2021年リリース予定の注目ヒップホップ・アルバム

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Drake『Certified Lover Boy』

カナダ・トロントのラッパー Drake の6枚目のスタジオ・アルバム。2019年4月に初めてアナウンスされた同アルバムは、前作『Scorpion』のリリースから約2年半の月日を経て今年の1月にリリースされる予定。先行シングル『Laugh Now Cry Later』に参加した Lil Durk に加え、Roddy Ricch や Jessie Rayez らの参加が噂されている。

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J. Cole『The Fall Off』

ノースカロライナ州ファイエットビルのラッパー J. Cole の6枚目のスタジオ・アルバム。2018年リリースの前作『KOD』に『1985 (Intro to “The Fall Off”)』というアウトロ曲が収録されたことをはじめに、2019年11月には Cole が Day N Vegas Music Festival にて2020年内のアルバムリリースをアナウンス。

しかし2020年には、Cole はシングル2曲を発表するものの、結局アルバムがリリースされることはなかった。彼は『The Fall Off』の他にも『The Off Season』や『It’s A Boy』といったプロジェクトのリリースも示唆している。

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Travis Scott『Utopia』

テキサス州ヒューストンのラッパー Travis Scott の4枚目のスタジオ・アルバム。大ヒットを記録した前作『ASTROWORLD』のリリース以降、McDonald’s や PlayStation とのコラボレーションを果たすなど音楽活動以外でも活躍を見せてきた Travis は、2020年7月にニューアルバムのタイトルを発表。同年10月には、ラジオDJに向けて送った手紙にて、アルバムを2021年にリリースすることを仄めかした。先行シングル『FRANCHISE』に参加した Young Thug や M.I.A.、Future らに加え、Roddy Ricch や Don Toliver、Kevin Parker、Hit-Boy らの参加が噂されている。

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Migos『Culture Ⅲ』

ジョージア州ローレンスビルのヒップホップ・トリオ Migos の4枚目のスタジオ・アルバム。2018年、メンバーの Quavo が「アルバムを2019年の頭にリリースする」と発言して以降、これまで幾度となくリリースが延期されてきた同アルバムは、Migos の『Culture』シリーズの最終章になる予定。彼らによると、アルバム名を変更する可能性や、別のプロジェクト『Quarantine Mixtape』を先にリリースする可能性もあるという。

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Young Thug『Slime Language 2』

ジョージア州アトランタのラッパー Young Thug (& YSL Records) の2枚目のコンピレーション・アルバム。2020年5月に、YSL Records 所属のラッパー Gunna がアルバムの存在を明かした後、Young Thug 本人も Twitter にて「#Slimelanguage2 8-16」とツイートしアルバムのリリースを仄めかした。Young Thug の誕生日であり、前作『Slime Language』のリリースから2周年でもあった8月16日にも、噂されていたブラックフライデーにも結局アルバムがリリースされることはなく、12月に先行シングル1曲が発表された。同アルバムには YSL Records 所属のアーティストに加え、Nav や Roddy Ricch、Lil Uzi Vert、Juice WRLD、Future、Lil Baby、Swizz Beats らの参加が噂されている。

Written by Riku Hirai

Playboi Carti『Whole Lotta Red』リリースまでの軌跡

これまで幾度となくリリースが延期されてきた Playboi Carti のニューアルバム『Whole Lotta Red』。今回は、その存在が明かされてから2年以上の月日を経て本日遂にリリースされた同アルバムの歴史について振り返ります。

2018年: ニューアルバムの告知

2018年8月、Playboi Carti (以下 Carti) はニューアルバム『Whole Lotta Red』の存在を明かします。

俺の次のアルバム (タイトル) は『Whole Lotta Red』だ

この『Whole Lotta Red』とは、Carti が所属するストリート・ギャング Bloods のチームカラーと、咳止めシロップ (通称: リーン) の色を指しています。

2019年: 未発表曲のハイプとリリース詐欺

2019年3月、Carti は GQ 誌にて、Louis Vuitton のアーティスティック・ディレクターとして知られる Virgil Abloh を同アルバムのクリエイティブ・ディレクターに任命したことを発表します。

この発表と同時期に、Young Nudy、Playboi Carti、Pi’erre Bourne による未発表曲『Pissy Pamper (Kid Cudi)』が、Young Nudy の友人の Instagramライブにてプレビューされ、ファンの間で大きな話題となります。

Pi’erre Bourne がプロデュースを手掛ける同曲では、山根麻衣『たそがれ』がサンプリングされています

Young Nudy と Pi’erre Bourne のアルバム『Sli’merre』に収録予定だった同曲は、Instagramライブでのプレビュー後ハッカーによって直ちにリークされ、更には Carti も自身のライブ (Rolling Loud) で披露するなど、瞬く間に人気を獲得します。

その結果、未リリースにも関わらず非公式のリーク音源が Spotify の US Viral 50チャートにて1位を獲得しました。

6月には The Fader 誌にて、Trippie Redd や Gunna、Pi’erre Bourne、Don Cannon、Maaly Raw、Richie Souf、Roark Bailey らが同アルバムに参加していることを発表。

そして7月には、ウィスコンシン州ミルウォーキーで行われたライブにて、Carti は本格的にアルバムのリリースを告知します。

60日以内にニューアルバムをリリースしようとしている

嘘はつかないよ

(中略)

ノーフィーチャー (客演無し) だ

しかし結局、2019年内にアルバムがリリースされることはなく、客演参加を除いて自身の楽曲を1曲もリリースしない1年となりました。

2020年: 『Whole Lotta Red』のリリース

2020年1月、Carti は Culture Kings でのインタビューにて、2020年にアルバムをリリースすることを発表します。

準備は出来ている

俺は皆んな以上に準備万端だよ

俺がラップできることを世間に分からせてやるんだ

やばいラインが揃ってる

それが『Whole Lotta Red』だ

同年4月、Carti はシングル『@ MEH』をリリース。同曲は Billboard Hot 100にて最高35位を記録するものの、各方面から酷評を受け、最終的にアルバムには未収録となりました。

『@ MEH』のリリースから約1ヶ月後、Drake との楽曲『Pain 1993』をリリース (Drake『Dark Lane Demo Tapes』収録)。同曲が Billboard Hot 100にて7位デビューを飾り、Carti は自身初のTOP10入りを果たします。

そして11月、Carti はアルバムが完成したことを Instagram にて発表します。

12月にはヒップホップ・パーソナリティの DJ Akademiks が、『Whole Lotta Red』はクリスマス (12月25日) にリリースされると公言します。

https://twitter.com/akademiks/status/1337223450927239168?s=21

Carti のファン達にこの情報を届けるために、俺は文字通り魂を売ったよ

今夜 Carti のアルバムはリリースされないけれど、クリスマスにリリースされる予定だ

そして、Kanye West と一緒に Givenchy のデザイナーである Matthew Williams がエグゼクティブプロデューサーを務めているらしい 独占情報だ

DJ Akademiks は Twitch のライブ配信にてこの情報を先行公開し、その配信時の音声が『Whole Lotta Red』収録の『Control』のイントロにそのまま使用されました

12月21日、Carti は DJ Akademiks の発言通り、クリスマスにアルバムをリリースすることを正式発表します。

https://twitter.com/playboicarti/status/1341250702169935872?s=21
https://twitter.com/playboicarti/status/1341249071030267905?s=21
『Whole Lotta Red』のカバーアートは、70年代後半に出版されていたパンクロック雑誌『Slash Magazine』の表紙をオマージュしたもの

そして本日12月25日、Playboi Carti は遂にニューアルバム『Whole Lotta Red』をリリースしました。

世界中のヒップホップ・ファンが待望していた同アルバムには、Kanye West や Kid Cudi、Future ら大物ゲストが参加し、プロダクションには F1lthy や Wheezy、Pi’erre Bourne、Richie Souf、Roark Bailey、Maaly Raw、Starboy、Art Dealer、Outtatown らがクレジットされています。24曲1時間超えというボリューミーな今作には、比較的最近レコーディングされたと思われる楽曲に加え、過去にリーク済みの楽曲も数曲収録されました。

リリース前に噂されていた Travis Scott や Post Malone、Lil Uzi Vert らとの楽曲や、前述した『Pissy Pamper (Kid Cudi)』に Kid Cudi 本人が参加したアップデートバージョン等は未収録だったため、今後それらを収録したデラックス盤がリリースされる可能性は高いでしょう。

https://twitter.com/playboicarti/status/1341487626344308736?s=20

おわりに

今回は、Playboi Carti のニューアルバム『Whole Lotta Red』のリリースを記念して、2年以上に及ぶアルバムリリースまでのプロセスを振り返ってみました。

「60日以内にリリースする」「嘘はつかない」などと発言しながらアルバムリリースを延期し、2018年から本日までファンを焦らし続けた Playboi Carti。今年の年末年始は、そんな彼の待望の新作『Whole Lotta Red』の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

Written by Riku Hirai

注目ラッパー特集【カナダ・トロント編】

現行ヒップホップシーンのスーパースター Drake の出身地として知られるカナダ・トロント。今回は、そんなトロントのヒップホップシーンを盛り上げる注目ラッパーを数名ご紹介します。

LB SPIFFY

Jane and Finch 出身のラッパー。幼い頃から趣味として音楽制作を始め、SNS を通してファンベースを築いてきた彼は、14歳の頃にリリースした楽曲『No Time』が人気ゲーム『NBA 2K』で使用されたことをきっかけに注目を浴び始めます。キャリア初期から着実に人気を獲得してきた彼は、Drake や Kylie Jenner らにフックアップされるなど今最も注目されているトロントのラッパーの1人で、高めの声で歌うナヨナヨとしたラップが特徴的です。

LocoCity

Bleecker Street 出身のラッパー。2018年頃から楽曲をリリースし始めた彼は、『Do Sum』や『Krazy』等のシングルのバイラルヒットにより人気を獲得し、2019年にはデビュープロジェクト『Save Yourself』をリリースしています。歌心のあるラップ・シンギングが魅力的なラッパーです。

Lil Berete

Regent Park 出身のラッパー。素行の悪さが理由で、8歳の頃から約4年間、母国であるギニア共和国で叔母と共に暮らしていたという彼は、12歳の頃にカナダに帰国し、2017年に音楽活動を開始します。キャリア初期にリリースした『Turn Up』や『Real』等のシングルで注目を集め、2018年にはデビュープロジェクト『Icebreaker』をリリース。2019年リリースのセカンドプロジェクト『1 Way Out』には Calboy に加え Loski や Headie One らイギリスの人気ラッパーを客演に招くなど、現在多方面から注目されているラッパーです。ストリートライフを歌うリリックと、Lil Durk を思わせる高音フロウが特徴的です。

Clairmont The Second

Weston 出身のラッパー/プロデューサー。2013年に音楽活動を開始し、ライティングからプロデュース、ミキシングまで全て1人でこなす彼は、2017年リリースのアルバム『Lil Mont from the Ave』で一躍ブレイクを果たします。同作は Juno Awards (カナダの音楽賞) の「Rap Recording of the Year」にノミネートされ、更に2019年には同作収録の『Gheeze』が Prism Awards (同じくカナダの音楽賞) の「Hi-Fidelity Award」を受賞しました。トラップやジャズ、ゴスペルなどの要素をミックスした多彩なプロダクションや、スキルフルなラップ、落ち着いたヴォーカルが魅力的なラッパーです。

Smiley

Pelham Park 出身のラッパー。同郷トロント出身のスター Drake が、Pusha T とのビーフの際に Smiley の楽曲のリリックを引用したアンサー動画を公開し、彼は一躍注目を浴び始めました。更に Drake はアルバム『Scorpion』の制作時に影響を受けた作品の1つとして Smiley の EP『Buy. or. Buy』を挙げています。憂いを帯びた高めの声でフッドのストリートライフについてラップするスタイルが魅力的なラッパーです。

Sean Leon

Parkdale 出身のラッパー/シンガー/プロデューサー。彼は、同じくトロント出身のシンガー Daniel Caesar も所属していたレーベル IXXI initiative を2012年に立ち上げた後、その非凡なプロダクションと音楽性によってアンダーグラウンドを中心に人気を獲得。独自のスタイルを貫く実験的なサウンドが魅力的で、Kanye West のアルバム『Jesus Is King』の制作にも携わっています。キャリアも長く、既にプロデューサーとして成功を収めている彼ですが、今後ラッパー/シンガーとしても更に活躍すること間違いなしでしょう。

おわりに

今回はカナダ・トロント出身の注目ラッパーを数名ご紹介させていただきました。トロントのヒップホップシーンは現在、各々が独自のサウンドを模索することによって急成長しており、今後の更なる発展が期待されています。今回ご紹介したラッパー以外にもトロントには才能溢れるアーティストが沢山いますので、是非この機会にチェックしてみてはいかがでしょうか。

Written by Riku Hirai

アメリカ大統領選挙とラッパーたち

米時間11月3日に開票が予定されているアメリカ大統領選挙。世界中が注目する同選挙の開票に合わせて、Donald Trump 氏と Joe Biden 氏の2人の候補者に対するアメリカのラッパーたちの動向をチェックしておきましょう。

Joe Biden 支持

Snoop Dogg

I ain’t never voted a day in my life,

俺は人生で1度も投票に行ったことがないんだ (犯罪歴が理由で選挙権がなかったとのこと)

but this year I think I’m going to get out and vote

でも今年は行くつもりだ

because I can’t stand to see this punk in office one more year

これ以上ホワイトハウスのクソ野郎に耐えられないからね

Eminem

Eminem は Biden 氏の選挙コマーシャルに自身のヒット曲『Lose Yourself』を提供。

2 Chainz

I think this next administration that I support, which is Biden/Harris,

俺は Biden と副大統領候補 Kamala Harris を支持するよ

they offer something different.

彼らは Trump とは違う政策を行うはずだ

Cardi B

I have a whole list of things that I want our next president to do for us.

私は次期大統領にしてほしいことのリストを持っている

But first, I just want Trump out,

でもまずは Trump を追い出さなきゃいけない

Kid Cudi

Vote for Biden if you a real one

もしお前がリアルなら、Biden に投票しろ

Offset

Go vote @joebiden …..@common & I performed his rally in Atlanta.

Biden に投票してくれ

Common と共に、アトランタで開催された彼の選挙集会でパフォーマンスをした

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Go vote @joebiden ….. @common & I performed his rally in Atlanta

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Common

To be honest, Joe Biden made mistakes like any other human being,

正直に言うと、Biden は過ちを犯してしまったんだ

But I still believe he cares and we’ve all made bad decisions.

でも俺たちだって間違った決断をすることはあるし、今でも彼を信じている

He has the leadership qualities to get in a better direction.

彼はこの国を良い方向に導けるリーダーシップを持っている

PEOPLE

Donald Trump 支持

Lil Wayne

Just had a great meeting with @realdonaldtrump @potus besides what he’s done so far with criminal reform,

トランプ大統領と面会し、彼が成し遂げてきたことについて話し合った

the platinum plan is going to give the community real ownership.

「プラチナ・プラン」はコミュニティに本物の権利を与えてくれるものだ

He listened to what we had to say today and assured he will and can get it done.

彼は俺たちが主張すべきことを聞き入れてくれたし、それを実行することも、成し遂げることも保証してくれた

※ プラチナ・プランは、アフリカンアメリカンのコミュニティーに約53兆円を投じ、雇用創出や教育、医療においての格差解消を図り、KKK (Ku Klux Klan) やアンティファをテロ組織に指定することや、奴隷解放日である6月19日を祝日とすることなどを公約したもの。
https://twitter.com/liltunechi/status/1321941986174226432?s=21

Lil Pump

Mr. President, I appreciate everything you’ve done for our country,

ミスター・プレジデント、我が国のために尽くしてきてくれた全ての功績に感謝します

You brought the troops home and you’re doing the right thing.

あなたは軍隊を国に連れ返し、正しいことをしてきた

MAGA ’20, ’20, ’20. Don’t forget that!

MAGA (Make America Great Again) 2020 だ よく覚えておけ

And do not vote for Sleepy Joe, at all!

そして Biden には絶対に投票するな

6ix9ine

I don’t think Trump trolls

俺は Trump が悪い奴だとは思わないし

I think Trump is genuinely Trump.

彼のことを本物だと思うぜ

I get compared to Trump every day.

毎日彼と比べられるけど

But I love Mexican people.

俺はメキシコ人を愛しているし

I don’t think we’re the same.

俺たちが同じだとは思わないよ

I would vote for Trump.

俺は Trump に投票する

the New York Times

Asian Doll

I rather trump be the president then that other dude fasho

他の候補者が選ばれるぐらいなら、Trump に再選してほしい

UKラップシーンを牽引する若手アーティストたち

ロードラップやグライム、UKドリル、アフロスウィング (アフロバッシュメント)、UKトラップ (トラップウェイブ) など、多様なスタイルで進化を遂げてきたイギリスのラップシーン。近年、本場USシーンとのクロスオーバーが増えてきたこともあり、世界中からますます注目を浴びるUKラップシーンの注目若手アーティストを数名ご紹介します。

1. Octavian

Octavian こと Octavian Oliver Godji はアンゴラ共和国にルーツを持つ、フランスはリール出身の24歳 (’96年生まれ)。父親が亡くなった後、彼はロンドンに移住します。後にラッパーを目指すため退学することとなるのですが、名門ブリットスクールに在籍した経歴を持ちます。Virgil Abloh 手掛ける Louis Vuitton のランウェイを歩いたことでも有名です。

Louis Vuitton 2019 Spring/Summer Collection
Louis Vuitton 2019-20 Autumn/Winter Collection

トラップから R&B、ダンスホールなどを行き来するジャンルレスなスタイルや、卓越したリリシズム、ハスキーな歌声など様々な魅力を持つ彼は、Drake に才能を見出されたことをきっかけに、現在では UKシーンのみならず USシーンでも活躍しています。

Octavian の代表曲

Lightning

2018年リリースのミックステープ『SPACEMAN』収録。人気サッカーゲーム『FIFA 19』のサウンドトラックにも収録され話題となりました。

Bet (feat. Skepta & Michael Phantom)

2019年リリースのミックステープ『Endorphins』収録。洗練されたミニマムなトラップビートと癖になるフロウが印象的な1曲です。

2. Dave

Dave こと David Orobosa Omoregie はサウスロンドンはストリータム出身の21歳 (’98年生まれ)。Stormzy や Lana Del Rey、Pink Floyd など様々なジャンルの音楽を聴いて育ったという彼は、母親からのプレセントをきっかけにピアノを弾くこともできます。彼は2019年リリースのデビューアルバム『PSYCHODRAMA』でマーキュリー賞を受賞するなど、今最も注目されているアーティストの1人です。

Tuesday, 23rd of January, 2018
2018年1月23日火曜日
I’m here with David
私は Dave とここにいる
This is our first session
これが我々の最初のセッションだ
We’re just gonna talk about your background
君のバックグラウンドの話から始めるとしよう
Where you’re from, any issues you’ve been dealing with
君がどこから来たのか、どんな問題に対処してきたのか
So, where should we start?
さあ、どこから始めようか

演劇の枠組みと技法を用いた心理療法を指す『PSYCHODRAMA』というアルバムタイトルの通り、1曲目『Psycho』はセラピストのセリフで始まります。心に不安を抱える彼はまさに同アルバムを通して PSYCHODRAMA を試みているのです。この彼のデビュー作は、コンセプトはもちろんのこと、ストーリー性、トラック、ワードプレイなど全てにおいて申し分のない仕上がりとなっています。

Dave の代表曲

Location (feat. Burna Boy)

ナイジェリアのレゲエ/ダンスホール・シンガー Burna Boy を客演に迎え、ラッパーとして成功してからの生活について歌った1曲。ラッパーお得意のフレックス (自慢) を中心としたありがちな内容ですが、彼は巧妙なワードプレイで魅了します。

Look, money like the alphabet
見ろ、金はアルファベットのようだ
If you wanna see P’s, gotta pass on the ends
金が欲しいなら最後までやり抜かなければならない


※P (Paper, Poundsを指す) は金を表すイギリスのスラング。

「P (金) が欲しいなら最後までやり抜かなければならない」「アルファベットの「P」は「N」(ends を「エヌ」と発音している) を通り越さないと現れない」という2つの意味を掛けたワードプレイ。意味をしっかり通してストーリーを進めつつ、随所にハイレベルなワードプレイを織りまぜるという、彼の類い稀なリリシズムが存分に発揮された作品です。

3. Lancey Fouxx

Lancey Foux (本名不詳) は、イーストロンドンはニューアム出身の24歳 (’95年生まれ)。彼は、Future や Young Thug ら USラッパーからの影響を強く感じさせる、オートチューンを効かせて歌うラップスタイルを得意とします。Playboi Carti のベイビーボイスに近いようなフロウも取り入れており、US と UKのシーンの架け橋的存在に成りうるラッパーです。Travis Scott のニューシングル『FRANCHISE』のリミックスへの参加も噂されており、今後彼の名前を耳にする機会は間違いなく増えるでしょう。

また彼は、A-Cold-Wall* や Astrid Andersen などイギリス発祥のファッションブランドのランウェイモデルを務めるなど、ビジュアル面でも注目されています。

A-Cold-Wall*’s National Gallery (AW18) Collection
Astrid Andersen 2019 Fall Collection

Lancey Foux の代表曲

No Intro

Skepta『I’m There』の一節を引用した「No introduction needed, I’m a genius」というラインから始まる『No Intro』。程良く不思議なトラックと、中盤のダミ声フロウが癖になる1曲です。

India

Playboi Carti『Foreign』のメロディを逆再生したビートを用いた『India』。キャッチーなフロウはもちろんのこと、シンプル且つ真理をついたフックにも注目です。

4. slowthai

slowthai こと Tyron Kaymone Frampton はノーサンプトン出身の24歳 (’94年生まれ)。彼は、3歳の頃に父親が失踪してから、母親と四人の姉妹とともに生活していました。彼には弟もいたのですが、筋ジストロフィーを患いわずか1歳で息を引き取っています。この出来事は彼の人生に大きな影響を及ぼしたといいます。いわゆる労働者階級に属していた slowthai は、大学卒業後一時は働いていましたが、勤め先の売上金を友人らに横流ししたことで解雇されました。高校時代から音楽技術を学び、音楽制作に夢中になっていた彼は、この解雇をきっかけに本格的に音楽活動に取り組むようになります。

UKグライム、UKガラージを軸にしたデビューアルバム『Nothing Great About Britain』では、労働者階級出身の彼の目線から見たイギリス像が描写されており、各方面から高い評価を得ました。

slowthai の代表曲

Inglorious (feat. Skepta)

デビューアルバム『Nothing Great About Britain』収録の『Inglorious』。Stanley Kubrick の名作『時計じかけのオレンジ』をオマージュしたミュージックビデオでも話題となりました。

同ミュージックビデオでは、映画『時計じかけのオレンジ』の「ルドヴィコ療法」(洗脳に近い治療法) の実行シーンを再現しています。この治療を受ける slowthai は「GRATE BRITAIN (素晴らしいイギリス)」というワードを見続けることによって洗脳されるのですが、彼にとっての「GRATE BRITAIN」とは「ルドヴィコ療法のような洗脳を行う者がいない国」であったため、治療を施した人物を殺してしまうという皮肉の効いたストーリーです。

5. Little Simz

Little Simz こと Simbiatu Abisola Abiola Ajikawo はナイジェリアにルーツを持つノースロンドンはイズリントン出身の25歳 (’95年生まれ)。アフロビート、レゲエ、ヒップホップ、UKガラージなど様々なジャンルを聴いて育った彼女は、15歳の頃に初めて自身のミックステープをリリースします。Kendrick Lamar も絶賛するほどの非凡な音楽的才能を兼ね備えた彼女は、ヒップホップからジャズ、ファンク、アフロビート、レゲエ、グライムなど様々なトラックの上でスキルフルなラップを披露します。彼女自身も「自分をフィメールラッパーだと思っていない」と語るように、これまで存在してきた「フィメールラッパー」という括りには収まらない実力の持ち主です。

Little Simz の代表曲

Selfish (feat. Cleo Sol)

最新アルバム『Grey Area』収録の『Selfish』。「Selfish」とは「自分勝手、わがまま」という意味ですが、彼女曰く同曲では「自分を大切に」という意味で用いているそうです。ジャジーなトラックと彼女の表現力が魅力的な1曲です。

Written by Riku Hirai

21 Savage & Metro Boomin – アトランタが誇るトラップ最高峰タッグ

今週金曜日にジョイント・アルバム『Savage Mode Ⅱ』のリリースを控える 21 Savage と Metro Boomin。世界中のヒップホップファンが待望する同アルバムのリリースに先立って、彼らのキャリアや魅力について振り返っておきましょう。

21 Savage

1992年10月22日にイギリスのロンドンで生を受けた 21 Savage (21サヴェージ) こと Shéyaa Bin Abraham-Joseph は、7歳の頃に母親と共にアメリカのジョージア州アトランタに移り住みます。2005年には故郷ロンドンに1ヶ月程滞在、その後アメリカに再入国し、以降はアメリカで生活していた彼ですが、当時取得していたビザはアメリカ入国後約1ヶ月で期限が切れており、2019年に不法滞在の疑いで逮捕されるという事件もありました。

逮捕時のマグショット (2019)

7th grade (日本の中学1年生にあたる) の頃には、21 Savage は銃の所持で地域中の全ての学校から永久追放を言い渡され、ギャングの世界に足を踏み入れることとなります。ドラッグディールや強盗など非行を繰り返していた彼は、2013年に敵対するギャングメンバーから銃撃を受け、親友を失いました (彼自身も6発の銃弾を浴び、当時は死も覚悟したそうです)。この日が彼の21歳の誕生日であったことが、彼の名前 21 Savage の由来です。

親友の死を受けてラップを始めた 21 Savage は、2015年にデビューミックステープ『The Slaughter Tape』をリリース。タイトルからも察しがつくように、アトランタのトラップとシカゴのドリルをミックスしたかのような暴力的なサウンドとリリックが話題を呼び、Sonny Digital や Metro Boomin といった大物プロデューサーと繋がります。

同年には、Sonny Digital とのジョイントEP『Free Guwop』とセカンド・ミックステープ『Slaughter King』をリリースしました。

キャリア開始以降コンスタントに楽曲をリリースしてきた 21 Savage は、2016年、XXL Freshman Class に選出されます。

XXL 史上最も高い人気を博す同サイファーで一躍注目を浴びた 21 Savage は、同年 Metro Boomin とのジョイントEP『Savage Mode』をリリースします。

このEPで成功を収めた彼は、2017年に Epic Records とサインし、デビューアルバム『Issa Album』をリリース。同アルバムは US Billboard チャートにて2位デビューを飾り、更にその後リリースされた Post Malone との楽曲『Rockstar』は Billboard Hot 100 にて最高1位を記録しました。

同年末には Offset、Metro Boomin とのコラボ・アルバム『Without Warning』をリリース。

翌2018年末には Travis Scott や Childish Gambino、Post Malone らをはじめとする豪華ゲストを客演に招いたセカンド・アルバム『I Am > I Was』をリリース。初週13万1千ユニットを売り上げ、見事 US Billboard チャート1位デビューを飾った同アルバムは、2020 Grammy Awards のベスト・ラップアルバムにもノミネートされました。

Metro Boomin

1993年9月16日にミズーリ州セントルイスで生を受けた Metro Boomin (メトロブーミン) こと Leland Tyler Wayne は、母親にパソコンを買ってもらったことをきっかけに、13歳の頃にトラックメイクを始めます。高校生の頃には、FL Studio の前身である FruityLoops を用いて、毎日5つものビートを制作していたそうです。Twitter をはじめとする SNS を用いてラッパーとのコネクションを築き始めた彼は、実際に彼らと仕事をするために、母親に地元セントルイスからジョージア州アトランタ (車で片道約8時間) まで頻繁に送ってもらっていたといいます。

Metro Boomin 曰く、最初に彼のビートを使ってラップをした有名なアーティストは OJ Da Juiceman だそうです。彼はこのコネクションをきっかけに、高校3年生の頃には Gucci Mane と繋がり、高校卒業後にはアトランタに移りました。アトランタに移住後、彼はカレッジに進学するものの音楽活動に専念するために1セメスターで退学。その後、Jeezy や French Montana、Ludacris、Future など名だたる著名アーティストとのコラボを果たした彼は、2013年に Gucci Mane や Future、Young Thug らを客演に招いたデビュー・ミックステープ『19 & Boomin』をリリース。

その後 Future の楽曲を多数手掛けるようになった Metro Boomin は、2015年には Drake と Future のジョイント・ミックステープ『What a Time to Be Alive』のエグゼクティブ・プロデュースを務めるなど、一躍大物プロデューサーの仲間入りを果たしました。

2016年には、Future の『Low Life (feat. The Weeknd)』や Migos の『Bad and Boujee (feat. Lil Uzi Vert)』、Kanye West の『Father Stretch My Hands, Pt. 1』など、数々のヒット曲を生んだ Metro Boomin は、21 Savage とのジョイントEP『Savage Mode』もリリースし、BET Hip Hop Awards にて最優秀プロデューサー賞を受賞しました。

2017年には、NAV との『Perfect Timing』、21 Savage & Offset との『Without Warning』、Big Sean との『Double Or Nothing』の3つのコラボ・プロジェクトをリリース。

飛ぶ鳥を落とす勢いでシーンのトップに駆け上がってきた Metro Boomin ですが、2018年、彼はSNSにて音楽活動の引退を表明します。

しかしその数ヶ月後、Nicki Minaj や Lil Wayne のニューアルバムに参加し、更には自身のソロデビュー・アルバム『NOT ALL HEROES WEAR CAPES』をリリース。同作は見事 US Billboard チャート1位デビューを飾りました。

  • Metro Boomin のプロデューサー・タグ一覧
  • Ayy, Lil Metro on that beat (by Kodak Black)
  • If Young Metro don’t trust you, I’m gon’ shoot you (by Future)
  • Metro (by Young Thug)
  • Metro be boomin’ (by Rich the Kid)
  • Metro Boomin want some more, n***a (by Young Thug)
  • This beat is so, so Metro (by Young Thug)
  • Young Metro, Young Metro, Young Metro (by Future)

21 Savage と Metro Boomin の共演楽曲

ここからは、21 Savage と Metro Boomin の共演楽曲を数曲ご紹介します。今週末の『Savage Mode Ⅱ』のリリースに備えて、今一度彼らの過去作を振り返ってみましょう。

21 Savage – Drip (prod by TM88 & Metro Boomin)

I’m in the kitchen cooking crack like its bacon, 

キッチンでベーコンみたいにクラック (コカイン) を調理している

these p***y ass rappers they be faking

あいつらクソ共はフェイクだ

I’m 21 Savage ain’t no faking,

俺は 21 Savage、本物だぜ

AK-47 get the shaking

AK-47 が身震いしている

2人の初期コラボ曲。21 Savage は現在のスタイルより高めのトーンでラップし、TM88 と Metro Boomin が手掛けるシンプルかつ不穏なビートが 21 Savage のラップの緊張感を助長しています。

21 Savage – Supply (prod by Metro Boomin, Southside & Sonny Digital)

I am 21, young savage

俺は21歳 若い「savage (野蛮、冷酷)」だ

Try me, and you’re going to hell

かかってこいよ 地獄行きだぜ

気怠そうな声で淡々とラップするイメージのある彼ですが、この楽曲では高めの声や変則的なフロウを用いており、Metro Boomin を含む人気プロデューサー3人が手掛ける邪悪なビートと 21 Savage の遊びのあるラップが上手くマッチした1曲です。

21 Savage – Deserve (prod by Metro Boomin)

Me and Johny tried to rob everything

Johny と一緒に全てを盗もうとしていた (*1)

Mookie tried to tell us, do the right thing

Mookie は俺たちに「正しいことをしろ」って言ってたんだ

Larry died man I cried twice

Larry が死んだ時、2回泣いた

(中略)

RIP Tayman that’s why I got that knife

Tayman、安らかに眠ってくれ 俺もナイフのタトゥーを入れたよ (*2)

I don’t get excited about the fame

名声なんてどうだっていい

B***h I’m still with the same gang,

俺は今でも同じギャング (ブラッズ) に所属している

b***h I still claim the same thing

今でも俺の主張はあの頃のままだ

(*1) 21 Savage の親友 Johny は、この強盗の最中に銃撃を受け亡くなった。

(*2) Tayman は 21 Savage の実の弟。21 Savage の額のダガー (ナイフ) のタトゥーは、ドラッグディール中に銃殺された Tayman の額に入っていたもの。

弟や友人を失った悲しい過去を歌った1曲。Metro Boomin の感傷的なビートに乗る 21 Savage の泣き声に近いラップから、彼が生きてきたストリートライフの過酷さが鮮明に伝わってきます。

21 Savage & Metro Boomin – No Heart

You was with your friends playin’ Nintendo

お前が友達と任天堂 (のゲーム) で遊んでいる間

I was playin’ ’round with that fire

俺は銃を持って遊びまわってた

Seventh grade, I got caught with a pistol

1の頃にはピストル所持で捕まって

Sent me to Panthersville

青少年施設に送られた

Eighth grade, started playin’ football

2の頃にはフットボールを始めたけど

Then I was like fuck the field

すぐ辞めたよ

Ninth grade, I was knocking n***as out

3の頃には野郎をぶっ倒した

N***a like Holyfield

Holyfield みたいにな (*1)

(*1) Evander Holyfield : アラバマ州出身のプロボクサー

Metro Boomin、Southside、CuBeatz の3人が手掛けるシンプル且つダークなサウンドの上で、21 Savage が持ち前の低い声で緊張感のあるラップを披露します。ストリートのリアルを歌う、まさに「No Heart」なリリックも特徴的な1曲です。

21 Savage – Bank Account (prod by Metro Boomin & 21 Savage)

I got 1-2-3-4-5-6-7-8 M’s in my bank account

俺の銀行口座には 1-2-3-4-5-6-7-800万ドル入ってる

数え歌的フックが耳に残る1曲。Coleridge-Taylor Perkinson の『Flashbulbs』という楽曲のギターリフをサンプリングした Metro Boomin のダークなビートと、21 Savage の淡々としつつもキャッチーなラップが特徴的な同曲は、Billboard Hot 100 にて最高12位を記録。彼らの抜群の相性を更に世間に知らしめるきっかけとなった1曲です。

21 Savage, Offset & Travis Scott – Ghostface Killers (feat. Travis Scott)

I got AK, SK, HK, broad day

白昼堂々と銃を持ち歩いている (*1)

You a fuckboy, we ain’t with the horseplay

お前はクソだ 俺たちはふざけた真似はしないぜ

Shrimp-ass n***a, did you do your chores today?

ダサいお前ら、今日の雑用は済ませたか?

Do you wanna take a ride with the coroner today?

お前らは今日死にたいのか? (*2)

(*1) それぞれ銃の名称。AK = AK-47、SK = SKS、HK = MP5 や G36 などの Heckler & Koch 社製の銃。

(*2) Coroner は「検死官」の意。つまり「検死官と共に車に乗る」ことは「死」を意味する。

Metro Boomin らしい重厚でダークなビートの上で、Offset、21 Savage、Travis Scott という豪華メンバーが順番にヴァースを披露する1曲。圧倒的な迫力を誇る同曲を収録した 21 Savage、Offset、Metro Boomin によるコラボ・アルバム『Without Warning』は、US Billboard チャートにて初週4位デビューを飾りました。

Metro Boomin – Don’t Come Out the House (feat. 21 Savage)

Bang outside, I hang outside

外では銃撃 俺は行くぜ

Don’t come out the house ’cause the gang outside

家から出るんじゃねえぞ ギャングがいるからな

21 Savage が敵対するギャングに対して威圧的なラップをする1曲。イントロが終わり1ヴァース目に突入するタイミングで、Metro Boomin のビートが重厚なサウンドに切り替わり、それと同時に 21 Savage の緊迫感漂うウィスパー (囁き声) フロウが繰り出されます。サウンド、リリック共に圧倒的な緊張感が漂う、2人の相性が抜群に発揮された1曲です。

おわりに

トラップシーン最高峰タッグとの呼び声も高い 21 Savage と Metro Boomin の抜群の相性、ご堪能いただけたでしょうか。

今週末にリリースを控える 21 Savage と Metro Boomin によるニューアルバム『Savage Mode Ⅱ』のカバーアート

Cash Money や No Limit など、Pen & Pixel 作品を彷彿とさせる『Savage Mode Ⅱ』のカバーアートには賛否両論あるようですが、同アルバムも2000年代の名盤と並ぶ、もしくはそれらを超えてくるような歴史的な1枚になること間違いなしでしょう。

Written by Riku Hirai

TyFontaine – Internet Money が誇る期待の新星

先月リリースされた Internet Money のニューアルバム『B4 The Storm』に参加し、近頃ますます注目を浴びている新人ラッパー TyFontaine。今回は、そんな若手注目株の生い立ちやキャリア、魅力に迫ります。

生い立ち

TyFontaine (タイフォンテイン) こと Julius Terell は、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.で生まれ育ちました。

My household was pretty normal. 

俺の家庭は至って普通だったよ

My mom’s a dentist, my dad’s a lawyer. I was the only child.

歯科医の母と法律家の父がいて、俺は1人っ子だった

I got kicked out of school a couple times. Played sports. 

何度も学校から追い出されたよ あとはスポーツ (ラクロス) もしていた

I was a kid doing kid stuff, doing hoodrat shit with my friends. 

俺はやんちゃなガキだった 友人とくだらないことばっかりしていたんだ

本人は「普通」と語るものの比較的裕福な家庭で育った TyFontaine は、高校生の頃はスニーカーショップで働いていたそうです。


TyFontaine が働いていたスニーカーショップ「Kickk Spott DC」(現在は閉店済み)

このスニーカーショップは多くの NBA プレーヤーやラッパーが訪れる人気店で、店の裏にレコーディングスタジオを設けており、TyFontaine はその環境に刺激を受けてラップを始める決意をしたそうです。

キャリアの開始 (2018~2019年)

幼い頃は、R&B (Mary J. Blige、Neyo、Usher) やゴスペル (Marvin Sapp)、またバハマ出身の母親の影響でカリプソ (カリブ海の民族音楽) を主に聴いていたという TyFontaine は、5th Grade (日本の小学5年生にあたる) の頃にヒップホップを聴き始めたそうで、彼が初めて聴いたラッパーは、Lil Wayne だったそうです。

彼は、前述したスニーカーショップのスタジオにて Q Da Fool がセッションしている場面を目撃し、「自分にもできる」と確信したといいます。

When I started, I knew that it was possible. 

ラップを始めたとき、俺にもできるって分かった

(中略)

I thought “if they could do it, I could do it” type of thing.

「彼らにできるなら俺にもできる」って思ったんだ

彼は、2018年3月に Tyler Fontaine 名義でラップを始めました。

Tyler Fontaine – Precision (feat. Nuge)

シングルやミックステープ、Clockwork-Productions から公開したミュージック・ビデオなどで頭角を現した彼は、2018年10月に、Taz Taylor 率いる Internet Money Records と契約を結びます。

その後も No Jumper からミュージック・ビデオを公開したり、立て続けにミックステープをリリースしたりと精力的に音楽活動に取り組んでいた彼は、2019年リリースのミックステープ『Waiting on Ascention』や EP『Virtual World』で更に注目を浴びることとなります。

ミックステープ『Waiting on Ascention』

Internet Money の Nick Mira や DT、JRHitmaker らがプロデュースを手掛けたミックステープ。

EP『Virtual World』

Taz Taylor、Nick Mira のエグゼクティブ・プロデュースに加え、Jetsonmade や 10k.Caash らも参加した EP。

自身の音楽性を「versatile, carefree, easy-going (多才で、楽天的で、陽気)」と表現する彼の楽曲の特徴は、Juice WRLDLil Uzi Vert らの魅力を凝縮したようなメロディアスでエモーショナルなフロウです。彼は、いわゆる「エモラップ」に分類される他のラッパーよりもポップで明るいメロディラインと歌唱スタイルを用いており、どんなトラックも自分のものにしてしまう力を持っています。

更なる躍進 (2020年~)

そんな彼は2020年4月、Taz Taylor、Nick Mira を中心に、Jetsonmade や PVLACE、Bugz Ronin ら人気プロデューサー陣を起用したミックステープ『1800』をリリースします。

12曲目の『Moments』では、80年代シンセウェイブ的なトラックを用いて持ち前のハイピッチフロウを披露しており、The Weeknd と Playboi Carti のスタイルをミックスしたかのようなサウンドを楽しむことができます。

Moments

2020年8月には、自身が所属するレーベル Internet Money の1stアルバム『B4 The Storm』に4曲で参加し、Cochise や 24kGoldn、TheHxliday らとの共演も果たしました。

Internet Money のアルバムでの活躍により一層注目を浴び始めた彼は、本日10月16日、Lil Keed や Coi Leray、The Hxliday らを客演に招いたニュープロジェクト『We Ain’t The Same』をリリースしました。

今後、デビューアルバム『Beautiful Michi Girl』のリリースも控えており、ますます活躍するであろう期待の新星 TyFontaine から目が離せません。

Written by Riku Hirai

XXL FRESHMAN CLASS 2020 : 選出された12人のラッパーたち

毎年恒例の注目アーティスト選出企画 XXL FRESHMAN CLASS。本日遂に発表された今年度の選出ラッパー12人についてまとめました。

Polo G

【本名】Taurus Tremani Bartlett

【生年月日】1999年1月6日

【出身地】イリノイ州シカゴ

シカゴ北部の Old Town エリアにて、両親と3人の兄妹とともに生活していた Polo G は、2016年から楽曲制作を開始。幼い頃は、Lil Wayne や 2Pac、Gucci Mane、Lil Durk、Chief Keef らの楽曲を聴いていたという。2018年リリースの『Finer Things』のバイラルヒットをきっかけに、2019年には『Battle Cry』、『Pop Out (feat. Lil Tjay)』と立て続けにヒットを生み出し、それらの楽曲を収録したデビューアルバム『Die a Legend』は US Billboard にて6位デビュー。

2020年には、セカンドアルバム『THE GOAT』をリリースし US Billboard 2位デビューを飾った。

Polo G についての記事はこちらから↓

【代表曲】

Pop Out (feat. Lil Tjay)

https://www.youtube.com/watch?v=g-uW3I_AtDE

Flex (feat. Juice WRLD)

Jack Harlow

【本名】Jackman Thomas Harlow

【生年月日】1998年3月13日

【出身地】ケンタッキー州ルイビル

Jack Harlow は、12歳の頃にノートパソコンとビデオゲーム「Guitar Hero」付属のマイクを用いてラップを始めたそう。キャリア初期は Mr. Harlow 名義で活動しており、友人と共に Moose Gang なるコレクティブも結成していた。

2015年に自身初の EP『The Handsome Harlow』をリリースした後、シングルやミックステープを次々とリリース。2016年頃には多くのメジャーレーベルから契約のオファーを受けるものの全て断っていたそう。

2018年にはジョージア州アトランタに引っ越し、生活費を稼ぐためにカフェで働いていた Harlow は、その数ヶ月後に DJ Drama と Don Cannon 率いる Generation Now と契約を結ぶこととなる。同年、彼はメジャーレーベルからの初のミックステープ『Loose』をリリース。翌2019年にはミックステープ『Confetti』をリリースし、USツアーも開催した。

2020年1月にはシングル『WHATS POPPIN』をリリース。Lyrical Lemonade の Cole Bennett 監修によるミュージック・ビデオが6000万再生を記録し、世界中に一躍名を轟かせた。同年3月には最新プロジェクト『Sweet Action』を、6月には DaBaby、Tory Lanez、Lil Wayne をフィーチャーした『WHATS POPPIN (Remix)』をリリースしている。

【代表曲】

GHOST

WHATS POPPIN (Remix) [feat. DaBaby, Tory Lanez & Lil Wayne]

NLE Choppa

【本名】Bryson Lashun Potts

【生年月日】2002年11月1日

【出身地】テネシー州メンフィス

高校生までバスケットボールに打ち込んでいた NLE Choppa は、14歳の頃にフリースタイル・ラップを始め、15歳の頃から本格的に音楽活動に取り組み始める。この頃、明確な時期や理由は明かされていないが、彼は少年拘置所に拘留されていたそうで、その経験が彼の人生の転機になったという。

2018年、彼は YNR Choppa という名義の元、ファースト・シングル『No Love Anthem』と、デビュー・ミックステープ『No Love the Takeover』をリリース。また、Choppa が所属するコレクティブ Shotta Fam の楽曲『No Chorus Pt.3』での彼の印象的なヴァースとダンスが話題を呼び、一躍名を馳せる。

NLE (No Love Entertainment) Choppa に改名した彼は、2019年にシングル『Shotta Flow』をリリース。同曲のミュージック・ビデオがわずか1ヶ月で1000万再生を記録し、Billboard Hot 100にて96位デビューを果たした。

その後も、シングル『Shotta Flow』シリーズを続々とリリースし、デビュー EP『Cottonwood』をリリース。2020年にはデビューアルバム『Top Shotta』もリリースした。今年のフレッシュマン選出者の中では最年少 (選出時点で17歳) である。

【代表曲】

Shotta Flow

Walk Em Down (feat. Roddy Ricch)

Rod Wave

【本名】Rodarius Marcell Green

【生年月日】1999年8月27日

【出身地】フロリダ州セント・ピーターズバーグ

E-40 や Chingy、Boosie Badazz、Kanye West、Kevin Gates らの音楽を聴いて育ったという Rod Wave は、5th-grade (日本の小学5年生にあたる) の頃に音楽活動を開始した。

高校卒業の年でもあった2017年に初のミックステープ『Rookie of the Year』をリリース。その後、ミックステープ『Hunger Games』シリーズで人気を集め、2019年リリースのデビューアルバム『Ghetto Gospel』は US Billboard 14位デビューを記録した。

更に2020年リリースのセカンドアルバム『Pray 4 Love』は初週で7.2万ユニットを売り上げ、US Billboard 2位デビューを飾った。

【代表曲】

Heart on Ice

Girl of My Dreams

Baby Keem

【本名】Hykeem Jamaal Carter, Jr.

【生年月日】2000年10月22日

【出身地】ネバダ州ラスベガス

Kendrick Lamar の従兄弟としても知られる Baby Keem は、その Kendrick を擁するビッグ・レーベル Top Dawg Entertainment 所属のアーティストの作品に多数クレジットされている。その例として、Kendrick Lamar の『Black Panther: The Album』や Jay Rockの『Redemption』、ScHoolboy Q の『Crash Talk』、Beyoncé の『The Lion King: The Gift』等での、ソングライティングやプロダクションへの参加が挙げられる。

声変わりを待ってからラップを始めたという彼は、2018年に『No Name』と『Hearts & Darts』の2つのEPをリリースしたのち、ミックステープ『The Sound of a Bad Habit』をリリース。その後、2019年にリリースしたシングル『Orange Soda』が2020年にかけてヒットし、US Billboard にて98位を記録した。同曲収録のミックステープ『Die for My Bitch』も多くの音楽メディアやアーティストから称賛を受け、一躍注目を浴びた Keem は、Kendrick Lamar と Dave Free による新企画『pgLang』のイントロ・ビデオにも起用され話題となった。

【代表曲】

ScHoolboy Q – Numb Numb Juice

Orange Soda

Lil Keed

【本名】Raqhid Jevon Render

【生年月日】1998年3月16日

【出身地】ジョージア州アトランタ

学生時代、Subway と McDonalds で働きながら日常的に音楽制作を行なっていた Lil Keed は、親友 Rudy を亡くしたことをきっかけに、実弟である Lil Gotit と共に真剣に音楽活動に取り組み始める。

Young Thug や Peewee Longway、Big Bank Black らに影響を受けたと語る Keed は、2016年に本格的にキャリアを開始し、2018年にデビュー・ミックステープ『Trapped On Cleveland』をリリース。 同テープがストリートヒットし Young Thug の目に留まった彼は、Young Stoner Life Records と契約を結ぶ。同年には『Slime Avenue』、『Trapped on Cleveland 2』、『Keed Talk to ‘Em』の3つのミックステープをリリース。『Keed Talk to ‘Em』にはTrippie Redd や 21 Savage、Lil Yachty、Lil Durk、Brandy ら大物アーティストが多数参加した。

2019年にはデビューアルバム『Long Live Mexico』を、2020年にはセカンドアルバム『Trapped on Cleveland 3』をリリース。ネクスト Young Thug との呼び声も高い若手ラッパーの1人である。

Lil Keed についての記事はこちらから↓

【代表曲】

Nameless

Wavy (feat. Travis Scott)

Mulatto

【本名】Alyssa Michelle Stephens

【生年月日】1998年12月22日

【出身地】ジョージア州アトランタ

オハイオ州コロンバスで生を受けた Mulatto は、2歳の頃にジョージア州アトランタに移住。彼女は10歳の頃にラップを始め、2016年には、若手ラッパーたちが8週間にわたり力を競い合うアメリカのリアリティTVシリーズ『The Rap Game』に参加、見事優勝を果たした。その結果として彼女は So So Def Records との契約権を勝ち取るが、契約金が少ないという理由でこれを断り、インディでの活動を選んだ。同年には Georgia Music Awards にて Youth Hip Hop/R&B Award も受賞した。

2017年頃から EP やミックステープを継続的にリリースしてきた彼女は、2020年に RCA Records と契約を結び、Gucci Mane や NLE Choppa らとの共演も果たした。

【代表曲】

No Panties

Muwop (feat. Gucci Mane)

Calboy

【本名】Calvin Woods

【生年月日】1999年4月3日

【出身地】イリノイ州シカゴ

音楽活動を始める前は絵を描いて過ごしていたという彼は、2015年から Kidd Cal 名義で楽曲を公開し始める。

2017年には初のミックステープ『Anxiety』を、2018年には Paper Gang Inc. からセカンドミックステープ『Calboy the Wild Boy』をリリース。同年、シングル『Envy Me』がダンスチャレンジによりバイラルヒットし、ますます知名度を上げた彼は、Kodak Black のツアーへの参加も果たした。

2019年には、RCA Records と Polo Grounds Music からEP『Wildboy』をリリース。Moneybagg Yo や Lil Durk、Yo Gotti、Polo G、Meek Mill、Young Thug らをフィーチャーした同作は、US Billboard チャートにて最高30位を記録した。Chance the Rapper のアルバムへの参加も果たした彼は、2020年、EP『Long Live the Kings』をリリース。同郷シカゴのラッパー Lil Durk から強く影響を受けた若手ラッパーの1人である。

Calboy についての記事はこちらから↓

【代表曲】

Envy Me

Givenchy Kickin (feat. Lil Baby & Lil Tjay)

CHIKA

【本名】Jane Chika Oranika

【生年月日】1997年3月9日

【出身地】アラバマ州モンゴメリー

CHIKA は幼い頃から音楽の才能を認められ、バークリー音楽大学への進学も認められていたものの、高額な学費を払うことができずサウスアラバマ大学に進学した。

アメリカ大統領選の翌日にアフリカ系アメリカ人としての訴えを Instagram にポストしたり、トランプ支持者として知られる Kanye West を皮肉るフリースタイルラップを披露したりと、政治関連の動きで注目を集めた彼女は、2019年にデビューシングル『No Squares』をリリース。同年夏には Warner Records と契約を結び、さらに2つのシングルを発表した。

2020年には EP『Industry Games』をリリース。彼女は NPR の Tiny Desk Concert にも出演するなど、今最も注目されているアーティストの1人である。

【代表曲】

Can’t Explain It (feat. Charlie Wilson)

CROWN

Fivio Foreign

【本名】Maxie Lee Ryles III

【生年月日】1990年3月29日

【出身地】ニューヨーク州ブルックリン

2011年に Lite Fivio 名義でラップを始めた彼は、2013年に Fivio Foreign に改名し、800 Foreign Side なるコレクティブ を結成。

2019年リリースの EP『Pain and Love』収録の『Big Drip』のバイラルヒットでようやく注目を浴びた彼は、Columbia Records と100万ドル (約1億円) の契約を結んだ。

2020年、EP『800 BC』をリリースした彼は、Drake のアルバムへの参加も果たした。今年のフレッシュマン選出者の中では最年長 (選出時点で30歳) である。

Fivio Foreign についての記事はこちらから↓

【代表曲】

Big Drip

K Lo K (feat. Tory Lanez)

24kGoldn

【本名】Golden Landis Von Jones

【生年月日】2000年11月13日

【出身地】カリフォルニア州サンフランシスコ

カリフォルニア州ロサンゼルスで生を受け、後にサンフランシスコに移住した彼は、2019年にリリースしたシングル『Valentino』のバイラルヒットで一躍ブレイク。彼は、同曲のヒットを受け LLC、Columbia Records と契約を結び、デビュー EP 『Dropped Outta College』をリリース。彼の楽曲『Game on Your Phone』が人気ゲーム『NBA 2K20』のサウンドトラックに選ばれるなど、西海岸出身の注目ラッパーの1人である。

【代表曲】

Valentino

Mood (feat. iann dior)

Lil Tjay

【本名】Tione Jayden Merritt

【生年月日】2001年4月30日

【出身地】ニューヨーク州サウスブロンクス

15歳の頃に強盗罪で逮捕され、服役中にリリックを書き始めたという Lil Tjay は、2017年にデビュー曲『Resume』をリリース。同曲や、その後リリースした『Brothers』がバイラルヒットし、さらに Polo G との楽曲『Pop Out』は US Billboard Hot 100 チャートにて最高11位を記録。

2019年にはデビュー・アルバム『True 2 Myself』(US Billboard 5位デビュー) を、2020年には EP『State of Emergency』をリリースした。

Lil Tjay についての記事はこちらから↓

【代表曲】

F.N

Zoo York (feat. Fivio Foreign & Pop Smoke)

Jetsonmade (ミュージックキュレーター選出)

【本名】Tahj Morgan

【生年月日】不詳

【出身地】サウスカロライナ州コロンビア

サウスカロライナ州コロンビアで生を受けた彼は、2010年 (当時13歳) 頃から Garageband を使い楽曲作りを始め、翌年2011年には本格的にトラックメイクを始める。

21 Savage のミックステープ『Slaughter King』への参加をきっかけに、DJ Drama や Yung Bans ら著名アーティストとの共演を次々と果たし、彼のコラボレーターとしてよく知られる DaBaby の楽曲を手掛けるようになる。DaBaby のデビューアルバム『Baby on Baby』では5曲に参加し、リードシングル『Suge』は US Billboard Hot 100 チャートにて7位を記録。

2019年には、YoungBoy Never Broke Again や Roddy Ricch、Lil Keed、Smokepurpp、Rico Nasty など今をときめくラッパー達とコラボを果たしたり、J. Cole 擁する Dreamville のセッションへの参加、更には前述した『Suge』が Grammy の「Best Rap Song」や BET Awards の「BET Hip Hop Award for Best Single of the Year」にノミネートされるなど、一躍大物プロデューサーの仲間入りを果たした。2020年には、Playboi Carti のシングル『@ MEH』や J. Cole のシングル『Lion King on Ice』の制作にも携わるなど、現行ヒップホップシーンを代表するプロデューサーの1人である。

Jetsonmade についての記事はこちらから↓

【代表曲】

DaBaby – Suge

Playboi Carti – @ MEH

Written by Riku Hirai

Lil Keed – アトランタが誇る次世代のラップスター

Young Thug 率いる Young Stoner Life Records に所属するジョージア州アトランタ出身の注目ラッパー Lil Keed (リル・キード)。XXL Freshman Class 2020の有力候補の1人であり、本日セカンド・アルバム『Trapped On Cleveland 3』をリリースした彼の生い立ちやキャリア、魅力に迫ります。

生い立ち

I come from the jungle where you don’t survive. 

他の奴らは生き抜くことができないような、ジャングルみたいな場所からやって来たんだ

1998年3月16日、ジョージア州アトランタにて生を受けた Lil Keed こと Raqhid Jevon Render は、幼少期を Forest Park で過ごした後、Cleveland Ave に引っ越します。この Cleveland Ave はアトランタのゾーン3に位置しており (アトランタは、警察によって1~6までの管轄地区に分けられており、アトランタのスター Young Thug もゾーン3で生まれ育ちました) 、彼は6人の兄弟とともに貧しく過酷な環境下で生活していたそうです。

キャリアの開始とミックステープ

学生時代、Subway と McDonalds で働きながら日常的に音楽制作を行なっていた彼は、親友 Rudy を亡くしたことをきっかけに、実弟である Lil Gotit と共に真剣に音楽活動に取り組むようになります。

Young Thug や Peewee Longway、Big Bank Black らに影響を受けたと語る Keed は、2016年に本格的にキャリアを開始し、2018年にデビュー・ミックステープ『Trapped On Cleveland』をリリース。 Young Thug の影響を強く感じさせるハイピッチで歌うスタイルが彼の特徴です。

亡き親友 Rudy が繋いでくれたというプロデューサー Mooktoven とタッグを組んだ同作が、彼らの地元ゾーン3を中心に人気を集め、ストリートヒットとなります。

このヒットを機に、Keed は憧れのラッパー Young Thug に自身の楽曲を聴いてもらうチャンスを掴みます。

ゾーン3に訪れた Young Thug に、同作収録の『Bag』を聴かせる Lil Keed。

この出来事を経て、Keed は Young Thug に気に入られ、後に Young Stoner Life Records (以下 YSL Records) と契約を結ぶこととなります。

2018年、ミックステープ『Slime Avenue』や『Trapped On Cleveland 2』のリリースでますます注目を集めた彼は、同年末に YSL Records からミックステープ『Keed Talk to ‘Em』をリリースします。

同作には Trippie Redd や 21 Savage、Lil YachtyLil Durk、Brandy ら大物アーティストが多数参加し、Lil Keed はアトランタから世界へ、一躍名を馳せることになります。

Nameless

she see the YSL chain shining

彼女が俺の輝く YSL チェーンを見ている

Young Thug のようなハイピッチ・フロウとキャッチーなコーラスが特徴的な1曲。女性との関係や掴んだ成功について歌った同曲がバイラルヒットし、US Billboard チャートにて最高30位を記録、後にゴールド認定されます。

デビュー・アルバム『Long Live Mexico』

2019年6月、Lil Keed は待望のデビュー・アルバム『Long Live Mexico』をリリースします。タイトルの『Long Live Mexico』とは、同年始に亡くなった彼の友人 Mexico に追悼の意を表したものです。

Young Thug や Gunna、NAV、Moneybagg Yo、Lil Uzi VertYNW Melly、Roddy Ricch らを含む13名を客演に迎えた同作は、US Billboard チャートにて最高26位を記録します。

Snake

CuBeatz & Pyrex Whippa プロデュースによるウクレレのようなストリングスを用いたスロウなトラックと、「Snake」を連呼するだけのシンプルなフックが特徴的な1曲。2バース目入りの苦しそうなハイピッチ・フロウが彼の持ち味で、まさに Young Thug のハイピッチ・パートをそのまま受け継いで進化させたかのようなスタイルを披露します。

Pull Up (feat. Lil Uzi Vert & YNW Melly)

Producer 20 & Jetsonmade プロデュースによる笛系シンセを用いたビートの上で、Lil Keed、Lil Uzi Vert、YNW Melly の3人が金や車、女性などについて歌う1曲。メロディアスなラップを得意とする彼らが、それぞれのフロウで魅力を発揮しています。

様々なアーティストとの共演

2018年から次々と作品をリリースし、憧れの Young Thug に認められたのち YSL Records と契約、更には XXL Freshman Class 2019 にもノミネートされるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いでスターダムを駆け上がってきた Lil Keed。そんな彼は、YSL Records やアトランタのラッパーを中心に、様々なアーティストと共演するようになります。

Young Thug – Goin Up (feat. Lil Keed)

まずは Keed をフックアップした Young Thug との1曲。彼らが出会って間もない時期に制作した楽曲ですが、2人は既に最高のコンビネーションを発揮しています。Thug がイントロで「Keed, yeah」とシャウトアウトする部分や、似たような声質から放たれる両者のハイピッチ・フロウから、彼らが本当の親子だと勘違いするファンもいたほどです (年齢的にはあり得ませんが)。実際 Thug は、Keed を実の息子のように可愛がっています。まさに Keed は、アトランタ・ヒップホップシーンの結束力と Young Thug の多大な影響力が生んだネクストスターといえるでしょう。

※Young Thug がシーンに与えた影響については、以下の記事をご覧ください。

Jacquees – Hot For Me (feat. Lil Keed & Lil Gotit)

ジョージア州ディケーターの R&B シンガー Jacquees の1曲に、Keed は実弟の Lil Gotit と共に参加しています。Keed のシグネチャーである「Keed talk to ’em」の連呼で始まる彼のヴァースは、地声のラップからアドリブと共にハイピッチ・フロウに切り替わっていく展開で、R&B サウンドにしっかり順応しています。優れた歌唱力と美しい歌声を持つ Jacquees と、それに負けじと必死にハイピッチで歌う Keed の2人だからこそ成せる絶妙なコンビネーションです。

88GLAM – Bankroll (feat. Lil Keed)

カナダ・トロントのヒップホップ・デュオ 88GLAM との1曲。Keed は、お得意のハイピッチ・フロウに加え Young Thug のようなダミ声も披露しており、客演にも関わらず主役級の存在感を放っています。Keed はどの楽曲でも同じようなラップをしていると思われがちですが、自分のスタイルを貫きながらも随所に様々な工夫を凝らしており、インタビューでも以下のように語っています。

After just every day being in the studio, trying new things. 

俺はいつも新しいことを試してる

I don’t want people to be like, ‘He sounds the same on every song, that shit’s boring!’ 

「Keed の曲は全部同じでつまらない」って思われたくないんだ

I can sing. I can do straight rap. I do melodies. 

俺は歌えるし、ラップも出来るし、メロディも作れる

I do rockstar shit. It’s real genuine.

ロックだって出来るよ これはマジなんだ

REVOLT

Zaytoven, Lil Keed & Lil Yachty – Accomplishments

同郷アトランタの Zaytoven、Lil Yachty との1曲。Zaytoven のダークなビートと Lil Yachty の脱力ラップ、そして Keed のハイピッチ・フロウと、良い意味で不安感を煽られる楽曲です。 彼らは2020年2月に同曲を収録したコラボ・プロジェクト『A-Team』をリリースしています。未聴の方は是非。

Tee Grizzley – Slime (feat. Lil Keed)

ミシガン州デトロイトのラッパー Tee Grizzley との1曲。Tee Grizzley のハードなラップに続いて、Keed はハイテンポなビートを乗りこなしながら自由なラップを披露します。真面目にラップする Tee Grizzley と、奇妙なアドリブやフロウを聴かせる Keed の相性が意外にもマッチした楽曲です。

johan lenox, Lil Keed & Kota the Friend – throwback thursday

マサチューセッツ州ボストンのシンガー/プロデューサー johan lenox との1曲。Keed とオーケストラ・サウンドという一見意外な組み合わせですが、彼は johan lenox にも Kota the  Friend にもない新たなエッセンスを楽曲に加えており、三者三様のコントラストが魅力的な楽曲です。このようにヒップホップ (トラップ) 以外の楽曲にも起用される Keed は、同じく様々なジャンルの客演をこなす Young Thug に近い立ち位置を確立しつつあるのではないでしょうか。

おわりに

今回はアトランタの注目ラッパー Lil Keed についてまとめてみました。いかがだったでしょうか。

2019年、そして2020年と2年連続で XXL Freshman Class の候補者にノミネートされており、これからますます活躍が期待されている Lil Keed。実弟 Lil Gotit と共にアトランタのシーンを背負うビッグスターになる日も近いかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。

Written by Riku Hirai

ヒップホップと Rolex

過酷な環境を生き抜き、音楽で成功することを夢見るラッパーたち。ヒップホップ業界では、苦労の末に掴んだ成功を「フレックス (自慢)」することが文化となっており、一種の美徳とされています。そんな彼らのフレックス文化の中で、重要な役割を果たすのが高級腕時計です。今回は、その中でも圧倒的な人気を誇る腕時計メーカー「Rolex」とヒップホップの関係性について考察します。

Rolex とは

まずは Rolex という腕時計メーカーについて、簡単にご説明します。

Rolex は、ドイツ人の Hans Wilsdorf が1905年に創業したスイス発の腕時計ブランドです。創業当初の同社の腕時計の精度は決して高くはありませんでしたが、創業者である Hans Wilsdorf の熱心な研究によりムーブメントの品質向上に成功。その結果、商標登録からわずか2年後に、腕時計として初のクロノメーター認証 (高い品質を認められた時計だけに与えられる称号) を受けるという快挙を達成します。

Rolex の創業者 Hans Wilsdorf

Rolex を語るにあたって欠かせないのが、同メーカーが生み出した3つの発明です。

1. オイスターケース

1926年に開発された「オイスターケース」は、その名の通り牡蠣の殻のように固く閉じる頑丈な時計ケースのことです。

当時、水は腕時計の最大の弱点であり、防水時計はほとんど認知されていませんでした。そんな中、Rolex はイギリスのオイスター社が開発したオイスターケースを採用し、完全防水の腕時計を開発しました。

2. パーペチュアル

「永遠」を意味する「パーペチュアル」は、1931年に開発された自動巻き上げ機能です。当時は手巻き時計が主流であったため、人々は数日おきに手動で時計を巻き直していました。そんな中、腕を振るだけで自動でゼンマイが巻き上がる革命的な仕組みが発明され、手間を省くだけでなく、オイスターケースの防水機能を更に向上させることとなりました。

3. デイトジャスト

1945年に開発された「デイトジャスト」は、午前0時になると自動で日付が変わる日付表示機能のことです。

日付表示機能自体は当時から存在していましたが、自動で日付が変わる機能と、今現在よく見られる文字盤上の小窓に日付が表示されるデザインは、この発明がきっかけで定着したものです。

精度の追求と3つの発明によって信頼を獲得した Rolex は、ドレスモデルからスポーツモデルまで、様々な種類のモデルを輩出しながら今日まで進化を続けてきました。

ヒップホップと Rolex

1900年前半から徐々に信頼を獲得し、世界を代表する腕時計メーカーとなった Rolex は、1970年代に誕生したヒップホップ文化において重要な役割を担うことになります。

ここからは、Rolex について言及した代表的な楽曲をご紹介しながら、その関係性について見ていきます。

The Notorious B.I.G. – Who Shot Ya?

Pussy when I want, Rolex on the arm

いつでも女を呼べるし、腕には Rolex 

ニューヨークのキングとの呼び声高い Biggie の楽曲『Who Shot Ya?』では、ラッパーとしての成功の象徴として Rolex がネームドロップされています。宿敵 2Pac へのディス曲として疑惑を呼んだ同曲ですが、1994年の 2Pac 銃撃事件以前、彼らは親しい交友関係にありました。実は、Biggie が始めて手に入れた Rolex は、2Pac からプレゼントされたものだったそうです。

親しい仲間への友好の証として Rolex を贈った 2Pac は、Rolex 愛好家としても知られており、同メーカーをヒップホップシーンに浸透させたラッパーの1人です。

2Pac が愛用していたのは、ダイアモンドが施されたイエローゴールドの Day Date (デイデイト)。Rolex の高級ラインにのみ使用される「President bracelet」を用いた Day Date は Rolex が誇る最上位ドレスモデルであり、定価にしておよそ300万円から1000万円を超えるものまで存在します。ちなみにこの「President bracelet」とは、1956年に当時のアメリカ大統領アイゼンハワー氏に Day Date が贈られたことがきっかけで付けられた名称で、ヒップホップにおいても Rolex を意味するスラングとして「President」というワードが頻繁に用いられます。

Warren G – Regulate

I’m gettin’ jacked, I’m breakin’ myself

俺はやられる ボロボロになるんだ

I can’t believe they takin’ Warren’s wealth

Warren の (俺の) 物を奪おうとしてくるなんて信じられない

They took my rings, they took my Rolex

奴らは俺のリングと Rolex を奪った

I looked at the brother, said “Damn, what’s next?”

奴らを見て言ったんだ 「次はなんだ?」ってな

G Funk の流行を支えた Warren G が1994年にリリースした名曲『Regulate』でも、音楽で成功を収めた結果手に入れた「Wealth = 富」として、Rolex がネームドロップされています。「自らが敵に襲われ、財産である Rolex を奪われてしまう」という、強さを誇示することが一般的であるヒップホップ界においては珍しいラインですが、ヒップホップ全盛期として知られる90年代においても Rolex は富の象徴として扱われていたことが分かります。

2Pac をはじめとした人気ラッパーによる着用及びリリックでの言及により、アメリカ中でいっそう人気を獲得した Rolex の腕時計。当時から、立派な家、高級車、高級腕時計の3つを手に入れることが成功の証とされていたアメリカ社会において、Rolex をはじめとする高級腕時計を自慢することがラッパーたちの間でも流行していきました。

Nas – Nas Is Like

Came a long way from blasting TECs on blocks

ゲトーで銃を発砲してた頃から長い道のりを歩んできた

Went from Seiko to Rolex, 

SEIKO も今じゃ Rolex だ

Nas は自身の代表曲『Nas Is Like』にて、このようにラップします。平均して約1桁以上の定価の差がある2つの時計メーカーを比較することで、自身がどれほど成り上がってきたのかを表現しています。

このように様々なラッパーが Rolex を着用するようになった中で、特に目立って Rolex を愛用していたのが Jay-Z です。ラッパーとしての仕事以外にも、プロデューサーや作家、スポーツクラブのオーナーなど、多様なビジネスで成功を収めていた彼は、時計愛好家として Rolex の多くのモデルを所有していました。

彼が着用していたモデルとして有名なのが、Day DateDay Date ⅡSky Dweller (スカイドゥエラー)、Daytona (デイトナ) などです。

左から Day Date、Day Date Ⅱ、Sky Dweller、Daytona

その中でもやはり最上位ドレスモデルの Day Date が彼のお気に入りだったようで、セカンド・アルバム『In My Lifetime, Vol. 1』のカバーアート写真に映る際も、彼はプラチナ製の Day Date を着用しています。

Kanye West – Runaway (feat. Pusha T)

(Pusha T)

Invisibly set, the Rolex is faceless

ダイヤで埋め尽くされ、文字盤が見えない Rolex

Rolex 好きで知られる2人 Kanye West と Pusha T による1曲。

特に Pusha T は、自身のアルバムのタイトルを『Daytona』と名付けるほど、Rolex の Daytona を愛用しています。この Daytona とは、2020年現在においてもなお最も高い人気を維持する、Rolex が誇る最上位スポーツモデルです。

財力を誇示することでステータスを獲得するラッパーたちにとって、前述した最上位ドレスモデル Day Date と、最上位スポーツモデル Daytona は特別な存在であり、圧倒的な人気を誇ります。

Daytona

そんな Pusha T は同曲にて、「Rolex をダイヤモンドで埋め尽くしたことによって、文字盤が見えなくなってしまった」と歌っています。

このように腕時計 (あるいは他のジュエリー) をダイヤモンドで埋め尽くす行為は、「Iced out」もしくは「Bust down」などと呼ばれ、ヒップホップ・シーンでは好んで用いられるカスタム装飾です。ラッパーたちは手に入れた Rolex を更に派手に装飾すべく、Ben Baller や Mr. Flawless、Eliantte などをはじめとするジュエラーに足を運びます。

ダイヤモンドで装飾した Rolex を好むラッパーが増える一方で、「やはり Rolex はそのままの状態が美しい」と主張するラッパーも現れます。

A$AP Ferg – Plain Jane

Tourneau for the watch, presi Plain Jane

Tourneau (*1)で時計を買う ロレックスは「Plain Jane」だ (*2)

(*1) 高級腕時計を取り扱う New York の老舗リテーラー
(*2) Plain Jane は装飾を施していない Rolex のこと。本来の意味は、「普通の女の子」

A$AP Ferg は Genius のインタビューでも、「Rolex はそれ自体に価値がある。ダイヤモンドを装飾してしまったら価値を下げることになるんだ。ピカソの絵に付け足しはしないだろ」と発言しています。

Travis Scott – Watch (feat. Lil Uzi Vert & Kanye West)

Travis Scott、Lil Uzi Vert、Kanye West と、現代ヒップホップシーンを代表するファッションアイコン3人が、タイトル通り「Watch (腕時計)」について歌う1曲。こちらの楽曲では、「Plain Jane 派」と「Iced out 派」の両者の意見を聴くことができます。

(Lil Uzi Vert)

Look, pull up Sky Dweller, and it’s vanilla

俺のバニラ色の Sky Dweller (*1) を見ろ

All white, that Plain Jane

オールホワイトで Plain Jane

(*1) Sky Dweller は、Rolex が展開する実用性に富んだ旅行者向けのドレスモデル

(Kanye West)

Look at my Rollie, look at your Rollie

俺の Rolex を見ろ (*1)

Your shit rockless, my shit hockey goalie

お前のはダイヤが足りない 俺のはアイスホッケーのゴールキーパーだ (*2)

You should gon’ hide it, man, it’s too bad

哀れだからさっさとそれを隠せ

Like a bald n***a still wearin’ durags, ha

ドゥーラグでハゲ頭を隠すみたいにな

(*1) Rollie は Rolex を表す頻出スラング
(*2) アイスホッケーと、ダイヤモンドを表す「Ice」をかけている。つまり Kanye の Rolex はアイスホッケーのゴールキーパーのように氷 (ダイヤモンド) に囲まれている、ということ

装飾を施していないそのままの Rolex を自慢する Lil Uzi Vert と、ダイヤモンドで装飾した Rolex を自慢する Kanye West。

同曲が物語るように、ラッパーたちの間でも Rolex への思いや好みはそれぞれ異なることが分かります。

Gunna – Oh Okay (feat. Young Thug & Lil Baby)

Two-tone Presi’ Rolex

ツートンの Rolex

Yeah, this drip you can’t catch

お前らには到底真似できない

アトランタのラッパー Gunna は『Oh Okay』という楽曲にて自身の Rolex を自慢するラップを披露しますが、後に Men’s Health のインタビューにて以下のように語っています。

This watch is a two-tone Prezi Rolex.

この時計はツートンのロレックスだ

I had to buy two watches to make this one watch, because they don’t make two-tone watches.

でも、ロレックスはツートンの時計を作っていないから、これを作るために二本の時計を買わなければならなかったんだ

The only reason I really bought it is because on the song “Oh Okay” I said ‘Two tone Prezi Rolex, Yeah this drip you can’t catch

何故こんなことをしたかというと、俺が『Oh Okay』という曲で『ツートンのロレックス、お前らには到底真似できない』とラップしてしまったからなんだ

つまり Gunna は『Oh Okay』の制作時にはまだ「ツートンの Rolex」を持っておらず、後にリリックとの辻褄を合わせるためにそれを作った、ということです。「嘘つき」とも「有限実行する真面目なラッパー」ともとれるリアルなのか否か判断しづらいリリックですが、若手ラッパーがつい先走って自慢してしまうほど、Rolex の所持がヒップホップゲームにおける重要なステータスであることが分かります。

贈り物としての Rolex

2Pac が友好の証として Biggie に Rolex を贈ったように、Rolex は贈り物としても大きな役割を果たします。

中でも DJ Khaled は、頻繁に Rolex をプレゼントすることで知られています。彼は、2017年にリリースしたアルバム『Grateful』が大成功を収めた後、彼のチームのメンバーたち全員にゴールドの Rolex Day Date (1つあたり約370万円) をプレゼントしました。

DJ Khaled は、アトランタのラッパー Future にも誕生日プレゼントととして Rolex Sky Dweller (約200〜400万円) を贈っています。

そんな Future も、息子の5歳の誕生日に Rolex Datejust (約310万円) をプレゼントしています。

このように、成功したアーティストたちは自らが Rolex を身につけるだけでなく、親しい人々に感謝や愛の形として Rolex を贈ります。また、プレゼントとしての役割はもちろんのこと、「Rolex を誰かにプレゼントできる」というステータス誇示の意味合いも少なからずあるでしょう。

おわりに

今回は、Rolex が担うステータス性と、ラッパーたちが Rolex を取り入れ流行させてきた背景に焦点を当て、ヒップホップと Rolex の関係性について考察しました。今回ご紹介した楽曲以外にも Rolex について言及した作品は多数存在しますので、これを機に是非探してみてはいかがでしょうか。また、ヒップホップシーンにおいて高い人気を誇る Rolex 以外の高級腕時計メーカー「Patek Philippe」や「Audemars Piguet」、「Richard Mille」などについても、いずれ (ご要望があれば) まとめる予定です。最後までお読みいただきありがとうございました。

Written by Riku Hirai