フロリダのアップカミングラッパーたち

みなさんはフロリダといえば何を思い浮かべますか?

ディズニー・ワールド・リゾートやマイアミビーチなど、印象的な観光地が多数ありますが、近年フロリダから勢いのあるラッパーたちもたくさん出てきています。

昨年若くして亡くなってしまった XXXTENTACION を始め、殺人の疑いで現在も収監されている YNW Melly、他にも Rick Ross や Kodak Black などが有名なフロリダ出身のラッパーたちですが、今回はもっとアップカミングな(出てきたばかりの新しい)ラッパーたち4名を紹介していきます。

Jackboy 

【名前】Jackboy (Pierre Delince)

【出生】ハイチ共和国

【育ち】フロリダ州 ポンパノビーチ

【生年月日】1997年9月27日

まずは Jackboy というラッパーです。”超” アップカミングというわけではないので、ご存知の方も多いと思いますが、彼は Kodak Black のレーベルである Sniper Gang に所属するラッパーです。同じレーベルに所属し Kodak から影響を受けていることもあり、かなり Kodak に似たスタイルです(ていうか、ほぼ一緒)。

Kodak をたびたび客演に迎え、徐々に知名度を伸ばしてきた彼ですが、今年の9月にリリースしたアルバム “Lost in My Head” でいきなり覚醒しました。

If  I go broke right now (Right now)
もし俺が今すぐ貧乏になったら

Would  you still be around?
それでもそばにいてくれる?

If I go to jail right now (Right now)
もし俺が今すぐ刑務所に行ったら

Baby girl, hold me down
ベイビーガール 、俺を守ってくれよ

Or  would you leave me?
それとも離れていっちゃうの?

Baby, Don’t leave me
ベイビー、そばにいてくれよ

Jackboy – Would You Leave

こちらのリリックは先ほど紹介した “Lost in My Head” に収録されている “Would You Leave” という楽曲のものです。Sniper Gang とかいう名前からして危ないの確定のレーベルに所属しているくせに、こんな純愛ソングを作ってしまう所にギャップ萌えしますよね。

リリックからも Kodak Black から強い影響を受けていることを見てとることができます。かれらはやはり生粋のギャングスタであり、生きていくためには常にストリートで動き続ける必要があります。常にストリートに繰り出さなければいけないこと、それと同時に愛する人と幸せな時間を過ごしたいということ。彼らはいつも、その二つを両立できないことに葛藤を覚えます。

まずは Kodak Black による “Why You Always Gotta Go” からのリリックです。彼女の目線から自分を放置してストリートに繰り出していく彼氏に対しての気持ちをラップした楽曲です。

Why you always gotta go?
あなたはなんでいつも行っちゃうの?

Kodak, why you gotta leave?
コダック、あなたはなぜいなくなっちゃうの?

You always in the streets, you don’t make no time for me
あなたはいつもストリートにいて、私のための時間なんて作ってくれない

Why you always gotta leave me here on my own?
あなたはなぜいつも私を一人ぼっちにさせるの?

Why we can’t ever spend leisure time home alone?
なんで私たちは二人きりの時間を過ごせないの?

Kodak Black – Why You Always Gotta Go

そして次に Jackboy による “Bipolar” からのリリックです。こちらは彼女よりストリートを優先してしまう男性側の気持ちをラップしています。

I don’t wanna see you weep
君が泣いてる姿を見たくないよ

Sorry, but I have to leave
ごめん、でも行かなくちゃ

Can’t love you, I love these streets
君を愛することはできない、俺はストリートを愛してるから

Jackboy – Bipolar

いかがでしたか。Kodak を女性役、Jackboy を男性役と考えると、一連の会話ができあがります。ずっと一緒に曲を作っていると、無意識のうちに影響を受けてしまうのでしょう。

LPB Poody 

Jackboy 同様、Kodak Black に強い影響を受けたラッパーをもう1人紹介します。それは LPB Poody です。彼は Sniper Gang にこそ所属していませんが、うまい棒が刺さったような髪型や金色のグリルズなど見た目からしてバリバリ Kodak に影響を受けています。

【名前】LPB Poody (Robert Lee Perry)

【出生・育ち】フロリダ州 オーランド

【生年月日】1999年10月23日

ちなみに名前の “LPB” とは “Light Pole Baby” の頭文字をとったものです。”Light Pole” とは街灯のことでなのですが、「小さい頃から街灯のようにずっとストリートに立ち続けなければならなかったから」というどこか切ない命名理由だそうです。

生き抜くために盗みやドラッグの売買などの犯罪行為をを小さい頃から繰り返してきたため、彼はこれまでに少なくとも13回逮捕されています。何度も警察のお世話になった彼ですが、彼の一番のヒット曲である “No LOL’z” の一節でこのようにラップしています。

My YGs rollin’ ‘round with two Glocks
俺たち若いギャング達は両手に拳銃を持って走り回ってる

The crackas blitzed the trap, we hide the drugs inside a shoebox
警察がアジトにガサ入れに来たら、俺らはドラッグを靴箱に隠すんだ

Then hit the back
そして背後を撃つ

And jump the fence and then we outta there
そしたらフェンスを飛び越えてそこから逃げるんだ

The neighbors think we look so suspicious so now they stop and stare
俺らが怪しすぎて、近所の奴らは立ち止まって俺らのことを見てくるんだ

LPB Poody – No LOL’z
https://www.youtube.com/watch?v=H_EmmOczFVU

Yungeen Ace 

続いて紹介するのは Yungeen Ace というラッパー。彼のキャリアはかなり浅く、SoundCloud に楽曲をリリースし始めたのも2018年の3月下旬です。彼の育ってきた環境はかなり厳しく、楽曲の内容もシリアスなものが多い印象です。最近ではルイジアナのラッパー JayDaYoungan とジョイントアルバムを製作したりしていて、かなりあがってきています。

【名前】Yungeen Ace (Keyanta Tyrone Bullard)

【出生】イリノイ州 シカゴ

【育ち】フロリダ州 ジャクソンヴィル

【生年月日】1998年2月12日

彼が少し前にリリースしたアルバムである “Step Harder” は、Boosie Badazz や Lil Durk、Stunna 4 Vegas などをフィーチャーし、かなりハイクオリティに仕上げられた一枚になっています。同アルバムに収録されている楽曲 “Streets Diary” では、タイトル通りストリートで育った頃の体験を日記のようにラップしています。

All my life I done struggled
人生ずっと、もがき続けて来た

I’ve been raised by my mother
ずっと母親に育てられてきたんだ

Two bedrooms, seven brothers
二つのベッドルームに、七人の兄弟

Had to share with each other
狭いけど一緒に寝なきゃいけなかった

Lifestyle in the Frigerator its nothin’ to eat
冷蔵庫の中のように冷たい人生でだったし、その中に食べ物はなかった

We steady warming up noodles, on the floor where we sleep
俺たちはラーメンを寝床で温めてたし

Eviction notice on the door, we gotta leave in a week
立ち退きの張り紙がドアに貼られて、一週間でそこを去らなきゃならないこともあった

Yungeen Ace – Streets Diary

そんな彼ですが、2018年の3月初旬に襲撃事件にあっています。3人の男に車の中から銃撃を受けており、Yungeen Ace 自身は助かったのですが、彼の兄と友人2人は銃撃によって死亡しています。それでも希望捨てずに、同月中に楽曲をリリースし始めたのです。

Rod Wave 

最後に紹介するのは Rod Wave というラッパーです。最近の若手には珍しい、声も体もかなり太めのラッパーです。これの場合、もはやアップカミングではないかもしれませんが、年齢がまだ二十歳ということもあるので紹介させて下さい。彼の特徴は勢いのあるラップに時折織り混ぜる美しい歌声とリリックで、見た目と歌声のギャップで僕たちを虜にして逃しません。ヒョロヒョロガリガリの草食系サンクララッパーのエモラップに飽きてきた方にはかなりおすすめです!


【名前】Rod Wave (Rodarius Marcell Green)

【出生・育ち】フロリダ州 セントペーターズバーグ

【生年月日】1998年8月27日

アップカミングラッパーを紹介する記事なので当たり前といえば当たり前なのですが、彼もつい最近 Kevin Gates と Lil Durk をフィーチャーしたアルバム “Ghetto Gospel” をリリースしました。

満を辞してリリースされたニューアルバムにも Lil Durk をフィーチャーしたリミックスとして収録された “Heart on Ice” にて、Rod Wave の華麗な声色の使い分けを見ることができますので、リリックと共に少しだけ見ていきましょう。まずは楽曲を聴いてみてください。

Heart been broke so many times I don’t know what to believe
何度も失望してきたんだ もう何を信じて良いのかわからない

Mama say it’s my fault, it’s my fault, I wear my heart on my sleeve
ママは俺のせいだって言った 俺は感情を露わにするよ

Think it’s best I put my heart on ice, heart on ice ’cause I can’t breathe
もう気にしないのがベストだと考えてる だってもう息すらできないし

I’ma put my heart on ice, heart on ice, it’s gettin’ the best of me
気にしないようにするよ それが俺にとってベストなんだ

Rod Wave – Heart on Ice

お気づきになられたでしょうか。勢いよくラップするところ(青文字)と、美しいメロディーで歌うところ(オレンジ文字)で、リリックの内容に差がつけられています。この楽曲の場合だと、、、

勢いよくラップするところ:過去のネガティブな思い出

美しいメロディーで歌うところ:現在または未来のネガティブなことや決意

このように Rod Wave は、巧みに声色を使い分けることで、リリックの状況を容易に想像できるようになるだけでなく、リリックに込めた感情をも私たちは容易に読み取ることができるようになっています。このテクニックは、人々の心に無意識のうちに直接訴えかけてくるので、共感をよびやすく、それも彼が人気になった要因の一つなのではないでしょうか。

さいごに

いかがでしたでしょうか。他にもフロリダからのアップカミングラッパーは Teejay3k とか 9lokknine とか YNW Bslime とか Lil Poppa とか色々いるんですけど(プレイリストにオススメの楽曲を入れておきます。)、とりあえず4人紹介してみました。XXS Magazine の Apple Music にて今回紹介した楽曲や紹介しきれなかったフロリダのアップカミングラッパーたちの楽曲を集めたプレイリストを公開しましたので、こちらも合わせてチェックお願いします。

⬇︎ XXS オリジナルプレイリスト “Upcoming Rapper From Florida” ⬇︎

https://music.apple.com/jp/playlist/upcoming-rappers-from-florida/pl.u-2aoqpzDsNWXxYz0?l=en

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