Pooh Shiesty (プー・シャイスティ)こと Lontrell Williams は、1999年の11月8日にテネシー州のメンフィスにて産声を上げました。彼の父親も、彼と同じくメンフィスを拠点とするラッパーで、Mob Boss というステージネームの下、Mob Ties Records というレコードレーベルの運営も行なっていました。
ラップのスタイルとしては、Gucci Mane を彷彿とさせる(実際に Gucci Mane に才能を買われ、1017 Records との契約を果たしています。)隣り合う単語が絡み合うようにズルズルと続く、隙間のないデリバリーを得意とします。また、 Pooh の故郷であるメンフィス特有のアクセントも存分に感じられます。
Pooh は18歳になるまで、ラップの経験がありませんでした。あるきっかけでメンフィスの女性ラッパー K Carbon による Three 6 Mafia の『Weak Azz Bitch』のリミックスに参加したところ、YouTube にて楽曲が100万回再生を達成し、メンフィスを中心にその名が広まりました。
続いてメンフィスを中心に得たファンベースを利用し、最新ミックステープにも参加している親友の BIG30 らとともに数曲のシングルをリリースします。数ヶ月の音楽活動を継続するうちに、ローカルでのバズが頻繁に起こるようになり、彼の名前が Gucci Mane のもとにまで広まります。
Pooh の才能に将来性を見出した Gucci Mane は、すぐさま自身のレコードレーベルである 1017 Records との契約を提案し、Pooh は晴れてメジャーレーベルとの契約を果たしました。
2020年には、Gucci Mane によるコンピレーションアルバム『So Icy Summer』にて 7曲もの楽曲に参加し、Moneybagg Yo や Lil Baby などのビッグネームらとの共演を果たしています。
『Back in Blood』のヒット
Gucci Mane のコンピレーションアルバムでの大活躍で知名度を一気に獲得した Pooh は、2020年の11月にイリノイ州シカゴのラッパー Lil Durk をゲストに招いたシングル『Back in Blood』をリリースします。ちなみに、こちらの楽曲はのちにご紹介する彼のデビューミックステープ『Shiesty Season』からの先行シングルとしてリリースされました。
Pooh はラップを始める以前から、シカゴのドリルミュージックを好んで聴いていたらしく、『Back in Blood』に Lil Durk をゲストとして招いた理由も、少年期から親しんできたシカゴのアーティストとリンクアップしたかったからと Genius のインタビューにて語っています。
タイトルとなっている「Back in Blood」とは「敵の命を奪う」ことを意味しており、インターネット上での見せかけのギャング気取りに対する警告をラップした楽曲です。
Bitch, I got my own fire, don’t need security in the club 俺は自分で武器を携帯しているから、クラブでセキュリティーをつける必要がない
All that woofin’ on the net, nigga, I thought you was a thug ネット上で騒いでる奴ら 俺はお前らのことをサグだと思っていたよ
They ain’t got nowhere to go, I shot up everywhere they was 奴らに逃げ場はない 奴らが居たら俺はどこでも発砲するからな
Yeah, you know who took that shit from you, come get it back in blood 誰がお前らの命を奪い去るかわかってるよな 俺がお前らの命を奪ってやる
かなり強気かつ過激な内容の楽曲ですが、以前から注目が集まっていた Pooh の新曲であること、また Lil Durk がゲスト参加していることから、Apple Music の US チャートでは最高一位を記録し、YouTube でも4000万回近い再生回数を獲得しています。
『Shiesty Season』のリリース
Lil Durk との楽曲『Back in Blood』で世界的な知名度を獲得した Pooh は、万全を期して初のフルレングスプロジェクトであるデビューミックステープ『Shiesty Season』をリリースします。Pooh Shiesty の時代が到来したと言わんばかりのストレートなタイトルで、謙遜するそぶりを微塵にも感じさせない清々しい作品となっています。
当ミックステープには先行で話題となった Lil Durk に加え、21 Savage と Gucci Mane がゲスト参加しており、他にも Pooh の友人でありアップカミングなラッパーである BIG30 や Veeze、Lil Hank、Choppa Wop、Foogiano が参加しています。今回はその中でも、特にインパクトの強かった楽曲を何曲かご紹介いたします。
Tryna pay to get me killed, why you won’t come do it? 殺し屋を雇って俺を殺そうとしているみたいだけど、なぜ直接俺をやりにこないんだよ
Get sent out, watch how I send you back to ’em お前らが直接こないなら、どうなるか覚悟はできてるよな
Box of Churches (feat. 21 Savage)
続いてご紹介するのは、21 Savage がゲスト参加した『Box of Churches』という楽曲。おなじみのブルブルアドリブから幕開けするこちらの楽曲では、神聖で厳荘なメロディーの上で火花のようにハイハットが鳴り響きます。こちらの楽曲でもやはり敵対する者への挑発を忘れることはありませんが、自らがフッドにもたらした変化などについても言及しています。
who want smoke? Tell him meet face-to-face 誰が俺と喧嘩したいって? そいつに面と向かってやりあおうと言っといてくれ
Remember back in ‘leventh grade, I dirtied up my only K グレード 11(※1) の時、俺は AK-47 を汚していた (※2)
Get my round applause, in a couple months I done made a way 周りの称賛を得て、たった2ヶ月でここまできた
I’m why niggas dropped the Rollies and went to the Cartiers 俺こそがみんながロレックスよりカルティエを選ぶ理由さ (※3)