現在サポートするサッカーチーム Manchester United のユニフォームを着る Headie One
少年期から Future や French Montana などのアメリカのアーティストによる音楽に親しんでいた彼は、自身でも見様見真似でラップを始めるようになります。
キャリア初期は「Headz」という現在とは異なるステージネームで活動していましたが、2018年のはじめに現在の「Headie One」に改名しました。Headie One というステージネームはイギリスに流通する硬貨 50 ペンス に自身の頭の形が似ていることが由来だそうです。
Headz 期 / RV との出会い
ラップを初めて間もない彼は、ロンドンを拠点に活動するヒップホップコレクティブである Star Gang に所属していました。2014年には、Headz の名義下の唯一のソロミックステープである『Headz or Tails』をリリース、その後は同じく Star Gang に所属していたトッテナムのラッパー RV に出会い、コラボミックステープ『Sticks & Stones』と『Drillers x Trappers』の2作品を連続で発表します。
Headie One と RV は、コラボミックステープ『Sticks & Stones』と『Drillers x Trappers』の2作品をリリース後、ロンドン・ブロードウォーターファームを拠点とするドリルコレクティブ OFB (Original Farm Boys) に加入します。
OFB は UKドリルシーンで最も有名なコレクティブであるため、OFB への加入は Headie One のキャリアを押し進める大きな要因となりました。
改名と『Know Better』のヒット
自身のステージネームを Headie One に変更し、2018年の2月に Headie One 名義下で初のソロミックステープ『The One』をリリースします。当ミックステープに収録され、先行シングルとしてもリリースされていた RV との楽曲『Know Better』がアンダーグラウンドにて大ヒットを起こします。
その事件とは、ロンドンの北部に位置するベッドフォールドシャー大学の学生寮にて Headie One が敵対するギャングのメンバー二人と鉢合わせてしまったというものです。相手のギャングメンバーは Headie One に対しかなり高圧的な態度をとっていますが、相手が終始 iPhone で動画を撮影していたため Headie One から手を出すことができず、最終的に敵に背を向けて大学寮の中に逃げ込んでしまいます。
敵対するギャングメンバーによって スナップチャットに投稿された事件当時の動画
カメラで撮影をしながら挑発をするという卑劣な手段を選んだ相手に怒りを覚えた Headie One は楽曲リリースの手段を選んでディス曲を公開します。
勘の良い方はすでにお察しかもしれませんが、Headie One は伏せ字を使って事件の様子を事細かにラップしています。では何のために伏字にするのか、それは楽曲のリリックを証拠として逮捕される、または楽曲の配信ができなくなることを防ぐためです。
近年イギリスでは、ドリルミュージックに対しその暴力的、犯罪的な内容について疑問の目が向けられています。実際に警察によってミュージックビデオが削除されたり、リリックの内容が証拠として提出され、それによって身柄を拘束されたりするラッパーが続出しています。Headie One はそのような事態を防ぐために、犯罪に関わる表現を「Shh」に置き換えることによって、セルフクリーンバージョンを制作したというわけです。
Live corn in the shh 銃弾 (※1) が〇〇の中にある
I could’ve let it in the uni room 大学の中でそれをぶっ放すことだってできた
But I know better でも俺はそうはしなかった
Opps wanna see me get nicked with a shh ヤツらは俺が△△を持っていることで捕まるのが見たかったんだろ
But I know better でも俺はそんな失態は犯さない
(※1) Live corn は銃弾を意味するイギリスのスラング
フックのリリックを少し見てみると、至る所が「Shh」によって伏せられています。相手のギャングから挑発を受けている最中、Headie One は終始ショルダーバッグの中に手を入れて何かを取り出すような仕草をしている (上記動画を参照) ことから、一行目の〇〇の部分は「bag」であることが予想できます。