シカゴの若手ラッパー Polo G とは

みなさんこんにちは。今回は、『Pop Out』のメガヒットでお馴染み、シカゴ出身の要注目ラッパー Polo G についての記事です。彼の生い立ちやキャリアに触れながら、簡単にご紹介していこうと思いますので、ぜひご覧ください。

生い立ち

Polo G こと、Taurus Tremani Bartlett は、シカゴ出身の21歳(1998年1月6日生まれ)。Taurus は歴史的な建造物が多く残るシカゴの北部で、両親と3人のきょうだいと共に生まれ育ちました。

シカゴの中では治安がいい方の地域ですが、いかんせん犯罪の多いシカゴの街の一つですので、彼の楽曲の中には、彼が成長とともに目撃してきたリアルなストリート事情が描かれていたりもします。

キャリア

現在、インスタグラムにて300万人のフォロワーを抱える彼ですが、2018年の初旬までは、誰も彼のことを知りませんでした。2016年から楽曲の作成は開始していましたが、初めの一年はヒット作を生み出すことが出来なかったようです。

しかし、そんな彼が2018年の後半にリリースした楽曲『Finer Things』が予想外の大ヒットを記録。その波を逃すまいと続けてリリースしたのが、『Battle Cry』と、Lil Tjayとの楽曲『Pop Out』でした。この3枚のシングルが彼の人生を180° 転換させるきっかけとなったのです。

左 : Lil Tjay と 右 : Polo G

スタイル

彼の楽曲のスタイルは、ドリルミュージックとメロディックの融合です。後々紹介しますが、彼は G Herbo などにインスパイアされたであろう激しい楽曲や、Lil Durk やなどに影響を受けたと思われるメロディックな楽曲の両方を制作します。そして、時にはその二つのジャンルをミックスすることも。初心者には取っ付きにくいジャンルである「ドリルミュージック」ですが、彼の音楽ならチャートの上位にのぼってくるのも納得です。

デビューアルバム『Die a Legend』

2019年6月に彼は Columbia Records よりデビューアルバム『Die a Legend』をリリースしました。

こちらのアルバムは、犯罪や抗争などの犠牲となってしまった、彼の幼馴染や古くからの友達、また彼らと共有した大切な思い出に名誉を与えるために制作されました。

タイトルの『Die a Legend』は「伝説になって死ぬ」という意味で、

①「亡くなった彼の仲間は、彼の中で伝説として永遠に生き続ける」

という想いと、

②「亡くなってしまった仲間の為にも、自分自身が伝説となってから死ぬ」

という決意表明的な想いが込められていると思われます。

今回はこちらのアルバムの中から、日本語の記事になっていない(またはそのような記事が少ない)楽曲について紹介していこうと思います。

『Die a Legend』のカバーアート。
彼を取り囲むように、亡くなった仲間たちの写真がデザインされている。

『Through da Storm』

こちらの楽曲では、彼の地元であるシカゴのストリートで経験した悲しい過去を思い返しながら、家族に対する謝罪の気持ち、そしてその苦境を乗り越えていく自身の姿をラップしています。

https://www.youtube.com/watch?v=cgMgoUmHqiw

Hey big brother, it’s me, Leia
ねぇお兄ちゃん、私、レイアだよ。

Remember at the old house I said you was gonna be a big star one day?
古い家で私が「いつかお兄ちゃんはビッグスターになるよ」って言った日のこと覚えてる?

I’m so proud of you
本当に誇りに思ってるよ。

Mmh, mmh, mmh, Polo G Live in the flesh
Polo G、望むままに生きるのよ

小さい女の子のセリフから始まるこちらの楽曲ですが、この声の正体は彼の実妹のレイアちゃんです。2019年の Rolling Loud では、レイアちゃん本人がステージに上がり、生声でイントロを披露しました。

Know my grandma still with me, when it get cold, I feel your spirit
おばあちゃんは今も俺のそばに居る。寒気がした時に彼女の気配を感じるんだ。

Talkin’ to my lil’ sister, phone calls through Securus
刑務所の中から、Securus の電話を通して妹と話す ※1

Walk in court in them shackles, see my mama, her eyes tearin’
手錠をされたまま法廷を歩いて、泣いている母親に会う。

Tryna work towards these blessings but the devil keep interfering
神の恵みに向かって努力するけど、悪魔がそれを邪魔するんだ

※1 Securus とは、アメリカの刑務所で採用されているオンライン面会システム

『Deep Wounds』

こちらの楽曲は、彼が幼少期にストリートで経験した悲劇の数々について、そしてその中で生まれた彼なりの決意についてラップしています。

We ain’t never duckin’ beef, bitch, we not vegan
俺たちはビーフを避けないぜ ビーガンじゃないからな

みなさんご存知の通り「Beef」という言葉には、一般的な「牛肉」という意味と、「喧嘩」というスラング的な意味があります。お肉を食べることを避けるビーガンのルールと、闘争を避けることができないギャングスタのルールを、巧みなワードプレイに乗せてラップしています。

I miss Mike Durb, I won’t forget the things you used to say ※2
恋しいよ、Mike Durb。あなたが言っていたことは忘れない。

My friends got killed on the same block where we used to play
よく遊んでいた場所で、おれの仲間たちは殺されたんだ。

I know that death come unexpected, you can’t choose a day
死はいつ訪れるか分からないし、その日を選ぶことはできない。

I swear I pop so many pills, shit got me losin’ weight
薬をたくさん飲んで、どんどん痩せていっちまってる。

※2 Mike Durb は彼の叔父の名前。本曲を制作していた頃に交通事故で亡くなっている。

ここでは、大切な仲間や家族を失った経験について言及しています。Genius のインタビューにて「みんな、自分の家族に限ってはすぐに死なないと信じてる。でも実際に次に死ぬ人間は、予想もしていなかった身近な存在なんだよ。」とコメントしています。彼の場合もこのような悲劇を経験するまでは、身近な人の死は、そうすぐには訪れないと考えていたのでしょう。

歌詞にもある通り、大切な人物を失うなどという堪え難い悲しみから、危険なドラッグや犯罪に手を染めてしまう事例も少なくはないことがわかります。

Polo G による他の楽曲

『Heartless (feat. Mustard)』

デビューアルバム『Die a Legend』をリリースし、一気に有名となった彼ですが、すでに自作に向けても精力的に活動しているようです。こちらの楽曲は、アルバム以降にリリースした一作目のシングルなのですが、なんとプロダクションに Mustard が参加しています。

こちらの楽曲では、タイトル『Heartless』 の通り、ギャングの抗争や彼を取り囲む人間の悲しい振る舞いの中で、自分自身が『冷酷』になっていくことをラップしています。しかし彼の場合、ただ「冷酷」になるのではなく、そうなることで自分自身のすべきことに焦点を当てられるようにもなった、とポジティブなリリックも見られます。

My cousin got indicted dealing cocaine
俺のいとこはコカインの取引をして訴えられた

She an Instagram addict, she want mo’ fame
彼女はインスタに夢中で、もっと有名になりたがってるし

I used to starve, now I’m blowing up like propane
俺はかつて飢えていたけど、今はプロパンガスのように人気が爆発してる

Told my inner-self, “I promise you I won’t change”
自分の中の自分に「俺は絶対に変わらないと約束する」って誓った

上2行では周りの人々の行動に嫌気が差し『冷酷』になる様子、下2行ではそれでも自分自身にフォーカスを置くことの大切さをラップしている。

Genius の歌詞解説動画にて彼は「自分に正直であることは、俺にとって一番大切なことだと信じてる。もし、自分に正直であれないなら、その人生はとてももったいないよ。」と語っています。

インスタグラムで Clout (権力や富) を追い求めるユーザーたちが蔓延していることなどに苦言を呈し、彼なりの人生論を落ち着いてラップしており、かなり痺れるところがあります。(しかもこれを Mustard のビートの上で。)

まとめ

いかがでしたでしょうか。最近のラッパーたちは本当に十人十色で、100人いれば100通りのスタイルがあるって感じになってきてますが、Polo G はその中でも「男の中の男」って感じがします。

人生において大切なことを見失うことなく、鋭い感性で自分の想いを訴え続ける。これぞ HipHop のあるべき姿という感じで、ある意味お手本のような完璧なラッパーだと思います。そろそろ次作の存在を匂わせても良い頃なので、その時を楽しみに待つことにしましょう。

whoiskosuke

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