Kid Cudi とエクスペリメンタル・ヒップホップについて

こんにちは。皆さん長い長い、あまりに長い
quarantine にお疲れのことだとは思いますが、今日はそんな気怠さを吹っ飛ばすような記事を書いていきたいと思います。

タイトル通り、今回はエレクトロ的なヒップホップ、いわゆるエクスペリメンタル・ヒップホップについて書いていきます。

皆さん、エレクトロっぽいヒップホップアーティストと言われると誰が頭に思い浮かぶでしょうか?

やはり、JPEGMAFIA でしょうか。それとも古参な方は Death Grips などを思い浮かべるのでしょうか?

まず最初に、この記事はこの両者で比べると、 JPEGMAFIA のようなタイプのアーティストをピックアップしていきます。

両者の違いは単純に現代の「謂わゆるヒップホップ」により近いかどうかです。

謂わゆると言われても少し難しいかもしれませんので簡単に説明すると、「聞いてみて単純に今っぽいか、つまり、トラップ的雰囲気を有するアーティスト」となります。

そして、JPEGMAFIA のようなタイプのアーティストはトラップ的雰囲気を持っているだけあって、ある種の特徴があります。

それはハイハットです。なので今回はハイハットを中心に巡っていきたいと思います。

さあ、ヒップホップからエレクトロへの緩やかな旅に出かけましょう。

Kid Cudi

若い世代の人にとっては、Playboi Carti と Young Nudy による未公開曲『Kid Cudi (Pissy Pumper) 』によって彼を思い起こすかもしれません。

(Rolling Loud Bay Area 2019 でのライブの様子)

この人こそ、未公開でありながらハックされ、Spotify の US viral 50 chart にて一位を記録したあの名曲のタイトルの人物なのです。

そして、まさしくこの人は、今回の記事でとりあげるエクスペリメンタル・ヒップホップ(特に近年の)というジャンルの地位を押し上げた人でもあるのです。

この後に出てくる JPEGMAFIA・NNAMDÏ に通じるある種の特徴はこの人から始まったものともいえます(この人も元を辿れば、カニエ・ウエストからの圧倒的影響を受けているわけですが、このジャンルを形作り、押し上げた張本人として、Kid Cudi を捉えることにします)。

そして昨日、2年ぶりとなるシングル『Leader of the Delinquents』をリリースしたばかりの彼なのですが、まずは軽く紹介をします。

Kid Cudi こと Scott Ramon Seguro Mescudi はカニエウエストとの共作で知られるラッパー・インストメーカーです。

彼は2003年頃から活動していますが、5年間は大して陽の目を浴びることはありませんでした。

転機が起きたのは2008年。その理由は一年後にリリースされるアルバム『Man On the Moon: The End of Day』の先行シングルとなる『Day ‘n’ Nite』をリリースしたことです。

この曲は時代的にはまだトラップ黎明期に出された曲だと言えますが、フックの場面では今のヒップホップを形作る特徴的なハイハットの面影を感じることができます。

しかし、彼のハイハットの特徴は、突発的であることです。彼は一般的とされる、「継続的なハイハット」を好まず、断絶のイメージを保ったまま、トラックにハイハットを落としこんでいきます。

つまり、彼の曲はトラップとは似ていながら、非なるもの、いわば「醜いアヒルの子」的な立ち位置のハイハットを使っているのです。(全然醜くはありませんが、要するに同じ要素から生まれながらも、別なものへと派生していったということです)

そうして、Pi’erre Bourne 的な浮遊感のあるトラックとも言い換えることができるこの曲はバイラルヒットとなります。

そしてカニエ・ウエストの目にとまり、見事に GOOD MUSIC との契約にまでこぎつけ、彼はスター街道を登って行きます。

では、彼の最初のアルバム、『Man On the Moon: The End of Day』の曲から、2曲ほど紹介いたします。

『Man On the Moon: The End of Day』

『In My Dreams』

一曲目で早速、これがヒップホップなのか?といってしまいそうになるほどです。

そこにハイハットの姿はなく、ただゆったりとした彼の電子的想世界が姿を表します。

『Soundtrack 2 My Life』

先ほどとはうって変わった、アップテンポなトラックの上でも彼はバースを軽快にスピットしてしまいます。

この曲では、かなりKanye West の影響が色濃いことを感じることができると思います。特に初期のカニエにおいて顕著であった、ゆったりとしたラップ・歯切れと押韻の際の強弱などが見てとれます。

ここまで聞けば、Kid Cudi の特殊さにはみなさん気づけたことだろうと思います。

エレクトロとヒップホップのバランスで言えば、ループの単純さなどの点で、まだヒップホップ寄りだと捉えられる彼の楽曲ですが、このアルバム、及び彼の存在はその後の現代的エクスペリメンタル・ヒップホップに圧倒的な影響を及ぼすこととなります。

JPEGMAFIA

続いて、ルイジアナ出身の29歳でPeggyの愛称で知られるJPEGMAFIAについてです。

14歳から音楽を作り続けていた彼は、実は超インテリな人物で、インスト音楽を作り続ける傍ら、ジャーナリズムの研究で大学院まで卒業しているのです。

そんな彼は、一度空軍に所属し、退役した経験から『Veteran』(日本語で退役軍人の意味)をリリースし、世間から圧倒的な評価を得ました。

このアルバムの先行シングルでもある2017年にリリースされた『Baby, I’m Bleeding』のヒットにより、彼は、Kid Cudi が作り出した風潮を破壊し、再生させた蚊の如く、ヒップホップを混沌としたエレクトロの世界へと誘ってしまいます。

「エアエアエア」というワードが一曲の中を密に駆け巡り、その上でラップをかますという何とも言い難い凄みが詰まった一曲ですね。

それでは、彼の原点ともいえるアルバム『Black Ben Carson』から何曲かを引用し、彼がこのジャンルにおいて何を変えてしまったのかを解説していきましょう。

『Black Ben Carson』

『You Think You Know』

美しいトラックではじまり、美しいトラックで終わるので、中抜きしてしえばただの美しい曲で終わるであろうこの曲。

しかし、序盤で転調が起こり、暗澹とした重いトラックが突然姿を表します。

そしてこの曲はトラップ的と言われる特徴的なハイハットを使っているように感じます。が、その音は完全に他の環境音(犬の叫び声を鈍く暗くしたような音など)にかき消され、居場所を失っているようにさえ感じます。

このようなハイハットの断絶的特徴はタイトル曲『Black Ben Carson』など、その他の曲でも多々見られます。彼の音楽はトラップと似ていながらも非なる場所に位置しているのです。

『Black Ben Carson』

ここで、「JPEGMAFIAはKid Cudi の影響など受けていない」と主張する方々に対する根拠として、一曲お聞かせいたします。

彼はいよいよKid Cudi を堂々と曲名に使ってしまうのです。

『This That Shit Kid Cudi Coulda Been』

そして、Peanut Butter Thug を客演に呼んだ『Plastic』においては、もはや風船が割れたような効果音がハイハットの代わりを担います。

やはり、トラップ的なBPM に属しながらも そこからはかけ離れた Anti Trap 的なビート(ハイハット)が彼の特徴となっており、彼の台頭によって、エクスペリメンタル・ヒップホップはカオスで、よりエクスペリメンタルな方向へと向かって行きます。

そして現在、その特徴的なハイハット・およびトラックは NNAMDÏ の出現により、最終的な境地へとたどりつくこととなるのです…

NNAMDÏ

Nnamdi Ogbonnaya こと NNAMDÏは Sen Morimoto との共演でも知られるエクスペリメンタル・ヒップホップを原点とするアーティストです。

彼はJPEGMAFIA によって押し進められたエクスペリメンタル性をさらに深淵へと押し進めてしまいます。

シカゴを拠点とする30歳の彼は周囲、つまりは「対面する世界」そのものを音に変えてしまうのです。

その一例として、彼の最新アルバム『BRAT』から、一曲をご紹介したいと思います。

『BRAT』

『Salut』

これは『BPAT』の最後の曲『Salut』です。リヴァーブの効いていない一音から始まり、まるでおろしたての革靴で乾いた地面を丁寧にたたくように歩いているかのような音を基調として一曲は継続していきます。

ここまでは環境音を取り入れたごく一般的な曲に過ぎないと思うかもしれません。

しかし、転換点はその後の30秒頃、通常なら特徴的なハイハットあたりが入ってくるであろうところなのです。

ある物=者がハイハットの代わりをかって出るのです。鳥です。正確には鳥の囀りです。

彼はついに鳥の囀りをハイハットにし、まるで穏やかな日曜日を思わせるトラックと共に、いよいよ彼のヒップホップは「世界そのものを表象してしまう」のです。

また、一曲目の『Flowers to My Demons』(悪魔に花束を)から『Gimme Gimme』(早く、それを)へのあまりに自然すぎる曲の連なりには驚きを隠せません。

彼は、エクスペリメンタル・ヒップホップでは困難とされてきた、継続的な音の移り変わりを可能にしてしまうのです。

世界そのものを音に変えてしまえる彼ならば、すべての音は連関しあうものであるのかもしれません。

最後にハイハットの変遷の最たる例として5曲目の『Wasted』(ちなみに、このPVには Sen Morimotoがディレクターとして関わっており、とても素敵な世界観を醸し出しています…)を聞いてもらってこの記事は終わりにしたいと思います。

最先端のエクスペリメンタル・ヒップホップにおいて、のべつハイハットはトラックの中で最も裏側に位置する、振動のような弱すぎる地鳴り音となって現れます。

『Wasted』

Kensho Sakamoto

デトロイトの暴れん坊 42 Dugg って?

皆さんこんにちは。最近では Sada Baby や Teejayx6 など、デトロイトから勢いのある若手が増えてきている印象ですが、今回はここ数ヶ月で爆発的に人気を博し始めている、デトロイトの暴れん坊 42 Dugg についての記事です。

2020年の3月に3枚目のミックステープ『Young & Turnt, Vol. 2』をリリースしたばかりだったり、Lil Baby のアルバム『My Turn』に参加したりと、大波に乗っている彼を是非この機会にお見知り置き下さい。

42 Dugg ってどんなラッパー?

42 Dugg (フォートゥー・ドゥグ) は、デトロイト出身の26歳。なんと彼は、15歳の頃から22歳になるまでの約6年間を獄中で過ごしました。小さな部屋の中では、手持ち無沙汰を極めていたようで、暇をつぶすためにラップの歌詞を書き始めたことが、彼のキャリアの始まりです。

晴れて自由の身となった2017年頃から本格的に楽曲制作に取りかかり始め、ストリートでの体験を鮮明にラップするスタイルは、徐々に世間の注目を集めていきました。

彼の努力がストリートからの支持を得始めたところで、彼の楽曲は Lil Baby の目にとまりました。それをきっかけに Lil Baby の 4PF (4 Pockets Full) と Yo Gotti の CMG との契約に成功しました。

左から 42 Dugg、Yo Gotti、Lil Baby

彼の特徴は、いかにもやんちゃそうな声で勢いよくラップするスタイルや、Kodak Black などを彷彿とさせるねっとりとしたラップです。ほとんど全曲で聞くことのできるトンビの泣き声のような口笛のアドリブにも注目です。(これをアドリブと分類するか、効果音と分類するかの問題はいったん置いておきます。)

1st ミックステープ 『11241 Wayburn』

42 Dugg は、2018年に初めてミックステープ『11241 Wayburn』をリリースしました。デトロイトのローカルクルー Team Eastside より、2018年に射殺されてしまった Team Eastside Snoop が参加していたりと、デトロイトのG好きな方にはおすすめのミクステとなっています。

三曲目に収録されている『Never』という楽曲は、Dugg 自身が選ぶ「最も過小評価されている曲」だそうです。アーティストの自己評価と、世間からの評価には常に多少のズレが生じるようです。

ちなみにアルバムタイトルの『11241 Wayburn』とは彼の生まれた実家の住所です。残念ながら、彼の生まれ育った実家はすでに解体されており、その姿を見ることができません。しかし、土地が売りに出されていますので、彼のことが好きでたまらない方は是非ご購入を検討下さい。(Google Map 上でオレンジの杭に「11241」と記されているのも確認できます。)

2nd ミックステープ『Young and Turnt』

2019年の3月15日に2枚目のミックステープ『Young and Turnt』がリリースされました。4PF と CMG 加入後、初めてリリースされたミックステープということもあり、以前のものとは比べ物にならないほど、参加アーティストが豪華になっています。

所属している二つのレーベルの長である Lil Baby と Yo Gotti はもちろんのこと、地元デトロイトから Tee Grizzley、CMG から Blac Youngsta などが参加しています。プロダクションにも、Tee Grizzley と数多くの楽曲を作成したことでも有名な、デトロイトの Helluva Beats などが参加しています。

中でも注目の楽曲は、所属する CMG のボスである Yo Gotti を迎えたYou Da Oneです。噛み付くようなやんちゃなラップをかます 42 Dugg が子だとしたら、落ち着いた口調で淡々とバースを蹴る Yo Gotti は威厳のある父親というところでしょうか。

単に Yo Gotti が一区切りのバースでラップするだけでなく、Tee Grizzley と Lil Yachty の『From the D to the A』を思い出させるような、2人交互にバースを蹴っていく構成になっているところも見所です。 Tee Grizzley もデトロイトなので少しは影響を受けているのかもしれません。

こちらの楽曲も Tee Grizzley と Lil Yachty が交互にラップしていく構成になっています。曲が進むごとにどんどん本気になっていく2人の勢いに注目です。

3rd ミックステープ『Young & Turnt, Vol. 2』

2枚目のミクステから約一年のインターバルを経て、2020年の3月に待望の新作『Young & Turnt, Vol. 2』 をリリースしました。2枚目の続編という立ち位置のミクステですが、アルバムタイトルの表記は「and」から「&」へとマイナーチェンジがなされています。

引き続き Lil Baby と Yo Gotti に加え、前作にも参加しており Team Eastside のメンバーである Babyface Ray も参加しています。プロダクションには Helluva Beats はもちろんのこと、808 Mafia のボス Southside が新しく参加しています。4PF に属しているからこそ実現したコラボですね。

今回ご紹介したいのは、7曲目に収録されている『Hard Times』という楽曲です。先行シングルとして、ミクステより一足先にリリースされていたものですが、彼にとっては比較的珍しいメロディアスなフロウで、全体的に希望に満ち溢れたバイブスが特徴的な一曲です。

6年間の獄中生活を経て、一瞬にして人気ラッパーに成り上がった彼だからこそ書くことのできるリリックを、フックの一行目から披露してくれます。

Hard times don’t last
厳しい時期は、そう長く続かないぜ

感染症による影響で暗いムードが漂う私たちにとっても、この一行は最高のメッセージであり、彼の発する一言によって分厚い雲の隙間から希望の光が差し込んでくるような気もします。やはり音楽の存在は私たち人類にとって偉大なものだということに改めて気づかされる、そんな一曲でした。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はデトロイトのやんちゃ小僧 42 Dugg についての記事でした。デトロイトのラッパーや 4PF、CMG 周辺のラッパーとのコラボもこれから増えてくると予想されますので、彼の名前を見かけたら積極的に聞いてみることをお勧めします。すでに次のミクステが楽しみで仕方ありません。

whoiskosuke

新鋭プロデューサー集団 Working On Dying って?

皆さんこんにちは。少し前に Lil Uzi Vert が『Eternal Atake』をリリースしましたが、このアルバムの制作において欠かせない存在となったプロデューサー集団 Working On Dying をご存知でしょうか。

なんと彼ら、『Eternal Atake (Deluxe) – LUV vs. The World 2』に収録されている32 曲中、14 曲もプロデュースした強者集団なのです。今回はそんな彼ら Working On Dying についての記事です。

Working On Dying って?

Working On Dying (以下WOD)とは、Lil Uzi の地元でもあるフィラデルフィアを拠点に活動するプロダクション・コレクティブで、Brandon Finessin、Oogie Mane、F1lthy などのメンバーで構成されています。

彼らは、Lil Peep 率いる Gothboiclique のメンバーである Lil Tracy や、13歳で XXXTENTACION とともにヒット曲『$$$』をリリースした Matt OX などのプロデュースに参加したり、ビートを提供したりもしています。

左から Oogie Mane、Matt OX、Brandon Finessin、右後ろが F1lthy

彼らの作るトラックの特徴は、

①エモ

②アニメモチーフ

③近未来的

の3つで、時にはそれぞれの要素を融合して全く新しいジャンルを作り出してしまうこともあります。

『Matt OX – Overwhelming』

この曲は ②アニメモチーフと ③近未来的 の二つの要素の融合といった具合でしょうか。歪んだシンセサイザーのようなメロディの上にハード目なトラップビートが特徴的です。

日本語のサンプリングから幕開けするこちらの楽曲、これも実は WOD の OogieMane によるプロデュースです。Oogie Mane は元々こちらの日本語プロデューサータグ(NARUTO三話のサスケとサクラのやりとり)を使用していました。しかし権利上の問題もあり、この楽曲以降に制作したものに関しては、曲中のフレーズ『Oogie Mane he killed it』を抜き取り、プロデューサータグとしています。

Lil Uzi による『Eternal Atake』のデラックスで一曲目に収録された『Myron』も Oogie Mane によるもので、初めに Matt OX の声が聴こえて驚いたという方も多いのではないでしょうか。

ちなみに、WOD のグループタグは、こちらの楽曲でも10秒あたりで使用されている女性の声で、『I’m Working on Dying』です。

『Quando Rondo – Dope Boy Dreams』

先ほど WOD のトラックの特徴を3つ挙げましたが、彼らにはちゃんとクラッシックなトラックを作る能力も備わっています(無敵)。

Lil Uzi の EA では、近未来的でクセの強いビートが多かったため、「WODは変なビートを作る集団だ」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、それだけじゃないんだよ!と、声を大にしてここで言っておきます。

お聞きいただきました楽曲は Quando Rondo による『Dope Boy Dreams』で、Brandon Finessin によるプロデュースです。「WOD と Quando Rondo って意外!」と思った方も多いかもしれませんね。

ちなみに Brandon Finessin のプロデューサータグは、フックが始まる直前に挿入されている「Ay Brandon Why You Do Dat!」です。

Eternal Atake と Working on Dying

冒頭に32 曲中14 曲プロデュースに参加と書きましたが、これは紛れもない事実です。新しい領域の音楽を創造しつつ、しっかりと地元の若手をフックアップしている Lil Uzi にも非常に好感が持てます。

『Lil Uzi Vert – Futsal Shuffle 2020』

まず初めは、みんな大好き『Futsal Shuffle 2020』です。こちらの楽曲も実は Brandon Finessin がプロダクションに参加しています。初めて聴いたときは「これはHipHopなの?」と困惑したほど、ネクストレベルに進んでしまっているトラックです。

かなり難易度の高いダンスチャレンジと共に、2019年の末にリリースされ、彼の思惑通りインターネット上には彼のダンスを真似する動画が溢れかえりました。

リリース前のプロモーション動画においては確認できた Brandon Finessin のプロデューサータグですが、リリースされた公式な音源からは消されてしまっていました。

『Lil Uzi Vert – I’m Sorry』

Brandon Finessin がプロダクションに参加。こちらは ①エモ と ②近未来的 な要素をミックスしたようなトラックです。Lil Uzi の切ない歌声とマッチしていて、つい繰り返し聴いてしまいます。

ちなみに『I’m Sorry』と、先ほどの『Futsal Shuffle 2020』 には Starboy というプロデューサーも Brandon と共に参加しています。カービィのタトゥーを顔面に入れており、なかなかパンチのある人物です。実は彼は、DaBaby の BOP なんかにも参加しており、注目に値する1人なのですが、彼は WOD に所属していないので、また機会があれば紹介します。

Starboy

『Lil Uzi Vert – Celebration Station』

こちらの楽曲も Brandon Finessin が参加。疾走感のある宇宙系のトラックです。ちなみに終始バックで流れている女性のコーラスは、かの有名な世界の歌姫 Ariana Grande です。彼女のアルバム『Sweetener』のイントロにあたる楽曲『raindrops (an angel cried)』をサンプリングしています。

WOD が参加したその他の作品

『Bladee – Working on Dying』

Yung Lean によるコレクティブ YEAR0001 に属するラッパー Bladee のミックステープです。プロジェクトタイトルからお察しだと思いますが、全曲 WOD によるプロデュースです。OogieMane や Blandon Finessin はもちろん、今まで取り上げなかったメンバー F1LTHY や Forza も参加しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。 Eternal Atake がリリースされたことによって段違いに注目度が上がった Working On Dying。これからはどんなラッパーたちと、どんな新しい音楽を創り出してくれるのでしょうか。とても楽しみです。

whoiskosuke

アトランタ Zone 6 の新星 Yung Mal って?

みなさんこんにちは。今回はアトランタのソリッドなラッパー Yung Mal についての記事になります。

Yung Mal って誰?となっているそこのあなた、まだ遅くありません。先月にニュープロジェクト『6 Rings』をリリースしかなり上がってきている彼を、これを機にチェックしてみてください。

生まれはニューオーリンズですが、2008年にアトランタの Zone 6 に移り住みました。移住先のアトランタ Zone 6 の大先輩 Gucci Mane 率いるレーベル 1017 Eskimo Records や Alamo Records と契約しています。

Mal は Lil Quill という同郷出身のラッパーと、ヒップホップデュオ Yung Mal & Lil Quill の 1/2 としての活動に重きを置いていましたが、昨年ミックステープ『Iceburg』をリリースしたタイミングからソロでの活動にも力を入れているようです。

左 : Yung Mal  右 : Lil Quill

Lil Quill とともにリリースしたミックステープも良作揃いなので、ぜひ紹介したいのですが、今回は Yung Mal のみに絞って紹介しようと思います。(Lil Quill についてはまた後日)

1st ミックステープ『Iceburg』

『Iceburg』は Yung Mal による初めてのソロミックステープです。デュオ時代に蓄積したスキルとコネクションを最大限に活かし、かなり豪華な良作となっています。

Gucci Mane との楽曲に Zaytoven がプロダクションに参加していたり、Gunna との楽曲に Turbo が参加していたりと、ラッパー客演に呼ぶだけでなく、そのラッパーの周辺人物も積極的に巻き込んでいて、聴いていてかなり楽しいです。

『#’s』

まず初めにご紹介するのは『#’s』という楽曲。読みは『Numbers』で、つまるところのギャングスタ版数え歌です。歌詞の各行に1から順に数詞を折り込んでラップするというもの。

面白いのは、ただ数字を羅列するだけでなく下記のようにギャングスタスラングや、ワードプレイを盛り込んで淡々とラップしていくところです。

I done got rich, I’m still in the six
俺は金持ちになったけど、いまだに Zone 6 にいる。

Yung Mal が活動の拠点としているアトランタのエリア、Zone 6 の「6」

They talkin’ plates, we already ate
飯のことか?俺らはもう食っちまったぜ(大量のマリファナのことか?もう全部吸っちまったぜ)

「8 (eight)」と同じ発音の単語で、「eat」の過去形である「ate」を使ったワードプレイ

Don’t fuck with 12, I’m never gon’ snitch
警察の相手はしないぜ。俺は絶対裏切らない。

「12」は警察を意味するスラング

『Action (feat. Pi’erre Bourne & Lil Gotit)』

ここ数年において若手プロデューサーの頂点に立ち続けている Pi’erre Bourne と、 Mal と同じく Alamo に所属するラッパー Lil Gotit を招いたこちらの楽曲。

Pi’erre Bourne による琴のような音色が盛り込まれた中華ビートがなんとも言えない奇怪さを醸し出しています。そしてこちらの楽曲には、Pi’erre Bourne も自身のビートの上でラップに参加しています。

余談ですが、あちこちに挿入されている Pi’erre Bourne の最新プロデューサータグ「よ〜ぴえ〜」は、こちらの楽曲で初めて使用されました。

2nd ミックステープ『6 Rings』

2020年の3月、彼は2枚目のミックステープ『6 Rings』をリリースしました。

収録曲12曲の全ての楽曲が プロデューサーコレクティブ 808 Mafia の Pyrex Whippa によってプロデュースされています。

少し脱線しますが、Pyrex Whippa について少しだけ。彼は先述の通り 808 Mafia に所属しているプロデューサーです。そのため、Southside や DY Krazy を彷彿とさせる自由自在にハイハットを操った特徴的なビートを製作します。J. Cole 率いるDreamville のプロジェクト『Revenge of the Dreamers lll』にも参加したことから、彼の実力が認められていることが良く分かります。

ちなみに、Pyrex Whippa のプロデューサータグ「Zone 6 n****, Pyrex Whippa (Pyrex!)」は、21 Savage と Offset、Metro Boomin のジョイントアルバムである『Without Warning』に収録されている『Disrespectful』の一節を取ってきたものです。タグの声が 21 と Offset の時点で勝ち確定。

『Cocaine Freestyle』

アルバム1曲目に収録されているこの楽曲。Yung Mal にしては比較的珍しい勢いのある早口ラップを披露しています。タイトル通りフリースタイルなので、フックやブリッジなどは一切なく、イントロ的な役割を果たしています。Pyrex Whippa の変態ハイハットビートにも要注目です。

『100 Missed Calls』

成功を手にし有名になった結果、朝起きた時に100件の不在着信がたまってるよ。という嘆きから始まるこの楽曲。富も名声も手に入れた彼ならではの挑発的なリリックが散りばめられています。

Racks that talk
金が喋りだす

Every account, every stash getting filled
どの口座も金庫も、もうパンパンだよ

Have you ever seen a hundred thou-blue hunid Bill’s (huh?)
お前は10万ドルの札束を見たことがあんのか?

『Shut Up (feat. Lil Keed & Lil Gotit)』

Pyrex Whippa のスローなビートに、ロウキーなラップが怪しげな一曲。風邪のひき始めなのか、Lil Keed の鼻声ラップや、Lil Gotit の極端に言葉数が少ないバースにも注目です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。アトランタのソリッドなラッパー Yung Mal のご紹介でした。イケてる人は聴いている、聴いてる人はイケている、リアルなラッパーでした。それでは、また次回!

今回紹介した Yung Mal による二枚のミックステープはこちらから聴くことができます。↓

whoiskosuke

シカゴの若手ラッパー Polo G とは

みなさんこんにちは。今回は、『Pop Out』のメガヒットでお馴染み、シカゴ出身の要注目ラッパー Polo G についての記事です。彼の生い立ちやキャリアに触れながら、簡単にご紹介していこうと思いますので、ぜひご覧ください。

生い立ち

Polo G こと、Taurus Tremani Bartlett は、シカゴ出身の21歳(1998年1月6日生まれ)。Taurus は歴史的な建造物が多く残るシカゴの北部で、両親と3人のきょうだいと共に生まれ育ちました。

シカゴの中では治安がいい方の地域ですが、いかんせん犯罪の多いシカゴの街の一つですので、彼の楽曲の中には、彼が成長とともに目撃してきたリアルなストリート事情が描かれていたりもします。

キャリア

現在、インスタグラムにて300万人のフォロワーを抱える彼ですが、2018年の初旬までは、誰も彼のことを知りませんでした。2016年から楽曲の作成は開始していましたが、初めの一年はヒット作を生み出すことが出来なかったようです。

しかし、そんな彼が2018年の後半にリリースした楽曲『Finer Things』が予想外の大ヒットを記録。その波を逃すまいと続けてリリースしたのが、『Battle Cry』と、Lil Tjayとの楽曲『Pop Out』でした。この3枚のシングルが彼の人生を180° 転換させるきっかけとなったのです。

左 : Lil Tjay と 右 : Polo G

スタイル

彼の楽曲のスタイルは、ドリルミュージックとメロディックの融合です。後々紹介しますが、彼は G Herbo などにインスパイアされたであろう激しい楽曲や、Lil Durk やなどに影響を受けたと思われるメロディックな楽曲の両方を制作します。そして、時にはその二つのジャンルをミックスすることも。初心者には取っ付きにくいジャンルである「ドリルミュージック」ですが、彼の音楽ならチャートの上位にのぼってくるのも納得です。

デビューアルバム『Die a Legend』

2019年6月に彼は Columbia Records よりデビューアルバム『Die a Legend』をリリースしました。

こちらのアルバムは、犯罪や抗争などの犠牲となってしまった、彼の幼馴染や古くからの友達、また彼らと共有した大切な思い出に名誉を与えるために制作されました。

タイトルの『Die a Legend』は「伝説になって死ぬ」という意味で、

①「亡くなった彼の仲間は、彼の中で伝説として永遠に生き続ける」

という想いと、

②「亡くなってしまった仲間の為にも、自分自身が伝説となってから死ぬ」

という決意表明的な想いが込められていると思われます。

今回はこちらのアルバムの中から、日本語の記事になっていない(またはそのような記事が少ない)楽曲について紹介していこうと思います。

『Die a Legend』のカバーアート。
彼を取り囲むように、亡くなった仲間たちの写真がデザインされている。

『Through da Storm』

こちらの楽曲では、彼の地元であるシカゴのストリートで経験した悲しい過去を思い返しながら、家族に対する謝罪の気持ち、そしてその苦境を乗り越えていく自身の姿をラップしています。

https://www.youtube.com/watch?v=cgMgoUmHqiw

Hey big brother, it’s me, Leia
ねぇお兄ちゃん、私、レイアだよ。

Remember at the old house I said you was gonna be a big star one day?
古い家で私が「いつかお兄ちゃんはビッグスターになるよ」って言った日のこと覚えてる?

I’m so proud of you
本当に誇りに思ってるよ。

Mmh, mmh, mmh, Polo G Live in the flesh
Polo G、望むままに生きるのよ

小さい女の子のセリフから始まるこちらの楽曲ですが、この声の正体は彼の実妹のレイアちゃんです。2019年の Rolling Loud では、レイアちゃん本人がステージに上がり、生声でイントロを披露しました。

Know my grandma still with me, when it get cold, I feel your spirit
おばあちゃんは今も俺のそばに居る。寒気がした時に彼女の気配を感じるんだ。

Talkin’ to my lil’ sister, phone calls through Securus
刑務所の中から、Securus の電話を通して妹と話す ※1

Walk in court in them shackles, see my mama, her eyes tearin’
手錠をされたまま法廷を歩いて、泣いている母親に会う。

Tryna work towards these blessings but the devil keep interfering
神の恵みに向かって努力するけど、悪魔がそれを邪魔するんだ

※1 Securus とは、アメリカの刑務所で採用されているオンライン面会システム

『Deep Wounds』

こちらの楽曲は、彼が幼少期にストリートで経験した悲劇の数々について、そしてその中で生まれた彼なりの決意についてラップしています。

https://www.youtube.com/watch?v=GIDTSzFSexM

We ain’t never duckin’ beef, bitch, we not vegan
俺たちはビーフを避けないぜ ビーガンじゃないからな

みなさんご存知の通り「Beef」という言葉には、一般的な「牛肉」という意味と、「喧嘩」というスラング的な意味があります。お肉を食べることを避けるビーガンのルールと、闘争を避けることができないギャングスタのルールを、巧みなワードプレイに乗せてラップしています。

I miss Mike Durb, I won’t forget the things you used to say ※2
恋しいよ、Mike Durb。あなたが言っていたことは忘れない。

My friends got killed on the same block where we used to play
よく遊んでいた場所で、おれの仲間たちは殺されたんだ。

I know that death come unexpected, you can’t choose a day
死はいつ訪れるか分からないし、その日を選ぶことはできない。

I swear I pop so many pills, shit got me losin’ weight
薬をたくさん飲んで、どんどん痩せていっちまってる。

※2 Mike Durb は彼の叔父の名前。本曲を制作していた頃に交通事故で亡くなっている。

ここでは、大切な仲間や家族を失った経験について言及しています。Genius のインタビューにて「みんな、自分の家族に限ってはすぐに死なないと信じてる。でも実際に次に死ぬ人間は、予想もしていなかった身近な存在なんだよ。」とコメントしています。彼の場合もこのような悲劇を経験するまでは、身近な人の死は、そうすぐには訪れないと考えていたのでしょう。

歌詞にもある通り、大切な人物を失うなどという堪え難い悲しみから、危険なドラッグや犯罪に手を染めてしまう事例も少なくはないことがわかります。

Polo G による他の楽曲

『Heartless (feat. Mustard)』

デビューアルバム『Die a Legend』をリリースし、一気に有名となった彼ですが、すでに自作に向けても精力的に活動しているようです。こちらの楽曲は、アルバム以降にリリースした一作目のシングルなのですが、なんとプロダクションに Mustard が参加しています。

こちらの楽曲では、タイトル『Heartless』 の通り、ギャングの抗争や彼を取り囲む人間の悲しい振る舞いの中で、自分自身が『冷酷』になっていくことをラップしています。しかし彼の場合、ただ「冷酷」になるのではなく、そうなることで自分自身のすべきことに焦点を当てられるようにもなった、とポジティブなリリックも見られます。

My cousin got indicted dealing cocaine
俺のいとこはコカインの取引をして訴えられた

She an Instagram addict, she want mo’ fame
彼女はインスタに夢中で、もっと有名になりたがってるし

I used to starve, now I’m blowing up like propane
俺はかつて飢えていたけど、今はプロパンガスのように人気が爆発してる

Told my inner-self, “I promise you I won’t change”
自分の中の自分に「俺は絶対に変わらないと約束する」って誓った

上2行では周りの人々の行動に嫌気が差し『冷酷』になる様子、下2行ではそれでも自分自身にフォーカスを置くことの大切さをラップしている。

Genius の歌詞解説動画にて彼は「自分に正直であることは、俺にとって一番大切なことだと信じてる。もし、自分に正直であれないなら、その人生はとてももったいないよ。」と語っています。

インスタグラムで Clout (権力や富) を追い求めるユーザーたちが蔓延していることなどに苦言を呈し、彼なりの人生論を落ち着いてラップしており、かなり痺れるところがあります。(しかもこれを Mustard のビートの上で。)

まとめ

いかがでしたでしょうか。最近のラッパーたちは本当に十人十色で、100人いれば100通りのスタイルがあるって感じになってきてますが、Polo G はその中でも「男の中の男」って感じがします。

人生において大切なことを見失うことなく、鋭い感性で自分の想いを訴え続ける。これぞ HipHop のあるべき姿という感じで、ある意味お手本のような完璧なラッパーだと思います。そろそろ次作の存在を匂わせても良い頃なので、その時を楽しみに待つことにしましょう。

whoiskosuke

Lil Uzi Vert『Eternal Atake』の全て ~リリースまでの道のり~

これまで幾度となくリリースを遅らせていた Lil Uzi Vert のニューアルバム『Eternal Atake』が本日遂にリリースされました。

今回は、その存在が明かされてから本日のリリースまで約2年の月日を要したこのアルバム『Eternal Atake』の歴史を振り返って行こうと思います。

2018年 : ハッキングと、ニューアルバムの告知

2018年4月、Uzi の ソーシャルメディア(Instagram と Twitter)のアカウントがファンによってハックされたことから『Eternal Atake』の歴史は始まりました。アカウントをハックしたファンによって様々な(意味不明な)投稿がなされる中、6月頃、後にリリースされるシングル曲『New Patek』のスニペットが Uzi のダンス動画と共にポストされました。

その後ファンからアカウントを取り返した Uzi は、Twitter にてニューアルバムのタイトルを明らかにします。

Eternal は永遠、Atake は追い越す(追いつく、襲いかかる、不意をつく)ことを意味するんだ」

続いて同年7月末、彼はアルバムのカバーアートを公開します。

『Eternal Atake』のカバーアート

しかしこのカバーアートは、1997年のヘール・ボップ彗星出現の際に集団自殺を決行し消滅した「Heaven’s Gate」という宗教団体のロゴをパロディしたものであり、「Heaven’s Gate」の残党から訴訟の意思が伝えられました。

宗教団体「Heaven’s Gate」のロゴ

この騒動があった後、Uzi は上記のカバーアートを取り下げ、自身をアニメキャラクター化したアートに取り替えます。

胸の部分には「Heaven’s Gate」のロゴが。

そして同年9月18日、『Eternal Atake』から初のリードシングルとなる『New Patek』がリリースされます(最終的にはアルバム未収録)。

『New Patek』のカバーアートには、またしても例のロゴが。どうしても捨てきれないこだわりだったのでしょう。

同年末、Uzi は地元フィラデルフィアでのライブ中に、アルバムの完成を報告します。

「いつアルバムがリリースされるか気になっているんだろ。もうできてるよ。」

2019年 : 引退宣言と音楽活動再開

年が明け2019年1月、Uzi は Instagram のストーリーで音楽活動の引退を表明します。

ファンのみんなに礼を言いたいんだ。

おれはもう音楽をやらない。作った曲も全部消した。

おれは普通の生活に戻りたいんだ。2013年に戻りたいよ。

Uzi は以前から、所属するレーベル Generation Now との関係が良くないことを明らかにしていました。彼のデビューアルバム『Luv Is Rage 2』も同じ問題を抱えてリリースが遅れた過去があり、おそらくそういった問題が悪化し、彼は音楽を辞めるという発言をしたのでしょう(Generation Now のDJ Drama は問題を否定しており、「(アルバムを)出したい時に出せばいい」と発言)。

同年3月、Uzi は Jay-Z 擁する Roc Nation と契約を結び、突如ニューシングル『Free Uzi』をリリースしました(リリース数日後に削除)。

N***as lyin’, yeah he stuck with a cappin’ face

奴らは嘘をついてる、そのせいで身動きがとれないんだ

N***as rattin’, they get hit with the MAC today

奴らは卑劣だ、今に MAC で撃ち抜かれるさ

It’s my “I don’t even know, um, what happened” face

おれは「おれは知らないぜ、何があったんだ」って顔をしてる

Lil Uzi Vert – Free Uzi
Generation Now との確執について言及するライン。
MAC で撃ち抜かれたんだろ、UZI じゃない(おれはやってない)という、銃の名前でかけたワードプレイ)

同年4月、Uzi はリークされた2つの楽曲を公式にリリースします(両方ともアルバム未収録)。

『That’s a Rack』

『Sanguine Paradise』

そして同年末、Uzi はアルバムからリードシングル『Futsal Shuffle 2020』をリリースします。

2020年 : アルバムリリース

年が明け2020年に入り、Uzi は Twitter にて積極的にアルバムのアナウンスを行うようになります。

アルバムには16曲が収録されることを明らかにした後、Instagram Live にて二週間以内にアルバムをリリースすることを仄かしました。

そして3月1日、Uzi は2つ目のリードシングル『That Way』をリリースします。自身のオルターエゴ、「Renji」と「Baby Pluto」の存在も主張し、Twitter 上でファンからの質問に積極的に応答するようになります。

その後、彼は Twitter にて3つのカバーアートを公開し、フォロワーに投票で選ばせるという前代未聞の決定方法をとりました。

Cover 1
Cover 2
Cover 3

投票の結果2つ目の「Cover 2」に決定し、続いて『Eternal Atake』のショートフィルムが公開されました。

その2日後、Uzi は『Eternal Atake』のトラックリストを公開します。

そして本日3月7日、急遽ニューアルバム『Eternal Atake』がリリースされました。

みんな準備はできたか、今日がその日だ!

来週金曜日じゃない、今リリースしたぜ!

世界中が来週のリリースと思い込んでいた中、突如としてニューアルバムをリリースする、なんとも Uzi らしい行動に意表を突かれました。

世界中が待望していたニューアルバムには、The Internet のメイン・ヴォーカルである Syd が客演で参加しており、Wheezy や Yung Lan、TM88、Supah Mario ら売れっ子プロデューサーに加え、Working On Dying の Brandon Finessin や Oogie Mane、ラッパーの Chief Keef らがプロダクションに名を連ねています。

Uzi 曰く、1〜6曲目が Baby Pluto、7〜12曲目が Renji、13〜18曲目が Uzi による楽曲だそうです。

数時間前、Uzi は アルバムのデラックス盤の存在も明かしており、Pi’erre Bourne、Young Thug、Future、A Boogie wit da Hoodie、Lil Baby、Chief Keef ら今をときめく豪華客演陣を迎えているとのこと。2年前からリリースが待ち望まれている『Rollie [Jellybean (Kobe)]』や『Like Me (Myron)』、『Lotus』などの楽曲も含まれている可能性が高く、Lil Uzi Vert ファン歓喜の展開となりそうです。

Riku Hirai

シカゴ出身の注目若手ラッパー Calboy とは

今回は『Envy Me』のヒットで知られるシカゴ出身の注目若手ラッパー Calboy について、彼の生い立ちやキャリアに触れながら簡単にご紹介しようと思います。それではさっそくいってみましょう。

生い立ち

Calboy こと Calvin Woods は、シカゴ出身の20歳(1999年4月3日生まれ)。シカゴの中でも最も危険とされるサウスサイド出身で、母親と4人の兄弟と共に非常に貧しい生活を送っていたそうです。

オーバードーズと銃撃により幼馴染みの親友を2人も失った彼は、家族と共にシカゴの南に位置する Calumet City に移住します。

キャリアの開始

音楽活動を始める前は絵を描いて過ごしていたというCalvin は、2015年から Kidd Cal 名義で楽曲を公開し始めます。

『Mr.Misunderstood』

今から約5年前(当時16歳)の彼の楽曲からは、既に才能の片鱗が伺えます。

1st ミックステープ『Anxiety』

2017年、Calvin (以下 Calboy)はデビュー作となるミックステープ『Anxiety』をリリースします(147 Calboy 名義では、以前にミックステープ『The Chosen One』をリリースしています)。

Twista や Future、Chief Keef らとの楽曲制作でも知られる DJ Pharris が監修を務め、メジャーレーベルとの契約なしでリリースされたこのミックステープには、地元シカゴのスター Lil Durk が客演として参加しています。

『Anxiety(心配、不安)』というタイトル通り、Calboyは、地元で経験してきた悲劇やトラウマについて歌います。

I was 15, I see my bro Jimmy dead
おれが15の頃、仲間の Jimmy が死んだのを見たんだ
He felt so cold, I couldn’t even cry
彼は冷たくなって、おれは泣くことすら出来なかった
That’s why I sip lean, boy you ain’t even gotta ask why
だからおれはリーンを飲むんだ、理由なんて聞くな
They wanna shiv me with knives all in my back
やつらはおれのことを狙っている

Calboy – Fatality

この頃の彼はオートチューンを強めに使っており、Lil Durk の歌唱スタイルや声に近似したメロディアスなフロウを多用しています。

Rap Genius の「Can ___ Fans Actually Recognize His Voice (~のファンは、実際に~の声を聴き分けることができるか)」というシリーズに Lil Durk の回が来るならば、間違いなく Calboy の楽曲が使われるでしょう。

2nd ミックステープ『Calboy the Wild Boy』

2018年、Calvin は Paper Gang Inc. から 2nd ミックステープ『Calboy the Wild Boy』をリリースします。

このミックステープで彼は、自己アイデンティティの模索や、前作『Anxiety』の成功からくる名声についてラップしています。

またラップスキルもこの頃から磨かれつつあり、特に7曲目の『Blood Suckaz』ではファルセットやミックスボイスを使って高音で歌うスタイルが見られ、今現在(2019~2020年)の彼に通ずるものを感じます(特に1:17~のフロウは、後にリリースされる彼のヒットシングル『Envy Me』のフックと同じフロウですね。おそらくこの頃に自分のスタイルを掴んだのでしょう)。

『Envy Me』のバイラルヒット

2018年9月に Calboy がリリースしたシングル『Envy Me』が、彼のキャリアを大きく変えます。リリースされるや否や Billboard Hot 100において63位まで登りつめ、YouTube では2500万再生を記録しました。

『Envy Me』のバイラルヒットは、この曲を使った「Demons Challenge」というダンスチャレンジが Tik Tok 上で流行したことがきっかけでした。

https://youtu.be/J0Aoum3NJog

もちろん奇跡的にバズを起こしてヒットしたわけではなく、バズが起こったのにも理由があります。

I was fighting some demons, in the field, bitch, I’m deep in
おれは悪魔たちと戦っている、もう戻れないんだ
I was raised in the deep end, I know niggas be sinkin’
困難な環境で育ってきたんだ、落ちぶれていった奴らもいる

Calboy はこのような暗い内容のリリックを、悲しげにも、あるいは楽しげにも聴こえてしまうようなポップなメロディで歌い上げます。このダークさとポップさのアンバランス感が Calboy (彼に限らず現行のシカゴ産ヒップホップ)の魅力でしょう。

その後、Calboy は Kodak Black の「The Dying To Live Tour」に帯同し、ますます知名度を上げていきます。

デビューEP 『Wildboy』

2019年、Calboy は RCA と Polo Grounds Music からデビュー EP『Wildboy』をリリースします。

Moneybagg Yo、Lil Durk、Yo Gotti、Polo G、Meek Mill、Young Thug といった豪華客演陣の参加が、Calboy の注目度を物語っています。

また、Calboy のラップ&ボーカルスキルの向上も顕著に見られます。

『Ghetto America (feat. Yo Gotti & Lil Durk)』

Lil Durk と Yo Gotti が参加した1曲。高音で感傷的に歌う Calboy と Lil Durk のボーカルに、Yo Gotti のねっとりとしたラップが上手くマッチしています(やはり Lil Durk と Calboy のボーカルスタイルは激似ですが、本人(Calboy)はそう言われるのがあまり好きではないみたいなのでここでは控えておきます…笑)。

『Chariot (feat. Meek Mill, Lil Durk & Young Thug)』

Meek Mill、Lil Durk、Young Thug が参加した夢のような1曲で、Calboy も引けを取らない三連符フロウを披露します。

人気アーティストとのコラボ

Chance the Rapper『Get a Bag (feat. Calboy)』

同郷シカゴのスター Chance the Rapper のデビューアルバムに参加した Calboy は、ここぞとばかりにその才能を見せつけます。

歌フロウを中心としたスタイルは昨今の若手ラッパーにありがちですが、Calboy の魅力は三連符を主とした詰め込みフロウです。この曲では彼の詰め込みフロウを堪能することができます。

Pop Smoke『100k on a Coupe (feat. Calboy)』

先月惜しくもこの世を去った故 Pop Smoke との楽曲。スタイルは違うものの今一番脂の乗った(乗っていた)2人のコラボなだけあって、抜群の格好良さです。

ここでは Calboy のもう1つの魅力である、ファルセットを使った高音フロウを楽しむことができます。

※他にもご紹介したいのですが、長くなるのでプレイリストにまとめておきます。

2nd EP『Long Live the Kings』

そして2020年、Calboy は待望の新作『Long Live the Kings』をリリースしました。

亡くなった仲間たち(Kings)への追悼の意を込めたこの EP には、Lil Tjay、G Herbo、Lil Baby らが客演で参加しています。

『Dope Boy』

明らかに Roddy Ricch に影響を受けたであろうフロウ (Roddy Ricch『Start wit Me (feat. Gunna)』と非常によく似たメロディラインを使っています)が特徴的な1曲。同世代であれだけチャートを動かすラッパーが出てくると、嫌でも刺激を受けるでしょう。Calboy には是非とも第2の Roddy Ricch、いやそれ以上のスターになってほしいものです。

『Purpose (feat. G Herbo)』

EP からシングルカットされていた G Herbo との1曲。

一度聴いていただければ分かるように、この曲、ビートと(Calboy の)ボーカルのキーが合っていません。シンプルにオートチューンのキー設定を間違えたのか、たまたま違うキーで合わせたら「あえての外しもあり!」となったのかは分からないですが、何度も繰り返し聴くうちに、気持ち悪さが気持ち良いという妙な感覚に襲われます。狙ってやっているのであれば面白いですし、そうでなければ怪我の巧妙です。

I go in there with a concept. 
おれはコンセプトを大事にしている
That’s what makes me different than a lot of the mumble rappers
それが他のマンブルラッパーたちと違うところだ

Complex のインタビューより

Complex のインタビューでも語るように、楽曲のコンセプトが定まっており、一貫性がありブレないリリックも彼の魅力です。是非リリックを見ながら聴いてみてください。

まとめ

いかがだったでしょうか。ニューアルバムのリリースや、自身が執筆する著書の出版などを控えており、多方面で更なる飛躍が見込まれるシカゴのネクストスター Calboy。

今年の XXL フレッシュマン選出も間違いなさそうなので、今のうちに彼の楽曲を聴き込んで古参ぶりましょう。今ならギリギリ間に合います。それでは良い週末を!

XXS Magazine オリジナルプレイリスト『Calboy – A Rising Rap Star from Chicago』

https://music.apple.com/jp/playlist/calboy-a-rising-rap-star-from-chicago/pl.u-WabZpaYHdl0GmpA?l=en

Riku Hirai

Pop Smoke – ブルックリンドリルのビッグウェーブを起こした若きレジェンド

みなさんこんにちは。

今回は、今年訪れるであろうドリルミュージックのビッグウェーブを作り出した張本人 Pop Smoke についての記事です。本日リリースされました2枚目のミックステープ『Meet The Woo 2』についても触れていますので、最後までお付き合い頂けたらなと思います。

Pop Smoke って?

Pop Smoke はニューヨーク、ブルックリン出身で、現在20歳のラッパーです。すでに貫禄のある大御所のような見た目ですが、まだ20歳です。始めて楽曲を発表したのも昨年で、キャリアはかなり浅いです。

ご存知の方も多いと思いますが、彼が昨年の夏にリリースした『Welcome to the Party』という楽曲が一瞬にしてバズを起こし、その大きな波に上手く乗って今に至る。という感じのとても説明しやすいキャリアです。

『Welcome to the Party』がバズったことをきっかけに、同曲に Skepta や Nicki Minaj を招いたリミックスをリリースし、その波の勢いは収まるどころか大きくなるばかり。そんな感じでこの楽曲は一昨年 Sheck Wes がリリースした『Mo Bamba』を彷彿とさせるような、クラブで聴かない日は無いお決まりの楽曲となりました。

さて、記事の初めに Pop Smoke を「ドリルミュージックのビッグウェーブを作り出した張本人」と紹介しましたが、この言葉を安易に受け止められたら少し困ります。やはり、ドリルミュージックを作り出したのは、Chief Keef や Fredo Santana を代表とするシカゴ勢です。

彼らが作り出したドリルミュージックにインスピレーションを受けてイギリスで発展したのが、UK Drill というジャンルで、Pop Smoke はこの UK Drill をアメリカに逆輸入し、ビッグウェーブを起こしたアーティストです。Pop Smoke はほとんどの楽曲に 808Melo や AXL といった UK Drill シーンで活躍しているプロデューサーを起用しており、UKドリルとUSドリルのハイブリット的存在と言えると思います。

文字だけでは分かりにくいと思いますので図解を載せておきます。

この辺の背景は、ブルックリンドリルについて詳しく書いた記事を見ていただければ、さらに深く理解できると思いますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。(代表曲『Welcome to the Party』についてもこちらの記事で触れています。)

『Meet The Woo』

たった一曲で、誰もが憧れる人気者になった彼ですが、このビッグウェーブを逃すまいと昨年の7月にミックステープ『Meet The Woo』をリリースしました。今回はこちらのミックステープの中からいくつかオススメを紹介します。

『Scenario』

ミックステープの5曲目に収録されているこちらの楽曲で、プロジェクトを通して見ても、一番ブルックリンドリルのダークな側面を感じることができます。「Pop Smoke はランダムに単語を並べただけでカッコいい唯一のラッパーだ。」というようなツイートを見かけたことがありますが、まさにその通りだと思います。しかし、言葉のはめ方や、繰り返し同じフレーズをラップするスタイルを上手く自分のものにしており、逆にそのスカスカさが彼の楽曲の醍醐味とも言えます。

Pull up, we snatching your babas
俺らはお前らの女を奪い去る

Big 092, those my guys
Big 092 こいつらは俺の仲間だ

Pull up and change the scenario
俺らが現れると、シナリオが書き変わる

Act up and bullets start tearing ’em
俺らが暴れると、銃弾があいつらを引き裂きだす

開始早々、勢いよくラップされるこちらのラインですが、同じくブルックリンドリルシーンの中心人物 Nas Blixky と Kush Blixky による『Babaz』という楽曲から引用されており、UKドリルビートの上でブルックリンドリル特有のスラングを聴くことができます。やはり、ここが彼の楽曲ならではのポイントなのではないでしょうか。

『Better Have Your Gun』

続いて紹介するのはこちらの楽曲。『銃を持ってた方がいいぜ』という意味のタイトルで、ドリル臭がプンプン漂います。

ちなみに彼の楽曲に度々登場する「It’s Big 092MLBOA」というフレーズですが、これは彼が生まれたブロックにて形成されているギャングを表しています。彼の地元であるカナージーは「Floss」または「Flossy」という別名を持っており、それに絡めてこのようにラップしています。

When you come to flossy, better have your gun
お前がカナージーに来るなら、銃は持っておいた方が身のためだぜ

『GATTI』

Pop Smoke は、昨年末にリリースされた Travis Scott 率いる Cactus Jack Records によるプロジェクト『JACKBOYS』に収録されている『GATTI』に参加しました。ここでも UK の AXL Beats と 808melo をプロデューサーとして起用しています。タイトルの『GATTI』とは高級スポーツカーの Bugatti (ブガッティ) の略で、MVでも青いブガッティを乗り回しています。

Look, you cannot say Pop and forget the Smoke
お前は「Smoke」と言わずに「Pop」と言えない

I’m from the Floss where n****s tote
俺は、ギャングたちが銃を持ち歩いているカナージー出身だ

よく考えれば、かなりありがちな単語である「Pop」と「Smoke」を並べただけの彼のMCネームですが、今や「Pop」と聞いたら「Smoke」を連想し、逆に「Smoke」と聞いたら「Pop」を連想してしまう。それだけ彼の時代が到来しているということを、このリリックを通して思い知らされます。

They couldn’t be Crips, so they turned Folks (Bah)
あいつらは Crips になれなかったから、Folk Nation に加入した

Drivin’ through the ‘Ville, droppin’ the Cho (Brr)
Brownsville を走り抜け、Cho の連中を始末する

ブルックリンには大きく分けて、Woo と Cho という2つの派閥が存在します。Woo と Cho はもともと仲は悪くなかったのですが、2010年を境にスニッチがきっかけとなって対立を始めました。Pop Smoke はアルバムタイトルを見ていただければわかる通り Woo に所属しており、Cho のメンバーと仲良くすることはありません。

このリリックにおける「あいつら」とは、Tay627 と Chris Elite のこと。彼らは Pop Smoke が所属する Woo と敵対関係にあり、Pop Smoke のヒット作『Welcome to the Party』をリメイクした楽曲『Welcome to the Garvey』 をリリースしました。

『Meet The Woo 2』

お待たせしました。本日リリースされた最新作『Meet The Woo 2』についてです。13曲で35分の構成となっており、前作に比べて一曲あたりの再生時間がかなり短くなっています。しかし、先行でリリースされていた楽曲は『Christopher Walking』と Lil Tjay をフィーチャーした『War』、そして前作にも収録されていた『Dior』の三曲のみで、「アルバム出たけど、もうほとんど聞き飽きてるよ」状態は回避できています。

Quavo や A Boogie wit da Hoodie などドリルでない US ラッパーも参加しており、こちらでも UK Drill ビートとUSアーティストのコラボレーションを楽しむ事ができます。同じくブルックリンのドリルシーンからは、最近 Rich The Kid や Tory Lanez と共演していた Fivio Foreign が参加しており、最先端のブルックリンドリルも堪能する事ができる作品となっています。

ちなみに、先行曲だと思われていた Calboy との楽曲『100K on the Coupe』は残念ながら収録されていませんでした。どちらかというと Calboy が Pop Smoke をフィーチャーしたような構成の楽曲となっていたので、アルバム全体の雰囲気も考慮して外されたのかもしれません。

Calboy や A Boogie、 Lil Tjay にしてもそうですが、Pop Smoke がドスの効いた低い声であるため、フィーチャーするアーティストは高めの歌声を持っていたり、メロディアスなフロウを得意とするラッパーを選び取っているような印象を持ちました。確かに、同じようなスタイルの2人が一曲を作り出すより、真逆のスタイルの2人が一曲を制作した方が、コントラストが生まれますし、意外な化学変化も起こりやすいのかもしれません。

同じフレーズを繰り返す、しつこいほどのフロウにまんまと虜にされてしまっている私たちですが、そんな安心感を良い意味で裏切ってくれた楽曲も3曲目に収録されていました。それが、『Get Back』という楽曲で、完全に早口言葉です。

追記

たったの一、二年でブルックリンドリルのビックウェーブを作り出し、伝説的存在となった Pop Smoke は、惜しくも2020年の2月19日にこの世を去りました。LAに借りていた別荘に滞在しているところを、強盗に襲われて銃殺されてしまったようです。早すぎる彼の死に、たくさんのファンやラッパーたちが追悼の意を表するともに、彼の功績を賞賛しました。ご冥福をお祈りいたします。

彼の死後、50 Cent が「俺が 彼のために Pop Smoke のアルバムを完成させる」と声明を発表しており、悔やまれながらもこの世を去ってしまった彼の、遺作であるデビューアルバムが今週末にリリースされます。彼の所属していた Victor Victor Records がインスタグラムにてアートワークとリリース日時を発表しました。

View this post on Instagram

June 12 2020

A post shared by Steven VICTOR (@stevenvictor) on

トラックリストなどを含む、それ以外の情報は一切解禁されておらず、リリース日が近づいているにもかかわらず、いまだに謎に包まれたままとなっていますが、Drake や Post Malone、Roddy Ricch などの大物アーティストの参加をオファーした旨を 50 Cent は発表しており、Roddy Ricch に関してはすでに参加の意を示しているとのことです。

whoiskosuke

ノースカロライナの暴れん坊 Stunna 4 Vegas とは

みなさんこんにちは。今回は、ついに待望のニュープロジェクト『RICH YOUNGIN』をリリースした Stunna 4 Vegas について書いていこうと思います。DaBaby によるレコードレーベル である Billion Dollar Baby に所属していたり、Offset や Lil Durk なんかと共演していたりと何かと露出が増えてきた彼ですので、ご存知でないみなさんもこの機会に是非チェックしてみてください。今年は絶対にもっと上がっていきますので、、、

ニュープロジェクト「Rich Youngin」のカバーアート

Stunna 4 Vegas って?

Stunna 4 Vegas (スタナ・フォー・ベガス) こと Khalick Antonio Caldwell は ノースカロライナ州のソールズベリー出身のラッパーです。彼のキャリアはかなり浅く、ラップを始めたのは 2017年前半とかなり最近です。

実は彼、この浅く短いキャリアの中で一度だけ改名をしています。現在のステージネームの “Stunna 4 Vegas” という名義を使い始めたのは、 2018年に DaBaby をフィーチャーしたシングル『Animal』をリリースした時からで、それ以前は 「$tunna」 という名義のもとで活動していました。ちなみに各種プラットホームにて「$tunna」と検索していただければ、彼の古い作品を聴くことができます。

極端に音数の少ないビートの上で、一行一行、言葉という名の鋭い釘をハンマーでブッ刺していくような激しいラップ。それが彼の特徴であり、人気が出た理由です。多くの場合この手のスタイルは、荒々しさがポップさに勝ってしまい、メロディアスなスタイルなどに比べて倦厭されがちですが、Stunna の場合は一味違いました。荒々しいスタイルの中に、飛び跳ねるようにバウンシーなフロウを混ぜたり、声色に緩急をつけたりすることで、いい塩梅にG臭とポップさのバランスを取っています。

DaBaby との出会い

Stunna 4 Vegas のキャリアは、DaBaby と出会った時から大きく動き始めます。最近では、DaBaby が満を持してリリースしたアルバム『KIRK』の9曲目に収録されている『REALLY』 にもフィーチャーされていました。実際のところ私自身も DaBaby 経由で彼のことを知りましたし、Stunna のキャリアの中で DaBaby の存在はかなり大きいと考えられます。

彼が初めて DaBaby と共に制作した楽曲は、先ほども言及した「Animal」というシングルです。Stunna と DaBaby は両者ともにノースカロライナ出身であり、共通の知り合いであったDJ B Eazy の仲介によって出会ったそうです。

彼は Interscope Records の他に、DaBaby の主催する Billion Dollar Baby というレーベルに所属しています。何度も言いますが、 彼のキャリアに DaBaby は不可欠であり、その事実については 「Ashley」 という楽曲にて DaBaby 自身もこのようにラップしています。

I got my young n***a rich in six months

俺は6ヶ月の間に兄弟をリッチに変貌させたんだ

Stunna 4 Vegas – Ashley (feat. DaBaby)
MVもふざけまくってて、なかなか面白いので是非。

Stunna や DaBaby たちの MV は基本こんな感じのコミカルなスタイルで、Reel Goats というビデオチームによるものがほとんどです。Reel Goats によるビデオの特徴は、DaBaby の「BOP」のビデオに見られるような、ダンスを中心としたコミカルなスタイルですが、実はかなりの実力派集団で、DaBaby の「Intro」のビデオなんかを見てもらえれば、その映像技術の高さがお分りいただけると思います。

『Big 4x』

さて、話を今回の主役である Stunna 4 Vegas に戻します。

DaBaby との出会いから、Stunna 4 Vegas を取り巻く環境は劇的に変化していきました。そんな中、彼は2019年の5月に新しいプロジェクトである「Big 4x」をリリースしました。こちらのアルバムですが、DaBaby はもちろん、Lil Durk や Offset、Young Nudy などを客演として迎えつつ、プロデューサー陣はStunna が得意とする音数の少ないビートを得意とする Producer 20 や Jetsonmade などで固められています。

Lil Durk はシカゴ、Offset や Young Nudy はアトランタと、地域の垣根を超えたキャスティングなので、いろんなジャンルのラップが一枚のアルバムに集約されています。本当に聴いていて飽きないし、何よりも展開が予測できないので楽しいです。アルバムから少しだけご紹介いたしますので、まずはこちらをお聴きください。

お聴きいただいたのは「Big 4x」の中でも個人的おすすめ、Lil Durk との楽曲「Durkio」です。「Durkio」とは、Lil Durk のニックネームのようなものなんですが、客演のラッパーの名前をそのままタイトルにしてしまう大胆さが Stunna の性格を物語っています。こちらの楽曲で Stunna はこのようにラップしています。

I feel like Durkio, why? ‘Cause I signed to the streets
Lil Durk になった気分だ。なぜかって?ストリートと契約したからだよ

I can’t reply to no beef, I’m sendin’ lil’ nigga slang iron for me
喧嘩なんかに応えるはずがない。自己防衛のために武装した仲間を送り込むぞ

Stunna 4 Vegas – Durkio (feat. Lil Durk)

このラインは Lil Durk を客演に迎えたことを最大限に活かした良リリックですね。一行目は「Signed To The Streets」シリーズ (通称STTS) という Lil Durk によるシリーズアルバムの名称と、ストリートと契約を交わす (つまりギャングスタとして生きていく) ことをかけています。普通にラップしても秀逸なラインですが、Lil Durk 本人が客演として参加している楽曲でこれをラップすることによって、説得力が増し増しになっています。

Lil Durk による 「Signed To The Streets」シリーズ

『RICH YOUNGIN』

そしてそして、本日リリースされましたニュープロジェクト『RICH YOUNGIN』についてです。タイトルの「Rich Youngin」とは「金持ちの若者」を意味しており、ここ一年で急激にリッチになった彼にふさわしいタイトルだと思います。

客演は DaBaby に Lil Baby、Blac Youngsta、Offset の4人、通しの時間は30分きっかりとアルバム全体をミニマルに押さえ込んでいる印象を持ちました。

売れる前はゴリゴリだったのに、ある程度売れてしまうと番人ウケを狙ってかG臭が薄くなるラッパーって結構いるんですよね。G好きな私にとって、それはとても悲しいことなんです。ですが、Stunna の場合はそんな私をひとまず安心させてくれました。こちらは、先行シングルとしてリリースされていた Offset との楽曲「Up The Smoke」の一節です。

They wipe his nose if I say so
俺がそうしろって言ったら、仲間たちはあいつを殺すぜ

It’s a green light when I say go
俺が行けっていう時、信号が青に光ってるようにな

Stunna 4 Vegas – Up The Smoke (feat. Offset)

「Wipe someone’s nose」というスラングは、我らが Young Thug によって生み出されたギャングスタ・スラングの一つで、「対立するギャングの構成員を殺す」という意味があります。鼻水を拭いてあげる訳じゃありません。このラインで Stunna は彼の仲間が、彼に対して持っている忠誠心を、信号のたとえと絡めて強調しているんです。ギャングへの忠誠心を、ギャングスラングでラップしてくれたので、彼から漂うG臭がまだかなり強い事がわかり安心しました。

こちらも先述の Reek Goats によるビデオです。

アルバムを通して全体的に少しポップになった印象を持ちましたが、8曲目に収録されている『F*CKING UP FREESTYLE』では、依然として Stunna 独特の雰囲気を醸し出しています。こちらの楽曲は 10K.Caash や Splurge などと楽曲を制作している BeatByJeff というプロデューサーによって手がけられています。彼のビートは極端に音数が少なく、極限まで音が削ぎ落とされています。もともと、音数の少ないビートの上で激しいラップをする事が彼のアイデンティティだったので、ある意味原点回帰的な楽曲なのではないでしょうか。

まとめ

色々と書きましたが、伝えたいことはただ一つ。Stunna 4 Vegas は今年どんどん上がってきます。これからの彼の動向が楽しみです。この記事を読んで彼を知った方も、まだまだ遅くはありません。ぜひこちらのオリジナルプレイリストもチェックよろしくお願いします。

↓XXSオリジナルプレイリスト

https://music.apple.com/jp/playlist/stunna-4-vegas-richest-youngin-of-all-time/pl.u-xlyNAzdukDNrmK5?l=en

Quando Rondo – 2020年ブレイク必至の若きホープ

今週ニュープロジェクト『Diary of a Lost Child』をリリースしたジョージア州サバンナ出身のラッパー Quando Rondo。人気映画「Fast & Furious (ワイルドスピード)」の最新作のサウンドトラックにも参加するなど、活躍の場を広げ始めている彼の生い立ちやキャリア、魅力に迫ります。

Quando Rondo とは

Quando Rondo こと Tyquian Terrel Bowman はジョージア州サバンナ出身の20歳。Quando Rondo というステージネームは、幼少期のあだ名「Ty-Quando」と、彼の敬愛するバスケットボールプレイヤー「Rajon Rondo」からとったものだそうです。

Rajon Rondo(2020年現在ロサンゼルス・レイカーズ所属)

彼は10代前半頃から友人たちの死と直面するなど過酷な生活を送ってきました。Young Thug や Rich Homie Quan、Chief keef らの楽曲を聴いて育ったという彼の音楽の特徴は、ストレートなリリックと聞き心地の良いメロディアスなフロウです。歌うことから始めたという彼は、「ラップと歌の違いを明確にする必要はない」と語っており、R&Bとも解釈できる彼のスタイルは幅広い層に受け入れられています。今までヒップホップやラップというジャンルに抵抗があったという方にもオススメのラッパーの1人です。哀愁漂うビートに乗る彼の歌声には、一度聴くと病みつきになる中毒性があります。

キャリアの開始

ラッパーとして本格的に活動し始めたのは2017年頃とキャリアは浅い彼ですが、翌年2018年にはいきなりヒット作を世に送り出します。それがこの曲、Lil Babyを客演に迎えた『I Remember』です。

I Remember (feat. Lil Baby)

Quando の壮絶な人生を振り返るという内容の一曲。BPM50前後のゆったりとしたトラックに彼の歌心のあるフロウが映えます。アトランタの人気ラッパー Lil Baby の参加もあり、この曲で彼は一気に知名度を上げます。

YoungBoy Never Broke Again との出会い

Quando のブレイクを語るにおいて、YoungBoy Never Broke Again (以下 NBA YoungBoy) との出会いは欠かせません。

NBA YoungBoy (左) とQuando Rondo (右)

今や NBA YoungBoy のレーベル Never Broke Again にも所属している Quando ですが、二人の関係性は、NBA YoungBoy が Instagrem を通じて Quando に連絡をとったことから始まったそうです。「俺の才能を最初に見出したのは彼なんだ」と Quando が語るように、彼の NBA YoungBoy への信頼が厚いことが分かります。ちなみに、ラッパーとしてのキャリアでは NBA YoungBoy が先輩ですが、年齢は Quando が1歳年上です。

XXL のインタビューでも語るように、彼の1番お気に入りのジュエリーは NBA YoungBoy から貰ったチェーンだそうです。

この二人はラップスタイルも似ており、意気投合するのも納得です。NBA YoungBoy が 2018年にリリースしたミックステープ『4respect 4Freedom 4Loyalty 4WhatImportant』にはQuando が4曲に参加しています。

『Permanent Scar (feat. Young Thug & Quando Rondo)』

Kenny Beats と Cardiak がプロデュースを務め、Young Thug と Quando Rondoが客演参加した豪華な1曲。

この曲のタイトル『Permanent Scar (永久的な傷)』とは、NBA YoungBoy の額に残る傷を指しています。彼は4歳の頃、レスリング中に首を怪我してしまい、治療としてハローベストという器具を装着していたことで額に傷が残ってしまったそうです。

NBA YoungBoy の額の傷と、ハローベスト

今回の主役である Quando Rondo は、この曲で自身のロックスターのような生活をフレックスしています。

ミックステープのリリース

2018年、彼は二つのミックステープをリリースします。

『Life B4 Fame』

Lil Baby や Lil Durk、OMB Peezy らが参加した同テープは MyMixtapez にて、わすが二日間で100万回再生を記録。この『Life B4 Fame』というタイトルは、2015年に NBA YoungBoy がリリースした1stミックステープ『Life Before Fame』にあやかって付けられたものでしょう。ここでも NBA YoungBoy へのリスペクトが感じられます。

『Life After Fame』

Youngboy Never Broke Again や Rich Homie Quan、Boosie Badazz らが参加した2ndミックステープ。同作から1曲ご紹介させていただきます。

「Kiccin Sh*t」

YNW Melly の楽曲なども手掛ける EY3ZLOWBEATZ プロデュースによるトラックですが、彼は最初このビートが好みではなかったそうです。しかしレコーディングを進めるにつれてこのビートが自分に適していることに気づき、スタジオを去る頃には納得のいく曲が完成していたといいます。

I’m kickin’ shit in Givenchy, these ain’t no Foamposites 
おれはフォームポジット(ナイキのスニーカー)じゃなくジバンシーでキメるぜ

というフレックスで始まるフックが特徴的な楽曲。


I’m so crip, I take a shower with a blue rag
俺はクリップスだから青いラグでシャワーを浴びる
And I can’t walk up out my house without my blue flag 
そして俺は青い旗がないと家から出られねえ

このように自身が所属するギャング組織、クリップス (チームカラー:青) への忠誠を誓うラインも出てきます。Quando の甘い歌声とギャング臭漂うリリックが意外にも完璧にマッチしており、彼の魅力が最大限に発揮された1曲です。

ちなみにこの曲のフックで使われている彼のフロウは、Rich Homie Quan の楽曲『The Author』からの引用で、「ネクストRich Homie Quan」との呼び声も高い彼ならではのリファレンスです。

2018年12月には、カリフォルニア州ベイエリアのラップグループ SOB X RBE のツアーにオープニングアクトとして参加し、見る見るうちにファンベースを獲得していきました。

そして2019年、彼は満を持して3作目のミックステープをリリースします。

『From the Neighborhood to the Stage』

NoCap や Shy Glizzy、Blocboy JB、Polo G らが参加した3rdミックステープ。同作からも一曲ご紹介させていただきます。

『Gun Powder』

NBA YoungBoy やDaBaby、Rod Wave らへの楽曲提供でも知られる Tahj Money によるプロデュースのこのトラックは、なんと8ヶ月もの間 Quando のメールボックスに眠っていたものだったそうです。

同曲は、タイトルからも察しがつくように攻撃的なリリックが特徴的な一曲です。

I don’t know shit about no murder, gotta keep my mouth closed
俺は殺しについて何も知らない、口をつぐむぜ
Just got a brand new Desert Eagle with a cutter that fold
新しいデザートイーグル(自動拳銃)と、アサルトライフル
Shower in bleach, rip up the car, make sure you burn all the clothes
(痕跡が残らないように)漂白剤で車を洗い、服を全部燃やす
My youngin’ down to shoot to kill just for a line of some coke
俺の連れはコカインを楽しむためだけに人を撃ち殺す
Sendin’ texts to all the opps like yeah we want all the smoke
早くお前らを殺して一服したいだけ、と敵にメールする
We up by six, they down by two, they need the go fix the score
少人数だが、お前らをやっちまうぜ
Pop out wit’ poles,
アサルトライフルの銃声を響かせる
told ’em I won’t spare no kids or no hoes
ガキでも女でも容赦しねえ
Foot on the pedal, heavy metal, send some shots through yo’ clothes
引き金を引いて服の上からぶち抜いてやる

なんとも恐ろしいリリックですが、彼は「殺人についてのリリックは必ずしも真実に基づいたものではなく、皆んなに求められているから書いているだけ」と保険をかけています。真偽がどうであれ、こういったリリックのスリル感を味わうのもヒップホップの楽しみ方の一つではないでしょうか。

ここまでの3作のミックステープのタイトル [『Life B4 Fame (名声を得る前の人生)』Life After Fame (名声を得てからの人生)』From the Neighborhood to the Stage (地元からステージへ)」]』からも、彼が2018年から2019年にかけて一気にブレイクを果たしたことが伺えます。

デビューアルバムのリリース

2020年1月、Quando は待望のデビューアルバム『QPac』をリリースしました。

このファン待望のデビューアルバムには、彼自身の内面的な成長が大きく反映されています。

昨年第一子が誕生し、父親となったQuandoは、『Letter To My Daughter』にて娘への愛を歌います。

I done dedicate my whole heart to you, girl

俺の心を君に捧げるよ
You’re the only one know how I feel

俺の気持ちをわかってくれるのは君だけなんだ
Run it up to just buy the whole world

全てを手に入れよう
I don’t care if it cost a hunnid mill’

それがいくらしたって気にしないさ
Want you to know you the only one

君は唯一の存在だってことを分かって欲しいんだ
Made me change the way that I live

俺の生き方を変えてくれたのは君だから
As a child, promise you’ll have fun

君が立派になるまで、楽しませ続けると誓うよ
Ain’t gotta worry ’bout a dollar bill

金のことだって心配いらないさ

Letter To My Daughter
娘を抱くQuando

このような愛に溢れたメッセージがアルバムの随所に見られ、父親として一皮向けた彼の成長が見受けられます。7曲目『Marvelous』に参加している Polo G のヴァースから言葉を借りると、「That gang sh*t a joke, n***a, all you got is familyギャングシットなんてジョークさ、あんたが手に入れたのは家族なんだ」の一言に尽きます。愛する妻と娘に恵まれ、生き方を考え直した Quando Rondo の今後に注目です。

終わりに

今回はジョージア州サバンナ出身のラッパー、Quando Rondo についてまとめました。彼の不良少年臭漂う見た目からは想像できない歌心のある優しいフロウ、ご堪能いただけましたでしょうか。

人気映画「Fast & Furious (ワイルドスピード)」のサウンドトラックに参加したり、今週 (2020年8月26日) にはニュープロジェクト『Diary of a Lost Child』をリリースしたりと、今後の彼の活躍からますます目が離せなくなりそうです。

Written by Riku Hirai