シカゴ出身の注目若手ラッパー Calboy とは

今回は『Envy Me』のヒットで知られるシカゴ出身の注目若手ラッパー Calboy について、彼の生い立ちやキャリアに触れながら簡単にご紹介しようと思います。それではさっそくいってみましょう。

生い立ち

Calboy こと Calvin Woods は、シカゴ出身の20歳(1999年4月3日生まれ)。シカゴの中でも最も危険とされるサウスサイド出身で、母親と4人の兄弟と共に非常に貧しい生活を送っていたそうです。

オーバードーズと銃撃により幼馴染みの親友を2人も失った彼は、家族と共にシカゴの南に位置する Calumet City に移住します。

キャリアの開始

音楽活動を始める前は絵を描いて過ごしていたというCalvin は、2015年から Kidd Cal 名義で楽曲を公開し始めます。

『Mr.Misunderstood』

今から約5年前(当時16歳)の彼の楽曲からは、既に才能の片鱗が伺えます。

1st ミックステープ『Anxiety』

2017年、Calvin (以下 Calboy)はデビュー作となるミックステープ『Anxiety』をリリースします(147 Calboy 名義では、以前にミックステープ『The Chosen One』をリリースしています)。

Twista や Future、Chief Keef らとの楽曲制作でも知られる DJ Pharris が監修を務め、メジャーレーベルとの契約なしでリリースされたこのミックステープには、地元シカゴのスター Lil Durk が客演として参加しています。

『Anxiety(心配、不安)』というタイトル通り、Calboyは、地元で経験してきた悲劇やトラウマについて歌います。

I was 15, I see my bro Jimmy dead
おれが15の頃、仲間の Jimmy が死んだのを見たんだ
He felt so cold, I couldn’t even cry
彼は冷たくなって、おれは泣くことすら出来なかった
That’s why I sip lean, boy you ain’t even gotta ask why
だからおれはリーンを飲むんだ、理由なんて聞くな
They wanna shiv me with knives all in my back
やつらはおれのことを狙っている

Calboy – Fatality

この頃の彼はオートチューンを強めに使っており、Lil Durk の歌唱スタイルや声に近似したメロディアスなフロウを多用しています。

Rap Genius の「Can ___ Fans Actually Recognize His Voice (~のファンは、実際に~の声を聴き分けることができるか)」というシリーズに Lil Durk の回が来るならば、間違いなく Calboy の楽曲が使われるでしょう。

2nd ミックステープ『Calboy the Wild Boy』

2018年、Calvin は Paper Gang Inc. から 2nd ミックステープ『Calboy the Wild Boy』をリリースします。

このミックステープで彼は、自己アイデンティティの模索や、前作『Anxiety』の成功からくる名声についてラップしています。

またラップスキルもこの頃から磨かれつつあり、特に7曲目の『Blood Suckaz』ではファルセットやミックスボイスを使って高音で歌うスタイルが見られ、今現在(2019~2020年)の彼に通ずるものを感じます(特に1:17~のフロウは、後にリリースされる彼のヒットシングル『Envy Me』のフックと同じフロウですね。おそらくこの頃に自分のスタイルを掴んだのでしょう)。

『Envy Me』のバイラルヒット

2018年9月に Calboy がリリースしたシングル『Envy Me』が、彼のキャリアを大きく変えます。リリースされるや否や Billboard Hot 100において63位まで登りつめ、YouTube では2500万再生を記録しました。

『Envy Me』のバイラルヒットは、この曲を使った「Demons Challenge」というダンスチャレンジが Tik Tok 上で流行したことがきっかけでした。

https://youtu.be/J0Aoum3NJog

もちろん奇跡的にバズを起こしてヒットしたわけではなく、バズが起こったのにも理由があります。

I was fighting some demons, in the field, bitch, I’m deep in
おれは悪魔たちと戦っている、もう戻れないんだ
I was raised in the deep end, I know niggas be sinkin’
困難な環境で育ってきたんだ、落ちぶれていった奴らもいる

Calboy はこのような暗い内容のリリックを、悲しげにも、あるいは楽しげにも聴こえてしまうようなポップなメロディで歌い上げます。このダークさとポップさのアンバランス感が Calboy (彼に限らず現行のシカゴ産ヒップホップ)の魅力でしょう。

その後、Calboy は Kodak Black の「The Dying To Live Tour」に帯同し、ますます知名度を上げていきます。

デビューEP 『Wildboy』

2019年、Calboy は RCA と Polo Grounds Music からデビュー EP『Wildboy』をリリースします。

Moneybagg Yo、Lil Durk、Yo Gotti、Polo G、Meek Mill、Young Thug といった豪華客演陣の参加が、Calboy の注目度を物語っています。

また、Calboy のラップ&ボーカルスキルの向上も顕著に見られます。

『Ghetto America (feat. Yo Gotti & Lil Durk)』

Lil Durk と Yo Gotti が参加した1曲。高音で感傷的に歌う Calboy と Lil Durk のボーカルに、Yo Gotti のねっとりとしたラップが上手くマッチしています(やはり Lil Durk と Calboy のボーカルスタイルは激似ですが、本人(Calboy)はそう言われるのがあまり好きではないみたいなのでここでは控えておきます…笑)。

『Chariot (feat. Meek Mill, Lil Durk & Young Thug)』

Meek Mill、Lil Durk、Young Thug が参加した夢のような1曲で、Calboy も引けを取らない三連符フロウを披露します。

人気アーティストとのコラボ

Chance the Rapper『Get a Bag (feat. Calboy)』

同郷シカゴのスター Chance the Rapper のデビューアルバムに参加した Calboy は、ここぞとばかりにその才能を見せつけます。

歌フロウを中心としたスタイルは昨今の若手ラッパーにありがちですが、Calboy の魅力は三連符を主とした詰め込みフロウです。この曲では彼の詰め込みフロウを堪能することができます。

Pop Smoke『100k on a Coupe (feat. Calboy)』

先月惜しくもこの世を去った故 Pop Smoke との楽曲。スタイルは違うものの今一番脂の乗った(乗っていた)2人のコラボなだけあって、抜群の格好良さです。

ここでは Calboy のもう1つの魅力である、ファルセットを使った高音フロウを楽しむことができます。

※他にもご紹介したいのですが、長くなるのでプレイリストにまとめておきます。

2nd EP『Long Live the Kings』

そして2020年、Calboy は待望の新作『Long Live the Kings』をリリースしました。

亡くなった仲間たち(Kings)への追悼の意を込めたこの EP には、Lil Tjay、G Herbo、Lil Baby らが客演で参加しています。

『Dope Boy』

明らかに Roddy Ricch に影響を受けたであろうフロウ (Roddy Ricch『Start wit Me (feat. Gunna)』と非常によく似たメロディラインを使っています)が特徴的な1曲。同世代であれだけチャートを動かすラッパーが出てくると、嫌でも刺激を受けるでしょう。Calboy には是非とも第2の Roddy Ricch、いやそれ以上のスターになってほしいものです。

『Purpose (feat. G Herbo)』

EP からシングルカットされていた G Herbo との1曲。

一度聴いていただければ分かるように、この曲、ビートと(Calboy の)ボーカルのキーが合っていません。シンプルにオートチューンのキー設定を間違えたのか、たまたま違うキーで合わせたら「あえての外しもあり!」となったのかは分からないですが、何度も繰り返し聴くうちに、気持ち悪さが気持ち良いという妙な感覚に襲われます。狙ってやっているのであれば面白いですし、そうでなければ怪我の巧妙です。

I go in there with a concept. 
おれはコンセプトを大事にしている
That’s what makes me different than a lot of the mumble rappers
それが他のマンブルラッパーたちと違うところだ

Complex のインタビューより

Complex のインタビューでも語るように、楽曲のコンセプトが定まっており、一貫性がありブレないリリックも彼の魅力です。是非リリックを見ながら聴いてみてください。

まとめ

いかがだったでしょうか。ニューアルバムのリリースや、自身が執筆する著書の出版などを控えており、多方面で更なる飛躍が見込まれるシカゴのネクストスター Calboy。

今年の XXL フレッシュマン選出も間違いなさそうなので、今のうちに彼の楽曲を聴き込んで古参ぶりましょう。今ならギリギリ間に合います。それでは良い週末を!

XXS Magazine オリジナルプレイリスト『Calboy – A Rising Rap Star from Chicago』

https://music.apple.com/jp/playlist/calboy-a-rising-rap-star-from-chicago/pl.u-WabZpaYHdl0GmpA?l=en

Riku Hirai

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