Young Thug 率いる Young Stoner Life Records に所属するジョージア州アトランタ出身の注目ラッパー Lil Keed (リル・キード)。XXL Freshman Class 2020の有力候補の1人であり、本日セカンド・アルバム『Trapped On Cleveland 3』をリリースした彼の生い立ちやキャリア、魅力に迫ります。
生い立ち
I come from the jungle where you don’t survive.
他の奴らは生き抜くことができないような、ジャングルみたいな場所からやって来たんだ
1998年3月16日、ジョージア州アトランタにて生を受けた Lil Keed こと Raqhid Jevon Render は、幼少期を Forest Park で過ごした後、Cleveland Ave に引っ越します。この Cleveland Ave はアトランタのゾーン3に位置しており (アトランタは、警察によって1~6までの管轄地区に分けられており、アトランタのスター Young Thug もゾーン3で生まれ育ちました) 、彼は6人の兄弟とともに貧しく過酷な環境下で生活していたそうです。
キャリアの開始とミックステープ
学生時代、Subway と McDonalds で働きながら日常的に音楽制作を行なっていた彼は、親友 Rudy を亡くしたことをきっかけに、実弟である Lil Gotit と共に真剣に音楽活動に取り組むようになります。
Young Thug や Peewee Longway、Big Bank Black らに影響を受けたと語る Keed は、2016年に本格的にキャリアを開始し、2018年にデビュー・ミックステープ『Trapped On Cleveland』をリリース。 Young Thug の影響を強く感じさせるハイピッチで歌うスタイルが彼の特徴です。
Young Thug のようなハイピッチ・フロウとキャッチーなコーラスが特徴的な1曲。女性との関係や掴んだ成功について歌った同曲がバイラルヒットし、US Billboard チャートにて最高30位を記録、後にゴールド認定されます。
デビュー・アルバム『Long Live Mexico』
2019年6月、Lil Keed は待望のデビュー・アルバム『Long Live Mexico』をリリースします。タイトルの『Long Live Mexico』とは、同年始に亡くなった彼の友人 Mexico に追悼の意を表したものです。
Young Thug や Gunna、NAV、Moneybagg Yo、Lil Uzi Vert、YNW Melly、Roddy Ricch らを含む13名を客演に迎えた同作は、US Billboard チャートにて最高26位を記録します。
Snake
CuBeatz & Pyrex Whippa プロデュースによるウクレレのようなストリングスを用いたスロウなトラックと、「Snake」を連呼するだけのシンプルなフックが特徴的な1曲。2バース目入りの苦しそうなハイピッチ・フロウが彼の持ち味で、まさに Young Thug のハイピッチ・パートをそのまま受け継いで進化させたかのようなスタイルを披露します。
2018年から次々と作品をリリースし、憧れの Young Thug に認められたのち YSL Records と契約、更には XXL Freshman Class 2019 にもノミネートされるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いでスターダムを駆け上がってきた Lil Keed。そんな彼は、YSL Records やアトランタのラッパーを中心に、様々なアーティストと共演するようになります。
Young Thug – Goin Up (feat. Lil Keed)
まずは Keed をフックアップした Young Thug との1曲。彼らが出会って間もない時期に制作した楽曲ですが、2人は既に最高のコンビネーションを発揮しています。Thug がイントロで「Keed, yeah」とシャウトアウトする部分や、似たような声質から放たれる両者のハイピッチ・フロウから、彼らが本当の親子だと勘違いするファンもいたほどです (年齢的にはあり得ませんが)。実際 Thug は、Keed を実の息子のように可愛がっています。まさに Keed は、アトランタ・ヒップホップシーンの結束力と Young Thug の多大な影響力が生んだネクストスターといえるでしょう。
Jacquees – Hot For Me (feat. Lil Keed & Lil Gotit)
ジョージア州ディケーターの R&B シンガー Jacquees の1曲に、Keed は実弟の Lil Gotit と共に参加しています。Keed のシグネチャーである「Keed talk to ’em」の連呼で始まる彼のヴァースは、地声のラップからアドリブと共にハイピッチ・フロウに切り替わっていく展開で、R&B サウンドにしっかり順応しています。優れた歌唱力と美しい歌声を持つ Jacquees と、それに負けじと必死にハイピッチで歌う Keed の2人だからこそ成せる絶妙なコンビネーションです。
88GLAM – Bankroll (feat. Lil Keed)
カナダ・トロントのヒップホップ・デュオ 88GLAM との1曲。Keed は、お得意のハイピッチ・フロウに加え Young Thug のようなダミ声も披露しており、客演にも関わらず主役級の存在感を放っています。Keed はどの楽曲でも同じようなラップをしていると思われがちですが、自分のスタイルを貫きながらも随所に様々な工夫を凝らしており、インタビューでも以下のように語っています。
After just every day being in the studio, trying new things.
俺はいつも新しいことを試してる
I don’t want people to be like, ‘He sounds the same on every song, that shit’s boring!’
ミシガン州デトロイトのラッパー Tee Grizzley との1曲。Tee Grizzley のハードなラップに続いて、Keed はハイテンポなビートを乗りこなしながら自由なラップを披露します。真面目にラップする Tee Grizzley と、奇妙なアドリブやフロウを聴かせる Keed の相性が意外にもマッチした楽曲です。
johan lenox, Lil Keed & Kota the Friend – throwback thursday
マサチューセッツ州ボストンのシンガー/プロデューサー johan lenox との1曲。Keed とオーケストラ・サウンドという一見意外な組み合わせですが、彼は johan lenox にも Kota the Friend にもない新たなエッセンスを楽曲に加えており、三者三様のコントラストが魅力的な楽曲です。このようにヒップホップ (トラップ) 以外の楽曲にも起用される Keed は、同じく様々なジャンルの客演をこなす Young Thug に近い立ち位置を確立しつつあるのではないでしょうか。
おわりに
今回はアトランタの注目ラッパー Lil Keed についてまとめてみました。いかがだったでしょうか。
2019年、そして2020年と2年連続で XXL Freshman Class の候補者にノミネートされており、これからますます活躍が期待されている Lil Keed。実弟 Lil Gotit と共にアトランタのシーンを背負うビッグスターになる日も近いかもしれません。