露する。惚れ惚れするようなセクシーボイスから放たれる掠れたヴォーカルは、リリックの哀愁を増強し、聴く者の心を震わせる。
彼がBest Rappers Aliveの1人であることを再認識させてくれる、2022年ベストトラップアルバム。

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1. Roc Marciano & The Alchemist – The Elephant Man’s Bones

ニューヨーク・ロングアイランドのラッパー/プロデューサーRoc Marcianoと、カリフォルニア州ビバリーヒルズのプロデューサーThe Alchemistによるタッグアルバム。

シネマティックな雰囲気を醸し出すAlchemistのビートと、Roc Marciの冷たく燻し銀なラップが、今作をアートピースへと昇華させる。

レジェンドAlchemistのジャジーでメランコリックなビートの上で、思わずクスッと笑ってしまうようなユーモアを交えながら淡々とライミングしていくRoc Marci。そんな今作を一言で表現するなら(Roc Marciのマネージャーがそう提唱するように)”Criminal Jazz”と呼ぶのが相応しいかもしれない。次作があるならば是非、役割をスイッチして、Roc MarciのビートでAlchemistにラップしてほしいものだ。

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Honourable Mentions of 2022:

・SZA – SOS
・Fly Anakin – FRANK
・JID – The Forever Story
・Giveon – Give Or Take
・Young Nudy – EA Monster
・Freddie Gibbs – $oul $old $eparately
・Rome Streetz – KISS THE RING
・Sauce Walka – Sauce Ghetto Gospel 3
・MIKE – Beware of the Monkey
・Stormzy – This Is What I Mean


プレイリスト『The 100 Best Songs of 2022』: https://music.apple.com/jp/playlist/the-100-best-songs-of-2022/pl.u-8aAVMXluoLMq970?l=en


Written by Riku Hirai

Griselda Records の新星 Stove God Cooks とは

記事の内容を動画でもご紹介しています。

皆さんは、Griseldaを筆頭に盛り上がりを見せるネオ・ブーンバップ/アンダーグラウンドヒップホップシーンをチェックしていますでしょうか。アンダーグラウンドシーンをしっかり追っていなくても、現行シーンをある程度チェックしている方なら、Westside GunnやConway the Machine、Benny the Butcherらの名前は聞いたことがあるかもしれません。

そこで今回は、Griseldaムーブメントの中でも注目度の高いラッパーの1人であるStove God Cooksについてご紹介します。

Stove God Cooksとは

Stove God Cooksは、ニューヨーク中央部に位置する商工業都市、シラキュース出身のラッパーです。今でこそ活躍するラッパーが増えたシラキュースですが、Cooksによると、当時はシーンと呼べるシーンもなく、商業的な成功を収めたラッパーは1人もいなかったそうです。

かなりのヒップホップヘッズだったという兄の影響で、Capone-N-NoreagaやMobb Deepなどを聴いて育ったというCooksは、兄が書いたリリックをさも自分が書いたものかのように学校で披露していたそうですが、次第にそのストックがなくなり、自らリリックを書くようになったそうです。

その後、Puff DaddyやMaseをはじめとするBad Boy Records所属のアーティストの楽曲を好んで聴くようになったという彼は、「単にラップが上手いラッパー」よりも「ヒットを生み出すことができるラッパー」に憧れを抱き、フックのライティングに力を入れ始めます。2007年から2009年頃に地元のスタジオを借りてレコーディングを始めたというCooksですが、当初それらをリリースすることはなく、小さなイベントでDJにプレイしてもらい、身内で盛り上がるだけに過ぎなかったそうです。

しかしその後、Cooksは自身の楽曲をTwitterにアップし始めます。すると、90年代から活動するヒップホップグループBrand NubianのメンバーLord JamarがCooksの楽曲を気に入り、彼をBusta Rhymesに紹介します。Busta Rhymesに才能を認められたCooksは、Busta率いるConglomerate Recordsと契約。その後Cooksは、ある人物との出会いによってキャリアを大きく前進させることになります。

その人物が、現在のネオ・ブーンバップムーブメントを創り出したゴッドファーザー、Roc Marcianoです。

Bustaが、Flipmode Squadのリユニオンアルバムを製作するために元メンバーであるMarciをスタジオに呼び出したことが、CooksとMarciの出会いのきっかけでした。BustaがCooksの楽曲を再生したところ、Marciがそれを気に入り、CooksとMarciは関係を築き始めました。

最初はMarciのドラムレスビートが苦手だったというCooksですが、彼が得意とするメロディックな要素を加えたスタイルでスピットしてみたところ、思いの外ビートにハマり、次第にこのスタイルが好きになっていったそうです。共にスタジオ入りすることは一度もないまま、Marciから送られてくるビートを用いてひたすら楽曲を作ったCooksは、全曲Marciプロデュースによるデビュープロジェクト『Reasonable Drought』をリリースします。

「とりあえず何かしらの作品を世に発表したかったからリリースした」と語るCooksですが、同作は彼の予想をはるかに上回る高い評価を獲得。このアルバムが、Griselda Recordsを率いるバッファローのラッパーWestside Gunnの目にも留まり、CooksはGriseldaムーブメントに接近することになります。

より多くの人にCooks & Marciの『Reasonable Drought』を聴いてほしいと考えたWestside Gunnは、自身のアルバム『Flygod Is an Awesome God 2』収録の3曲でCooksを起用。

Westはそれ以降も、自身の全てのアルバムでCooksをフィーチャーし、2021年10月頃にCooksはGriselda Recordsに正式加入します。

『Hitler Wears Hermes 8: Side B』収録の『Ostertag』では、Cooksは「次のアルバムを7枚限定で、1枚100万ドル (約1億円) で売るかも」とラップ。

I might sell my next shit for a million (For a million)

次のアルバムを100万ドルで売るかもな

Only seven copies and I’m dead for real (I’m so serious)

7枚だけだ 本気だぜ

Westside Gunn – Ostertag (feat. Stove God Cooks)

昨年11月、Cooksは実際に7枚限定、100万ドルのアルバム『If These Kitchen Walls Could Talk』を発売しました。こちらのアルバム、なんと現在も奇跡的に売れ残っているみたいなので、経済的に余裕のある方はぜひ買ってみてはいかがでしょうか。

https://stovegodstore.com/products/stove-god-cooks-if-these-kitchen-walls-could-talk

Cooksは今後、「Roc Marcianoフルプロデュースのアルバム」や「Westside Gunn監修のアルバム」のリリースを控えているそうで、もしそれらが年内にリリースされれば、2022年は彼にとって躍進の1年となるでしょう。

CooksはHOT97のインタビューにて、アンダーグラウンドシーンに留まらず、商業的な成功も目指したいと語っており、「アンダーグラウンド・クラシックを作りながら、RihannaやDrakeなどメインストリームアーティストのソングライティングをすること」を将来的な目標として掲げているそうです。

終わりに

いかがだったでしょうか。今回は、アンダーグラウンドシーンの注目株、Stove God Cooksについてご紹介しました。

Roc Marcianoとの『Reasonable Drought』をきっかけにネオブーンバップウェーブに乗り、Griselda Recordsとの契約を勝ち取った期待の新星Stove God Cooksから今後ますます目が離せなくなりそうです。

Written by Riku Hirai


Playlist “Stove God Cooks”

【Apple Music】

https://music.apple.com/jp/playlist/stove-god-cooks/pl.u-gxblq5RT50A7vEa?l=en

【Spotify】

https://open.spotify.com/playlist/2DXLbNgx83Q8Mr9vwxuijY?si=MwhRCQjqQVahVotMg7nElw

Drakeも認めたポートランドの新星ラッパーYeatとは

※記事の内容を動画でもご紹介しています。

昨年突如としてシーンに現れた、今1番ホットなラッパーと言えば誰が思い浮かぶでしょうか。その1人として挙げられるのが、DrakeやLil Yachtyらに実力を認められ、現在人気急上昇中のラッパーYeatでしょう。

今回は、彼Yeatの生い立ちやキャリアについてご紹介します。

Yeatの生い立ち

YeatことNoah Oliver Smithは2000年2月26日、メキシコ人の父とルーマニア人の母のもと、カリフォルニア州アーバインにて生を受けます。

10代半ばにオレゴン州ポートランドに移住した彼は、Lakeridge High Schoolに進学。バスケットボールやサッカーをしていたこともあったそうですが、それらに熱中することは特になく、次第に大麻やドラッグにハマっていったそうです。ドラッグに明け暮れる日々を過ごしたYeatは、自身の怠惰な生活を見つめ直し、音楽活動を開始します。

Yeatのキャリア

Lil Yeatというステージネームで活動を始めた彼は、2015年に楽曲をリリースし始めます。

「シンプルで、誰もが聞き覚えのあるような名前にしたかった」と語る彼は、Lilを取り除き、「Yeat」というステージネームに変更します。

Yeatは2018年に1st EP『Deep Blue Strips』をリリースします。

オートチューンを用いてメロディアスに歌うフロウを得意とするYeatは、T-PainやKanye West、Young Thug、Futureらから影響を受けたそうで、特に幼い頃から母親の影響で聴いていたT-Painのスタイルが、現在の彼の音楽性に多大な影響を与えているそうです。

1st EPのリリース後、ユニークなサウンドで注目を集めたYeatは、Wheezyや10Fiftyら著名プロデューサーを迎えたミックステープ『I’m So Me』を含む3枚のプロジェクトをリリースします。

2020年には『We Us』と『Hold Ön』の2枚のEPをリリースするなど、継続的なリリースを続けてきたYeatは、2021年に突如としてブレイクを果たします。

2021年にリリースしたミックステープ『4L』収録の楽曲『Sorry Bout That』がTikTokを中心にバイラルヒット。

その後、未リリース楽曲『Gët Busy』のスニペットがソーシャルメディア上で注目を集めることとなります。

大手レーベルInterscope RecordsとサインしたYeatは、待望のデビューアルバム『Up 2 Më』をリリースします。

先程ご紹介した楽曲『Gët Busy』は、DrakeがInstagramストーリーズで引用したことで更なる話題を呼び、Yeatにとって過去最大のヒットソングとなりました。

This song already was turnt, but here’s a bell

この曲は既に盛り上がっているけど、ここから更にベルが鳴るぜ

(実際に次の小節からベルが加わります)

Yeat – Gët Busy

同曲にこのようなラインがあるように、Yeatはエレクトリックなレイジサウンドに、ベルをアクセントとして付け足したビートを頻繁に用いており、自身のトレードマークとして提示しています。

今年2021年には、セカンドアルバム『2 Alivë』のリリースも控えているそうで、今後更なる活躍が見込まれるYeatから目が離せなくなりそうです。

Riku Hirai

月間おすすめアルバム【2021年3月】

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OMB Peezy – Too Deep For Tears

アラバマ州モービルのラッパーOMB Peezyのセカンドアルバム。哀愁漂うトラップビートとOMB Peezyの歌心のあるフロウが堪能できます。Blac YoungstaやJacquees、King Vonらが参加。


Lancey Foux – FIRST DEGREE

UK・ロンドンのラッパーLancey Fouxのミックステープ。Lancey Fouxらしいサイケデリックなビートチョイスと絞り出すような高音フロウが映える1枚です。Skeptaが参加。


CHIKA – ONCE UPON A TIME

アラバマ州モンゴメリーのラッパーCHIKAのEP。6曲というボリュームながらも、CHIKAの高い歌唱力とラップスキルが存分に発揮された1枚です。BJ the Chicago Kidが参加した『FAIRY TALES』での多幸感あふれるテンポチェンジがハイライト。


Joyce Wrice – Overgrown

カリフォルニア州ロサンゼルスのシンガーJoyce Wriceのデビューアルバム。90年代後半~2000年代初期のR&Bを彷彿とさせるサウンドとJoyce Wriceの美しく伸びのある歌声が魅力的な1枚です。Freddie GibbsやWestside Gunn、KAYTRANADAら豪華客演陣の参加に加え、Joyce Wriceと同じく日本にルーツを持つシンガーUMIが参加した『That’s On You (Japanese Remix)』も収録。


Benny the Butcher & Harry Fraud – The Plugs I Met 2

ニューヨーク州バッファローのラッパーBenny the ButcherとブルックリンのプロデューサーHarry Fraudによるコラボ・プロジェクト。サンプリングやジャズホーン、ストリングスなどを用いたニューヨークらしい上質なブーンバップと、Benny the Butcherのキレの良いラップが完璧な相性を見せる1枚です。Fat JoeやFrench Montana、Rick Hydeらの参加に加え、2 Chainzが参加した『Plug Talk』での佐井好子『胎児の夢』のサンプリングにも注目です。


24kGoldn – El Dorado

カリフォルニア州サンフランシスコのラッパー24kGoldnのデビューアルバム。現行のトラップサウンドをポップに昇華させた、24kGoldnの抜群のメロディセンスと力強いハスキーボイスが光る1枚です。FutureやDaBaby、Swae Leeらが参加。

Written by Riku Hirai


先月のおすすめアルバムはこちら↓

注目R&BシンガーJoyce Wriceがデビューアルバム『Overgrown』に込めた想いとは

Joyce Wrice (ジョイス・ライス) は、日本とアメリカにルーツを持つ、カリフォルニア州サンディエゴ出身の注目R&Bシンガーだ。90年代後半から2000年代初期のR&Bを彷彿とさせるサウンドと美しく伸びのある歌声で世界中から注目の視線を浴びる彼女は、starRoや向井太一ら日本のアーティストとの共演でも知られている。

今回は、本日デビューアルバム『Overgrown』をリリースした彼女の人となりを、i-D Magazineによるインタビューを抜粋しながらご紹介する。


– サンディエゴでどのように生まれ育った?

私は日本人の母とアフリカンアメリカンの父親のもと、サンディエゴの小さな町チュラビスタで生まれ育った。私の父は軍人として日本に駐留していて、そこで母と出会ったの。その後、父はサンディエゴに異動となり、母は私をサンディエゴで育てることに決めたそう。母は、私が環境や友達を変え続けなければならないことを心配していたからね。同時に彼女は、私にも日本の文化に触れてほしいと強く思っていたんだ。幸運にも、サンディエゴには良質な日本の市場とコミュニティがあったよ。

ミュージックビデオでは日本語を話す姿も。

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– 仏教を教えられていたと聞いたが、今でも信仰している?

私の母は仏教徒で、彼女は20代後半頃に東京で日蓮仏教を学んだんだ。母が私に教えてくれたことの1つは、「他の人を助けることが自分自身を助ける最良の方法である」という教えよ。なんらかのコミュニティに属せば、問題への向き合い方や目標達成へのプロセスを共有でき、自分は1人じゃないって気づくことができるんだ。自分が取り組んでいることを共有し、そしてまた仲間の行動に刺激を受けるのは素晴らしいことだよ。

1人っ子だった私は、母と時間を過ごすことが多くて、学校が休みの日は彼女と仏教徒の集会によく足を運んだの。私はそこで、仏教信仰によって自らの人生を変える母の姿を目の当たりにしたんだ。それがきっかけで私も仏教を信仰するようになったってわけ。それ以降、私は毎朝晩、真剣に読経に取り組んできたよ。私はロサンゼルス中南部のグループに所属していて、今は彼らと直接会うことはできないけど、Zoomを使って電話をするんだ。遠隔での読経でも私たちが団結できるように、朝に皆んなで同時に行うの。他の人と一緒にやるほうが簡単だからね。

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「アーティストとしての自分」を見つけるにあたって、最も決定的だったことは?

実際のところ、自分の声を見つけて曲を作る段階において、私はかなり行き詰まっていたんだ。私はセンシティブな性格で、自己不信と不安に苦しんでいたの。でも、他のアーティストの活動に目を向け、彼らがどのように音楽に向き合っているのかを知り、自らの全てを曝け出すことに決めたとき、私はその過程の美しさに気づいたんだ。私たち全員がそれぞれ独自のストーリーを持っていることを再確認できたよ。その過程で挫折せずに、自らのストーリーを伝えることが私の使命だと感じたの。私の曲を聴いた他の誰かにもその過程の美しさが伝わってほしいしね。こういう風に考えるようになってからは凄く気が楽になったし、自分がすべきことにフォーカスできるようになったよ。

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– ニューアルバムのタイトル『Overgrown』に込められた意味は?

本当は去年リリースする予定だったんだけど、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で遅れてしまったの。去年リリースしていれば収録されることはなかったであろう、強いインパクトのあるインタールードや楽曲を作ることができたし、実際この遅延は私にとって意味のあるものだったよ。 『Overgrown』という楽曲を作ったとき、一緒に仕事をしたプロデューサー兼ライターのMack Keaneに私の苦労について相談したんだ。私は当時、自分に価値を見出せず、自信を失っていたの。彼との相談中、私は彼のピアノ演奏に乗せてフリースタイルを始めたのを覚えているよ。私にとって『Overgrown』とは、「カラフルな花でいっぱいの自分の庭」、つまり「自分の感情」や「自分の雑念」を意味するんだ。当時この「自分の庭」は雑草に覆われていて、手入れが必要だったの。アルバム制作の全てのプロセスは、まさにセラピー・セッションのようなものだったよ。このアルバムは私が行った「ガーデニング」の結果と言えるかもしれないね。

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– Freddie Gibbsとのコラボレーションはどのように実現した?

私がTwitterで彼に連絡したら、彼は「明日レコーディングするからその楽曲を聴きたい」って返事をくれたんだ。彼は私の曲をかなり気に入ってくれたよ。彼は頭の中でリリックを書き、スタジオを歩き回りながらフロウを模索したのち、レコーディング・ブースに入って自身のヴァースを如何にも簡単に仕上げたんだ。彼の声はとても魅力的で、なんといってもビートへの乗り方がとてもスムーズなの。彼とのコラボは私にとって本当に刺激的だったし、私も自分の信念を曲げずにアーティストとしてのキャリアを長続きさせたいって思ったよ。音楽を長くやっていると、物事がうまくいかないことはよくあって、途中で諦めてしまう人もたくさんいる。でもFreddieは前に進み続けたんだ。彼は色んな困難に直面しながらも決して諦めることはなく、今では大成功を収めている。そういった意味で、彼とのコラボレーションは私にとってかなり刺激的なものだったよ。

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– 初期の楽曲ではフックとヴァースの両方を1人で録っていたのに対して、今では大物アーティストの客演ヴァースを沢山手に入れている。これはあなたにとって感慨深いものなのでは?

本当にその通りだよ。このアルバムはまさに夢の実現なの。実家に帰って自分の幼少期の写真を見ると思うんだけど、当時は私がこんなことを実現できるなんて夢にも思わなかったよ。私はどちらかと言うと恥ずかしがり屋で、自分を表に出すのが得意ではなかったけど、自分を表現しなければならなかった。このアルバムの制作において素晴らしかった点は、強制的なコラボレーションがなかったことなの。このアルバムに参加してくれたアーティストは皆、私自身が大ファンであり深く尊敬する人々なんだ。彼らも私のことをそう思っていてくれていると感じるよ。私たちは皆、音楽について話し合うだけの関係ではなく本当の仲間なんだ。


Written by Riku Hirai

月間おすすめアルバム【2021年2月】

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Pooh Shiesty – Shiesty Season

テネシー州メンフィス出身のラッパー Pooh Shiesty のデビュー・ミックステープ。彼は、不穏なピアノと808ベースを効かせたトラップビートを用いて、Gucci Maneの影響を感じさせる気怠いフロウを聴かせるラッパーで、過激且つ挑発的なリリックにも定評があります。2021年最注目ラッパーの1人である彼のデビュー作は一聴の価値ありです。


Devin the Dude – Soulful Distance

テキサス州ヒューストン出身のラッパーDevin The Dudeの11枚目のスタジオ・アルバム。Slim ThugやScarfaceら同郷ヒューストン出身のベテラン陣が参加した今作は、彼らしい緩いファンクを軸としながら、ブーンバップや現行トラップも多く取り入れた作品に仕上がっています。新しいサウンドを積極的に取り入れつつも自身のスタイルを貫く、彼の安定感が発揮された1枚で、タイトル通りソウルフルなラップとヴォーカルが堪能できます。


slowthai – TYRON

イギリス・ノーザンプトン出身のラッパーslowthaiの2ndアルバム。SkeptaやA$AP Rocky、Dominic Fike、James Blakeなど、国やジャンルを問わない豪華客演陣の参加が目立つ今作で、slowthaiは洗練されたビートと持ち前の独特な声を用いて自身の感情を吐き出します。社会への不満を露にした前作と通ずる部分はあるものの、自身の本名Tyronをアルバムタイトルに用いたことからも分かるように、今作では彼の内省的なアプローチが多く見られます。


Z-Ro & Mike D – 2 The Hardway

テキサス州ヒューストン出身で、共にScrewed Up ClickのメンバーであるZ-RoとMike Dによるコラボ・アルバム。H-Townサウンド全開のプロダクションと、2人のソウルフルなラップ&ヴォーカルが光る1枚です。Lil’ KekeやC-Note、Big Pokeyら現Screwed Up Clickメンバーに加え、2016年に銃撃で亡くなった旧メンバー3-2も参加。


Duke Deuce – Duke Nukem

テネシー州メンフィスのラッパーDuke Deuceのデビュー・アルバム。90年代後半から2000年代初期のThree 6 Mafiaを彷彿とさせるクランクをベースに、活気の良いラップや耳に残るアドリブ、更にはオートチューンを効かせて歌うスタイルも披露します。今作では、FoogianoやLil Keed、Mulattoなどメンフィス以外のラッパーを多く客演に起用しており、クランクのサウンドに適応してラップする彼らの新たな一面も垣間見ることができます。


Drakeo the Ruler – The Truth Hurts

カリフォルニア州ロサンゼルスのラッパーDrakeo the Rulerのミックステープ。不穏でダークなビートと、Drakeoのボソボソと呟くような低い声が圧倒的な緊張感を生み出し、聴く者を西海岸のフッドに誘います。Don Toliverとの意外な組み合わせや、先日急逝したKetchy the Greatの4曲での参加、DrakeoとDrakeの夢の共演など聴きどころ満載の1枚です。

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Written by Riku Hirai


先月のおすすめアルバムはこちら↓

月間おすすめアルバム【2021年1月】

2021年注目すべきUKのネクストスターたち

前回は、UKラップシーンを牽引する若手アーティストとして、Daveやslowthai、Lancey Fouxらについてまとめました。

UKラップシーンを牽引する若手アーティストたち

今回は、ラップシーンに留まらず、様々な音楽から影響を受けて進化を続けるUKの新世代アーティストを数名ご紹介します。

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1. Pa Salieu

ガンビア共和国にルーツを持つ、コヴェントリー出身のラッパー。J Hus系譜のアフロスウィングをベースとしながら、グライムやUKドリル、ダンスホーム、レゲエ風味のビートなども巧みに乗りこなします。UKラップ的なフロウからレゲエ調のアプローチまでこなす彼のスタイルは、同じくガンビア共和国にルーツを持つJ Husと比較されがちですが、彼はJ Husより更にアフリカルーツに回帰したストリート色の強い音楽性を提示しています。


2. Bakar

ロンドン出身のシンガー。カリフォルニアのヒップホップ・プロデューサーMadlibや、イギリスのロックバンドFoalsから影響を受けたと語るBakarは、インディーロックやパンク、ヒップホップなどをミックスしたジャンルレスな音楽性で注目を集めています。また彼は、Louis VuittonやPradaのモデルにも起用されるなど、ファッションシーンにおいても活躍しています。


3. ENNY

ナイジェリアにルーツを持つ、ロンドン出身のラッパー/シンガー。2020年に本格的に音楽活動を開始したENNYは、デビューシングル『He’s Not Into You』をリリースした後、Jorja SmithのレコードレーベルFAMMと契約。同郷ロンドン出身の注目シンガーAmia Braveと共にリリースしたメジャーデビュー・シングル『Peng Black Girls』はUKシングルチャートTOP100入りを果たしました。レイドバックしたラップやソウルフルなヴォーカル、詩的なリリックが魅力的な注目アーティストです。


4. Arlo Parks

ナイジェリア、チャド、フランスにルーツを持つ、ロンドン出身のシンガー。彼女は、ネオソウルやインディロック、ヒップホップなどをミックスしてポップスに昇華させた音楽性から、次世代のベッドルーム・ミュージックを代表するアーティストとして注目されています。2021年リリースのデビューアルバム『Collapsed in Sunbeams』はUKアルバムチャートにて最高3位を記録し、各音楽メディアからも高い評価を獲得しています。


5. Central Cee

中国と南米にルーツを持つ、ロンドン出身のラッパー。父親の影響で幼い頃からヒップホップを聴いていたという彼は、14歳の頃にYouTubeに楽曲をアップロードし始めます。キャリア当初はトラップビートを用いてメロディアスに歌うラップスタイルを武器としていた彼ですが、2020年頃からはUKドリルビートを用いてパンチラインをスピットするスタイルに移行。このスタイルチェンジが功を奏し、ジャジーなUKドリルソング『Loading』のヒットにより彼は一躍人気を獲得します。盛り上がりを見せるUKドリルシーンにおいて、一際目立つ存在になりつつある彼から目が離せません。


Written by Riku Hirai

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月間おすすめアルバム【2021年1月】

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Nyck Caution – Anywhere But Here

ニューヨーク・ブルックリン出身でPro Era所属のラッパーNyck Cautionのデビュー・アルバム。ブーンバップを軸にトラップも取り入れた同作では、Nyck Cautionのスキルフルなラップとエモーショナルなヴォーカルが堪能できます。Joey Bada$$やDenzel Curry、CJ Flyらが参加。


UnoTheActivist – Unoverse

ジョージア州アトランタ出身のラッパーUnoTheActivistの2ndアルバム。シンセサイザーを効かせた浮遊感のあるトラップビートにUnoTheActivistの気怠いマンブルラップが映える1枚です。Mar90s、MDMAが参加。


Jazmine Sullivan – Heaux Tales

ペンシルバニア州フィラデルフィアのシンガーJazmine Sullivanの4thアルバム。トラップの流れも汲んだシンプルなビートの上で、Jazmine Sullivanが愛について力強く歌い上げます。彼女の圧倒的な歌唱力はもちろんのこと、インタールードを通して視点が切り替わる構成も魅力的な1枚です。


Cosmo Pyke – A Piper For Janet

ロンドン・ペッカムのシンガーCosmo PykeのEP。クラシックギターやトランペットなどの生音を用いたジャジーなサウンドとCosmo Pykeのソウルフルなヴォーカルが魅力的な1枚で、わずか4曲という曲数ながらもジャズやソウル、ロック、レゲエなど様々なジャンルのエッセンスが堪能できます。


Chip – Snakes & Ladders

ロンドン・トッテナムのラッパーChipのミックステープ。グライムやドリルビートの上ではタイトなラップを、ダンスホールやアフロビーツの上ではメロディアスなフロウを聴かせるChipの器用さが光る1枚。Dizzee RascalやHeadie One、MoStackらが参加。


Arlo Parks – Collapsed in Sunbeams

ロンドン・ハマースミスのシンガーArlo Parksのデビュー・アルバム。ネオソウルやインディロック、ヒップホップなどの要素をミックスしてポップスに昇華させた次世代のベッドルーム・ミュージックです。彼女が自身の影響源として名前を挙げるFrank Oceanの『Ivy』のカバーも収録されています。

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Written by Riku Hirai

Lil Skies – 疾走感溢れる若き才能

本日ニューアルバム『Unbothered』をリリースしたペンシルバニア州出身のラッパー Lil Skies。昨年、Internet Money のアルバムや映画『Fast & Furious 9』のサウンドトラックへの参加で再び注目を集め、今後更なる活躍が見込まれる彼の生い立ちやキャリアに迫ります。

生い立ち

Lil Skies (リル・スカイズ) こと Kimetrius Christopher Foose は、1998年8月4日、ペンシルバニア州チェンバーズバーグにて生を受けました。彼の父親はラッパー Dark Skies として活動しており、「Lil Skies」というステージネームはこれに肖ったものだそうです。Foose 一家は、Skies が3rdグレード (小学3年生) の頃に同州のウェインズボロに引っ越しますが、その数年後、父親が職場での化学爆発事故により怪我を負い職を失ってしまいます。この出来事をきっかけに、Skies はアルバイト (McDonald’s と日本食レストラン) とドラッグディールを始めました。

キャリアの開始

ラッパーの父親の影響で3歳の頃にフリースタイルを始めたという Skies は、2012年に初のプロジェクト『Birth of Skies Vol. 1』をリリース。その翌年には父親とのコラボ・プロジェクト『Father-Son Talk』をリリースします。

2015年には『Good Grades Bad Habit』(現在削除済み)、2016年には『Good Grades Bad Habit 2』とミックステープをコンスタントにリリースし、地道ではあるものの着々とプロップスを獲得していきます。

2017-18年 – 飛躍の1年

2017年、Skies はミックステープ『Alone』やシングル数曲をリリースします。その中でも Landon Cube をフィーチャーした『Red Roses』が、 Lyrical Lemonade の Cole Bennett 監修によるミュージック・ビデオの後押しを受けバイラル・ヒット。これがレーベル関係者の目に留まり、彼は Atlantic Records と契約を結びます。

息子 Lil Skies のミュージック・ビデオが1000万回再生を突破し嬉し泣きする父 Mike Skies

2018年にはメジャーレーベルから初のミックステープ『Life of a Dark Rose』をリリース。

同ミックステープは Billboard Hot 200 にて23位デビューを果たし、最高10位を記録します。同作収録の『Nowadays』と『Red Roses』は、Billboard Hot 100 にてそれぞれ最高55位と69位を記録。メジャーデビュー・ミックステープとしては大成功と呼べる功績を残します。

Nowadays (feat. Landon Cube)

Nowadays I’m too cool for a girlfriend

最近、1人の彼女には勿体ないぐらい俺はクールだ

Nowadays I don’t know when the world spins

時間を忘れてしまうぐらい忙しいんだ

Live your life like we die when the world ends

今日が最後だと思って生きよう

So it’s alright every time we fuckin’ break a sin

だから罪を犯したって大丈夫さ

Skies と Landon Cube の抜群の相性と、軽快で疾走感のあるビート&リリックが魅力的な1曲です。

2019年 – デビュー・アルバムのリリース

2019年3月、Skies は母親の名前を冠したデビュー・アルバム『Shelby』をリリースします。

母親 Shelby Foose をフィーチャーしたショート・ドキュメンタリー

母の名前をアルバム名にすることに決めたんだ

彼女は俺のインスピレーションだから

愛しているよママ

このアルバムをあなたに捧げる

同アルバムは初週で5.4万ユニットを売り上げ、Billboard Hot 200 にて5位デビューを飾りました。

I

I don’t want the fame

名声はいらない

I don’t want to play these games

ラップ・ゲームに参加したいわけじゃない

Tired of hiding from the pain

痛みから隠れるのに疲れたんだ

Never hanging with the lames

ダサいやつらとは絡まない

Skies は同アルバムにて、自身が経験してきた鬱や仲間の死、失恋、アーティストとしての苦悩、またそれらが引き起こした大麻依存について赤裸々にラップします。耳触りの良いメロディアスなフロウと、ありのままの感情を曝け出したストレートなリリックが魅力的な1枚です。

2020-21年 – 注目のコラボとセカンド・アルバムのリリース

2020年7月、Skies は映画『Fast & Furious 9』のサウンドトラック収録曲としてシングル『Red & Yellow』をリリースします。

翌月には Internet Money のアルバム『B4 The Storm』に参加。

Internet Money – Lost Me (feat. Lil Mosey, iann dior & Lil Skies)

人気映画シリーズのサウンドトラックへの参加や注目アーティストとのコラボレーションを果たし、更に幅広い層からの人気を獲得した Skies は、本日2021年1月22日、待望のセカンド・アルバム『Unbothered』をリリースしました。

デビュー当初から少しずつスタイルを変えながら成長を見せてきた Skies ですが、ネット上では「昔のスタイルに戻ってほしい」というファンの要望も散見され、彼はこれに対して以下のように返答しています。

俺がデビュー当初から変わらず同じ人間でいることや、同じ音楽を作り続けることを望むのはやめてくれ

俺は人間で、常に成長し変化している

3年前の自分で居続けることはできない

今は全く違う人生を歩んでいるんだ

俺がこれに対して言及するのは最後だ

同じような音楽を作り続けないからってアーティストを罵る人々がいるけど、俺たちも人間なんだ

そして俺は俺が感じたことを音楽で表現している

新しいサウンドに挑戦するのは間違ったことじゃないだろ

とにかく、俺の本当のファンたちを愛しているよ

(Instagram ストーリーズより)

おわりに

今回は、本日ニューアルバム『Unbothered』をリリースしたペンシルバニア州出身のラッパー Lil Skies の生い立ちやキャリアについてまとめました。若くして才能を開花させ、常に成長し続ける彼の今後にますます目が離せなくなりそうです。

Written by Riku Hirai