Nick Mira – Juice WRLD のサウンドを創り上げた若き天才プロデューサー

爽やかでありながらメロディアスで、哀愁さえも漂う Juice WRLD の楽曲を作っているプロデューサーは誰なのかと疑問に思ったことはないでしょうか。

今回は Juice WRLD や Trippie Redd などにビートを提供するプロデューサー Nick Mira の魅力についてまとめてみようと思います。

生い立ちとキャリア

Nick Mira はヴァージニア州出身のアメリカ人で、現在19歳(2000年生まれ)という若きプロデューサーです。彼は昔からギターやピアノを弾くことが好きで、それが現在のプロダクションにも反映されています。

彼はキャリアを始めるにあたっての自分のインスピレーションとして、Pharell Williams や Kanye West、Metro Boomin などを挙げています。そんな彼は2017年、 Taz Taylor によって設立されたビートメーカーのレーベル Internet Money Records に加入します。

ちなみに、彼らのタグである「Inernet Money B**ch」は Nick がプロデュースした Trippie Redd の『Love Me More』や Lil Tecca の『Ransom』などで聞くことができます。また前述の『Love Me More』や、テキサス出身のラッパー 10k.Caash 、度々Nick のビートを使っている Ty Fontaine など、彼がプロデュースした曲には時折彼のタグが使われています。

『Love Me More』

これは Nick の当時の彼女の声を録音した「Hahahaha, Nick, you’re stupid」というタグです。

スタイル

Nick Mira は、小さい頃から弾いていたギターやピアノを使ったメロディアスなビートが特徴的です。彼の作る曲は、メロディアスでありながら切なさや哀愁を兼ね備えていることから「Emo Rap=エモラップ」に分類されるビートが多いです。

この例として、テキサス出身のプエルトリコ人ラッパー iann dior と Trippie Redd の『gone girl』が挙げられます。

『gone girl』

この曲はエコーがかかったギターの旋律が特徴的なビート上で、iann dior の若々しいフレッシュな声とエモラップの先輩的立ち位置の Trippie Redd の声が見事にマッチした曲です。また、彼は様々なインタビューで「音を重ねすぎなくても、曲をヒットさせることができる」と語っています。

その代表例が Lyrical Lemonade の MV でも大きく話題になった Lil Tecca のメガヒット、『Ransom』です。

『Ransom』

この曲はメロディと、ベルのような音を使った「パッ、パッ、パン」というベース音を組み合わせた点が特徴的です。

ハイハットや 808 のパターンが非常に単純なため、シンプルな音でもボーカルさえマッチすればヒットを生み出せるということを Nick は証明しています。哀愁が強いビートではありませんが、おすすめの1曲です。

ビート製作の生配信と「Mira Touch」

Nick Mira はたまにライブ配信サイト「Twitch」にて、ビート作りのライブ配信をしています。このライブ配信では、事前にアーティストからもらったボーカルを使ってビートを作ったり、10分でビートを作るチャレンジをしたり、音楽好きの興味をそそる絶妙なコンテンツが多いです。

最近のライブ配信では、Trippie Redd と Lil Nas X が別々で Nick に送信したボーカルを、それぞれのキーが同じであったために一つの曲にするという凄技を見せていました。この配信は後々、YouTube にもアップされているので見逃しても視聴可能です。

また、この配信中に Nick 自身や視聴者のコメント欄で何度も見かけるフレーズがあります。それが「Mira Touch」です。「Mira Touch」とは、Nick がビートにあるメロディやドラムを足したときや、シンプルにハイレベルなビートを作っている状況を意味する言葉です。みなさんも、ぜひこの「Mira Touch」を生配信で見てみてください。(彼のインスタストーリーを見張っていればたまにやっています)

Nick MiraとJuice WRLD

ここまで Nick Mira のスタイルやスキルについて述べてきましたが、彼のキャリアは Juice WRLD なしでは語ることができません。Nick や Internet Money の仲間たちは、Juice WRLD がまだサウンドクラウドで200人ほどしかフォロワーがいない時に初めて彼にトラックを提供しました。

そのトラックを使用したのが『All Girls Are The Same』です。この楽曲ではピアノに近いサウンドのシンセサイザーを重ねて、可愛げがありつつも切なさが際立った Juice WRLD にピッタリなメロディを作り出しています。

またドラムではハイハットをあえて少し乾いたような音にすることで、ビート自体に弾みをつけています。この曲の製作工程は、Genius の「Deconstructed」というシリーズにて取り上げられています(Nick は当時17歳)。

そして同時期に Juice の代名詞とも言える曲がリリースされます。それが『Lucid Dreams』です。この曲は Nick が作り出しそうなメロディーを Sting の『Shape Of My Heart』をサンプリングすることで彼の世界観を表現した曲です。

この名曲をサンプルするアイデアは非常に Nick らしく、サンプル元の凄まじい哀愁を残しつつ、トラップビートとして進化させた「エモラップ」の頂点のようなビートと楽曲です。これはまさに「Mira Touch」が起こった瞬間です。

この二曲が収録されているアルバム『Goodbye & Good Riddance』では8曲で Nick がプロデュースに参加しています。

それ以降も2019年の Juice の死まで多くの曲をプロデュースしました。その中から最後に一曲、2019年にリリースされた『Empty』を紹介します。この曲は美しいピアノの旋律がオシャレで、弾けるようなクラップとハイハットが特徴的なビートです。

このビートに、助けを求めるような Juice のボーカルと、フックの 「I feel so god damn empty」というフレーズが相まって、その言葉通り心に穴が開いたような感覚になります。個人的には Nick Mira のビートの中でも Juice の曲の中でも、かなりエモーショナルな気持ちになる曲で、最も哀愁度が高い曲だと言えます。

このように Nick Mira と Juice の相性は抜群なのです。だからこそ、Juice WRLD がいなくなって、この二人のタッグを味わえないことは本当に残念で仕方がありません。ちなみに Juice の死後にリリースされた『Righteous』も Nick がプロデュースした名曲なのでぜひ聞いてみてください。

最後に

Nick は上記の曲以外にも今は亡き XXXTENTACION と Trippie Redd の名曲『Fuck Love』や Young Thug のアルバム『So Much Fun』のイントロ曲『Just How It Is』など様々な曲に参加しています。まだ19歳という若さにも関わらず、様々なラッパーたちと音楽を作る Nick Mira に今後も注目です。

また、記事内で紹介した Genius の「Deconstracted」では、記事内で紹介した『Ransom』と『Empty』のバージョンもありますので、是非みてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

XXS オリジナルプレイリストはこちらから↓

https://music.apple.com/jp/playlist/nick-mira/pl.u-2aoqrRYuNWXxYz0?l=en

written by Dannie Ramsden