フロリダの若手ラッパー YNW Melly とは

みなさんこんにちは。ここ最近 YNWクルーのラッパーたちが大きく動き出しています。“YNW”とは “Young N***a World” の略称であり、今回紹介する YNW Melly が所属しているフロリダを拠点とした楽曲制作グループの名称です。

Melly の実弟である YNW Bslime は先週待望のアルバム “BABY GOAT” をリリースしましたし、まだまだ無名ですが YNW Khris は SoundCloud にて楽曲を発表し始めました。

YNW Melly (左) と YNW Bslime (右)

そんな中 YNW のリーダーである YNW Melly が本日、三枚目のアルバムである “Melly vs Melvin” をリリースしました。ということで、彼の過去の楽曲や、本日リリースされたアルバムについて紹介していこうと思います。

YNW Melly って誰?

それではまずは基本情報から。YNW Melly こと Jamel Mourice Demons は 1999年3月1日生まれの20歳。フロリダ生まれのラッパーです。YNW Melly の特徴としては、メロウなフロウやオートチューンをバリバリに効かせたフックなどがあげられます。決してラップが上手いという訳ではありませんが、キャッチーなメロディーによって人々の心を掴んで離さないと言えるでしょう。

過酷な幼少期

彼は1999年の3月1日にオハイオ出身の両親のもとに生まれました。彼の母親が彼を授かった時なんと彼女は14歳であり、9th grade (日本の中学3年生で15歳)の時に Melly を出産しました。

父親は Melly が生まれてすぐに失踪してしまった為、母親と母方の祖母によって育てられました。フロリダの Brierwood という地域に3人で暮らしていましたが、家賃の支払いが困難になった為、更に貧しい地域に移り住みました。

彼は15歳の頃から SoundCloud に楽曲をアップし始め、同時にアメリカの2大ギャングの1つである Bloods に加入しました。その翌年、彼は Vero Beach 高校の周辺で同学校の生徒に向かって銃を発砲した罪に問われて、数ヶ月の間刑務所に拘留されています。

ここで彼による楽曲を1つ紹介します。1つ目のミックステープ “I Am You” に収録されている “Mama Cry” という楽曲です。この曲は、先程説明しました16歳の時に起こした発砲事件によって刑務所に入れられてしまった彼が、母親に向けて懺悔するという内容なのですが、こちらの曲のMVに彼が家のソファの下から本物の銃を見つけてしまうシーンが生々しく描かれています。

そんな彼ですが、厳しい家庭環境の影響もあってか多重人格障害や注意欠陥症を患っているようです。彼のデビューアルバムである “We All Shine” に収録されており、“Mixed Personalities” という楽曲もタイトル通り多重人格についての楽曲です。

ちなみにこの曲はKanye West を客演に呼んでいるのですが、よく考えてみると彼の素晴らしい功績だと言えます。Lil Pump は18歳、Smoke Purpp は20歳にして Kanye とコラボ曲を発表しましたが、いずれも Kanye からのオファーです。もちろんそれでも凄いんですが、Melly の場合は自身のアルバムに Kanye を客演として呼んでいます。

YNW Crew

YNW クルーの仲間である YNW SakChaser と YNW Juvy を殺害した罪で起訴されているMelly ですが、他にも YNW Peso などのクルーが存在します。彼らは全員ラッパーとして活動しており、楽曲が日の目を見ない頃から力を合わせて活動していました。フロリダはアトランタなどに比べて有名なラッパーが少ないこともあり、彼らは大人たちに「ラッパーなんかより仕事を見つけた方がいいぜ。」とか「ウェンディーズで働いとけよ。2年後には解雇されるだろうけどよ。」などとからかわれていた過去を SakChaser は振り返って語っています。こちらのオフィシャルのドキュメンタリーで、彼らの生活の多くを知ることができますのでぜひご覧ください。( Melly のおかんとかも登場するので見応えあり。)

Murder on My Mind

“We All Shine” をリリースした直後である、2019年の2月に彼は仲間であるYNWクルーの YNW SakChaser と YNW Juvy の2人を殺害した容疑で起訴されました。更に2019年の5月には彼に死刑が宣告される可能性が生じていると TMZ によって伝えられました。

今現在もバリバリ牢屋の中にいる Melly ですので、今回のアルバムは獄中からのリリースということになります。

そのようなニュースが報道されたことがきっかけに、Billboard のチャートの上位に急上昇した曲が “Mind on My Murder” という楽曲です。この楽曲は彼が過去にギャングの仲間を誤って銃撃、殺害してしまった事件について歌っているものです。

そもそも、自分が加害者である殺人事件のことを楽曲にすると時点で、並大抵の狂人ではないとお分かり頂けると思います。そしてこの曲なのですが、リリックがとにかくリアルです。彼がなぜ、どのように仲間を殺してしまったのかが嫌というほど鮮明に描かれています。以下、”Mind on My Murder” の生々しいリリックを抜粋。

って感じで、頭の中に事件の現場が鮮明に浮かび上がりましたよね。このようなリアルすぎる YNW Melly の楽曲の特徴の1つです。日本に住んでいる僕らが想像もしないようなことが、この世界のどこかで実際に起こっていることに気づかされ、耳を覆いたくなるリリックも沢山あります。

更に、更にですよ。彼はこの ”Murder on My Mind” を殺害された被害者の視点に立って、全く逆の目線でラップした “Mind on My Murder” を発表しています。先程紹介したリリックも全て被害者の受け身の形に置き換えられています。生粋のサイコパス気質で本当に怖いっていうか、普通に引くレベルやわ。

もうリリックだけでリスナーに事件の様子を鮮明に想起させておいた挙句、MVでそれをビジュアライズして、そのイメージを確固としたものに仕立て上げてくれています。悪魔の権化かよ。

Melly vs Melvin

さて、ここからは本日リリースされた ”Melly vs Melvin” についてです。まず、アルバムのタイトルの ”Melvin”ってなんや?と思う方もいらっしゃると思いますが、簡単に言うと Melvin は Melly の第二の自分です。

Genius のインタビューで「俺は多重人格で、他の人間が中にいる。Mellyはみんなから愛されていて、みんなのことを愛してる。Melvinは、Mellyを悪い人間から守ってくれるもう一人の自分なんだ」と語っています。ということで、今作のテーマは自分と自分自身のもう一つの自分との間に起こる闘争や葛藤と言ったところでしょうか。

アルバムのアートワークも Melly と Melvin の二つの顔が描かれているデザインとなっています。

今回のアルバムですが、一曲目から Melly らしい楽曲になっていると思います。ピアノビートの上で地声とハイトーンボイスを織り交ぜた独特なフロウを披露してくれています。今年に入って1週目に “We All Shine” をリリースした彼ですが、約一年ぶりにやっと帰ってきた!って感じがしましたね。アルバム全体としても、客演をほとんど迎えず実力だけで勝負してる感はありますね。(獄中なので客演を迎えることが難しかったというのもあると思いますが。)

今作の5曲目である”Billboard” では早口言葉のようなフックを披露しています。

Used to rob n****s for that bill, when I get board, now I’m on billboards

金を盗んでたよ。でも俺は今ビルボードのチャートにランクインしてる

YNW Melly – Billboard

音源を聴いていただければわかる通り、早口言葉のようなワードプレイをラップしています。

続いて紹介するのは 9曲目にの “100K” という楽曲。こちらのが楽曲では今作のテーマにもなっている二重人格的なリリックが見受けられます。

I would not ever change on you lil’ baby

俺は絶対君への思いを変えることはないよ
I promise I love you, and never would put no one body above you

君を愛してるって約束するし、君より誰かを愛することはない
Ugh, I might just fuck on your sister

くそ!君の姉妹とヤちゃうかも

YNW Melly – 100K

彼女への愛する想いを優しく歌い上げたすぐ後に、彼女の姉妹とセックスするかもしれないと言っちゃうあたり、完全にMelvin が見え隠れしています。インタビューでは、「Melvin は僕を悪い人間から守ってくれる存在」とか言ってたくせに、都合のいいように Melvin を使って言い訳しようとしているのが見え見えです。

今回のアルバムは、逮捕される前にレコーディングしたものということもあり、少し新しさにかける部分もありましたが、獄中から新曲を出したということ自体に意味があることだと思います。

Music By YNW Melly

ここからはいつものようにおすすめの楽曲を紹介していこうと思います。まず初めに紹介するのは “772 Love” という楽曲です。

タイトルにある “772” とは、彼が16歳の頃に発砲事件を起こした高校周辺の地域のエリアコードで、彼はこの地域を当時の好きだった女の子とドライブしていました。この曲はその頃のほろ苦い思い出をメロウなフロウに乗せて甘く歌い上げています。狂気的な楽曲を制作する反面、このようなラブソングも同時にこなしてしまうギャップには惹かれてしまいます。

YNW Melly – 772 Love

YNW Melly の楽曲を聴く際に押さえておきたいポイントの1つでもあるのが、オートチューンバリバリな奇妙な歌声です。初めて聴く人は、受け付けない歌声かもしれませんが、Melly を好きになる人は彼のそのようなスタイルに惚れ込む人も多いです。こちらの曲で存分に楽しめますので一度聞いてみてください。ちなみに2:44秒くらいから本領発揮します。

YNW Melly – Alarm

おわりに

Melly への深すぎる愛によって長ったらしい記事になってしまいました。しかし、 Melly についての情報がここまでまとめられた記事が他にないと思うので、これから Melly を知る方、もっと知りたい方の目に止まってくれれば嬉しいです。ここまで読んでいただいてありがとうございました。ではまた次回!

↓今回紹介した楽曲などを収録したオリジナルプレイリストです。

https://music.apple.com/jp/playlist/melly-vs-melvin/pl.u-2aoqp4bfNWXxYz0?l=en

ベッドルームのクイーン Clairo とは

こんにちは!今回は夜11時ぐらいに部屋で一人だと聞きたくなってしまうでお馴染みの女性シンガーソングライター(以下SSW)Clairo のキャリアや良さについて書いていこうと思います!

プロフィール

アメリカンなClairo

本名Claire,Cottrilはマサチューセッツ州出身で1998年生まれの21歳です。

ジャンルはインディー・ポップですが、キャリアの初期はその中でも、今流行りの「ベッドルーム・ポップ」に分類された音楽を製作していました。

ベッドルーム・ポップとは、Lo-Fiに近いところがあって、楽曲製作を実際に部屋の中で行っていたり、そのようなニュアンスの音楽を指します。

Clairoは優しく語りかけるような歌声の持ち主で、イヤホンで聞くと耳元でささやかれているかのような感覚になるアーティストです。

では、彼女のキャリアとオススメの楽曲などを紹介していきます!

Pretty Girl(2017)

Clairoが話題となったきっかけの初期の楽曲が「Pretty Girl」です。

いやー、このあざとい感じがかわいいですね。

これこそがベッドルーム・ポップというようなこの楽曲は全て自分で製作し、PVもセルフ・プロデュースしているということで才能の凄さが伺えます。

PVは再生回数が現在4000万回を超えており、非常に話題となりました。

楽曲としては、ボーカルにリバーブが強くかかっていて、メロディーやインストもシンプルなため、とても聞いていて心地いいんです。

曲の内容としては、当時の好きな人のためにありのままではなく、自分を相手の好みに変えるというような19歳らしいセンチメンタルな内容となっています。

I could be a pretty girl, I’ll wear a skirt for you.

あなたのためなら、スカートを履くような可愛い子になれる。

I could be a pretty girl, shut up when you want me to.

あなたが黙って欲しい時は黙っとく。

歌詞もめちゃくちゃかわいい。若さ溢れる共感できる歌詞ですよね。

ただやはりキャリアのスタートあたりの楽曲であるためか、全体的なクオリティは現在の彼女の楽曲に比べると低い印象を持ってしまいます。

Clairoの父親が広告会社の社長でこの動画に力を貸していることもという噂が広がり、コネを使って売れたなどのことも言われますが、現在の活躍を見れば、もともと高い才能をもっていると思いますね。

そしてClairoはインタビューでこの頃アメリカのボーイズバンドBROCKHAMPTONから影響を受けていると言っており、時期を考えるとめっちゃタイムリーやなという感じですが、なんか印象がもっとよくなりますよね。

ちなみに彼女は大学に通いながらアーティストとしても活動していたので、Tay Keithと同じだと考えてもらっていただいて問題ないかと思います。

大学生らしくかわいいClairo
と大学に札束を持っていくTay Keith

Diary 001 (2018) 

前述の「Pretty Girl」やシングルの「4EVER」をひっさげ、Clairoは待望のEP「Diary 001」をリリースします。

このEPについてClairoは彼女にとって最後のベッドルーム・ポップの作品と表現しており、実際数曲がスタジオで作られています。

全体的にはやはり19歳の恋愛観がわかるようなロマンティック系統な内容が多くなっています。

ただ、「Pretty Girl」の勢いそのままにという感じではあったので、そこまで流行するとかいうわけでもない感じになってしまいました。

ですが落ち着く系のいい曲ばかりなのでオススメ曲を一つ紹介したいと思います。

オススメ曲

オススメ曲はずばり一曲目の「Hello?」です。この曲は「Chill界のカリスマ」ことRejjie Snow様をフィーチャーした、二人の良さが爆発している楽曲になります。

Clairo, Rejjie Snow – Hello?

電話のダイヤル音の後にすごいアメリカンなHello?が聞こえて始まるこの曲。

やはりベッドルーム・ポップの雰囲気が残りつつ、ドラムではあえて弾けるようなクラップがあることによって、虚無感に襲われそうになるオルガンのメロディがテンポがあるキャッチーなサウンドに仕上がっています。

でもやはりClairoの少し寂しそうなボーカルとRejjieのつぶやくようなラップが入ることで、春のギリ夜にカウントしない18時45分あたりの時間帯にいるような、ひんやりとしたなんだか冷たい感覚になります。

内容的には相手が自分のように好きなのかという彼女の内面的な不安が滲み出たリリックなのですが今回はこの楽曲でRejjieがラップしているひとつのラインがたまらないものだったので紹介します。

Played you DOOM, man, you play Drake

おれがDOOMで、君はドレイクだ

これはMF DOOMというビートがちょっとおしゃれなオルタナティブなラッパーと DrakeのようにR&Bに近いラッパーのように、同じ業界にいても少し違うテイストの音楽を作るという意味で、RejjieがDOOMでClairoがDrakeという風にかけているんです。

DrakeがR&Bでロマンティックな曲を作ることも多いのでそこも Clairoとかけているのかも知れません。

この4人のアーティストが一つのバーに含まれているだけで最高ですよね。

Chill界のカリスマ・Rejjie Snow

そしてこのEPのリリース後はアメリカの男性インディー歌手・Cucoやイギリス人男性SSWのSG Lewisなどとコラボするなど活動の幅を広げます。

また、世界最大級の野外音楽フェスであるLollapalooza 2018やCoachella 2019に出演するなど、知名度もぐんぐんあげていきます。

そして2019年8月に初アルバムをリリースします。

アメリカに留学したら同じ寮に住んでて、顔見知りになりそうな出で立ちのClairo (左)と横ではにかむCuco(右)

Immunity (2019) 

このアルバムは良すぎてプレーヤーを持っていないのにレコードを買ってしまうぐらい個人的には今年トップぐらいの勢いのアルバムです。

一曲目の「Alewife」が始まった瞬間クリスマス?っていう感じのサウンドにもっていかれ

「North」では夏の夕方のビーチにいる感覚にもなるので、アルバムを通して四季を感じているみたいな気持ちになります。

「Closer To You」ではオートチューンにハイハットという、808いれてYung Bansにラップさせたらヒップホップチャート入るんちゃうかぐらいの新しいインディー・ポップの形が見えた気がします。

また、彼女のセクシュアリティや恋愛観など内面的なものがアルバムを通して歌詞からもサウンドからも感じ取れる作品となっています。

このアルバムからは素人の僕でもわかるぐらいにギターからボーカルまで前作から成長が見られます。

また、アメリカのカリスマ的インディー・バンドVampire Weekendの元メンバーであるRostamがプロデューサーとして参加するなど完成度が非常に高いこの作品。

厳し目採点の音楽メディアPitchforkも10点中8.0点をつけ、US Billboard 200でも51位にランクインするなど高評価かつ話題の作品となりました。

オススメ曲

Softly

 たぶんけっこうあるあるだと思うんですけど、僕は楽曲一つ一つにイメージカラーがあって、そのカラーがアルバム、またはシングルのジャケットの色になりがちなんですよね。

だから紹介する二曲は両方イメージカラーががっつり白なんですけど、Softlyの白はちょっとマイルドなベージュに近いイメージです。

まず初めのギターからすごい心地がいいサウンドです。

そこに入ってくるClairoの川のせせらぎのようなこれまた心地いいボーカルが入ってきて、フックでは軽くオートチューンがかかっていて、完璧なハーモニーで気持ちいいサウンドです。

Clairoは2018年に自身のセクシュアリティは不明であるが、ストレートではないと発言しており、紹介する二曲でそのセクシュアリティが垣間見れます。

Touch you softly, call you up late at night

あなたに優しく触れて、夜遅くまで電話して

Know that it isn’t right, but you could be my one and only

いけないことだとわかっているけれど、あなたは私が求めている人かもしれないから

甘酸っぱい。

「いけないことだとわかっている」というラインが、あまり人に知られてはいけないけれど、どうしてもそのように感じてしまう感覚だといえます。

またフックの手前ではgirlという単語を二人称として使っており、やはり女性に対しての感情と捉えられます。

この曲は個人的に今年で一番を争うぐらいの楽曲でして、ぜひ読者の方々にセンチメンタルな気持ちになっていただきたいです。

ちなみに「Touch you softly」というフックの歌詞なのですが、softlyの音が「ソフトリー」じゃなくて確実に「ソーフヤー」って言ってるていう個人的なあるあるもございます。

Sofia

 6番目のSoftlyの次のトラックがこの「Sofia」です。

最初のギターがロックっぽい感じがしてかっこいいのですが、Clairoの繊細なボーカルでかっこよさが心地よさで完全に緩和され、完璧なバランスが成立する楽曲です。

Softly はベージュに近い白というイメージですが、Sofiaは個人的においしい牛乳のパッケージのあの爽やかな白に近いイメージカラーです。相当爽やかです

 2分15秒あたりの一度声がぼやけてからのキーの高い彼女のボーカルが、一度地上に戻ったけどまた雲の上に突き抜けてきたみたいな、天下一武道会の空中戦のシーンみたいなイメージ。

Clairo一人が雲の上に上がっていく情景が頭に浮かびます。

この楽曲は、Softlyよりも明確に彼女のセクシュアリティについてわかる楽曲となっています。

Sofia, you know that you and I shouldn’t feel like a crime

ソフィア、この関係があってはならないものだと感じなくてもいいって知ってるよね

このSofiaという女性の名前は彼女が好きだった(推しに近い感覚)脚本家のSofia Cappolaと女優のSofia Vergaraのことを指しています。

この歌詞は同性愛のカミングアウトの難しさやそのスリルをCrimeという単語で表していて、いい言葉の言い回しだなあと感じました。

白がさわやかすぎるおいしい牛乳のパッケージ

その後はイギリスのプロデューサーMura Masa や

Netflixドラマ「13の理由」でクレイ役を演じているDylan Minnetteが所属するバンドThe Wallowsの楽曲に客演として参加するなど、様々なアーティストとコラボすることで、ファンベースを拡大しています。

その中でも、Clairoが客演で参加しているDeaton Chris Anthony の「RACECAR」という楽曲では、普段はみれないほぼラップみたいなかっこいいClairoがみることができます。

PVも自由な感じでかっこいいのでぜひ見てみてください。

終わりに

どうでしょうか。Clairoの良さが伝わっていると嬉しく思います。

また来年3月からは、オーストラリアの神様的インディー・バンドTame Impalaのアメリカツアーに帯同することも決まっているので、どんどん人気が増えていきそうです。

Clairoは、これからも活躍の幅を広げ、ファンベースを拡大していくアーティストだと思うのでぜひチェックしておいてください!

Clairo特製プレイリストはこちら↓

https://music.apple.com/jp/playlist/clairo-a-pretty-girl-from-the-bedroom/pl.u-jV89arDFd1A86o2

ヒップホップ界のカートコバーン Lil Peep とは

どうもです。外も一層寒くなり、つい先頃まで紅葉を楽しんでいたはずが…

さらっと秋が流れてしまうようになった今日この頃でありますが。

本日、Lil Peepこと、故グスタフ・イラジャ・アールの命日と共に、アルバムが発表され他ので、この記事を書いてみようかなと思いました。

まあ今日は長くなりすぎないようにすらりとLil Peepのこれまでを振り返り、懐かしい気持ちになったり、再発見をしていただけるなら幸いと思い、書き進めていこうと思います。

ではまず、ニューヨーク・タイムズ誌にも 「ラップ界のカートコバーン」 と謳われている彼のプロフィールを垣間見しましょう。

生い立ち

1996年11月1日、本名をグスタフ・イラジャ・アールという Lil Peep はペンシルベニア州のアレンタウンで生まれました。

彼の両親はハーバード大学の卒業生であり、母親は小学校の先生、父親は大学の教授という勉学には困らない家庭で育ちました。

ハーバード大学

生後、彼は思春期をニューヨーク州のロングアイランドで過ごします。やはり遺伝は少なからず影響するもので、彼は成績が優秀でした。

しかし、精神的な疾患や周りとのコミュニケーションに悩み、高校を中退してしまいます。(ちなみにその後、彼はオンライン学習で高校卒業認定を受けるのですが)

そして、17歳でロサンゼルスのスキッド・ロウにに移り、本格的に音楽活動を始めます。そして2016年までに4つのミックステープと5つのEPをリリース。また、この2016年にはロサンゼルスのエコー・パークに拠点を移します。

この頃にはSound Cloudなどで徐々にその人気に火がつき、そして2017年に一世を風靡するアルバムを発表します。

1. 『Come Over When You’re Sober, Pt. 1 』(2017)

オルタナティブ・アルバムチャート3位、ヒップ・ホップ・アルバムチャートでも16位を記録しました。

ファーストアルバムのこのアルバムこそが、彼が生涯で唯一リリースするアルバムとなるのですが…

オススメ曲

1. Save That Shit

Fuck my life, can’t save that, girl. Don’t tell me you could save that shit.

クソみたいな人生だ、君でも救えないぐらいに。救えるだなんて言わないでくれ。

Fuck my lifeで始まるまさにLil Peepのペシミスティックな人間性が満開の曲ですが、実は最初のここのリリックをどう捉えるかで曲のイメージが全く変わるんですね。ざっと二通りの訳し方があります。

1.save that girl(あの子が救えないなんてクソな人生だ)

2.save that, girl.(君にも救えないよ。こんなクソな(俺の)人生)と捉えるか。

そう聴いてみると、女の子のことをshitと表現したのか、自分のくそな人生をshitと表現したのか。聴いてみるとますます深いですね。すごく深い曲だと感じます。

2. Better Off (Dying)

僕がこのアルバムで一番好きな曲です。

彼の曲の中では珍しく重苦しくなく、むしろ美しい旋律から始まるんですが、やっぱりボーカルが入った瞬間に彼の世界に吸い込まれるんですね。

ちなみにこのアルバムが出た8月に、自らがバイセクシャルであることをツイートで告白するんですね。それを考慮すると、次のリリックの感じ方も変わってきます。

Cocaine lined up, secrets that I’m hidin’.

コカインを並べる、俺が隠してる秘密だ。

コカインを隠すことと自分の性的指向を隠していることをかけているのでしょう。

音楽人生の頂点へと差し掛かろうとしているその頃、事件は起きました。

2017年11月15日、アリゾナ州ツーソンでのライブ会場に向かう途中のツアーバスにて、彼の死亡が確認されました。

その日のインスタグラムの投稿で、ザナックスらしき薬物を摂取している様子が見て取れます。

https://www.instagram.com/p/BbhJN8MFBlT/?igshid=18x19cwklfo8q

その後、12月には正式な死因がフェンタニルとザナックスの過剰摂取であると断定されます。

ザナックスは、周知の通りサウンドクラウドラッパーのリリックなどに頻出する薬物で、処方箋があればもらえるドラッグです。

ザナックス

フェンタニルに関しては、かなり少量でも効果があって、麻酔や鎮痛剤として使われるドラッグです。

また、フェンタニルは伝説の R&B シンガー Prince の死の原因としても有名ですね。

フェンタニル

そして、この二つの薬物を同時に摂取することは呼吸困難を引き起こすなど、極めて危険です。しかし、Lil Peepは死や希死念慮について歌うことは多かったものの、この時に自殺願望を仄かしてはいませんでした。

また、ライブに向かっていたという事実からこれは自殺ではなく、事故であると結論付けられました。

2. Come Over When You’re Sober, Pt. 2 (2018)

次に、丁度一年前に出た 『Come Over When You’re Sober, Pt. 2』についてです。

リル・ピープと生前から親交の深かったプロデューサー、スモーカサックが前作『Come Over When You’re Sober, Pt. 1』の発表後に制作していた未発表音源がベースとなっている作品です。

僕はこのアルバムのリリースが告知された時、死後と言うことでその完成度を心配していました。でもそれは間違っていました。おそらくリルピープの作品の中で最も優れた作品が作られてしまったのです、悔しくも彼の死後に。

オススメ曲

1. Broken Smile (My All)

この曲はタイトルのように、まさに彼の全てのような曲ですね。

魂の震えのような音が徐々に大きくなり、錆びた鉄琴が姿を現し始め、悲しげな声と旋律で全てを捧げた女性を想います。

彼女も壊れた心の持ち主だったと叫ぶフックでの彼の声に引きずり込まれてしまいます。彼女に自分や自分のような人を重ね合わせていたのでしょう。

2. Runaway

リル・ピープの子供時代の絵だったり、生前の彼の姿をおさめたミュージック・ビデオが話題となりました。

早くここから出してくれ、みんなフェイクなんだと叫ぶリリックが印象的で、まさに Lil Peep を象徴する荒くローファイなビートですね。

3. Life Is Beautiful

人生の美しさを語った曲、Life Is Beautifulも印象的な一曲です。いや実際は全く美しさなんて語ってないんですが。

They’ll kill your little brother and they’ll tell you he’s a criminal.
They’ll fucking kill you too, so you better not get physical.

あいつらはお前の弟を殺し、だって弟は犯罪者だからと言う。
そんなにカッカするな。いつかお前も殺されるんだから。

こんなズタズタになったって傷ついたって「人生はそれでも美しいんだ」と言う彼。希死念慮についても触れていて、いつか俺は部屋で一人で死ぬんだとも言っています。

ただ最後のアウトロでまた言うんです。これにやられちゃいますね。

Isn’t life beautiful? I think that life is beautiful.

(それでも)人生って美しいだろ?俺はそう思うんだ。

他のおすすめとしては、XXX Tentacion とのコラボ曲で全米シングルチャート13位となった『Falling Down』です。

また、同じ曲でアイラヴマコーネンがフィーチャーされた「サンライト・オン・ユアー・スキン」はストリーミング・アルバムのみに収録されています。

2019年1月には彼が生前に歌っている場面を収めたPV
Goth Angel Sinner が発表され、ついに先月の10/31に EP「Goth Angel Sinner」がリリースされました。

生前から彼はこのEPを出すことをほのめかしていましたし、特に『When I Lie』が大好きで聴きまくっていたということもミュージックビデオを共に撮影した Rayn が語っています。

また、今年の3月に放送されたドキュメンタリーが 『Everybody’s Everything』。そしてこの名前が今回リリースされたアルバムの名の元でもあるのです。

3. EVERYBODY’S EVERYTHING (2019)

『Goth Angel Sinner』の三曲共を含んだこのアルバムが本日リリースされました。

オススメ曲

1. 『Belgium』

まずは先行 EP から一曲、『Belgium』。

エモロックというよりかは90年代のUK・USのロックを感じさせるようなイントロですね。

2. 『witchblades (wit Lil Tracy )』

いやこれ聞いてめちゃくちゃ懐かしいなって思いましたね。サンクラにも綺麗な音のヴァージョンは上がらなかったし、みなさん結局Youtubeで見てばっかりだったんじゃないですか。まあ Lil Peep ファンの方は絶対懐かしく思ったに違いありません。

3. 『AQUAFINA ( ft. Rich The Kid )』

いやー、Rich The Kidの少し急ぎ足なフロウがたまらないですね。この人のビートアプローチにはいつもはっとさせられるばかりです。

Molly in my Aquafina.

水に溶かしたMDMA

強烈なラインで始まるんですが、Molly (MDMA) を水に溶かすってかなりポピュラーな MDMA の使い方なんです。そもそも水溶性なんでそれが一番効きやすいんです。

あと、Aquafinaってのはかなり有名な水のブランド何ですが、4年前ぐらいに中身が水道水だってことが判明して炎上していました。

4. 『Rockstarz ( ft. Gab3 )』

いやー、このアルバムで大活躍の Gab3 ですが、結構長いこと日本にきてましたね。神戸の某ライブハウスのライブでGab3のパフォーマンスを見たんですが、めちゃくちゃ一生懸命歌う人なんですね。

この曲のイントロでは Lil Tracy などが登場しますし、割と楽しく感じる曲です。

おわりに

どうでしたか。最新アルバムだったり、シングルだったり他にもいい曲がたくさんありますので、是非プレイリストもチェックしてみてください。

https://music.apple.com/jp/playlist/everybodys-everything/pl.u-GgA52y5iZ1GAeaY?l=en

ヒップホップと高級車

ロールス・ロイスにランボルギーニ。

フェラーリやベントレー。

これらの高級車は、誰もが一度は夢見る永遠の憧れです。そして、やはりヒップホップと高級車の関係は切っても切り離せませんし、ラッパー達にとっても高級車は光り輝く宝石のようなものなのです。今回はそれらの高級車がどのようなものなのか、ラップのリリックと絡めながら解説していく記事になります。

高級車を意味するスラング

Expensive Car (高級な車) なんて言葉はリリックの中ではほとんど聞いたことがありません。例えば、“Foreign” というスラング。Playboi Carti も “Foreign” ってタイトルの曲を出してますが、学校なんかではこの言葉は「外国の」なんて意味で教わりますよね。結論から言うとこのスラングは、そのまま「(外国の)車」を表します。ですからアメリカのラッパー達にとってアメリカ以外で製造された高級車(ドイツのメルセデス・ベンツやイタリアのフェラーリなど)のことを指すスラングです。

あと、主に使われている高級車を表すスラングは “Whip” です。”Whip” って言葉にはもともと「むちで打つ」などの意味があるんですが、なぜこれが車を表すようになったか、そのヒントはフェラーリのエンブレムにあるんです。フェラーリのエンブレムは皆さんご存知の通り馬のデザインですよね。馬を走らせる時にむちで叩くことから、はじめはフェラーリを表すスラングとして使われていました。それが時とともに高級車全般をさすスラングに変容していったってわけです。

Rolls Royce

はじめは高級車の王様であるロールスロイスについてです。イギリスに拠点を置いた高級車ブランドなのですが、各国の王室が公用車として採用していたりするので、車に詳しくなくても聞いたことがあるかもしれません。

ロールス・ロイスには “Ghost” (ゴースト) や “Phantom” (ファントム)、”Wraith” (レイス) などいくつかのモデルが存在します。ラッパーたちはリリックの中で “Rolls Royce” というブランドの名前を登場させることはむしろ少なく、先述のモデル名で呼ぶことの方が多いです。モデルによって最大で約2000万円の価格の違いが生じてきますから、自慢気質なラッパーたちにとって一番高いランクのモデルを所有していることをラップしたい気持ちがあるのでしょう。ちなみにロールス・ロイスのエンブレムにちなんで “Double R” と呼ばれたりもします。

ロールス・ロイスの中で最もハイクラスなモデルはファントムです。車体価格は5570万円で、様々なオプションを付けるとゆうに6000万円を超えてくる生粋の高級車ですね。ちなみにファントムの中にも上位モデルが存在し、そちらの車体価格は6670万円にも上ります。空前絶後のバズを起こした Lil Tecca の “Ransom” で彼はこのようにラップしています。

Hop outside a Ghost and hop up in a Phantom

ゴーストから跳び降りて、ファントムに跳び乗る

Lil Tecca – Ransom

ロールスロイスの中で最もお手頃なモデルであるゴーストから跳び降りて、最も高額なファントムに乗り換えるとラップしているわけです。ただ、Lil Tecca ら Genius のリリック解説動画において、リリックに登場することは殆ど嘘であり車は持ってないし運転すらしないと公言しています。

名前的に一番かっこいいゴーストというモデルですが、88GLAM が NAV の ”Racks in My Sleep” に参加した時に、Derek Wise このような素晴らしいラインを披露しています。

Poltergeist, we in a Ghost, we can’t be seen (Skrrt, skrrt)

ポルターガイスト 俺たちはゴーストに乗ってる 誰も俺たちを見ることはできないぜ

Nav – Racks in My Sleep (feat. 88GLAM)

これはダブルミーニングを駆使したかっこいいリリックですね。「ポルターガイスト」とは誰も触れていないものが突然動き出す怪奇現象ですが、Derek Wise は「お化け」という意味の “Ghost” とロールスロイスのモデル名の “Ghost” をかけています。「俺たちはロールス・ロイス ゴーストに乗ってるから、お化けみたいに誰にも見られずに車を動かせる。まるでポルターガイストだ。」という感じです。

ちなみに、車系の歌詞がラップされたときなどに、アドリブでよく使われる “skrrt” という言葉は、車がドリフトした際にタイヤが地面に擦れる音を表現したオノマトペです。

Bentley

次に紹介するのはベントレーです。こちらもイギリスの高級車メーカーであり、翼の真ん中に “B” のロゴが特徴的です。ベントレーは現行のほとんどのモデルが約3000万円であり、ロールスロイスに比べると比較的お手頃です。Bentayga (ベンテイガ) というSUVも製造しており高級車とスポーツカーの両方の要素をミックスした感じですね。

世界最高峰のSUV ベンテイガ

ちなみに Lil Uzi Vert は名だたる高級車を全てカーキにペイントし、無駄にいかついオプションパーツを装着した様子をInstagramに投稿していましたが、ベントレーのコンチネンタルというモデル、もはや原型がないほど改造しています。バンパープロテクターやスペアタイヤを搭載し、オフロードも走行可能なタイヤに履き替えています。

Lil Uzi Vert の車にカスタムを施したガレージ Car Flex より

ちなみに Lil Uzi はもう一台カーキのベントレーを所有していましたが、盛大に事故って廃車となったそうです。

J.Cole は自身の楽曲である “KOD” にてベントレーに言及しつつこんなラップをしています。

This is what you call a flip

これが君が “flip” って呼ぶものだろ
Ten keys from a quarter brick

1/4 ポンドから10キロのコカイン

Bentley from his mama’s whip

ママの車からベントレーに

J.Cole – KOD

“flip” っていうのは、安いドラッグを買ってそれを高値で転売する行為を表すスラングです。J.Cole は昔、このようにドラッグの転売を行って稼いでいた過去があるようで、その時のことについてのラインです。”key” と “brick” はどちらもドラッグ(主にコカインに用いる)の重さを表すスラングで、”key” は1キログラム “brick” は約450グラムを表しています。つまり、彼は110gのコカインを安価で入手し、それを転売することで10kgのコカインが買えるほどのお金を稼いだわけです。そうして稼いだお金で、自分では買うことができなかったため使用していた母親の車を卒業して、ベントレーをゲットしたんです。ドラッグビジネスはいつも桁が違いすぎて怖いですよね。

ベントレーに限ったことではありませんが、ラッパー達はよくリリックの中で “tint” という言葉を使います。”tint” というのは車の窓をくもらせて、外から内部を見えにくくすることです。ほとんどの車は元から後部座席に軽い “tint” が施されていますが、ラッパー達はしばしばカスタムによって外からの視線を完全に遮断します。窓に特殊な加工を施して自由自在に窓の透明度を調節することも可能なのですが、Nicki Minaj は自身の楽曲 “Chun Li” の中で “Bentley tinta on” とラップしています。彼女はベントレーに調節可能の曇りガラス機能をカスタムを施したようです。

透明度を調節可能な曇りガラスのカスタムを搭載した車

Lamborghini

この記事の最後に紹介するのは、やはり何と言ってもランボルギーニです。ランボルギーニは他の高級車に比べてもかなりスポーツカーよりな気がしますが、ここ最近でランボルギーニについてラップするラッパーがかなり増えました。ランボルギーニといえば、アヴェンタドールやウラカンのようなスポーティなモデルを一番に想像するでしょう。しかし、最近のラッパー達の間での流行の波は完全に Lamborghini Urus (ウルス) です。ウルスは2017年に発表されたランボルギーニ初のSUVです。ベンテイガを含むSUVの人気からは、やはり乗りやすい車に乗りたいというラッパー達の本音が垣間見えます。

売れっ子ラッパー達はこぞってウルスを納車しまくってますが、Gunna もそのうちの一人です。Gunna はものすごく鮮やかなオレンジ色のウルスを納車しましたが、それについて Future の “Unicorn Purp” という楽曲に参加した際にこのようにラップしています。

New Lamborghini, the Urus, it came in all orange, it look like a pumpkin (Yeah)

新しくランボルギーニ・ウルスを買ったぜ。全面オレンジでかぼちゃみたいだ

Future – Unicorn Purp (feat. Young Thug & Gunna)
Gunna の Instagram より

いかがでしたか。今回は三種類しか紹介できませんでしたが、今リリックに頻出するベスト3に絞ってみたつもりです。気をつけて聞いていると、一曲通して車の名前が出てこない曲の方が少ないと言っても過言ではないでしょう。僕は将来 Tesla のModel X という車に乗ることを決めているのですが、それがどのような車なのかはまた第二弾で書くことにします。それではありがとうございました。

Brooklyn Drillってなに?

記事の内容を動画でもご紹介しています。

皆さんこんにちは。今回は、近頃ニューヨークのみならずアメリカ中で人気を博しつつある”Brooklyn Drill(ブルックリン・ドリル)”というジャンルについて、3人のラッパーを取り上げながらご紹介していこうと思います。記事の最後に、今回ご紹介させていただいた楽曲や、今後要注目のニューヨーク出身アーティストの楽曲を集めたプレイリストのリンクを貼っていますので、最後まで読んで頂ければ嬉しいです。それではさっそくいきましょう。

そもそもドリルミュージックって?

ドリルミュージックとは、2010年頃にイリノイ州シカゴで生まれたとされる、主に暴力や殺人などをテーマとしたヒップホップのサブジャンルのことを指します。Chief KeefやLil Durkらの台頭は記憶に新しいですが、彼らこそドリルシーンの立役者です。そんな彼らの功績もあって、ドリルミュージックは世界的に波及していきました。特にめざましかったのがイギリスへの波及、UKドリルです。衰退しつつあるシカゴのドリルシーンと比べ、イギリスでは今もなお盛り上がりを見せています。ロンドン警視庁によってUKドリルのミュージックビデオが削除されたり、若手ドリルグループ1011の活動が制限されたりといった出来事が、その盛況ぶりを表しています。

Brooklyn Drill

さてここから本題に入ります。ニューヨークといえばヒップホップ発祥の地として有名ですが、ここ数年はシーンとしての盛り上がりを見せておりません(Bobby Shmurdaや6ix9ineなど度々お騒がせ者は登場しますが…)。世界的にヒップホップが流行している中、そろそろ本場ニューヨークの若手にも頑張ってほしいなと思っていた矢先、突如としてブルックリンに新しい風が吹き込みます。それが”Brooklyn Drill(ブルックリン・ドリル)”です。このブルックリン・ドリルとは、その名の通り、ニューヨーク・ブルックリンで生まれたドリルミュージックのことで、2017年頃からじわじわと人気を集めてきました。シカゴドリルやUKドリルからの影響を強く感じさせるものの、新たな音を取り入れることを拒まず、彼ら独自のジャンルを作り出そうと日々進化を遂げています。

ここからはブルックリン・ドリルにおける重要且つ要注目なアーティストをご紹介していこうと思います。

1. Sheff G

ブルックリン・ドリルを語るにあたってまず最初に知っておくべきなのがこの男、Sheff Gです。

彼以前にもドリルスタイルを取り入れていたラッパーはいたのですが、最初にこのスタイルで注目を集めたのがSheff Gです。とやかく説明する前にまずは一曲聴いてみましょう。Sheff Gで”No Surburban”。

いかがだったでしょうか。不穏なメロディやドラムパターン、暴力的なリリックからドリルミュージックの影響を強く感じることができます。この楽曲は、後に紹介するラッパー22Gzの楽曲”Suburban”へのアンサー曲なのですが、互いはそれぞれ別のギャング組織に所属しており関係はよくありません。いわゆるビーフ状態にありギャング抗争の絶えない彼らは、彼らのいる境遇を同じく過酷な環境下にあるシカゴや南ロンドンのシーンと重ね合わせてラップしています。このことから彼らがドリルミュージックを自らのラップスタイルに取り入れた理由が分かります。

「シカゴ、UKドリルに影響を受けている」と様々なインタビューでも語っている彼は、実際UKドリルMCのTazeと曲を作ったりもしています。以前にChief KeefもSkengdoやAMといったUKドリルMCと曲を出していましたが、そのコラボよりも遥かにカッコいいので是非聴いてみてほしいです。

その後独自のスタイルを取り入れつつシングルをリリースしてきたSheff Gは、今年遂に彼にとって初となるミックステープ”The Unlucky Lucky Kid”をリリースしました。このミックステープからも一曲お聴きいただきましょう。Sheff Gで”We Getting Money”。

はい。既にお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、こちらのビート、主に70年代に活躍した日本の歌手、太田裕美さんの”赤いハイヒール”という楽曲をサンプリングしたものなんです。

シティ・ポップ(70~80年代に日本で流行したポップス)はサンプリングソースとして以前から人気がありますが、この選曲は渋いですね。

こういったビート選びから、シカゴ、UKドリルとの差別化を試みていることが見て取れます。実際Sheff GはHotNewHipHopのインタビューにて、「UKドリルビートは邪悪すぎるし、シカゴのビートは使い古されて時代遅れだ。だから俺たちは自分たちで新しいスタイルを作り出さなければならないんだ」と語っています。ミックステープ全体を通して聴いても、元来のドリルのドラムパターンを残しつつ、落ち着きのあるピアノや弦楽器を基調とした独自のスタイルを提示しています。

ちなみに、このミックステープ”The Unlucky Lucky Kid”のカバーを撮影したのは日本人のHazzさんという方で、J.ColeやPusha T、Tory Lanez、A Boogie wit da HoddieなどのMV撮影にも携わる凄腕カメラマンです。

Hazzさん(左)とSheff G(右)

HazzさんのInstagram(https://www.instagram.com/hazznyc/)より

2. 22Gz

次は、先程も名前を出しましたが、22Gzというラッパーについてです。彼はBlixky Boysというニューヨークで最も恐れられるギャング組織に所属しており、可愛らしい顔をして「Blixky(ハンドガンを意味する)」というワードを連呼するやばい奴です。実際、第二級殺人罪で逮捕されたり、Rich The Kidを挑発したり、楽曲内で多くの人気ラッパーをディスったりと、なかなかのアウトローです。

そんな彼は、Kodak BlackのレーベルSniper Gangと契約しており、ラッパーとしての実力は十分です。それでは最初に、そのKodak Blackを客演に迎えた一曲を聴いていただきましょう。22Gzで”Spin the Block (feat. Kodak Black)”。

[22Gz]
And if I miss, I’ma spin the block
撃ち損ねたらもう一度撃つ
Even if I hit, I’ma spin the block
命中してもまた撃つんだ
If I miss, I’ma spin the block
死ぬまで撃ち続けるぜ

はい、これぞドリルって感じの曲です。危険な匂いがプンプンしますが、幾多の犯罪歴を持つKodakが気に入る理由も分かります。

ここでもう一曲、彼の人間性が伝わってくる楽曲をご紹介したいと思います。22Gzで”Sniper Gang Freestyle”。

この曲中で彼は、6ix9ineやTory Lanez、G Herboなどの人気ラッパーや、Kooda BやJay Dee、Dee Savvなどの同郷ブルックリン出身の若手ラッパーを次から次へとディスっています。

さらに、こんなラインも登場します。

Killing ni**as and I rap about it like I’m Melly
人を殺してそれについてラップする、Mellyみたいだろ

Mellyとは、皆さんご存知、第一級殺人罪でお務め中のラッパー YNW Mellyのことです。22Gzは、そんな要注意人物である彼と自分を重ね合わせているみたいです。重ね合わせるのは自由ですが、同じ道は辿ってほしくないと願うばかりです。

基本的にはこういった暴力的且つ攻撃的な内容のリリックが多い彼ですが、力強い声と多彩なフロウが魅力的で、一度聴くと病みつきになる中毒性を持ちます。今年リリースされた彼のミックステープ”The Blixky Tape”も完成度が非常に高いので是非聴いてみてください。

3. Pop Smoke

続いては皆さんお待ちかね、Pop Smokeです。”Welcome to the Party”という楽曲、皆さん一度は聴いたことがあるんじゃないでしょうか。

このPop Smokeというラッパーもブルックリン出身なのですが、上記の2人のラッパーとは少しテイストが違います。まずは、わずか30分で作り上げたという彼の代表曲を聴いていただきましょう。Pop Smokeで”Welcome to the Party”。

いかがだったでしょうか。明らかにアメリカのヒップホップの音(ビート)じゃないですよね。そうなんです。この曲は、UKドリルMCのHeadie OneやRVなどにも楽曲を提供している東ロンドン出身のプロデューサー、808Meloによるプロデュースなんです。808Meloは、Sheff GやSleepy Hallowなど他のブルックリンのラッパーにも楽曲提供しているのですが、Pop Smokeは自身のほとんど全ての曲で彼のビートを使っており、完全に独自のスタイルとして定着させようとしています。

そして、このラッパーの凄さはなんといってもブレイクまでのスピードです。昨年の12月頃にラッパーとしてのキャリアをスタートさせた彼ですが、今年の4月にリリースした”Welcome to the Party”がニューヨークを中心にヒットし、それを知ったPusha Tがニューヨーク開催の「The Greatest Day Ever! festival」にてPop Smokeをステージに上げました。

この出来事が後押しとなり、”Welcome to the Party”はバイラルヒットとなりました。その後リリースされた9曲収録のミックステープ”Meet the Woo”のリリースパーティでは、同郷ニューヨーク出身のフィメールラッパーNicki Minajを客演に迎えた同曲のRemixを発表しました。

実はこのリミックス、アルバムリリースとPop Smokeの二十歳の誕生日祝いを兼ねたサプライズプレゼントで、彼自身もこのリリースパーティで初めて聴くことになりました。その時の様子をご覧ください。

Nickiのバースでブチ上がるPop Smoke。完璧なリアクションです。

その後もFrench MontanaやSkeptaらがリミックスに参加したりとその勢いは留まることを知らず、2019年夏は完全にPop Smokeが持っていってしまいました。それにしても半年強でここまでのヒット曲を生み出したのは本当にすごいです。まだまだこれからに期待ですね。

Rolling Loudへの出演キャンセル

ちなみに今回ご紹介させていただいたSheff G、22Gz、Pop Smokeの3人のラッパーは、先月開催された「Rolling Loud New York」に出演予定だったのですが、暴力事件への関与を理由に警察からキャンセルの要請があったため、急遽出演不可となりました。こういった出来事からも、ニューヨークにおいてドリルミュージックが盛り上がりを見せているのがわかります。

ニューヨーク市警からの出演取り止めの要請書

おわりに

いかがだったでしょうか。ヒップホップ誕生の地、ニューヨークで盛り上がりを見せるブルックリン・ドリルの魅力が、この記事を通じて少しでも多くの方に伝わっていれば嬉しいです。最後までお読み頂きありがとうございました。

今回ご紹介させていただいた楽曲や、今後要注目のニューヨーク出身アーティストの楽曲を集めたオリジナルプレイリストを公開しています。もしよろしければApple Musicのフォローもよろしくお願いします。

https://music.apple.com/jp/playlist/upcoming-new-york/pl.u-2aoqprzCNWXxYz0?l=en

Yo Pi’erre! You Wanna Come Out of Here?

先日、Kanye West による待望の新作『Jesus is King』 がやっとリリースされました。ゴスペル的要素を前面に押し出しながらも、新しいヒップホップの要素も巧みに混ぜられており、まるで新しいジャンルの誕生を目の当たりにした気分になりました。しかし、今回の主役は Kanye ではありません。今回は 『Jesus is King』 にもクレジットされた若手天才プロデューサー Pi’erre Bourne についてです。

Pi’erre Bourne って誰?

Pi’erre Bourne (写真はアトランタの写真家 Gunner Stahl によるもの)

Pi’erre Bourne (ピエール・ボーン) こと Jordan Timothy Jenks は 1993年生まれのトラックメーカーです。彼がプロデュースした Playboi Carti の 『Magnolia』 が大ヒットして人気に火がついたわけですが、彼らは二人ともファーストネームが Jordan と同じなんですね。Pi’erre はニューヨーク、Carti はアトランタと出身は違いますが、本当の兄弟のようにともにキャリアを築いてきたんです(Pi’erre はのちにアトランタに移住しています)。Pi’erre と言えばまず、あのプロデューサータグです。みなさん一度は聞いたことがあると思いますが、念のため、Playboi Carti との大ヒット曲 『Magnolia』 をお聴きください。

いかがでしたでしょうか。Playboi Carti が浮遊感のあるフロウで Pi’erre のトラックにアプローチしています。この曲が、Pi’erre にとっても、Carti によっても原点となったと言っても過言ではないでしょう。ちなみに 『Yo Pi’erre! you wanna come out of here?』 というプロデューサータグについてですが、これは The Jamie Foxx Show というアメリカのコメディー番組の一コマをサンプリングしたものです。

Pi’erre Bourne のプロデューサータグの元ネタ

彼の最大の特徴は、コミカルなサウンドや怪しげなサウンドなど、普通のプロデューサーが使わないような音を組み合わせてビートを作り出すところです。これほど少し聴いただけで誰が作ったビートかを判別できるビートメーカーは彼くらいでしょう。さらに彼のすごいところは、自分自身が作ったビートの上でラップまでしてしまうところです。Pi’erre Bourne という男は、彼で始まり彼で完結してしまいます。そんな彼は今年の6月に自らのアルバム 『The Life of Pi’erre 4』をリリースしています。全ての曲を自分自身でプロデュース、レコーディング、ミキシングした完全自己完結アルバムですが、圧倒的なクオリティで私たちを驚かせてくれました。今回はこちらのアルバムから一曲、『How High』 をご紹介します。まずは聴いてみてください。

こちらの楽曲は彼がアトランタに移り住む前のニューヨークでの生活と、ビートメーカーやラッパーとして成功した現在を比較してラップしたものです。地面を一歩一歩踏みしめて着実に歩みを進めるかのような重いビートに合わせて過去の思い出や現在の成功した生活を誇示しています。こちらの曲からは面白いリリックを少し引用してみます。

Roamin’ around Queens with my bros

Queens を仲間たちと歩き回る

We ain’t have no money, we was broke

俺たちには金がなかったんだ、そう、貧乏だった

Police at the fucking front door

警察が玄関先に来たら

Flush the shit in the toilet bowl

ブツをトイレに流すんだ

Queens というのは、Pi’erre の生まれたニューヨークの街の名前です。彼はアトランタに移住して音楽キャリアを開始するまで、ニューヨークの大学でグラフィックを学んでいました。仲間たちと街に繰り出して遊び呆けていたので、全くお金を持っていない貧乏学生だったそうです。当時、ニューヨークではマリファナの嗜好的使用の規制が厳しかったため、ガサ入れのために玄関先に警察がやって来たと分かったら、証拠隠滅のためにすぐにマリファナをトイレに流す必要があったのです。

ちなみにこちらの楽曲の終盤の電話の音声は Lil Uzi Vert の声を録音したもので、Lil Uzi Vert が電話越しの女性に「『Yo Pi’erre! you wanna come out here?』って言って!」としつこく迫っています。曲のアウトロだけのために Lil Uzi を起用できるのも、彼か Working on Dying のメンバーくらいではないでしょうか。

Pi’erre Bourne と Young Nudy

Pi’erre と言えば Playboi Carti のプロデューサーという感じで世間に認知されていますが、彼のベストパートナーは Young Nudy であると考える人も少なくありません。Young Nudy はアトランタの危険地帯である Zone 6 出身で、21 Savage のいとこにあたるラッパーなのですが、彼とは2016年ごろからたくさんの楽曲を制作しています。Nudy のアルバム 『Slimeball 2』や 『Nudy Land』 などに収録されている楽曲は、ほとんど Pi’erre によるプロデュースによって生み出されています。

ゆったりとスローテンポのゲームBGMのようなビートが20秒ほど続いたあと、いきなり例のプロデューサータグとともに勢いのあるラップが始まります。そんなゴールデンコンビの彼らですが、今年になってやっとコラボアルバムをリリースしました。Nudy のアルバム 『Slimeball』 と Pi’erre Bourne の名前を掛け合わせて 『Sli’merre』 というタイトルです。

『Slimeball 2』の時点で、ほぼ全曲 Pi’erre によるプロデュースだったため、実質『Slimeball 2』も『Sli’merre』ですね。こちらのアルバムからも一曲ご紹介します。

お聴きいただいたのは『Sli’merre』 より『Joker』という楽曲です。超スローテンポの気だるいビートなのですか、よく聴くとクラブで低音を流しすぎてスピーカーや壁が震えているような音が聴こえてきます。セルフで音を割ってしまうという彼らしい特殊すぎる技法を盛り込んでおり、とても面白い楽曲に仕上がっていると思います。ちなみに、Lil Uzi Vert の 『X』 や Playboi Carti の 『Poke It Up』 などの冒頭に挿入されているドアが開いた音のプロデューサータグは、例のセリフが Young Nudy によって録り直されたものです。

Pi’erre Bourne による偉業

彼はここ数年の音楽キャリアの中で数え切れないほどの偉業を成し遂げています。並大抵のトラップビートメーカーではたどり着けないような領域まで進出しつつあるというのが彼の現状です。まず最初に、話題がフレッシュなうちに紹介しておきたいのが Kanye West の待望の新アルバム 『JESUS IS KING』への参加です。Pi’erre が Kanye と曲を作るのは今回で3回目ですが、制作プロセスが想像できないレベルに複雑なビートや、はたまた極端に音数が少ないビートを提供したりと、Kanye とともに様々なスタイルに挑戦しています。彼は “JESUS IS KING” に収録されている 『On God』 と 『Use This Gospel』 の二曲のビートを担当しているのですが、今回は後者を紹介したいと思います。

『On God』 にはプロデューサータグが挿入されていますが、こちらの曲はタグがないので、お気付きでない方も多いと思いますが、実はこれも Pi’erre のビートなんです。

この楽曲ですが、控えめに言ってヒップホップ史上の歴史に十分残りえる伝説的な楽曲なんです。客演の Clipse というのは 92年に Pusha T と No Malice によって結成されたヒップホップデュオの名前です。つまり私たちは今、約30年前に結成されたヒップホップデュオのガチのラップを、最新鋭のプロデューサーのビートの上で聴くという伝説を目の当たりにしてしまったんです。しかもそれを Kenny G のサックスとともに、Kanye の曲の中で。

彼の最近の功績として外せないのは Chance The Rapper の楽曲への参加ですね。Chance の最新アルバム 『The Big Day』 に収録されている 『Slide Around』 のプロデューサーとしてクレジットされています。

この曲では Pi’erre らしい軽快で爽やかなビートの上で シカゴの Chance と Lil Durk、ニューヨークの Nicki Minaj による美しいラップのハーモニーを聴くことができます。この曲の Lil Durk のバースは本当にたまらないです。ちなみにこちらの曲をはじめ、最近 Pi’erre のビートにおいて乱用されているガラスが割れるような効果音は Fortnite のサウンドエフェクトのサンプリングです。

Pi’erre Bourne は神出鬼没です。誰のアルバムにクレジットされるか予想もつかない。だからこそ彼のビートが聴こえてきたら、その途端に僕は笑顔になれます。Kanye West のゴスペルアルバムにクレジットされているなか、Young Nudy とコラボアルバムを制作し、さらにはYoung Thug の 『So Much Fun』のうちの4曲をプロデュースしました。そんな彼の、どこにでもいるけど、どこにでもいない、そんな出現率が私たちの心を掴んで離そうとしません。

Pi’erre Bourne とアップカミングなラッパーたち

Pi’erre は大物アーティストの楽曲のプロデュースを担当すると同時に、アップカミングなラッパー達にもビートを提供し続けています。まず初めに紹介するのが Chavo というラッパーです。彼はアトランタを拠点とするラッパーですが、まだまだ知名度が低いのも事実です。そんな無名といっても良いラッパーの14曲のミックステープのうちの7曲をプロデュースしてしまう、それが彼なんです。しかも、無名だからといって一切手を抜かずに相変わらず物凄いビートを提供し続けています。

このリンクを貼った時点でこの動画の再生回数は151回。

続いて紹介するのは、こちらもアトランタから Slimesito というラッパーです。彼は K$upreme のアルバムに客演に呼ばれていたりしているので、もしかしたら名前を見たことがあるかもしれません。Pi’erre は Slimesito にふたつのビートを提供しているのですが、どちらもレベルがかなり高いビートなんです。私がラッパーの立場だったら、ビートにうまく乗れずお蔵入りにしかねないようなビートです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。Pi’erre Bourne の魅力が少しでも伝わったなら嬉しいです。実は最近、USのラップが日本で流行らない理由を考えていたんです。やはりUSをほとんど聞かない人が口を揃えていうことは「英語がわからないから聴いても意味がない」なんですよね。そう聞いたとき、やはりビートの面白さや奥深さから紹介していくのが誰にとっても面白いかなと思いついたんです。もちろんヒップホップにはリリカルで面白い側面は十分にあり、それも重要なことだと思いますが、単純に音を楽しむってことも大切だと思うんです。Pi’erre のビートなんか「英語がわからない」とかいう次元をはるかに超えて、世界中の人々が感覚的に享受できるものですからね。ですので、もし読んでくださってるあなたの周りに、USを英語がわからないからという理由で食わず嫌いしている方がいたら、この記事を進めてあげてほしいです。

今回紹介した楽曲+αのオリジナルプレイリストです。もしよければ Apple Music のフォローもお願いします。

https://music.apple.com/jp/playlist/yo-pierre-you-wanna-come-out-of-here/pl.u-jV89aBLud1A86o2?l=en