Trippie Redd – SoundCloud 出身のオールラウンダー

その特徴的な見た目や、ロックや R&B などあらゆるジャンルから影響を受けたと思われる名曲の数々でファンたちの心を掴んでやまない Trippie Redd。今週末にはニューアルバム『Pegasus』のリリースを果たしました。今回はそんな彼の生い立ちやキャリア、ヒット曲などを通して、彼の魅力に迫ります。

生い立ちとキャリアの開始

Trippie Redd (トリッピー・レッド) こと Michael Lamar White IV は1999年の6月18日にオハイオ州のカントンにて産声を上げました。彼が誕生した時、彼の父親は刑務所に収監されており、母親によって女手ひとつで育てられたそうです。

Trippie Redd

彼には兄弟が一人ずつおり、兄は Dirty Redd、弟は Hippie Redd というニックネームだったそうで、現在のステージネームは彼らのニックネームから考案しました。元々は Trippie Hippie という名前を考案していましたが、すでに同じ名前のグループが存在していることを知り「Trippie Redd」に改名したそうです。

彼の母親が Ashanti や Beyoncé、Tupac、Nas などによる音楽を日常的に聴いていたことがきっかけとなり、Trippie は T-Pain や KISS、Nirvana、Gucci Mane、Marylin Manson など様々なジャンルの音楽に興味を持つようになりました。

様々な音楽に親しむ中で、彼はラッパーになることを志し始めます。高校卒業と同時に、自らのキャリアを躍進すべくオハイオ州のコロンバスに移住しましたが、思うようにことが進まずすぐにジョージア州のアトランタに移動しました。

Lil Wop との出会い

Trippie Redd (中央) と Lil Wop (右)

アトランタに移住した Trippie は、Famous Dex の従兄弟としても知られるラッパーの Lil Wop に出会いました。Trippie よりも先に音楽活動を始めていた Lil Wop は、彼の才能を認めレコードレーベルやレコーディングスタジオに関するサポートを行ったそうです。

ちなみに Trippie Redd と Lil Wop はのちにコラボ EP 『Angels & Demons』をリリースしています。Trippie の無邪気な少年のような声と Lil Wop のざらついた声のコントラストを Digital Nas らのトラックの上で楽しむことができます。

SoundCloud でのブレイク

Trippie は Lil Wop のサポートもあり Strainge Entertainment(現 Elliot Grainge Entertainment )との契約を交わし、音楽活動の拠点をカリフォルニア州ロサンゼルスに移します。

2016年には、シングル『Love Scars』が SoundCloud や YouTube にて大ヒットします。そして、2017年に5月には大ヒットチューン『Love Scars』を収録したデビューミックステープ『A Love Letter To You』のリリースも果たします。

どこか物憂げな表情を持つ彼の歌声や、メランコリーな空気を醸し出す本作の雰囲気から、彼は SoundCloud 出身のエモラッパーと呼ばれることも多いです。しかし、Trippie 本人は自身の音楽がエモラップに分類されることを嫌っており、Complex のインタビューではこのように語っています。

I wasn’t on no emo s**t. Me and Kodie Shane both got that s**t, and we was just on our little sad wave, ’cause we make a lot of sad R&B songs. It ain’t no emo s**t.

俺はエモラップの土俵には立っていない。俺は Kodie Shane (※1) と、悲しい雰囲気の R&B をたくさん作っていたから、少し悲しい気分になっていただけだよ。俺の音楽は決して「エモ」じゃない。

(※1) Kodie Shane は Trippie の旧友のアーティスト。

その後の作品群

Trippie は『A Love Letter To You』シリーズをミックステープとして継続的にリリースする中、同時進行でスタジオアルバムをリリースし続けています。『A Love Letter To You』シリーズは現在4作目までリリースされており、スタジオアルバムは『Life’s A Trip』と『!』、そして今回リリースされた『Pegasus』の三作品をリリースしています。

ミックステープ『A Love Letter To You』シリーズ
スタジオアルバム

今回は数ある彼の作品の中から数曲ご紹介してみようと思います。

Bust Down

ミックステープ『A Love Letter To You 2』に収録されている『Bust Down』という楽曲です。静かなピアノのイントロから、突如として始まるビートに思わず頭を揺らしてしまう楽曲です。『A Love Letter To You 2』では、一作目には見られなかったポジティビティに溢れた楽曲が数多く収録されており、彼の心境や作風の大きな変化を楽しむことができます。

他にも『A Love Letter To You 2』に収録されているポジティブな楽曲として、Cydnee と Chris King をフィーチャーした『Back Of My Mind』や UnoTheActivist をフィーチャーした『Today』などが挙げられます。

Leray

最新ミックステープ『A Love Letter To You 4』のイントロである『Leray』という楽曲です。Trippie の元恋人であるラッパーの Coi Leray にむけた楽曲で、静かなアコースティックギターの上で歌を披露しています。

『A Love Letter To You 4』では他にも『Koi』や『Who Needs Love』、『Abandoned』など、アコギベースの楽曲が多く収録されており、ミックステープ制作時の彼の心境が楽曲に反映されているような印象を受けます。

Can You Rap Like Me?

『A Love Letter To You』に収録されている『Can You Rap Like Me?』という楽曲です。タイトル(訳:俺みたいにラップできる?)の通り、ブーンバップ調のトラックに乗せて普段の彼のスタイルとはかけ離れた正統派なラップを繰り広げる一曲です。

最新ミックステープ『A Love Letter To You 4』では、当楽曲の続編として『Can You Rap Like Me, Part. 2 』が収録されており、同じく高度なラップスキルを披露しています。

ポップ寄りのポジティブな楽曲を制作するかたわら、落ち着いたR&B調の楽曲、はたまたブーンバップにも挑戦する彼の縦横無尽なスタイルですが、彼は Pigeons & Planes にてこのように語っています。

Put ’em together, and that’s Trippie Redd’s style

全てを一つにまとめる。それが Trippie Redd のスタイルだ。

現在の彼にも反映されるジャンルレスなスタイルは、様々な方面の音楽に親しんだ少年時代の影響が大きいようです。

その他の功績

XXXTENTACION – Fuck Love (feat. Trippie Redd)

故 XXXTENTACION のデビューアルバム『17』に収録された楽曲『Fuck Love』です。Trippie はこちらの楽曲のフック部分を担当しています。二人の物悲しい歌声のハーモニーが多くの人々の心を掴み、現在では YouTube で3億5千万再生、SoundCloud では 2億7千万回の再生を記録しているメガヒット曲です。

Trippie Redd – Dark Knight Dummo (feat. Travis Scott)

テキサス州ヒューストンのラッパー Travis Scott のをフィーチャーしたシングル『Dark Knight Dummo』です。本楽曲では、他の楽曲ではあまり見られない映画のサウンドトラックのような壮大なトラックに荒々しいラップを乗せています。『Birds in the Trap Sing McKnight』期を彷彿とさせる勢いのある Travis Scott のバースにも要注目です。

Joji – R.I.P.

88rising に所属する大阪府出身のシンガー Joji のデビューアルバム『BALLADS 1』に収録されている『R.I.P.』という楽曲。夢の中のようなスローテンポなサウンドに乗せて、切なくも力強い歌声を披露しています。本楽曲に関しては R&B やオルタナティヴに分類され、Trippie の守備範囲の広さを実感することができます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は SoundCloud 発のラッパー Trippie Redd について生い立ちやキャリア、楽曲などを通してまとめてみました。今後も彼がどのような形で私たちを驚かせてくれるのかが楽しみでなりません。

Written by whoiskosuke