Playboi Carti『Whole Lotta Red』リリースまでの軌跡

これまで幾度となくリリースが延期されてきた Playboi Carti のニューアルバム『Whole Lotta Red』。今回は、その存在が明かされてから2年以上の月日を経て本日遂にリリースされた同アルバムの歴史について振り返ります。

2018年: ニューアルバムの告知

2018年8月、Playboi Carti (以下 Carti) はニューアルバム『Whole Lotta Red』の存在を明かします。

俺の次のアルバム (タイトル) は『Whole Lotta Red』だ

この『Whole Lotta Red』とは、Carti が所属するストリート・ギャング Bloods のチームカラーと、咳止めシロップ (通称: リーン) の色を指しています。

2019年: 未発表曲のハイプとリリース詐欺

2019年3月、Carti は GQ 誌にて、Louis Vuitton のアーティスティック・ディレクターとして知られる Virgil Abloh を同アルバムのクリエイティブ・ディレクターに任命したことを発表します。

この発表と同時期に、Young Nudy、Playboi Carti、Pi’erre Bourne による未発表曲『Pissy Pamper (Kid Cudi)』が、Young Nudy の友人の Instagramライブにてプレビューされ、ファンの間で大きな話題となります。

Pi’erre Bourne がプロデュースを手掛ける同曲では、山根麻衣『たそがれ』がサンプリングされています

Young Nudy と Pi’erre Bourne のアルバム『Sli’merre』に収録予定だった同曲は、Instagramライブでのプレビュー後ハッカーによって直ちにリークされ、更には Carti も自身のライブ (Rolling Loud) で披露するなど、瞬く間に人気を獲得します。

その結果、未リリースにも関わらず非公式のリーク音源が Spotify の US Viral 50チャートにて1位を獲得しました。

6月には The Fader 誌にて、Trippie Redd や Gunna、Pi’erre Bourne、Don Cannon、Maaly Raw、Richie Souf、Roark Bailey らが同アルバムに参加していることを発表。

そして7月には、ウィスコンシン州ミルウォーキーで行われたライブにて、Carti は本格的にアルバムのリリースを告知します。

60日以内にニューアルバムをリリースしようとしている

嘘はつかないよ

(中略)

ノーフィーチャー (客演無し) だ

しかし結局、2019年内にアルバムがリリースされることはなく、客演参加を除いて自身の楽曲を1曲もリリースしない1年となりました。

2020年: 『Whole Lotta Red』のリリース

2020年1月、Carti は Culture Kings でのインタビューにて、2020年にアルバムをリリースすることを発表します。

準備は出来ている

俺は皆んな以上に準備万端だよ

俺がラップできることを世間に分からせてやるんだ

やばいラインが揃ってる

それが『Whole Lotta Red』だ

同年4月、Carti はシングル『@ MEH』をリリース。同曲は Billboard Hot 100にて最高35位を記録するものの、各方面から酷評を受け、最終的にアルバムには未収録となりました。

『@ MEH』のリリースから約1ヶ月後、Drake との楽曲『Pain 1993』をリリース (Drake『Dark Lane Demo Tapes』収録)。同曲が Billboard Hot 100にて7位デビューを飾り、Carti は自身初のTOP10入りを果たします。

そして11月、Carti はアルバムが完成したことを Instagram にて発表します。

12月にはヒップホップ・パーソナリティの DJ Akademiks が、『Whole Lotta Red』はクリスマス (12月25日) にリリースされると公言します。

https://twitter.com/akademiks/status/1337223450927239168?s=21

Carti のファン達にこの情報を届けるために、俺は文字通り魂を売ったよ

今夜 Carti のアルバムはリリースされないけれど、クリスマスにリリースされる予定だ

そして、Kanye West と一緒に Givenchy のデザイナーである Matthew Williams がエグゼクティブプロデューサーを務めているらしい 独占情報だ

DJ Akademiks は Twitch のライブ配信にてこの情報を先行公開し、その配信時の音声が『Whole Lotta Red』収録の『Control』のイントロにそのまま使用されました

12月21日、Carti は DJ Akademiks の発言通り、クリスマスにアルバムをリリースすることを正式発表します。

https://twitter.com/playboicarti/status/1341250702169935872?s=21
https://twitter.com/playboicarti/status/1341249071030267905?s=21
『Whole Lotta Red』のカバーアートは、70年代後半に出版されていたパンクロック雑誌『Slash Magazine』の表紙をオマージュしたもの

そして本日12月25日、Playboi Carti は遂にニューアルバム『Whole Lotta Red』をリリースしました。

世界中のヒップホップ・ファンが待望していた同アルバムには、Kanye West や Kid Cudi、Future ら大物ゲストが参加し、プロダクションには F1lthy や Wheezy、Pi’erre Bourne、Richie Souf、Roark Bailey、Maaly Raw、Starboy、Art Dealer、Outtatown らがクレジットされています。24曲1時間超えというボリューミーな今作には、比較的最近レコーディングされたと思われる楽曲に加え、過去にリーク済みの楽曲も数曲収録されました。

リリース前に噂されていた Travis Scott や Post Malone、Lil Uzi Vert らとの楽曲や、前述した『Pissy Pamper (Kid Cudi)』に Kid Cudi 本人が参加したアップデートバージョン等は未収録だったため、今後それらを収録したデラックス盤がリリースされる可能性は高いでしょう。

https://twitter.com/playboicarti/status/1341487626344308736?s=20

おわりに

今回は、Playboi Carti のニューアルバム『Whole Lotta Red』のリリースを記念して、2年以上に及ぶアルバムリリースまでのプロセスを振り返ってみました。

「60日以内にリリースする」「嘘はつかない」などと発言しながらアルバムリリースを延期し、2018年から本日までファンを焦らし続けた Playboi Carti。今年の年末年始は、そんな彼の待望の新作『Whole Lotta Red』の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

Written by Riku Hirai