ニューヨークの若きポップスター Lil Tjay とは

明日5月8日に待望のミックステープ『State of Emergency』のリリースを控える注目若手ラッパー Lil Tjay。今回は、今年の XXL フレッシュマン最有力候補でもある彼の生い立ちやキャリア、魅力について迫りたいと思います。最後までお読みいただければ幸いです。

生い立ちとキャリアの開始

ガーナ人の両親を持つ Lil Tjay(リル・ティージェイ)こと Tione Jayden Merritt は、ニューヨーク・サウスブロンクス出身の19歳(2001年生まれ)。

10代前半から喧嘩や強盗行為を繰り返していたという彼は、15歳の頃に強盗の罪で少年刑務所に送られます。

そしてこの出来事が、結果的に彼の人生の転機となります。

It was not fun.
楽しくなんてなかったよ
It’s not nothing that I would want to do again, 
刑務所でもう一度したいことは何もないけど
but I learned a lot from it. 
そこでたくさんのことを学んだんだ
I feel like if I wasn’t to go to jail,
もしそこに行くことがなければ
I probably wouldn’t be the person I am—I wouldn’t. 
おそらくおれはおれ自身じゃなかったと思うよ
’Cause I wouldn’t have sat down and wrote those songs 
だって、椅子について曲を書くような
and I never would’ve been able to focus on what I want to accomplish. 
おれが成し遂げたかったことに集中できるチャンスはなかっただろうから
So it’s like it was actually a good thing for me. 
だから刑務所での暮らしは、実際おれにとって良いものだった
It made me open my eyes and stuff like that.
おれの目を覚ましてくれたんだ

Rolling Stone

Tjay がこう語るように、彼は服役中にリリックを書き始め、ラッパーとしてのキャリアをスタートさせました。

自身初のバイラルヒット

2017年末に刑務所から釈放された Tjay は、彼が初めてスタジオでレコーディングした楽曲『Resume』をリリースします。

当時、Facebook 以外の SNS は利用していなかったという彼がリリースしたこの楽曲は、SoundCloud にてたった2日間で5000回再生を記録します。

そんな無名なラッパーの楽曲の再生数増加には、ある仕掛けがありました。それは「有名ラッパーの楽曲名をタイトルにし、再生数を稼ぐ」という、バイラルマーケティングの生みの親 Soulja Boy が取り入れた手法でした。

Soulja Boy が、『Crank That』を 50 Cent の『In The Club』と偽ってリリースしヒットさせたことに倣い、Tjay は、『Resume』を Uncle Murda の『Rap Up』と偽りリリースしました。これが結果的に功を奏し、『Resume』は彼自身初のバイラルヒットとなりました。

ヒットの量産

『Resume』のヒットを受け、Tjay は本格的に音楽活動に取り組むことを決意します。

続いて SoundCloud にアップした『Brothers』はリリースされるや否やたちまち再生数を伸ばし、Tjay は Columbia Records と契約を結びます。

Bodies drop all the time I don’t feel nothing

仲間が殺られたって何とも感じない

Swear to god y’all gone make me go kill something

敵は迷いなく殺してやると神に誓うぜ

Told my shooters no mercy or chill button

おれの仲間たちには慈悲も躊躇もない

I done been through so much I don’t feel nothing

色々経験しすぎたんだ、だから何も感じない

『Brothers』にて、Tjay は自身が経験してきたストリートでの生活や刑務所での経験、心の痛みなどをストレートに表現しています。

I speak about stuff I been through.

おれは経験したことを歌っているんだ

I don’t talk about stuff that’s fake.

嘘は歌わない

I speak from the heart.

心のままを歌うんだ

Every lyric got a meaning behind it.

全てのリリックにはちゃんと意味がある

XXL

インタビューにてこうも語るように、自身の経験をベースとしたリアルなリリックも彼の魅力の1つです。

ここでもう1曲、彼のキャリア初期の楽曲をご紹介したいと思います。

None of Your Love

カナダのポップシンガー Justin Bieber のヒット曲『Baby (feat. Ludacris)』のメロディラインを大胆に引用した1曲。

この曲からも分かるように、Tjay はポップシンガーのように歌うスタイルを得意としています。

I used to just watch Justin Bieber videos and be like, 

幼い頃から Justin Bieber のビデオを見ながら、

“Damn, this is going to be me.” 

「おれもこんなふうになれるはずだ」って思ってた

I never thought about how I was going to get there, 

どうやって成功するかなんて考えたこともなかったけど

but I knew it would happen.

絶対できるって信じてたんだ

Pitchfork

ヒップホップ誕生の地ブロンクスで生まれ育ち、過酷なストリートライフを送ってきた10代の若者像からは若干離れたイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、実際 Tjay は、Justin Bieber や Michael Jackson、R. Kelly、Usher など、ポップスもしくは R&B シンガーから多大な影響を受けたと公言しています。

ちなみにご紹介した楽曲『None of Your Love』で引用されている『Baby』の権利問題はクリアしていないそうですが、Tjay はこれからも懲りずに Justin Bieber の楽曲を引用していく意向とのことです。いかにもティーンらしい強気さが良いですね。

初のトップ20入り

その後デビューEP『No Comparison』をリリースしたのち、Tjay は、Columbia Records のレーベルメイトであった Polo G の楽曲『Pop Out』に参加します。

この『Pop Out』はリリースされてから約3ヶ月後に Billboard Hot 100において95位で初登場し、さらにその2ヶ月後には同チャートにて11位まで上り詰めました。

Tjay は自身にとって(Polo G にとっても)過去最大のヒットを生み出し、ますます勢いづくこととなります。

デビューアルバムのリリース

Polo G と共にヒット曲を生み出した Tjay は、満を辞してデビューアルバム『True 2 Myself』をリリースします。

キャリア初期のヒット曲から最新曲まで詰め込んだデビューアルバムには、Lil Wayne や Lil Baby、Lil Durk といった大物ラッパーに加え、同郷ニューヨークから Jay Critch や Rileyy Lanez らが参加しています。

Decline (feat. Lil Baby)

アトランタの人気ラッパー Lil Baby を客演に迎えた1曲。ゆったりとした哀愁漂うトラックの上で、Tjay は心の痛みを優しいメロディに乗せて歌います。

Woulda had a cap and gown if Smelly was still around

もし Smelly(※1)が生きていれば、(大学の学位授与式などで着用する)帽子とガウンを持っていたのに

But it’s pain in me, 

心が痛むんだ

thinking about it make me get so angry

思い出すだけで怒りが湧いてくる

(※1) 亡くなった Tjay の仲間の名前。Tjay は Smelly に音楽的なインスピレーションを受けたそうで、自身の楽曲内で度々ネームドロップします。ヒット曲『F.N』でも「I wish my n***a Smelly could’ve seen me lit now (Smelly に今のおれの成功した姿を見て欲しかった)」とラップしています。

Mixed Emotions

アルバム内でも特に際立つ綺麗なメロディラインを奏でる1曲。

I can’t wait to take a picture next to Nicki and Wayne

Nicki Minaj や Lil Wayne と一緒に写真を撮るのが待ちきれないんだ

引用したラインでは、「Nicki Minaj や Lil Wayne といったシーンのトップアーティストと肩を並べるようになった自分」と「同業者というより未だに彼らの1ファンである自分」という2つの側面を上手く表現しています。楽曲をリリースし始めてからわずか2年足らずでスターダムを駆け上がった彼ならではのリリックです。

『Leaked (Remix)』にて Lil Wayne との共演を果たす Tjay

そんな全体を通して甘い歌声で歌い上げる、ポップス或いは R&B 寄りな作風の同アルバムは、初週4.5万枚を売り上げ、Billboard Hot 200にて5位デビューを飾りました。

ニューミックステープ『State of Emergency』

そして Tjay は、明日5月8日にミックステープ『State of Emergency』をリリース予定です。

先日、Don Q や 6ix9ine、A Boogie らにディスを飛ばし、「俺がニューヨークのキングだ」などと豪語する様子も話題となったように、それほど自信のある作品に仕上がっているのではないでしょうか。

「おれこそがNYのキングだ。あの歌ってるヤツ(A Boogie)とか、髪の毛が虹色の裏切り野郎(6ix9ine)はイケてないぜ」と豪語。数日後に「おれがわるかった、昔の Tjay に戻るよ」と謝罪しています。

今回はおさらいとして、ニューミックステープのリードシングルをご紹介したいと思います。

Ice Cold

Demons in my head, 

頭の中に悪魔がいるんだ

I got too many n***as gone

おれは沢山の敵を始末してきた

Kids out here dyin’, 

ここでは多くの子供たちが亡くなり

mama hurt, cryin’ 

母親は傷つき涙を流す

I ain’t even think I’d see eighteen and I ain’t lyin’

無事18歳になれるなんて思ってもなかったよ、嘘はつかない

ストリートに蔓延る犯罪や、人々の命を脅やかす新型コロナウイルスの流行など、地元ニューヨーク(や世界の現状)を「Ice Cold (氷のように冷え切った世界)」と表現した1曲。

自身の心の痛みや、成功してからの生活について言及しながら哀愁たっぷりに歌い上げる彼の姿からは、とても10代とは思えない貫禄を感じます。

ミックステープには、同郷ニューヨーク出身のラッパーたち(故Pop Smoke や Fivio Foreign、Sheff G、Sleepy Hallow など) を客演に迎えた楽曲も収録予定です。

故Pop Smoke との楽曲『War』や『Mannequin』で見られたような、ブルックリンドリルサウンドでスピットする Tjay のラップも聴くことができそうです。

おわりに

いかがだったでしょうか。今回はニューヨーク・サウスブロンクス出身のラッパー Lil Tjay についてまとめてみました。

ストリートで経験した心の痛みや葛藤をメロディに乗せて歌い上げる次世代のポップスター Lil Tjay。そんな彼にますます目が離せない1年となりそうです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

XXS オリジナルプレイリスト : https://music.apple.com/jp/playlist/a-teen-pop-star-from-new-york/pl.u-WabZp5aUdl0GmpA?l=en

Riku Hirai