ちなみに彼の楽曲に度々登場する「It’s Big 092MLBOA」というフレーズですが、これは彼が生まれたブロックにて形成されているギャングを表しています。彼の地元であるカナージーは「Floss」または「Flossy」という別名を持っており、それに絡めてこのようにラップしています。
When you come to flossy, better have your gun お前がカナージーに来るなら、銃は持っておいた方が身のためだぜ
『GATTI』
Pop Smoke は、昨年末にリリースされた Travis Scott 率いる Cactus Jack Records によるプロジェクト『JACKBOYS』に収録されている『GATTI』に参加しました。ここでも UK の AXL Beats と 808melo をプロデューサーとして起用しています。タイトルの『GATTI』とは高級スポーツカーの Bugatti (ブガッティ) の略で、MVでも青いブガッティを乗り回しています。
Look, you cannot say Pop and forget the Smoke お前は「Smoke」と言わずに「Pop」と言えない
I’m from the Floss where n****s tote 俺は、ギャングたちが銃を持ち歩いているカナージー出身だ
They couldn’t be Crips, so they turned Folks (Bah) あいつらは Crips になれなかったから、Folk Nation に加入した
Drivin’ through the ‘Ville, droppin’ the Cho (Brr) Brownsville を走り抜け、Cho の連中を始末する
ブルックリンには大きく分けて、Woo と Cho という2つの派閥が存在します。Woo と Cho はもともと仲は悪くなかったのですが、2010年を境にスニッチがきっかけとなって対立を始めました。Pop Smoke はアルバムタイトルを見ていただければわかる通り Woo に所属しており、Cho のメンバーと仲良くすることはありません。
このリリックにおける「あいつら」とは、Tay627 と Chris Elite のこと。彼らは Pop Smoke が所属する Woo と敵対関係にあり、Pop Smoke のヒット作『Welcome to the Party』をリメイクした楽曲『Welcome to the Garvey』 をリリースしました。
『Meet The Woo 2』
お待たせしました。本日リリースされた最新作『Meet The Woo 2』についてです。13曲で35分の構成となっており、前作に比べて一曲あたりの再生時間がかなり短くなっています。しかし、先行でリリースされていた楽曲は『Christopher Walking』と Lil Tjay をフィーチャーした『War』、そして前作にも収録されていた『Dior』の三曲のみで、「アルバム出たけど、もうほとんど聞き飽きてるよ」状態は回避できています。
Quavo や A Boogie wit da Hoodie などドリルでない US ラッパーも参加しており、こちらでも UK Drill ビートとUSアーティストのコラボレーションを楽しむ事ができます。同じくブルックリンのドリルシーンからは、最近 Rich The Kid や Tory Lanez と共演していた Fivio Foreign が参加しており、最先端のブルックリンドリルも堪能する事ができる作品となっています。
ちなみに、先行曲だと思われていた Calboy との楽曲『100K on the Coupe』は残念ながら収録されていませんでした。どちらかというと Calboy が Pop Smoke をフィーチャーしたような構成の楽曲となっていたので、アルバム全体の雰囲気も考慮して外されたのかもしれません。
Calboy や A Boogie、 Lil Tjay にしてもそうですが、Pop Smoke がドスの効いた低い声であるため、フィーチャーするアーティストは高めの歌声を持っていたり、メロディアスなフロウを得意とするラッパーを選び取っているような印象を持ちました。確かに、同じようなスタイルの2人が一曲を作り出すより、真逆のスタイルの2人が一曲を制作した方が、コントラストが生まれますし、意外な化学変化も起こりやすいのかもしれません。
たったの一、二年でブルックリンドリルのビックウェーブを作り出し、伝説的存在となった Pop Smoke は、惜しくも2020年の2月19日にこの世を去りました。LAに借りていた別荘に滞在しているところを、強盗に襲われて銃殺されてしまったようです。早すぎる彼の死に、たくさんのファンやラッパーたちが追悼の意を表するともに、彼の功績を賞賛しました。ご冥福をお祈りいたします。
彼の死後、50 Cent が「俺が 彼のために Pop Smoke のアルバムを完成させる」と声明を発表しており、悔やまれながらもこの世を去ってしまった彼の、遺作であるデビューアルバムが今週末にリリースされます。彼の所属していた Victor Victor Records がインスタグラムにてアートワークとリリース日時を発表しました。
※宇宙飛行士のようにっていうのは精霊のようになった彼が世界を俯瞰していることのたとえでしょう。ちなみに Area code ってのは日本語で言う市外局番という意味で、電話で場所の特定に使われるやつですね。神戸だったら078…みたいな。でも意味わかんないですよね。 実は area code ってめちゃくちゃ激しく腰動かしてパコパコ…みたいな意味があったりするんです…それと、一番一般的に使われる area code の意味は、女の子の評価なんですね。例えば918…みたいな一つめの9はその女の子の顔を0-9で評価して…2つ目の数字は0か1で、1なら抱きたい、0は抱きたくないを意味して…3つ目の数字は身体を0-9で評価するんです。いや918ってどんなええ女やねん、霧島レオナか!どうぞ Porn hubへ…(カニエウエスト風)
Tragedy You turned a good thing to a tragedy Being held down by gravity Baby, hoping you can see the map
Lil Durk はシカゴ、Offset や Young Nudy はアトランタと、地域の垣根を超えたキャスティングなので、いろんなジャンルのラップが一枚のアルバムに集約されています。本当に聴いていて飽きないし、何よりも展開が予測できないので楽しいです。アルバムから少しだけご紹介いたしますので、まずはこちらをお聴きください。
I feel like Durkio, why? ‘Cause I signed to the streets Lil Durk になった気分だ。なぜかって?ストリートと契約したからだよ
I can’t reply to no beef, I’m sendin’ lil’ nigga slang iron for me 喧嘩なんかに応えるはずがない。自己防衛のために武装した仲間を送り込むぞ
Stunna 4 Vegas – Durkio (feat. Lil Durk)
このラインは Lil Durk を客演に迎えたことを最大限に活かした良リリックですね。一行目は「Signed To The Streets」シリーズ (通称STTS) という Lil Durk によるシリーズアルバムの名称と、ストリートと契約を交わす (つまりギャングスタとして生きていく) ことをかけています。普通にラップしても秀逸なラインですが、Lil Durk 本人が客演として参加している楽曲でこれをラップすることによって、説得力が増し増しになっています。
客演は DaBaby に Lil Baby、Blac Youngsta、Offset の4人、通しの時間は30分きっかりとアルバム全体をミニマルに押さえ込んでいる印象を持ちました。
売れる前はゴリゴリだったのに、ある程度売れてしまうと番人ウケを狙ってかG臭が薄くなるラッパーって結構いるんですよね。G好きな私にとって、それはとても悲しいことなんです。ですが、Stunna の場合はそんな私をひとまず安心させてくれました。こちらは、先行シングルとしてリリースされていた Offset との楽曲「Up The Smoke」の一節です。
They wipe his nose if I say so 俺がそうしろって言ったら、仲間たちはあいつを殺すぜ
It’s a green light when I say go 俺が行けっていう時、信号が青に光ってるようにな
Stunna 4 Vegas – Up The Smoke (feat. Offset)
「Wipe someone’s nose」というスラングは、我らが Young Thug によって生み出されたギャングスタ・スラングの一つで、「対立するギャングの構成員を殺す」という意味があります。鼻水を拭いてあげる訳じゃありません。このラインで Stunna は彼の仲間が、彼に対して持っている忠誠心を、信号のたとえと絡めて強調しているんです。ギャングへの忠誠心を、ギャングスラングでラップしてくれたので、彼から漂うG臭がまだかなり強い事がわかり安心しました。
今週ニュープロジェクト『Diary of a Lost Child』をリリースしたジョージア州サバンナ出身のラッパー Quando Rondo。人気映画「Fast & Furious (ワイルドスピード)」の最新作のサウンドトラックにも参加するなど、活躍の場を広げ始めている彼の生い立ちやキャリア、魅力に迫ります。
Quando Rondo とは
Quando Rondo こと Tyquian Terrel Bowman はジョージア州サバンナ出身の20歳。Quando Rondo というステージネームは、幼少期のあだ名「Ty-Quando」と、彼の敬愛するバスケットボールプレイヤー「Rajon Rondo」からとったものだそうです。
Rajon Rondo(2020年現在ロサンゼルス・レイカーズ所属)
彼は10代前半頃から友人たちの死と直面するなど過酷な生活を送ってきました。Young Thug や Rich Homie Quan、Chief keef らの楽曲を聴いて育ったという彼の音楽の特徴は、ストレートなリリックと聞き心地の良いメロディアスなフロウです。歌うことから始めたという彼は、「ラップと歌の違いを明確にする必要はない」と語っており、R&Bとも解釈できる彼のスタイルは幅広い層に受け入れられています。今までヒップホップやラップというジャンルに抵抗があったという方にもオススメのラッパーの1人です。哀愁漂うビートに乗る彼の歌声には、一度聴くと病みつきになる中毒性があります。
Quando の壮絶な人生を振り返るという内容の一曲。BPM50前後のゆったりとしたトラックに彼の歌心のあるフロウが映えます。アトランタの人気ラッパー Lil Baby の参加もあり、この曲で彼は一気に知名度を上げます。
YoungBoy Never Broke Again との出会い
Quando のブレイクを語るにおいて、YoungBoy Never Broke Again (以下 NBA YoungBoy) との出会いは欠かせません。
NBA YoungBoy (左) とQuando Rondo (右)
今や NBA YoungBoy のレーベル Never Broke Again にも所属している Quando ですが、二人の関係性は、NBA YoungBoy が Instagrem を通じて Quando に連絡をとったことから始まったそうです。「俺の才能を最初に見出したのは彼なんだ」と Quando が語るように、彼の NBA YoungBoy への信頼が厚いことが分かります。ちなみに、ラッパーとしてのキャリアでは NBA YoungBoy が先輩ですが、年齢は Quando が1歳年上です。
XXL のインタビューでも語るように、彼の1番お気に入りのジュエリーは NBA YoungBoy から貰ったチェーンだそうです。
今回の主役である Quando Rondo は、この曲で自身のロックスターのような生活をフレックスしています。
ミックステープのリリース
2018年、彼は二つのミックステープをリリースします。
『Life B4 Fame』
Lil Baby や Lil Durk、OMB Peezy らが参加した同テープは MyMixtapez にて、わすが二日間で100万回再生を記録。この『Life B4 Fame』というタイトルは、2015年に NBA YoungBoy がリリースした1stミックステープ『Life Before Fame』にあやかって付けられたものでしょう。ここでも NBA YoungBoy へのリスペクトが感じられます。
『Life After Fame』
Youngboy Never Broke Again や Rich Homie Quan、Boosie Badazz らが参加した2ndミックステープ。同作から1曲ご紹介させていただきます。
ちなみにこの曲のフックで使われている彼のフロウは、Rich Homie Quan の楽曲『The Author』からの引用で、「ネクストRich Homie Quan」との呼び声も高い彼ならではのリファレンスです。
2018年12月には、カリフォルニア州ベイエリアのラップグループ SOB X RBE のツアーにオープニングアクトとして参加し、見る見るうちにファンベースを獲得していきました。
そして2019年、彼は満を持して3作目のミックステープをリリースします。
『From the Neighborhood to the Stage』
NoCap や Shy Glizzy、Blocboy JB、Polo G らが参加した3rdミックステープ。同作からも一曲ご紹介させていただきます。
『Gun Powder』
NBA YoungBoy やDaBaby、Rod Wave らへの楽曲提供でも知られる Tahj Money によるプロデュースのこのトラックは、なんと8ヶ月もの間 Quando のメールボックスに眠っていたものだったそうです。
同曲は、タイトルからも察しがつくように攻撃的なリリックが特徴的な一曲です。
I don’t know shit about no murder, gotta keep my mouth closed 俺は殺しについて何も知らない、口をつぐむぜ Just got a brand new Desert Eagle with a cutter that fold 新しいデザートイーグル(自動拳銃)と、アサルトライフル Shower in bleach, rip up the car, make sure you burn all the clothes (痕跡が残らないように)漂白剤で車を洗い、服を全部燃やす My youngin’ down to shoot to kill just for a line of some coke 俺の連れはコカインを楽しむためだけに人を撃ち殺す Sendin’ texts to all the opps like yeah we want all the smoke 早くお前らを殺して一服したいだけ、と敵にメールする We up by six, they down by two, they need the go fix the score 少人数だが、お前らをやっちまうぜ Pop out wit’ poles, アサルトライフルの銃声を響かせる told ’em I won’t spare no kids or no hoes ガキでも女でも容赦しねえ Foot on the pedal, heavy metal, send some shots through yo’ clothes 引き金を引いて服の上からぶち抜いてやる
ここまでの3作のミックステープのタイトル [『Life B4 Fame (名声を得る前の人生)』→『Life After Fame (名声を得てからの人生)』→『From the Neighborhood to the Stage (地元からステージへ)」]』からも、彼が2018年から2019年にかけて一気にブレイクを果たしたことが伺えます。
デビューアルバムのリリース
2020年1月、Quando は待望のデビューアルバム『QPac』をリリースしました。
このファン待望のデビューアルバムには、彼自身の内面的な成長が大きく反映されています。
昨年第一子が誕生し、父親となったQuandoは、『Letter To My Daughter』にて娘への愛を歌います。
I done dedicate my whole heart to you, girl
俺の心を君に捧げるよ You’re the only one know how I feel
俺の気持ちをわかってくれるのは君だけなんだ Run it up to just buy the whole world
全てを手に入れよう I don’t care if it cost a hunnid mill’
それがいくらしたって気にしないさ Want you to know you the only one
君は唯一の存在だってことを分かって欲しいんだ Made me change the way that I live
俺の生き方を変えてくれたのは君だから As a child, promise you’ll have fun
君が立派になるまで、楽しませ続けると誓うよ Ain’t gotta worry ’bout a dollar bill
金のことだって心配いらないさ
Letter To My Daughter
娘を抱くQuando
このような愛に溢れたメッセージがアルバムの随所に見られ、父親として一皮向けた彼の成長が見受けられます。7曲目『Marvelous』に参加している Polo G のヴァースから言葉を借りると、「That gang sh*t a joke, n***a, all you got is family(ギャングシットなんてジョークさ、あんたが手に入れたのは家族なんだ)」の一言に尽きます。愛する妻と娘に恵まれ、生き方を考え直した Quando Rondo の今後に注目です。
さて、2019年も様々な傑作がリリースされましたが、私が特に気に入った作品の一つに、西海岸のラッパー・03 Greedoのアルバム「Still Summers in the Project」があります。Gファンクなどの伝統的な西海岸サウンドを踏まえつつ、現行の音にアップデートされた同作を手がけたのは、同郷のプロデューサー・Mustardです。TygaやYGなどのプロデュースで頭角を現し、2010年代の西海岸シーンを牽引した名プロデューサーの一人です。今回は、そんなMustardのキャリアを振り返りつつ、2020年代の展望についても考えて生きたいと思います。
ジャーキンはハイフィと比べるとBPMが遅めで、代表曲にはNew Boyz「You’re Jerk」(2009年)や、Audio Pushの「Teach Me How To Jerk」(2009年)などが挙げられます。個人的なおすすめはCold Flamez「Miss Me Kiss Me」(2009年)。ジャーキンはダラスで同時期に盛り上がっていたダンスのムーブメント「ドギー」の振付を取り入れたりしながら、Snoop Doggらベテランも反応してメインストリームにも進行していきました。
ジャーキンの流行は、西海岸の様々なアーティストを巻き込んでいきました。その中の一人に、Ty & Koryというデュオで活動していたTy Dolla $ignがいます。Sa-Ra CreativeやBlack Milkらの作品への参加など、どちらかというとそれまでアンダーグラウンド寄りの活動を行っていたTy Dolla $ignでしたが、ジャーキンの流れを汲んでヒット曲を生み出します。YG、TeeCeeと共に発表した「Toot It And Boot It」(2009年)です。それまでのカラーを踏まえたネタ感強めの質感とジャーキン以降の重低音の組み合わせが話題を呼び、YGと共にジャーキンのシーンで一躍注目を集めます。
そして、このTy Dolla $ignからビートメイクを習ったとされるのが、本稿の主役であるMustardです。MustardはSway’s Universeのインタビューで、「YGのためにビートメイクを始めた」と話しています。プロデューサーとしての初仕事は、恐らく2010年のYGのミックステープ「The Real 4 Fingaz」収録の「Glowin」です。
ここでのMustardの作風はメロウで落ち着いたスウィートなものでしたが、Mustardの心の師匠・Lil Jonもまたこういった作風を得意としていました。代表的なものでは、2004年のLil Jon & The East Side Boyzの名曲「Lovers and Friends」が挙げられます。試行錯誤を繰り返していたMustardは、自身のヒーローの別サイドに到着したのです。
クランク復権の流れ
Ella Maiのブレイク後となる2019年、Mustardは作品数こそ少ないものの多彩な活躍を見せてくれました。YGの「Go Loko」ではLAでヒット中のAmbjaay「Uno」を意識したようなラテン風味に挑戦し、新鋭・Roddy RicchにもR&B風の「High Fashion」を提供。前述した03 Greedoのアルバムではウェッサイ色を強調した作風を聴かせてくれました。また、日本のラップグループ、BAD HOPにもバンギンかつバウンシーな「Poppin」を提供しています。
シンプルなシンセがループされるビートは、ラチェット系の路線ではありますがあまりGファンク風味は感じません。どちらかというとクランクに近い音色のシンセを使っており、アウトロではMustard自らマイクを握り、Lil Jon & The East Side Boyzを思わせる掛け声を披露。さらにMVではMigosがLil Jonっぽいサングラスを着用しています。Lil Jonへのオマージュが満ちた同曲を、Ella Maiブレイク後の初作品の1stシングルに持ってきたことは、自身のルーツへのより強い回帰を感じさせます。
2019年は、ベイのSaweetieが「My Type」でPetey Pabloのクラシック「Freak-A-Leek」をサンプリングし、Quality Control Music所属のメンフィスの新人・Duke Deuceがその名も「Crunk Ain’t Dead」なる楽曲を発表するなど、クランク関連の話題がぽつぽつと見られた年でした。
今回はそんな私たち3人が選んだ、それぞれの「Album of The Year」についての記事です。正直、それぞれのアルバムにそれぞれの良さがあり、ベストアルバム一枚を選ぶことは難しいので、かなり個人的で主観的な記事になっております。その点ご了承ください。それでは早速、一枚目からいってみましょう。
1. Skepta – Ignorance Is Bliss
今年もたくさん音楽を聴きました。Apple Replay で今年のまとめを分析すると、610個のプロジェクト(おそらくこの数字には EP やシングルも含まれています)をチェックした僕ですが、今回はその中でも最も印象に残った Skepta によるアルバム ”Ignorance Is Bliss”について書いてみようと思います。
タイトルの “Ignorance Is Bliss” は日本のことわざに直すと「知らぬが仏」。このテーマはサーモグラフィーによって撮影されたアルバムのカバーにて巧みに表現された上で、楽曲の中でも如実に感じ取ることができます。
イントロとしての役割も果たす一曲目の楽曲 “Bullet from a Gun” は、当アルバムのテーマを巧みに反映したものでもあります。試しにカバーアートと照らし合わせてリリックを見ていきましょう。
Like a bullet from a gun, it burns まるで拳銃から撃ち出された銃弾のように、それは燃えるんだ When you realise she was never your girl 彼女がお前の女じゃないと気づいた時にね It was just your turn ただ、お前は遊ばれていただけだったんだ
Tuesday, 23rd of January, 2018 2018年1月23日火曜日、 I’m here with David 私はデイヴとここにいる。 This is our first session これが我々の最初のセッションだ。 We’re just gonna talk about your background 君のバックグラウンドの話から始めるとしよう。 Where you’re from, any issues you’ve been dealing with 君がどこから来たのか、どんな問題に対処してきたのか。 So, where should we start? さあ、どこから始めようか。
I guess it’s important that you have someone you can trust 信頼できる人を見つけるのは大事なことだ Especially in the position you’re in, and um… 過酷な状況にいる君にとっては特にさ I think it’s a really good trait that you’re able to find positives ポジティブなことを見つけられるのは素晴らしいことだと思うよ Despite some of the challenges, for want of a better word, that you face 様々な困難に直面しているにも関わらずね
昨年若くして亡くなってしまった XXXTENTACION を始め、殺人の疑いで現在も収監されている YNW Melly、他にも Rick Ross や Kodak Black などが有名なフロリダ出身のラッパーたちですが、今回はもっとアップカミングな(出てきたばかりの新しい)ラッパーたち4名を紹介していきます。
Jackboy
【名前】Jackboy (Pierre Delince)
【出生】ハイチ共和国
【育ち】フロリダ州 ポンパノビーチ
【生年月日】1997年9月27日
まずは Jackboy というラッパーです。”超” アップカミングというわけではないので、ご存知の方も多いと思いますが、彼は Kodak Black のレーベルである Sniper Gang に所属するラッパーです。同じレーベルに所属し Kodak から影響を受けていることもあり、かなり Kodak に似たスタイルです(ていうか、ほぼ一緒)。
Kodak をたびたび客演に迎え、徐々に知名度を伸ばしてきた彼ですが、今年の9月にリリースしたアルバム “Lost in My Head” でいきなり覚醒しました。
If I go broke right now (Right now) もし俺が今すぐ貧乏になったら
Would you still be around? それでもそばにいてくれる?
If I go to jail right now (Right now) もし俺が今すぐ刑務所に行ったら
Baby girl, hold me down ベイビーガール 、俺を守ってくれよ
Or would you leave me? それとも離れていっちゃうの?
Baby, Don’t leave me ベイビー、そばにいてくれよ
Jackboy – Would You Leave
こちらのリリックは先ほど紹介した “Lost in My Head” に収録されている “Would You Leave” という楽曲のものです。Sniper Gang とかいう名前からして危ないの確定のレーベルに所属しているくせに、こんな純愛ソングを作ってしまう所にギャップ萌えしますよね。
リリックからも Kodak Black から強い影響を受けていることを見てとることができます。かれらはやはり生粋のギャングスタであり、生きていくためには常にストリートで動き続ける必要があります。常にストリートに繰り出さなければいけないこと、それと同時に愛する人と幸せな時間を過ごしたいということ。彼らはいつも、その二つを両立できないことに葛藤を覚えます。
まずは Kodak Black による “Why You Always Gotta Go” からのリリックです。彼女の目線から自分を放置してストリートに繰り出していく彼氏に対しての気持ちをラップした楽曲です。
Why you always gotta go? あなたはなんでいつも行っちゃうの?
Kodak, why you gotta leave? コダック、あなたはなぜいなくなっちゃうの?
You always in the streets, you don’t make no time for me あなたはいつもストリートにいて、私のための時間なんて作ってくれない
Why you always gotta leave me here on my own? あなたはなぜいつも私を一人ぼっちにさせるの?
Why we can’t ever spend leisure time home alone? なんで私たちは二人きりの時間を過ごせないの?
最後に紹介するのは Rod Wave というラッパーです。最近の若手には珍しい、声も体もかなり太めのラッパーです。これの場合、もはやアップカミングではないかもしれませんが、年齢がまだ二十歳ということもあるので紹介させて下さい。彼の特徴は勢いのあるラップに時折織り混ぜる美しい歌声とリリックで、見た目と歌声のギャップで僕たちを虜にして逃しません。ヒョロヒョロガリガリの草食系サンクララッパーのエモラップに飽きてきた方にはかなりおすすめです!
【名前】Rod Wave (Rodarius Marcell Green)
【出生・育ち】フロリダ州 セントペーターズバーグ
【生年月日】1998年8月27日
アップカミングラッパーを紹介する記事なので当たり前といえば当たり前なのですが、彼もつい最近 Kevin Gates と Lil Durk をフィーチャーしたアルバム “Ghetto Gospel” をリリースしました。
満を辞してリリースされたニューアルバムにも Lil Durk をフィーチャーしたリミックスとして収録された “Heart on Ice” にて、Rod Wave の華麗な声色の使い分けを見ることができますので、リリックと共に少しだけ見ていきましょう。まずは楽曲を聴いてみてください。
Heart been broke so many timesI don’t know what to believe 何度も失望してきたんだもう何を信じて良いのかわからない
Mama say it’s my fault, it’s my fault,I wear my heart on my sleeve ママは俺のせいだって言った俺は感情を露わにするよ
Think it’s best I put my heart on ice, heart on ice ’cause I can’t breathe もう気にしないのがベストだと考えてる だってもう息すらできないし
I’ma put my heart on ice, heart on ice, it’s gettin’ the best of me 気にしないようにするよ それが俺にとってベストなんだ
このように Rod Wave は、巧みに声色を使い分けることで、リリックの状況を容易に想像できるようになるだけでなく、リリックに込めた感情をも私たちは容易に読み取ることができるようになっています。このテクニックは、人々の心に無意識のうちに直接訴えかけてくるので、共感をよびやすく、それも彼が人気になった要因の一つなのではないでしょうか。
さいごに
いかがでしたでしょうか。他にもフロリダからのアップカミングラッパーは Teejay3k とか 9lokknine とか YNW Bslime とか Lil Poppa とか色々いるんですけど(プレイリストにオススメの楽曲を入れておきます。)、とりあえず4人紹介してみました。XXS Magazine の Apple Music にて今回紹介した楽曲や紹介しきれなかったフロリダのアップカミングラッパーたちの楽曲を集めたプレイリストを公開しましたので、こちらも合わせてチェックお願いします。
⬇︎ XXS オリジナルプレイリスト “Upcoming Rapper From Florida” ⬇︎
そんな、今やグライムシーンのみならずイギリスの音楽シーンを牽引する彼は、本日(2019年12月13日)、待望のセカンドアルバム「Heavy Is the Head」をリリースしました。来年3月下旬には同アルバムを引っさげた来日公演の開催も予定されており、日本でも話題沸騰中の彼について簡単にご紹介させていただきたいと思います。
They say I’m a Youtube n***a おれのことをYouTube野郎だって奴らは言うんだ That’s cool, I’m fine with that 別にいいぜ、気にしないさ But when you see me in the flesh could you give me a shout, でも、もちろん直接会っても言えるんだろうな pull me up and remind me that? おれを呼び寄せて、また言ってくれるよな? Could you please just repeat that again for me? 頼むから直接同じことを言ってみろよ
Look, I don’t even smoke no more but somehow I stay high おれはもう吸わないけど、ハイで居続けるんだ Quit my job, mum bugged out, made my choice, 仕事を辞め、母には見放され、自分の道を選んだ this is my life これがおれの生き方だ And I swear down I can’t do this alone, これはおれ1人ではできないんだ may the dear lord be my guide 親愛なる主が導いてくれるのさ We’ve done some things, おれ達はいろんなことをやったし、 wouldn’t even know where to begin 何から始めるべきなのかも分からなかった but the dear lord knows we tried, so it’s alright でも親愛なる主は分かってくれるんだ、だから大丈夫さ
You’re getting way too big for your boots おまえは自惚れすぎだ You’re never too big for the boot おまえは絶対に成功できない I’ve got the big size 12s on my feet おれは12(29cm)のブーツを履く Your face ain’t big for my boot おまえはおれに及ばない kick up the yout 若者を奮い立たせる Man know that I kick up the yout おれが若者を奮い立たせてるって知ってるだろ Dem boy dere tried twist up the truth やつらは事実を捻じ曲げる How dare you twist up the truth? どうしてそんなことができるんだ
too big for one’s boots : 「自惚れる」というイディオムと、Stormzyの靴(ブーツ)のサイズの大きさには誰も敵わないという意味をかけており、さらには靴から連想される”Kick”という単語を使って話を展開しています。
[Stormzy & MNEK] Lord, I’ve been broken 神様、おれは落ちぶれていたんだ Although I’m not worthy 何の価値もないおれでも You fixed me, now あなたは立ち直らせてくれた I’m blinded by your grace, あなたの恵みに圧倒される you came and saved me おれを救いにきてくれたんだ
そして本日、彼のセカンドアルバム「Heavy Is The Head」が遂にリリースされました。2年越しのリリースということで世界中が待望していたこのアルバムには、Ed Sheeran、Burna Boy、Headie One、Tiana Major9、Yebba、H.E.R.、Aitchら豪華客演陣が参加しており、プロダクションにはFred Gibson、Fraser T Smith、T-Minusらがクレジットされています。
僕自身まだしっかり聴き込めていないので、少しだけご紹介したいと思います。
Crown
I done a scholarship for the kids, 子供達のための奨学金を用意したけど they said it’s racist やつらは人種差別だって言うんだ That’s not anti-white, it’s pro-black アンチ白人ってわけじゃない、”プロブラック”なんだ
Ed SheeranとBurna Boyをフィーチャーしたアフロビートチューン。StormzyとEd Sheeranといえば、今年リリースされたEdのコラボレーションアルバム「No.6 Collaborations Project」収録の「Take Me Back to London」でも共演し、「曲のイメージが変わってしまうという理由で、当曲に参加予定だったJay-Zの参加を断った」という興味深いエピソードも話題となりました。