Lil Yachty が、シンボルである赤いブレイズヘアーを辞めた理由を明かす

本日待望のニューアルバム『Lil Boat 3』をリリースする Lil Yachty が、自身のトレードマークであった赤いブレイズヘアーを卒業した理由を明かした。

アメリカのヒップホップリスナーの子供たちの間では、ハロウィーンの仮装の定番になりつつあった彼のヘアスタイルだったが、Lil Yachty はインタビューに対してこのように語った。

実を言うと、管理がまじで大変なんだ。

赤い髪にするために、ブリーチをしないといけないんだけど、ついにブリーチが頭皮を殺しだしたんだよ。

赤髪が好きだったから、ずっと続けてきたけど、もう限界だ。

そろそろ髪が生えてこなくなるよ。

赤髪を辞めた理由として、維持の大変さを挙げた Lil Yachty。ファンの間では、黒髪にしたことでこれからの彼の音楽が暗いものになるという予測が飛び回ったが、このことについても言及した。

みんな、おれの髪について深読みしすぎだよ。

俺にとってはただの髪の毛。そんなに深い意味を持って赤髪にしていたわけじゃないよ。

ポジティブな雰囲気の楽曲が人気を博している彼だが、黒髪にイメージチェンジしたことで、今回のアルバムが暗い雰囲気になることはなさそうだ。

Photo by Josiah Rundles

日本時間で本日の13時にニューアルバムをリリースする彼についての詳しい記事はこちらから。

Lil Yachty と巡る、素敵なマンブルラップの世界

Lil Yachty と巡る、素敵なマンブルラップの世界

Lil Yachty (リル・ヨッティー) 、またの名を Lil Boat (リル・ボート) が世界中のヒップホップリスナーに注目され始めたのは、今から4年ほど前の2016年頃でした。

Lil Yachty

真っ赤なブレイズに、カラフルなビーズをあしらった独特なヘアースタイル。寝起きのような締りのない声色。様々なスタイルに挑戦し、常に新たなサウンドを創り出そうとする前向きな姿勢。数え切れないほどのユニークなキャラクターを持った Lil Yachty に、私たちリスナーは一瞬にして虜になりました。

Lil Yachty は、はっきりと言葉を発さないでラップする、いわゆる「マンブルラップ」のカテゴリでその名を轟かせました。

「マンブルラップ」と聞くと、ひょっとするとどこかネガティブなイメージをお持ちの方もおられるかもしれません。ここ数年では、Playboi Carti Lil Uzi VertYoung Thug などのいわゆる「マンブルラッパー」がシーンを台頭したこともあり、ネガティブなイメージは払拭されてきてはいますが、それでも、「マンブルラップ」という言葉がネガティブな意味合いで使われているのをよく目にします。

しかし、Lil Yachty の場合は、マンブルラップの枠を飛び越えてポップミュージックや R&B などのあらゆるジャンルのアーティストから引っ張りだこになっています。一時はネガティブなイメージさえ押し付けられていたマンブルラップアーティストの一人が、なぜここまで各方面からの人気を得たのでしょうか。今回はその活躍の裏に隠された「マンブルラップ」の魅力と共に、Lil Yachty についてまとめてみようと思います。

Lil Yachty ってどんなラッパー?

Lil Yachty (以下 Yachty) こと Miles Parks McCollum は、アトランタの西側に位置する小さな町メーブルトンに生まれました。

彼の音楽を聴いたことがあっても、彼のキャラクターについてあまり知らない方もおられるかもしれません。そんな方々には、まずこのインタビュー動画をお勧めします。(彼についてよくご存知の方も、ご視聴を強くお勧めします。)

I don’t eat fruits or vegetables
俺は果物も野菜も食べない
I eat pizza everyday… every single day
ピザは毎日食べるよ、毎日欠かさずにね

インタビュアーの「君について、みんなが知らないことを幾つか教えてよ」という質問に、このような驚きの回答を示した Yachty。

さらに、インタビュアーに「このままだと、リスナーのみんなは君のことを『変なヤツ』のカテゴリーに入れちゃうよ?」と警告されたのに対し、「どうぞお好きに。」と一言で答えてしまいます。インタビュアーも、困惑を隠しきれず全体的に気まずい雰囲気になってしまっていますが、この動画こそが世界中のリスナーが彼のキャラクターに魅了されている理由を明確に示していると思います。

マクドナルドで働いていた経験もある、ごく普通の少年だった Yachty は、2016年にリリースしたシングル『One Night』で一躍有名になります。ハイハットの効いた浮遊感のあるビートの上に、ほとんど抑揚のない気怠そうな歌声をのせる今までにないスタイルは、賛否両論こそありましたしたが、間違いなく世界中に広まりました。

各方面のアーティストとの共演

『One Night』で一挙に注目を集めた彼は、同年にミックステープ『Lil Boat』をリリースします。『One Night』が収録されていることから、もちろんリリース前から期待値が高かったミックステープですが、見事その中からもヒットを生み出します。それは Young Thug や Quavo、Skippa da Flippa を招いた楽曲『Minnesota』です。

幼児向けの数え歌のような単調なメロディーのトラックに、トラックと同じメロディーでアプローチする類をみないスタイルは、聴く者全ての心を鷲掴みにしました。Young Thug や Quavo など、各方面からのゲストを一曲に詰め込むことで、更なるリスナーの獲得に成功しました。

また Yachty は、2016年に Chance The Rapper によってリリースされたミックステープ『Coloring Book』に収録されている楽曲『Mixtape』にも参加し、そこでも大きな爪痕を残しました。

Chance The Rapper や Young Thug と言った実力派ラッパーと肩を並べて、ほとんど無名だった Yachty はソリッドなラップをラストバースで披露します。他の二人に劣らないそのラップスキルは、Chance のリスナーたちの間でも話題となり、すぐさまその口コミは拡散されました。

いわゆるマンブルラップの元祖である Young Thug や、アトランタトラップの大御所である Quavo 、シカゴの Chance らとの共演を果たした Yachty ですが、その勢いは止まることを知らず、更なるジャンル間の跳躍を見せてくれました。

その一例として挙げられるのは、Charli XCX との楽曲『After the Afterparty』での活躍です。オートチューンをバリバリに効かせ、ポップ寄りのフロウで歌うことで、ポップミュージックとの意外な融合を実現しています。この楽曲への参加を通して、Yachty はメロディアスなスタイルでポップミュージックのリスナーたちからの認知度も上昇させました。

このように、ジャンルの壁を跳躍して様々なアーティストとの共演を果たすことで、ヒップホップコミュニティ以外からの認知度を上昇させ、その結果としてヒップホップシーンの盛り上がりにつながりました。ジャンル間の共演のハードルを下げた人物として、間違いなく Lil Yachty の名前が上位に上がってきます。

スタイルの多様性

Yachty は、他のアーティストの楽曲に参加するのみならず、自らのプロジェクトにおいても様々なスタイルへの挑戦を試みてきました。本章ではその一部をご紹介します。

Not My Bro

1枚目のミックステープ『Lil Boat』に収録されているインタールード的なポジションの楽曲です。Yachty のメインフィールドである『マンブルラップ』を究極まで突き詰めた一曲となっており、リリックを見ながら聴いても何を言っているかわからないレベルです。ラップがうまいとはお世辞にも言えませんが、眠たげな声色と、一隻のボートが海原にポツンと浮かぶ様子が頭に浮かぶような穏やかなトラックが、何故だか心地よさを醸し出しています。

Beautiful Day (feat. Kylie Jenner)

『Lil Boat』をリリース後に制作された楽曲を集めたミクステ『After da Boat』に収録されている楽曲です。驚くべき点は、Kylie Jenner が客演として参加していること(ほとんどラップは披露せず、ただふざけている間にバースは過ぎ去っってしまいます。)ディズニーランドのパレードで流れてきそうな、可愛らしいトラックの上で四分間のショータイムが繰り広げられます。

前半の Yachty のバースでは、メリハリのないだらだらとしたラップから台詞のパート、さらには本気のラップなどが詰め込まれており、四分間が一瞬で過ぎ去ると共に、聴き終わったと同時に「今のは何だったんだ」という不思議な感想に襲われる迷曲となっております。

she ready (feat. PnB Rock)

2枚目のスタジオアルバム『Lil Boat 2』に収録されている PnB Rock をフィーチャーした楽曲です。『Lil Boat 3』の先行シングルを二曲ともプロデュースした Earl on the Beat によるプロデュースで、蒸気機関車の煙が吹き出すようなサウンドのポジティブな良トラックです。

Ty Dolla $ign のように、ヒップホップと R&B を行き来するようなスタイルで有名な PnB Rock をフィーチャーすることで、Yachty ならではの陽気な雰囲気を、他の楽曲とは少し違ったアプローチの仕方で実現しています。

Dripped Out (feat. Playboi Carti)

まずは、Lil Yachty の三枚目のスタジオアルバム『Nuthin’ 2 Prove』に収録されている Playboi Carti を招いたこちらの楽曲です。こちらも Earl on the Beat による 8ビットゲームのサウンドエフェクトのようなピコピコトラックに、乳児が泣きじゃくるようなラップが印象的です。

マンブルラップシーンを台頭するに二強の共演で、リリックを理解せずとも楽しめる素敵な楽曲に仕上がっています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は Lil Yachty と共に素敵なマンブルラップの世界をご紹介しました。「薄っぺらくて、軽すぎる」と批判されることもあるマンブルラップですが、これも一つの立派なジャンルだと考え、単純に楽しんでみるのも良いのではないでしょうか。

最新作の『Lil Boat 3』にも、A$AP Rocky や Tyler, The Creator、Young Thug などが参加しており、大変聞き応えのある作品になりそうです。約2年ぶりに Lil Yachty ワールドに連れて行ってくれることを期待して、楽しみに待つとしましょう。

G Herbo が最新アルバム『PTSD』のデラックス盤のトラックリストを公開

最新アルバム『PTSD』のデラックス盤のリリースを今週末に控えた G Herbo が、同アルバムのトラックリストを公開した。

デラックス盤には新たに14曲が追加され、通常盤にも参加していた Lil Durk と Lil Uzi Vert が再び参加している。

同アルバムの先行シングル『Friends & Hoes』は以下から聴くことができる。

Spotify :

Apple Music :

https://music.apple.com/jp/album/friends-foes/1513042543?i=1513042552&l=en

Lil Yachty がニューアルバム『Lil Boat 3』のトラックリストを公開

赤いブレイズヘアにビーズをあしらったヘアースタイルでお馴染みだった Lil Yachty が本日リリースするニューアルバム『Lil Boat 3』のトラックリストを公開した。

A$AP Rocky と Tyler, The Creator に加え、昨年の XXL Freshman にも選出された Tierra Whack の3人が1曲に会する楽曲『T.D』(Tokyo Drift の略) が確認できる。

他にも Future との楽曲には、同時に Rae Sremmurd と数々を名曲を生み出したことでも有名なプロデューサー Mike Will Made-It がクレジットされていたり、Lil Durk と Young Thug が同じ曲に参加していたりと、大変豪華な内容に仕上がっているようだ。

噂されていた Playboi Carti や J.I.D との楽曲は残念ながら未収録となったが、それに代わるほど十分なコンテンツとなっており、必聴の一枚となりそうだ。

Drake と DaBaby が参加した先行シングル『Oprah’s Bank Account』
先日リリースされた先行シングル『Split / Whole Time』(MV には Playboi Carti も出演)

Billie Eilish がボディーラインを見せない理由

ダボっとした服をきて、身体を露出しないことでよく知られている Billie Eilish。

彼女はその理由を、誰かの欲望の流通過程の中に自分をさらしたくないからだと過去に語っていた。

そんな彼女が今回、人類全体へと向けたメッセージともとれるショートフィルムを公開。

重厚で暗たんとしたサウンドの中で、ぽつりぽつりと語られる彼女の言葉は、「自己規定」をテーマに「女性であること」や「誰かからの評価」に対しての彼女の考えを示すものになっている。

下に全訳を掲載する。

君は私を知ってる?本当に?

君には意見がある。

それは私の考え・音楽・服・身体・に対しての意見。

私の着ているものを気に入らない人もいれば、称賛してくれる人だっている。

着ているものを見て、他人を馬鹿にしたり、私を馬鹿にする人もいる。

でもあなたは見てるでしょ、ずっと。

見られてないなんて思ったこともない。

今だってあなたに見られていて、認めてくれず、気晴らしでさえあると感じる

(みんなの眼差しを)気にして生きていたら、私は動くことすらできないわ。

もっと細く、弱く、柔らかく、細長くあって欲しいの?

主張しないで欲しいの?

肩をさらせばいいの?それとも胸?

私はお腹にしか価値がないの?それともお尻?

私が持って生まれた体をあなたは気に入らないの?

着心地が良い服を着てれば女じゃなくなるの?

重ね着してたら淫らで汚らしい女なの?

私の身体を見たことも無いのにまだジャッジしようとする。

どうして身体で私を判断するの?なぜ?

みんなが体の大きさを基準にしていると仮定してみるの。

みんなの体はどうだろう?「良い感じ」だろうか?

私が服をたくさん着ようが薄着をしようが

誰だって私が誰かなんて決められない、そんなことに意味なんてないのよ。

私の価値観はあなたがどう受け取るかに負っているの?

それとも私に向けた意見は「私のもの」じゃないの?

人にどう見られるか意識して生きる人たち、(特に女性は) 身体に異常に気を使わないといけない世の中など、彼女の意見がよくわかるビデオとなっている。

まとめるならば、彼女は「自分の価値観が自分のものであり続ける」ためにボディーラインを見せていないのだ。

カナダ・トロントのラッパー Houdini が銃殺される

カナダ・トロント出身の人気若手ラッパー Houdini が、トロントの King Street and Blue Jays Way にて銃撃を受け死去した。

先月同郷のラッパー KILLY と共にシングル『VV’s』をリリースし勢いに乗っていた彼の突然の訃報を受け、Tory Lanez や Meek Mill らが追悼のコメントを残している。

https://www.instagram.com/p/CAq_nIjgcVg/?igshid=31yqmkx98uzb

https://www.instagram.com/p/CAq_nMOpxBM/?igshid=1q5bwe1k34slh

Young Thug がシーンに与えた影響と今日の「ベイビーボイス」ラップ

昨今の流行である Playboi Carti の「ベイビーボイス」ラップをはじめとし、今や USヒップホップシーンのトレンドとなった高音で歌うラップスタイル。今回は、ヒップホップにおけるオートチューンの歴史や、今日の流行のきっかけを作ったラッパー Young Thug の影響に触れながら、その成り立ちや進化について考えていきます。

オートチューンの歴史

まずは、ヒップホップシーンにおけるオートチューンの歴史について簡単におさらいしようと思います。

オートチューン(Auto-Tune)とは、アメリカのアンタレス社が1997年に製品化した音程補正ソフトのことで、地球物理学者の Andy Hildebrand が地震データ解析用ソフトが音程補正にも応用できることを偶然発見し、開発に至ったそうです。

初期の Auto-Tune

90年代後半から様々なジャンルにおいて用いられてきたオートチューンは、2000年代中頃から、ヒップホップや R&B においても多く使用されるようになります。

いわゆる「ケロケロボイス」を用いて歌うスタイルが T-Pain を中心に流行を見せ、Kanye WestLil Wayne、Akon らが後に続いたことで更にその人気に火がつき、メロディへ傾倒するアーティストが増えていきました。

T-Pain – Buy U a Drank (Shawty Snappin’) [feat. Yung Joc]

Kanye West – Heartless

彼らの楽曲を聴いていただければ分かるように、オートチューンは「音程補正」という本来の用途よりも、一種の「エフェクト」に近い用法で、ヒップホップシーンに浸透していきます。

オートチューンの流行とそのフォロワーたち

そんなオートチューン黎明期のアーティストたちのフォロワーであり、以後のヒップホップシーンに多大な影響を与えたラッパーの1人が Future です。

彼は、オートチューンを多用して歌うスタイルを取り入れたデビューアルバム『Pluto』で注目を集め、ラップと歌唱を行き来するスタイルを更に浸透させました。

Future – Turn On The Lights

Future が新しいスタイルで一世を風靡し、若いラッパーに多大な影響を与えるなか、次に現れたのが Young Thug でした。

Lil Wayne 直系のオートチューンを用いた高音ラップを得意とする Young Thug ですが、彼の奇声にも近い独特な歌唱法は世間を騒がせました。

Young Thug – Picacho

ジェンダーレスなファッションスタイルでも知られる Young Thug は、楽曲においても中性的あるいは女性的ともとれるようなハイピッチ・フロウを披露します。

Future & Young Thug – Real Love

Young Thug – The London (feat. J. Cole & Travis Scott)

彼がシーンに登場した当時は、そのファッションや音楽性から、「ゲイ的だ」と批判する声も少なくありませんでしたが、何と言われようと自分のスタイルを曲げずに進み続けた彼の信念が、以後のヒップホップシーンに多大な影響を及ぼすことになります。

ハイピッチ且つ中性的なスタイルの定着

Young Thug の活躍を皮切りに、オートチューンやピッチ変更を用いた高音且つ中性的な歌唱スタイルが音楽シーンに広がります。

2010年代以前にも、Nas が自身の女性オルターエゴ「Scarlett」としてピッチを上げた女性のような歌声でラップする事例がありましたが、そのような高音パートをオルターエゴ的な位置付けとして楽曲の一部分に用いるアーティストも増えていきました。

Nas – Sekou Story (feat. Scarlett)

Frank Ocean の『Nikes』や、Tyler, the Creator の『RUNNING OUT OF TIME』などでも(Young Thug の影響とは言えないものの)ピッチを上げた中性的な歌唱パートが取り入れられ、ヒップホップ、R&B からポップスまで、しっかりメインストリームに浸透していることが窺えます。

Frank Ocean – Nikes

Tyler, The Creator – RUNNING OUT OF TIME

中でもヒップホップシーンにおいては、その盛り上がりが顕著でした。明らかに Young Thug に影響を受けたであろう高音で歌う若手ラッパーが続々と登場し、シーンを盛り上げます。

SahBabii – Marsupial Superstars (feat. T3)

Coca Vango – Sauce All One Me

Haiti Babii のフリースタイルラップ

「ベイビーボイス」ラップの登場

そして2018年から2019年にかけて、中性的もしくは女性的という域を超えた、まるで幼児のような声で歌ういわゆる「ベイビーボイス」ラップが登場し話題を呼びました。

今日のベイビーボイス・ラップと呼ばれるスタイルを始めたのは、Young Thug の YSL Records とサインしているアトランタのラッパー Lil Keed でしょう。彼もまた Young Thug に影響を受けたラッパーの1人ですが、他の Young Thug フォロワーとは一線を画すような、極端に高いピッチで歌うフロウを聴かせます。

Lil Keed – Nameless

Lil Keed の裏声でシャウトするレコーディング風景も非常に興味深く、一見の価値ありです。

https://youtu.be/yUCit0lhtVc

そして、最初にベイビーボイス・ラップが大きな注目を浴びたのは、Young Nudy & Playboi Carti の未リリース楽曲『Pissy Pamper』のバイラルヒットでした。

※未リリース楽曲のため音源無し。

この楽曲では、Playboi Carti が今にも泣き出しそうな幼児のように歌うフロウを披露し、未リリースにも関わらずリーク曲が Spotify のチャートにて1位を獲得しました。

このヒットを受け、Playboi Carti はベイビーボイス・ラップに傾倒するようになります。幼児のような声で絞り出すように歌うラップと耳に残る軽快なアドリブを織り交ぜた彼のスタイルは、もはやラップというより一種の楽器としての側面が強く、Young Thug よりも更に音にフォーカスした進化系であるといえます。

Playboi Carti – @ MEH

Drake – Pain 1993 (feat. Playboi Carti)

Young Thug のスタイルを誇張して進化させたようなこの新しいスタイルは、賛否両論あるものの、チャートではしっかり好成績を残します。実際、Playboi Carti だけでなく、この「ベイビーボイス」ラップと呼べるような歌唱法を用いる若手ラッパーが次々と現れています。

その中でも、現時点でのベイビーボイス・ラップの究極形態が、アトランタの新人ラッパー 645AR でしょう。彼のベイビーボイスはもはやホイッスルボイス(裏声系のシャウト)や金切り声にも近く、「果たしてこれはベイビーなのだろうか」という疑問も生まれるほど衝撃的なスタイルです。

645AR – 4 Da Trap

このように、2000年代中頃からヒップホップシーンに浸透し始めたオートチューンを用い歌うラップスタイルは、2010年代に登場した Future や Young Thug の影響を強く受けながら今日のスタイルへと進化を遂げました。

世間が待望している Playboi Carti の新譜が本当にリリースされるのかどうかは怪しいですが、ヒップホップファンや音楽評論家から賛否両論を受けるベイビーボイス・ラップの今後と、その影響を受けた新たなアーティストやスタイルの登場を楽しみに待ちたいと思います。

Written by Riku Hirai

今週のリリース【5月24日〜】

[アルバム]

Lil Yachty – Lil Boat 3

Flying Lotus – Flamagra (Deluxe)

Diplo – Diplo Presents Thomas Wesley, Chapter 1: Snake Oil

Lil Wayne – Funeral (Deluxe)

G Herbo – PTSD (Deluxe)

Freddie Gibbs & The Alchemist – Alfredo

LUCKI – Almost There

Lil Poppa – Evergreen Wildchild 2

YungManny – Confused

Ro James – MANTIC

Ola Runt – Beggin For A Body

Joell Ortiz & KXNG Crooked – H.A.R.D

Ace Hood – MR.HOOD

Medhane – Cold Water

BVDLVD – LUNATIC

Toosii – Platinum Heart (Deluxe)

Dej Loaf – No Saint (EP)

Aitch – Polaris (EP)

scarlxrd – FANTASY VXID; SUMMER. (EP)

[シングル]

ROSALÍA & Travis Scott – TKN

Juice WRLD & Trippie Redd – Tell Me U Luv Me

Gucci Mane – Both Sides (feat. Lil Baby)

Shoreline Mafia – Ride Out (feat. Lil Yachty)

6LACK – ATL freestyle

Young Dolph – RNB (feat. Megan Thee Staliion)

Saint JHN & Future – Roses

Jessie Reyez – COFFIN (Acoustic)

Aminé – RiRi

Jaydayoungan – Touch Your Toes (feat. Mulatto)

Young Dolph – RNB (feat. Meg the Stallion)

Ne-Yo – U2Luv (feat. Jeremih)

Kevin Gates – Grandmotha Grave

DUCKWRTH – Find A Way

JPEGMAFIA – CUTIE PIE!

Tropico & Rich The Kid – Go Crazy

Tion Wayne – I Dunno (feat. Stormzy & Dutchavelli)

Smokepurpp – It’s Whatever

Travis Barker & Wiz Khalifa – Drums Drums Drums

N.A.O. Quelly – Made It / A Wonderful Feeling

GASHI – Paranoid

Khali D – Cloud 9

Kvi BaBa – Happy Birthday to Me

Kohh が音楽活動を続ける意思を表明

先日、『Worst』を最後に現在の名義での活動を終えると発表していた Kohh。

そんな彼が、宇多田ヒカルとのインスタライブで現在の制作状況や、今後の音楽活動をどうするかについて語った。

現在も一日に7曲を作るなど、発表するかどうかは別として、音楽を続けることにはなりそうだと発言した。

宇多田ヒカルが、 KOHH を客演に呼んだ『忘却』を自身の中でもトップ3に入るかもしれないと語ったり、和やかな雰囲気で進められたインスタライブ。

日本のヒップホップ界を背負うアーティストに今後も目が離せない。

‪Doja Cat が人種差別的であると非難を浴びる‬

先日、Nicki Minaj をフィーチャーした『Say So (Remix)』が Billboard Hot 100 にて自身初の1位を獲得し、勢いに乗っている Doja Cat。そんな彼女が、人種差別的であるとして非難を浴び始めた。

Doja が「Tinychat」というオンラインチャットサイトにて、白人至上主義 / インセル(不本意な禁欲主義、非自発的独身者)のコミュニティに属する白人男性らと会話する様子が拡散されたことから、彼女に対する批判が始まった。

https://twitter.com/moonlove_x/status/1263951949210279936?s=21

さらに、Doja が2015年に制作した楽曲『Dindu Nuffin』のタイトルとリリックに登場する「Dindu」というワードは、警察の残虐行為の犠牲となったのちに無実を主張する黒人たちに向けて、白人至上主義者が使う人種差別的用語であることが発覚し、批判がヒートアップ。彼女の Instagram のフォロワーは1日で10万人も減少した。

しかし、彼女が本当に人種差別主義者であるのかは未だ不明なため、彼女に向けた無闇な誹謗中傷は控えていただきたいところだ。