Brooklyn Drillってなに?

皆さんこんにちは。今回は、近頃ニューヨークのみならずアメリカ中で人気を博しつつある”Brooklyn Drill(ブルックリン・ドリル)”というジャンルについて、3人のラッパーを取り上げながらご紹介していこうと思います。記事の最後に、今回ご紹介させていただいた楽曲や、今後要注目のニューヨーク出身アーティストの楽曲を集めたプレイリストのリンクを貼っていますので、最後まで読んで頂ければ嬉しいです。それではさっそくいきましょう。

そもそもドリルミュージックって?

ドリルミュージックとは、2010年頃にイリノイ州シカゴで生まれたとされる、主に暴力や殺人などをテーマとしたヒップホップのサブジャンルのことを指します。Chief KeefやLil Durkらの台頭は記憶に新しいですが、彼らこそドリルシーンの立役者です。そんな彼らの功績もあって、ドリルミュージックは世界的に波及していきました。特にめざましかったのがイギリスへの波及、UKドリルです。衰退しつつあるシカゴのドリルシーンと比べ、イギリスでは今もなお盛り上がりを見せています。ロンドン警視庁によってUKドリルのミュージックビデオが削除されたり、若手ドリルグループ1011の活動が制限されたりといった出来事が、その盛況ぶりを表しています。

Brooklyn Drill

さてここから本題に入ります。ニューヨークといえばヒップホップ発祥の地として有名ですが、ここ数年はシーンとしての盛り上がりを見せておりません(Bobby Shmurdaや6ix9ineなど度々お騒がせ者は登場しますが…)。世界的にヒップホップが流行している中、そろそろ本場ニューヨークの若手にも頑張ってほしいなと思っていた矢先、突如としてブルックリンに新しい風が吹き込みます。それが”Brooklyn Drill(ブルックリン・ドリル)”です。このブルックリン・ドリルとは、その名の通り、ニューヨーク・ブルックリンで生まれたドリルミュージックのことで、2017年頃からじわじわと人気を集めてきました。シカゴドリルやUKドリルからの影響を強く感じさせるものの、新たな音を取り入れることを拒まず、彼ら独自のジャンルを作り出そうと日々進化を遂げています。

ここからはブルックリン・ドリルにおける重要且つ要注目なアーティストをご紹介していこうと思います。

1. Sheff G

ブルックリン・ドリルを語るにあたってまず最初に知っておくべきなのがこの男、Sheff Gです。

彼以前にもドリルスタイルを取り入れていたラッパーはいたのですが、最初にこのスタイルで注目を集めたのがSheff Gです。とやかく説明する前にまずは一曲聴いてみましょう。Sheff Gで”No Surburban”。

いかがだったでしょうか。不穏なメロディやドラムパターン、暴力的なリリックからドリルミュージックの影響を強く感じることができます。この楽曲は、後に紹介するラッパー22Gzの楽曲”Suburban”へのアンサー曲なのですが、互いはそれぞれ別のギャング組織に所属しており関係はよくありません。いわゆるビーフ状態にありギャング抗争の絶えない彼らは、彼らのいる境遇を同じく過酷な環境下にあるシカゴや南ロンドンのシーンと重ね合わせてラップしています。このことから彼らがドリルミュージックを自らのラップスタイルに取り入れた理由が分かります。

「シカゴ、UKドリルに影響を受けている」と様々なインタビューでも語っている彼は、実際UKドリルMCのTazeと曲を作ったりもしています。以前にChief KeefもSkengdoやAMといったUKドリルMCと曲を出していましたが、そのコラボよりも遥かにカッコいいので是非聴いてみてほしいです。

その後独自のスタイルを取り入れつつシングルをリリースしてきたSheff Gは、今年遂に彼にとって初となるミックステープ”The Unlucky Lucky Kid”をリリースしました。このミックステープからも一曲お聴きいただきましょう。Sheff Gで”We Getting Money”。

はい。既にお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、こちらのビート、主に70年代に活躍した日本の歌手、太田裕美さんの”赤いハイヒール”という楽曲をサンプリングしたものなんです。

シティ・ポップ(70~80年代に日本で流行したポップス)はサンプリングソースとして以前から人気がありますが、この選曲は渋いですね。

こういったビート選びから、シカゴ、UKドリルとの差別化を試みていることが見て取れます。実際Sheff GはHotNewHipHopのインタビューにて、「UKドリルビートは邪悪すぎるし、シカゴのビートは使い古されて時代遅れだ。だから俺たちは自分たちで新しいスタイルを作り出さなければならないんだ」と語っています。ミックステープ全体を通して聴いても、元来のドリルのドラムパターンを残しつつ、落ち着きのあるピアノや弦楽器を基調とした独自のスタイルを提示しています。

ちなみに、このミックステープ”The Unlucky Lucky Kid”のカバーを撮影したのは日本人のHazzさんという方で、J.ColeやPusha T、Tory Lanez、A Boogie wit da HoddieなどのMV撮影にも携わる凄腕カメラマンです。

Hazzさん(左)とSheff G(右)

HazzさんのInstagram(https://www.instagram.com/hazznyc/)より

2. 22Gz

次は、先程も名前を出しましたが、22Gzというラッパーについてです。彼はBlixky Boysというニューヨークで最も恐れられるギャング組織に所属しており、可愛らしい顔をして「Blixky(ハンドガンを意味する)」というワードを連呼するやばい奴です。実際、第二級殺人罪で逮捕されたり、Rich The Kidを挑発したり、楽曲内で多くの人気ラッパーをディスったりと、なかなかのアウトローです。

そんな彼は、Kodak BlackのレーベルSniper Gangと契約しており、ラッパーとしての実力は十分です。それでは最初に、そのKodak Blackを客演に迎えた一曲を聴いていただきましょう。22Gzで”Spin the Block (feat. Kodak Black)”。

[22Gz]
And if I miss, I’ma spin the block
撃ち損ねたらもう一度撃つ
Even if I hit, I’ma spin the block
命中してもまた撃つんだ
If I miss, I’ma spin the block
死ぬまで撃ち続けるぜ

はい、これぞドリルって感じの曲です。危険な匂いがプンプンしますが、幾多の犯罪歴を持つKodakが気に入る理由も分かります。

ここでもう一曲、彼の人間性が伝わってくる楽曲をご紹介したいと思います。22Gzで”Sniper Gang Freestyle”。

この曲中で彼は、6ix9ineやTory Lanez、G Herboなどの人気ラッパーや、Kooda BやJay Dee、Dee Savvなどの同郷ブルックリン出身の若手ラッパーを次から次へとディスっています。

さらに、こんなラインも登場します。

Killing ni**as and I rap about it like I’m Melly
人を殺してそれについてラップする、Mellyみたいだろ

Mellyとは、皆さんご存知、第一級殺人罪でお務め中のラッパー YNW Mellyのことです。22Gzは、そんな要注意人物である彼と自分を重ね合わせているみたいです。重ね合わせるのは自由ですが、同じ道は辿ってほしくないと願うばかりです。

基本的にはこういった暴力的且つ攻撃的な内容のリリックが多い彼ですが、力強い声と多彩なフロウが魅力的で、一度聴くと病みつきになる中毒性を持ちます。今年リリースされた彼のミックステープ”The Blixky Tape”も完成度が非常に高いので是非聴いてみてください。

3. Pop Smoke

続いては皆さんお待ちかね、Pop Smokeです。”Welcome to the Party”という楽曲、皆さん一度は聴いたことがあるんじゃないでしょうか。

このPop Smokeというラッパーもブルックリン出身なのですが、上記の2人のラッパーとは少しテイストが違います。まずは、わずか30分で作り上げたという彼の代表曲を聴いていただきましょう。Pop Smokeで”Welcome to the Party”。

いかがだったでしょうか。明らかにアメリカのヒップホップの音(ビート)じゃないですよね。そうなんです。この曲は、UKドリルMCのHeadie OneやRVなどにも楽曲を提供している東ロンドン出身のプロデューサー、808Meloによるプロデュースなんです。808Meloは、Sheff GやSleepy Hallowなど他のブルックリンのラッパーにも楽曲提供しているのですが、Pop Smokeは自身のほとんど全ての曲で彼のビートを使っており、完全に独自のスタイルとして定着させようとしています。

そして、このラッパーの凄さはなんといってもブレイクまでのスピードです。昨年の12月頃にラッパーとしてのキャリアをスタートさせた彼ですが、今年の4月にリリースした”Welcome to the Party”がニューヨークを中心にヒットし、それを知ったPusha Tがニューヨーク開催の「The Greatest Day Ever! festival」にてPop Smokeをステージに上げました。

この出来事が後押しとなり、”Welcome to the Party”はバイラルヒットとなりました。その後リリースされた9曲収録のミックステープ”Meet the Woo”のリリースパーティでは、同郷ニューヨーク出身のフィメールラッパーNicki Minajを客演に迎えた同曲のRemixを発表しました。

実はこのリミックス、アルバムリリースとPop Smokeの二十歳の誕生日祝いを兼ねたサプライズプレゼントで、彼自身もこのリリースパーティで初めて聴くことになりました。その時の様子をご覧ください。

Nickiのバースでブチ上がるPop Smoke。完璧なリアクションです。

その後もFrench MontanaやSkeptaらがリミックスに参加したりとその勢いは留まることを知らず、2019年夏は完全にPop Smokeが持っていってしまいました。それにしても半年強でここまでのヒット曲を生み出したのは本当にすごいです。まだまだこれからに期待ですね。

Rolling Loudへの出演キャンセル

ちなみに今回ご紹介させていただいたSheff G、22Gz、Pop Smokeの3人のラッパーは、先月開催された「Rolling Loud New York」に出演予定だったのですが、暴力事件への関与を理由に警察からキャンセルの要請があったため、急遽出演不可となりました。こういった出来事からも、ニューヨークにおいてドリルミュージックが盛り上がりを見せているのがわかります。

ニューヨーク市警からの出演取り止めの要請書

おわりに

いかがだったでしょうか。ヒップホップ誕生の地、ニューヨークで盛り上がりを見せるブルックリン・ドリルの魅力が、この記事を通じて少しでも多くの方に伝わっていれば嬉しいです。最後までお読み頂きありがとうございました。

今回ご紹介させていただいた楽曲や、今後要注目のニューヨーク出身アーティストの楽曲を集めたオリジナルプレイリストを公開しています。もしよろしければApple Musicのフォローもよろしくお願いします。

https://music.apple.com/jp/playlist/upcoming-new-york/pl.u-2aoqprzCNWXxYz0?l=en

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