Griselda Records の新星 Stove God Cooks とは

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皆さんは、Griseldaを筆頭に盛り上がりを見せるネオ・ブーンバップ/アンダーグラウンドヒップホップシーンをチェックしていますでしょうか。アンダーグラウンドシーンをしっかり追っていなくても、現行シーンをある程度チェックしている方なら、Westside GunnやConway the Machine、Benny the Butcherらの名前は聞いたことがあるかもしれません。

そこで今回は、Griseldaムーブメントの中でも注目度の高いラッパーの1人であるStove God Cooksについてご紹介します。

Stove God Cooksとは

Stove God Cooksは、ニューヨーク中央部に位置する商工業都市、シラキュース出身のラッパーです。今でこそ活躍するラッパーが増えたシラキュースですが、Cooksによると、当時はシーンと呼べるシーンもなく、商業的な成功を収めたラッパーは1人もいなかったそうです。

かなりのヒップホップヘッズだったという兄の影響で、Capone-N-NoreagaやMobb Deepなどを聴いて育ったというCooksは、兄が書いたリリックをさも自分が書いたものかのように学校で披露していたそうですが、次第にそのストックがなくなり、自らリリックを書くようになったそうです。

その後、Puff DaddyやMaseをはじめとするBad Boy Records所属のアーティストの楽曲を好んで聴くようになったという彼は、「単にラップが上手いラッパー」よりも「ヒットを生み出すことができるラッパー」に憧れを抱き、フックのライティングに力を入れ始めます。2007年から2009年頃に地元のスタジオを借りてレコーディングを始めたというCooksですが、当初それらをリリースすることはなく、小さなイベントでDJにプレイしてもらい、身内で盛り上がるだけに過ぎなかったそうです。

しかしその後、Cooksは自身の楽曲をTwitterにアップし始めます。すると、90年代から活動するヒップホップグループBrand NubianのメンバーLord JamarがCooksの楽曲を気に入り、彼をBusta Rhymesに紹介します。Busta Rhymesに才能を認められたCooksは、Busta率いるConglomerate Recordsと契約。その後Cooksは、ある人物との出会いによってキャリアを大きく前進させることになります。

その人物が、現在のネオ・ブーンバップムーブメントを創り出したゴッドファーザー、Roc Marcianoです。

Bustaが、Flipmode Squadのリユニオンアルバムを製作するために元メンバーであるMarciをスタジオに呼び出したことが、CooksとMarciの出会いのきっかけでした。BustaがCooksの楽曲を再生したところ、Marciがそれを気に入り、CooksとMarciは関係を築き始めました。

最初はMarciのドラムレスビートが苦手だったというCooksですが、彼が得意とするメロディックな要素を加えたスタイルでスピットしてみたところ、思いの外ビートにハマり、次第にこのスタイルが好きになっていったそうです。共にスタジオ入りすることは一度もないまま、Marciから送られてくるビートを用いてひたすら楽曲を作ったCooksは、全曲Marciプロデュースによるデビュープロジェクト『Reasonable Drought』をリリースします。

「とりあえず何かしらの作品を世に発表したかったからリリースした」と語るCooksですが、同作は彼の予想をはるかに上回る高い評価を獲得。このアルバムが、Griselda Recordsを率いるバッファローのラッパーWestside Gunnの目にも留まり、CooksはGriseldaムーブメントに接近することになります。

より多くの人にCooks & Marciの『Reasonable Drought』を聴いてほしいと考えたWestside Gunnは、自身のアルバム『Flygod Is an Awesome God 2』収録の3曲でCooksを起用。

Westはそれ以降も、自身の全てのアルバムでCooksをフィーチャーし、2021年10月頃にCooksはGriselda Recordsに正式加入します。

『Hitler Wears Hermes 8: Side B』収録の『Ostertag』では、Cooksは「次のアルバムを7枚限定で、1枚100万ドル (約1億円) で売るかも」とラップ。

I might sell my next shit for a million (For a million)

次のアルバムを100万ドルで売るかもな

Only seven copies and I’m dead for real (I’m so serious)

7枚だけだ 本気だぜ

Westside Gunn – Ostertag (feat. Stove God Cooks)

昨年11月、Cooksは実際に7枚限定、100万ドルのアルバム『If These Kitchen Walls Could Talk』を発売しました。こちらのアルバム、なんと現在も奇跡的に売れ残っているみたいなので、経済的に余裕のある方はぜひ買ってみてはいかがでしょうか。

https://stovegodstore.com/products/stove-god-cooks-if-these-kitchen-walls-could-talk

Cooksは今後、「Roc Marcianoフルプロデュースのアルバム」や「Westside Gunn監修のアルバム」のリリースを控えているそうで、もしそれらが年内にリリースされれば、2022年は彼にとって躍進の1年となるでしょう。

CooksはHOT97のインタビューにて、アンダーグラウンドシーンに留まらず、商業的な成功も目指したいと語っており、「アンダーグラウンド・クラシックを作りながら、RihannaやDrakeなどメインストリームアーティストのソングライティングをすること」を将来的な目標として掲げているそうです。

終わりに

いかがだったでしょうか。今回は、アンダーグラウンドシーンの注目株、Stove God Cooksについてご紹介しました。

Roc Marcianoとの『Reasonable Drought』をきっかけにネオブーンバップウェーブに乗り、Griselda Recordsとの契約を勝ち取った期待の新星Stove God Cooksから今後ますます目が離せなくなりそうです。

Written by Riku Hirai


Playlist “Stove God Cooks”

【Apple Music】

https://music.apple.com/jp/playlist/stove-god-cooks/pl.u-gxblq5RT50A7vEa?l=en

【Spotify】

https://open.spotify.com/playlist/2DXLbNgx83Q8Mr9vwxuijY?si=MwhRCQjqQVahVotMg7nElw