2018年突如として頭角を現し、XXL Freshman Class 選出や、BET Hiphop Awards「Best Mixtape」の受賞など、現行ヒップホップシーンの顔となったラッパー Megan Thee Stallion。デビューアルバム『Good News』のリリースに合わせて、彼女の生い立ちやキャリアについて振り返ってみましょう。
生い立ち
Megan Thee Stallion(メーガン・ザ・スタリオン)こと Megan Pete は、Geto Boys や UGK、チョップド&スクリュードを生み出した DJ Screw らを輩出したヒップホップゆかりの地、テキサス州ヒューストンで生まれ育ちました。
彼女の母親もラッパー「Holly-Wood」として活動していたため、Megan は幼い頃からよくスタジオに同行していたそうです。
そんな母親の影響を受け、Megan は14歳でラップを始めました。その才能はラッパーであった母もすぐに認めるほどであり、彼女は Instagram にフリースタイルラップを投稿することで瞬く間にファンベースを確立させていきました。
この頃彼女は、自身の身長と美しさが「Stallion (種馬)」に似ているという理由から、Megan Thee Stallion というステージネームを付けたそうです。
その後彼女は医療経営を学ぶためテキサス・サザン大学に進学し、現在も在学中です。
人気ラッパーとして活躍する傍ら学業も怠らない姿勢に、彼女の真面目さと努力家な一面が垣間見れます。
キャリア開始から現在まで
そんな彼女は、2016年にファーストシングル『Like a Stallion』をリリースします。
同年2016年にはミックステープ『Rich Ratchet』、翌年には EP『Make It Hot』をリリース。後者のリード曲『Last Week in H TX』はYoutubeで400万回再生を記録します。
また、同年2017年にはXXXTentacionの『Look At Me』をサンプリングした『Stalli Freestyle』を公開し話題になりました。
そして2018年6月、元メジャーリーガーの Carl Crawford が所有するインディーレーベル 1501 Certified Entertainment から EP『Tina Snow』をリリースします。
本作収録の『Big Ole Freak』は、彼女にとって初となる Billboard Hot 100 ランクインを果たします。
その後、彼女は大手メジャーレーベル 300 Entertainment と女性ラッパー初となる契約を果たし、ミックステープ『Fever』をリリースします。
DaBaby と Juicy J が参加した本作は US Billboard 200 にて初登場10位を記録し、さらには BET Hiphop Awards にて「Best Mixtape」を受賞するなど、好成績を残しました。
そんな『Fever』の成功もあり、彼女は2019年の XXL Freshman Class に選出されます。
このサイファーにて彼女のラップスキルにますます注目が集まり、ここから約1ヶ月後にリリースされた Chance the Rapper のデビューアルバム『The Big Day』にも参加します。
そして、その後リリースされる彼女のニューシングル『Hot Girl Summer (feat. Nicki Minaj & Ty Dolla $ign)』がSNS上でミームを生み、バイラルヒットします。
これらのミームの流行もあり、『Hot Girl Summer』は Billboard Hot 100 にて11位まで登りつめ、MTV Video Music Awards にて「Best Power Anthem」を受賞します。
自身最大のヒットを生んだ彼女は、その翌月に JAY-Z 率いる Roc Nation とマネジメント契約を結びます。
Teyana Taylor 手がけるホラーシリーズ『Hottieween』の制作&出演や、メンフィスの人気ラッパー Moneybagg Yo との交際(現在既に破局済み)など、多方面において話題を欠かすことなく一気にスターダムを駆け上がった彼女は、2020年3月に新作 EP『Suga』をリリースしました。
前述した 1501 Certified Entertainment との確執が原因でニューアルバムのリリースが遅れていた中、突如リリースが決まったこの EP には、Megan のレーベルに対する不満も現れています。
Savage
シンプルなビートと、Pimp C を思わせるスキルフルなラップが特徴的な1曲。反復され耳に残るフックのおかげもあってか Tik Tok においてこの曲を使ったダンスチャレンジが流行し、バイラルヒットしました。
N***as say I taste like sugar, but ain’t s**t sweet
奴らは私のこと砂糖みたいな味って言うけど、私は甘い女じゃない
アウトロのこのフレーズが物語るように、彼女自身がどれだけ「Savage」かを主張する攻撃的な内容の楽曲です。セクシーでセンシティブなリリックが彼女の持ち味なので、是非リリックを追いながら聴いてみてください。
B.I.T.C.H.
続いてご紹介するのは、EP のリードシングル『B.I.C.T.H.』。2PAC の名曲『Ratha Be Ya N***a』を大胆にサンプリングした1曲です。
I’d rather be your B-I-T-C-H (I’d rather keep it real with ya)
私はあなたの「Bitch」でいたい(あなたに正直でありたい)
‘Cause that’s what you gon’ call me when I’m trippin’ anywayだって私がハイになってるとき、あなたがそう呼ぶから
You know you can’t control me, baby, you need a real one in your lifeあなたは私をコントロールできない あなたの人生にはリアルなビッチが必要なんだ
Them bitches ain’t gon’ give it to you rightあんなビッチ共ではダメだ
2PAC のライン「I’d rather be ya N-***-A」をそのまま引用したフック。まさに『Ratha Be Ya N***a』を女性目線で書き直したような1曲で、彼女のヒップホップ愛と乙女心を同時に楽しむことができる作品です。
Crying in the Car
The Neptunes(Pharrell Williams & Chad Hugo)プロデュースによる声ネタが印象的なトラックと、オートチューンを効かせた Megan の甘いヴォーカルが印象的な楽曲。
Please don’t give up on me, Lord, Lord
神様、どうか私を見捨てないでください
Promise to keep goin’ hard, hard頑張り続けることを誓うから
All of them nights that I cried in the car車の中で泣いた夜もあったけど
All them tears turned into ice on my armsその涙が、私の腕のジュエリーに変わったの
真面目で努力家な彼女の一面が見られるリリックも最高です。
この EP『Suga』は9曲というボリュームながらも、地元 H-Town 愛溢れる楽曲から大ネタ使いのトラック、売れ線ソングまで、ヒップホップファンにはたまらない傑作に仕上がっています。
おわりに
今回は、本日デビューアルバム『Good News』をリリースした Megan Thee Stallion の生い立ちやキャリア、魅力についてまとめてみました。
もはや「フィメールラッパー」という言葉で一括りにするのはナンセンスと言えるほど、スキルフルなラップやインパクトのあるリリックを届ける魅力的なラッパー Megan Thee Stallion。そんな彼女から今後もますます目が離せなくなりそうです。
Written by Riku Hirai